渦動破壊者 〜アーマードジム〜【とりあえず完】   作:PureFighter00

52 / 56
ビルド「ファイター」ズだからね。


戦え何と「町の不良」と

【自衛隊、秘密体育館】

「えー。直ぐに身について筋力を必要とせず、しかも町の不良ぐらいは軽くあしらえて更に相手を必要以上に痛めつけない技を教えてやってくれと渦さんからオーダーを受けた訳ですが……」

 締まった身体に野生の微笑み。陸さんである。ポージング中のボディビルダーを思わせるその顔は、こめかみがピクピク震えていた。

「トーリさん、そんなのあると思う?(ニッコニコ)」

「(そんな都合のいい話)無いですよね……」

「全くだ、そんな都合の良い武術なんて無い。ただ……ある一点だけ条件を無視すると一つだけ道がある。安土桃山の昔に興り、かの中野学校でも伝えたという忍術……」

「に……忍術ぅう?」

「どこの時代にも手軽な戦力が必要とされてたって話だな! 本流は真田家お止め流として世間に広まらず伝わった。(人の殺傷という意味で)大変効果的だからだ。身体が出来ていれば1ヶ月でコツは掴める。俗に骨法なんて言われたりするが、俺は八骸(はちがい)と聞いている」

「な……何がキツいのかしら?」

「知ってる奴が俺しか心当たりが無く、伝え方が主に組手しかない。そして俺は全身の筋肉が上手にタップダンス始めるぐらい鍛えており……顔や胸に当てるわけにはいかんから、泣きたくなるほど腹に強力なのが来るって寸法さ。だから腹筋ちょっとでも鍛えとけって言ったのに……」

 

 要諦としては、高度なフェイントによる当身を主軸とした奇襲戦術、となる。体勢から予期したタイミングや位置とは異なるところに衝撃を与える。

「トーリさん、思いっきり俺の腹叩いてみ?」

「ふんっ!」

 見事過ぎるテレホンパンチ!

「っ……何よその腹!」

「鍛えた奴が腹を締めたらそんなパンチは効きゃしない。ただ、四六時中腹を締め続ける事ができたら自衛隊にご案内だ。ボクシングなんかでもいい所まで行けるかもしらん。次は軽めに殴ってみ?」

「ぇぃっ!」

「噴!」

「きゃっ!」バランスを崩したトーリが尻餅をつく。

「易筋行の技だ。丹田鍛えて工夫すると腹筋だけでも合気が効く。出来たらこれを教えたい……女攫う時の定番だからな、腹パンチ。こっちは八骸と関係ないが、一応習得に向けて訓練する」

 サンドバッグの前に立ち、脱力する陸さん。

「構えたり意気込んだりしたらダメだ。相手も構えてしまう。軽く近寄り相手が意識をこちらに向ける前に……」

 スパァンと破裂するような音が響く。ジャブの様だがなんか腕より間合いが遠くない?

飛掌(ひしょう)だ。届くとは思えぬ距離から当てに行く。虚を突かれて予想外に効いてしまう」

 タンタンとステップを踏みながらサンドバッグと向き合う陸さん。「本当はな!」ドスン!

「きっちり鍛えてそこらのガキなら完全制圧」左ストレートからステップインして右鉤撃ち、左膝によるレバーブローのコンビネーション!「出来るぐらいに!」右肘による打ち下ろし!「教えたいけどね!」右手を前に差し出してから手刀で切る様なモーションから馬鹿げた威力の掌打!

 ギィギィと音を立てるサンドバッグに背を向けた陸さんは息も切らせていない。

「まぁ、病院送りにすると警察がうるさいからな。基本は飛掌で虚を突いて走って逃げる。つーか、走って逃げるって街中レベルでは最強護身術だから。5分ダッシュ出来たら運動部の真面目な奴しか追いつけない」

 陸さんがドン引きしているトーリを眺める。

「54ぐらいか? 1週間で体脂肪5〜6kg落とせるな」

「えっ!痩せるの!(喜)」

「筋肉は3kg増ぐらいかなぁ?」

「は?(困惑)」

「比重が違うからかなり締まるぞ!」

「……いや、そーゆーのではなく……」

「軽ーくランニングから始めようか。倒れるまでちょっと追い込んでみよー☆」

「筋力不要じゃないの?(泣)」

「最低限は無いとなぁ(にこり) 大丈夫! バストは育つしウェストは締まるから! そんなんじゃ愛しの彼氏に会わすウェストがないわよ!」

 

 1週間後、確かに胸囲は5cmも増えたがカップは下がった。太る時は腹から、痩せる時は胸からとはよく言ったものだ。筋肉扱わせると陸さんは魔法使いになる。いや、筋肉使い、か?

「女使いは最悪だわ……」

 トーリは更衣室の鏡でカラフルになった腹を見る。その表面は軽く6つに波打っている。ダイエットと言えば少食と運動だと思い込んでいた。尻と太腿の筋肉を肥大させ、基礎代謝を引き上げつつ適度な食事で胃腸を鍛える。身体そのものの燃費を悪化させて「太らない身体に作り替える」のだ。これにより便秘などが吹き飛び全体的な代謝が増加。古武術八骸の訓練は背骨や腰の歪みを矯正して姿勢を正した。過酷な組手を適切に行うと、自然と身体は「一番疲れない方法」を探し出し、そこに逃げる。己の身体が生存の為に自ら見つけた身体運用に「コツ」がある。骨法というのはこの様な最効率を目指して取得できるノウハウなのだ。(但し習得には軽い地獄を見る必要がある)

 

 たった一つの女を捨てて、生まれ変わった不死身の身体。砂のバッグを叩いて揺らす。トーリがやらねば誰がやる!

(シャキーン!)




地獄を見たが、実はまだこれが基礎訓練という事実……

八骸はむかーしアニマルハウスでたがみよしひさ先生が連載してた「ファイター」に出てくるニンジャ・カラテです(割と本当)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。