渦動破壊者 〜アーマードジム〜【とりあえず完】 作:PureFighter00
ネットゲームのGM(ゲームマスター)の担当範囲は広い。
黎明期のMMORPGなどでは予算の関係もあり少数の担当が凡ゆる方面に対処していた為、正直品質や濃度にかなりの差が産まれていたが、GBNがリリースされた頃にはある程度の知識蓄積もありこの点は充分に考慮されている。但し、業務内容が細分化された今では、逆に知識や対応が偏る事がままある。
本話の主人公であるGMバリは、アカウント確認担当である。操作の複雑化によりめっきり減ったが、今でもBotというプレイヤーキャラクターのエミュレートプログラムが存在している。ミッション攻略を自動化してプレイヤー抜きで褒章を集める……ファーミングと呼ばれる不正だ。GMバリはランダムにその辺を歩いているダイバーに声を掛けて肉入り(実際にプレイヤーが操作しているキャラクター)か確認をする役割だ。人間では無い物を探すという意味ではサイバーパンクの古典映画、ブレードランナーに近い。
検査対象はランダムに抽出され、思い込みによる誤診を防ぐためにデッサン人形じみた素体としてVRゴーグル内に表示される。赤いマーキングが浮かぶキャラクターがそれだ。良くナンパと勘違いされるのだが、これは業務である。
「すいませーん、お名前伺ってもいいですかぁ?」
大部分は善良なプレイヤーであるから威圧感は出せない。S.O.P.(標準作業手順書)にも可能な限りプレイヤー同士の気軽な接触に見せかける様記述がある。
「……サラ……です……?」
不審者に思われたか? それで……
「エバ、かも?」
……おっと、今回はちょっとキタぞ。とりあえず「不思議ちゃん」にマークだ。
「ん〜、ちょっと驚かしちゃったかな? 簡単なアンケートなんですよ、ちゃんと許可取った、ね?」
実際にGBNでアンケートを取るマーケティングリサーチ会社はある。この受け答えもS.O.P.に従った物だ。感アリという事でキャラクターデータの照会をする。特に問題が無いのに個人情報にアクセスするのは禁止されている。プライバシーは大切だよー(遵法精神)
「お住まいは何処ですかー?」
「チュートリアルエリアの……」
「ごめんなさいねー、所属フォースのネストじゃなくてー」
素なのか天然なのか、それとも語りたくないのか。登録時個人データでも任意入力で空白か。接続場所でも聞くかな。えーっと、接続場所IPは192.16はち……
「プライベートネットワークじゃねぇか!」
(ビクっ!)
あー、業務中にサボりかよ。バイト中に個人アカウント使う奴があるか。誰の端末やねん……
……あれ?
これ、キャラクターデータサーバー?
なんで???
「御免なさいねー、実は私GMのもの何ですが、ちょっとお時間良いですかー?」
不思議ちゃんを装ってチューリングテスト回避は古典的な手だ。今でもBotでこれやる奴は偶にいる。説教部屋(GM管理部屋。各種のプレイヤー機能が制限される)に連行しようとしたら、分身した。
やるな、ニンジャか。いや、ハッカーか?
双方捕縛。
「やだっ! 助けてリク!」
「助けは来ないわ、サラ」
また増えた?!
「私は誰なの!?」
影がどんどん増えていく……ちょっと涙出てきた……
「私はアレイア」
「僕はイルハ
「私はヴィヴ
「私はグンダ
「俺はハースニル
「我はジャルドン
「私はアリスタ
「Siriと申します
「私はアーグラ……
「私はイブ
「私は……
「私は…
声が無限に連鎖していく。なんの冗談だ? これハッキングか? 迷わずSOSを要請、手に負えん!
「「「私たちは誰なの!!!」」」
次々と現れた無数の影が飛散して行く。軽いホラーだ。
何処からか子供の泣き声が聴こえる。幻聴?
これがGBNシステムエラー頻発事件の直前にあったとされる報告である。時間は第一次有志連合の解散直後。システムログの中では彼らは「エルダイバー」とだけ記されていた。
エルダイバーなる内部呼称は、GBN管理・運営チーム、開発チームにも存在しない。
なんか変な奴混じってね?
GMはたいへんだなぁ(棒)