渦動破壊者 〜アーマードジム〜【とりあえず完】 作:PureFighter00
「確かに私は二代目の開発主任。前任者は確かに失踪したわ」
GBN運営本部の来客室。会社が受賞した様々な表彰状が飾られて、我が社の凄さを見よ!的な圧力を掛けてくる部屋だが……内情を知ってしまった渦さん、陸海空、シバには大変空虚に見えた。
出されたコーヒーは近所のドトールの出前。紙コップのコーヒーが出ないだけ敬意が伺える。自衛官の制服着て来たいつもの3人見たらそりゃまぁ緊張するか。IT企業だからスタバかと思ってたんだけど、浅草周辺下町エリアに展開するバンナム系だとこうなるのか。
トーリ女史の独白は続く。GPDはGBN開発の途上であるエンジニアがほぼ独力で作り上げたサンプルシステムである事。元々彼はフルダイブゲームを作り上げるつもりで、GPDはそのコンソールや物理演算用データ取得の為に作られた物に過ぎない。しかしサンプルとして構築されたものであっても、開発途上の進展具合を経営陣に報告する必要はあり……プロジェクトリーダーはGPDのプロトタイプを公開した。
これに狂喜乱舞した経営陣はGPD段階でゲームとして公開する事を決定して、トーリはGPDの仕上げに専従する事になった。あるエンジニアはGPDの次システムとしてのGBN……その当時はGPNって名前だったけどね……の開発に没頭して行ったわ……
「道理でコードが基幹部だけがっちりしてる訳だ」
「そのエンジニアは何処から来たんだ? 前職は?」
「分からないわ。プライベートでも付き合いあったけど、実家や家族構成も何も分からなかった……」
「なんで実家を知る必要がある?」
「あ」
「馬鹿」
「察せよ……」
「え、何? 不味かった?」
(付き合ってたんだろうよ、彼っていう言葉のトーンで気付けオタク小僧!)
(知らねーよそんなもん!)
(あ、泣かした。いーけないんだ)
(話進まんだろが……)
「……続けて、どうぞ」
間にチョロチョロ惚気話が入ったが、そこは省略する。まぁ、異性との出会いが少ない会社部署では良くある話だ。
GPDはそもそもコンセプトが異質なので、開発の仕上げは難航した。サンプル扱いだったのでドキュメントも整理されておらず、トーリは前任開発者、紀伊のオフィスに四六時中出入りして開発コンセプトを尋ねた。これは開発系・理系で良くある話だが、自分の研究や仕事に理解を示す異性というのは容易く恋に落ちる。仕事で始めた事ではあるが、GPDの開発コンセプトや仕様を度々尋ねるトーリと紀伊。多忙な中互いに同じ仕事に従事して「他の異性を知らぬ」2人。まぁそういう事。
紀伊は常にこう語っていた。そら会社は儲かるだろうが頑張って作ったガンプラ壊されて喜ぶ奴は居ない。デュエルって形でバトらせたら必ず片方が負けてパーツ破損する。ウケる訳がない。
「お前、GPDってプログラムを他のプログラムとデュエルさせてプログラムが壊れたらどー思う?って良く言われたわ」
「ですよねー」
「部品のサプライでガンプラ会社は儲かるしねー」
「会社にも事情はあったの。欧米展開や新型コロナでガンプラ需要は盛り上がったわ。生産量も増えた。でもガンプラの置き場は有限で、ある一定の量で置き場も頭打ちになるの、ガンプラは消費出来ないのよ」
「ガンプラの消費をしないと購買に繋がらない、か」
「一時の品薄で工場拡充したのも失敗だったわ、またたまごっち状態になっちゃった。気を付けてたのにね……」
「対策は無かったのですか?」
「今GBNで使ってる射出成形機、あれは本来GPDで破損したパーツの修理部品を作るものだったけど……間に合わなかったわ」
「あれ、どういう仕組みなんだ? 筐体置いてる所に所有金型全部置くわけにも行かないだろ?」
「金型は資産扱いになりますもんねぇ」
「型がゲッターロボみたいな四次元変形してるとしか思えん」
「或いはロデムとか転スラ?」
「エルドリウム鏡砂って言うらしいわ。略してEL砂。電磁記録から立体成形出来るのよ。プラネッツコーティングにも使われてる」
「GPDで使えりゃ確かに便利だったな……」
「間に合わなかった。圧力に耐える強度が出せなかったのよ」
「つまんない話だけど、なんでプラネッツ?」
「彼は異星人からの贈り物って茶化してたけど、プラスチックとネットを掛けたのかもね」
「プラにネットをかけて、それを電磁データでコントロール? それで動くのか……そーゆー事か……」
「ターンAみたいじゃのう」
「本当にあたおかシステムだな。案外マジで宇宙テクかもな」
正解。尚、本当に惑星の方のプラネッツが語源。
誰もエルドリウム鏡砂については突っ込まないが、何だその砂、素材工学系がビックリしてムーンサルト決めそうな素材なんですが……皆、プログラマ方面に強くて工業系の知識は余り無いのかな?
開発主任X(紀伊)を失踪させる事でこまけーとこは「分からない」とするの術。書き留めておかないと自分でも忘れちゃうので物語に組み込みました。