渦動破壊者 〜アーマードジム〜【とりあえず完】 作:PureFighter00
【まだ東武練馬駅近郊、居酒屋】
「……話聞いてるとさー、システム全部あっち持っていってリバースエンジニアリングしたら良くなーい?」
「それも考えたが……まずシステムデカすぎて運べん!」
「バラしたら?」
「チマチマやってるが埒があかん。それに……」
「それに?」
「これでも技術者の端くれだ。開発者には相応の賞賛があるべきだ。それを掻っ攫っちまったらアレよ、技術者なんか名乗れねぇよ!」
「そういうトコ好きだわー」鍛高譚を注ぐ。
「おじさんのそういうトコ良いんだわー」氷をタプタプと。
「はいみんなで紀伊さんに乾杯!」
「「「乾杯ー!」」」
「それが世話焼きおじさんになった理由か」
「おっちゃんにとってこっちの銭金あんま関係ないよなーとか思ってたんよー」
「でも、それだけでもないんでしょ?」
「嗚呼、ワシ実際紀伊がGBNを最終的にどうしたいのか聞いてみたいんよ。あれ途中からトーリが音頭取ってるだろ?」
「どんなんなるんでしょーねぇ?」
「それに……可能であるならワシも一個ぐらい提案したい事があってなー」
「え? なになに? 何企んでるの?」
「また謀るの? 謀っちゃうの?」
【会計を済ませた】
「渦さん、あんた面白い! 面白いよ!」
「出来るかね? 出来たら楽しいけど!」
「それもこれも紀伊探し出して問い詰めなきゃ分からん。まぁトーリ女史の活躍を祈ろう!」
実際、渦さんは悩んでいる。
ガンプラバトルの前の世代からこの手のシステムに関わるものとして、彼自身の中ではバトルで機体が破損するのは当たり前の事だった。故に壊れない様に機体を組み立て、それでも壊れたら修復を試みる。ここに長年培って来たモデラーとしてのテクニックが活きる。彼としてはそれでガンプラバトルは上手く回っていたし、GPDやGBNの「想いにより能力が増加しない」戦場は彼を1人のファイターに引き戻してくれた。
しかし、彼がトーリの為に用意した機体はモデラーとしての技能が極めて低い彼女でもガンプラバトルで戦い抜けることができる様に、組んで動かせば誰でも戦果を得られる機体だ。
この様な機体が蔓延したらどうなるだろう?
機体が壊れ破損して真っ暗な闇の中に堕ちていくあの感覚は味合わずに済むだろう。ゲームとしての体裁を守る為に外装は破損するが、外装が破損しやすい代わりに内部フレームは極めて強固。パシケファロは例え外装を全損しても相変わらずそこに立ち続ける……設定機体性能も相まって「極めて有利な状況」であり続けるに違いない。
ただ、それは楽しさを生むだろうか?
最強無敵……渦さん、いや永野玄一はファミコン版のゼビウスでそれを経験している。事実として弾を受けても微動ともしないソルバルウ……デバッグモードであるなどと言われていたが、当時の玄一少年はそれに狂喜してゼビウスを何回も周回して敵を倒し……やがて飽きた。ゲームのゲーム性を破壊してしまったのだから、それは最早ゲームではない。
最強無敵は現実世界ではあり得ない。あり得ないからこそ人はそれに焦がれるが、成し得てしまえばそれは世界を酷く単調でつまらないものにする。……紀伊はこの問題にどの様な解決策を用意しているのだろう? このゲームの楽しみや喜びはモデルの破壊無しでも成立するのだろうか。大きな悔しさが大きな喜びを生み、その落差に人は興奮するのではなかったか? 悔しさを減らす事は楽しみを減らすことになりはしないか。
今、夜空を見上げるも星々は遠い。かつて駅から少し離れれば野菜畑が広がる練馬の地。あの頃は星々が近かった。夜の闇が濃かったからこそ……
練馬、昔はちょー田舎だったやで……(1970年代末まで練馬の民でした。ほんとちょっと駅離れたら畑だらけやった……)