渦動破壊者 〜アーマードジム〜【とりあえず完】 作:PureFighter00
戦え何と「自分自身」と
【GBNの入ったビル前】
その日のトーリは気合いが入っていた。念入りにエステで磨き上げられた顔は徹夜続きで疲れ果てたゾンビ面を別人の様に変え、タイトスカートのスーツ姿はデキる女の威厳を目一杯湛えていた。敢えて年齢は(本人の尊厳の為に)秘匿するが、いわゆるバリキャリOLじみた彼女は周囲の目を気にする事なくジープの到着を待っていた。
手渡された旅の栞には、走り込みをして腹筋鍛えろなどと書いてあった。しかし私はデキる女。ウェストやヒップ、脚をシェイプアップするのにお金を使える(給与を使う暇が無く、貯金があるからだ) オホホホ、私……ちょっと貯金残高には自信がありますの……
結婚資金や新居購入に充てるべく貯め込んだのだ。それを使う相手が消えた後などはやけ酒に溺れてメモリーグラスしたりなどしたが、鍛えた料理テクやお弁当技術は抜ける事なく彼女の生活を支えた。使う当てもなく残高だけは増えて行く……彼女は実際東京から20km圏内僻地なら新築戸建を現金一括で買うぐらいは出来る。渦さんによって仕込まれた未消化有休買い取りなどの臨時収入にも依るところはあるが……来年の住民税が少しだけ怖い。
ジープが止まると渦動破壊者……渦さんが助手席から降りてくる。ご覧なさいアラフィフ男! これが、これがっ!
この自信溢れた女性の誇らしさは渦さんの軽いボディーブローにより物理的にも心理的にも崩れ去った。な……何を……
「何を勘違いしてるのか知らんが、お前のこれからの旅に必要なのはそのお嬢様じみたフェロモンではなく、具体的物理的に戦える力だ。走り込みとかサボりやがったな。腹筋もまるでなってない。陸さんのブートキャンプで鍛え直してやる」
「ねーさんさー、まさか異世界行って元カレにあったら即時求婚、区役所ダッシュで桃色の新婚生活とか考えてない?」
「お前はこれから戦わねばならぬ相手の恐ろしさを知らんのだ……(男塾風味)」
【ジープ内】
「栞に書いといたよな。何をどーすんだっけ?」
「紀伊さんに見つけて貰えるよう、異世界で大人気のガンプラゲームで大活躍してニュースになる。そしてその為にガンプラバトルテクニックと美貌が必要……」
「言わばイケてるねーさんがゲーセン通いする訳だ」
「勘違いバカのアプローチや物理的接触がある。それ捌くために身体鍛えろってゆーとんじゃ」
「お巡りさんとか居るじゃない!」
渦さんとシバは天を仰ぐ。シバは余所見しないで運転集中しろ!
「異世界で警察呼ぶわな」
「調書取る時に身分証明書とか必要だわな」
「「異世界でこの世界の身分証明書出すつもりか!」」
「へ?」
「金も身分証明書も何も出せないの! 多分ICチップとか同じで読めるけど、そこにあるデータはデータベース上存在しないんだよ!」
「金だって多分使えちゃうだろうがな……あちらの日銀が管理してない番号かも知らん。調べられたら精巧な偽札扱いだろう」
「戸籍や住民票が無い、精巧に偽装された身分証明書や金を持つ『存在しない筈の人物』……ねーさん、あんたならそいつ何だと思う?」
「北朝鮮のスパイ……かな?」
「その通りだ、エージェント桃李。誰も知らない知られちゃいけない。その割に目立たねばならず、目立ったが故の火の粉は自分で払わねばならない……作戦の困難さが分かったか!」
「でも……渦さんに出来たなら……」
「姉さんには無理だよ。このオッさん地味だろ?」
「目立つ必要はワシには無いからな。地味顔活かして街中ではmobに徹してる。ゲーム内でも目立たない様に遊んでたろ……まぁ、目立つほどの腕は無いが」
「謀略ばかりだからねェ……」
「更に悪い事に……紀伊が失踪したの何年前だ?」
「2年半前」
「すると紀伊がまだお前を好きだと仮定して、だ。紀伊の頭の中にいる桃李静香は2年半前の年齢だぞ!」
「ねーさん、2年半前の恋にバチバチ燃えて乙女になってる幸せ娘に……過去の自分に勝てますか?」
「ぐっ……グギギギ……」
「負けたら『あれ? こんなんだっけ?』とか思われるんだぞ」
「勝たなきゃいけないんだよね、過去の輝いてた自分に……2年半の加齢を超えて」
「余裕ぶっこいてる暇無いんだわ。現実を見据えろ桃李静香!」
書いてて本当にイケるのか筆者も心配になってきた(素)
この日からトーリは物凄く腹筋した。