今後ともよろしくお願いします。
響らがフィリストの変身を目撃したのと同じ頃、マリアたちも謎の武装集団らと交戦していたが、やはり彼女らも動きに精細を欠いていた。
「おかしいとは思ってたんだよ…国連のエージェントだという割には、鎮圧するには行動が遅過ぎるし、姿を晒さない方が動きやすいのにわざわざ姿を晒すなんて…もう少し止めるのが早ければ、父さんのヘリが潰されることは無かったって思ってた……まさか全部嘘で、ハナからテロリストだったとはなぁッ!」
「ぐぅ‼︎」
バッファローの姿をした武装者の一撃を喰らい、マリアは後方に吹き飛ばされた。
口ぶりからして、あの時撃墜された報道ヘリの搭乗者の息子らしき青年は怒り心頭といった様子でこちらを睨みつけていた。
救援に向かおうとする調と切歌だったが、パンダの姿をした武装者の狙撃やライオンの姿をした武装者の弾幕により足を止められ、すぐに向かえずにいた。
「今まで…今までどんな顔をして歌ってたんだよお前は⁉︎父さんだけじゃない、大勢の命を奪うマネをしておいて、何故笑っていられた⁉︎何故罪を認めて大人しく刑を受けなかった⁉︎本当に悪いと思っているのならば、提案など受け入れないはずだろう⁉︎何故提案を飲み、出所することを選んだ⁉︎」
「それは…っ!あの子たちの、将来のために…」
「お前らに殺された奴らにも、将来はあったぞ?まさかあの二人の将来は殺された奴らの将来よりも遥かに価値があるとでも?」
「ッ‼︎そんなつもりで言ったわけではない‼︎」
「じゃあどんなつもりで言ったんだ?」
彼の悪意ある言い方に一度は激したが、さらなる返しにマリアは押し黙ってしまう。
先ほどの放送を聞いた時から、自分らに恨みを持つ者らがいることはわかってはいた。そもそもフロンティア事変以降に偽りの経歴により復帰してしばらくの間は、今の彼と同様の内容を綴った手紙が少なからず送られてきたし、SNS上でもその件について対応の遅さを咎める意見も散見していた。
騙していることに罪悪感を感じてはいたが、面と向かって糾弾された今、自分のした事の重大さを改めて思い知っていた。
『自分のせいで不幸になり暴れ狂う彼らを、彼らを不幸にさせた張本人である自分が止める資格があるのか』
その考えが頭をよぎり、攻撃を躊躇った瞬間を逃さず彼はバックルのボタンをもう一度押し込んだ。
クラッシングボライド‼︎
両腕の打突武器を光らせ、背部のブースターを起動させると目にも止まらぬ勢いで突撃し、避けきれなかったマリアは勢いよく吹き飛ばされ、地面を転がると限界が来たのかシンフォギアが解除された。
「「マリアッ⁉︎」」
スカウティングボライド‼︎
インベイディングボライド‼︎
思わずマリアの方を向いた二人に、武装集団たちの必殺技が命中し、マリアと同様にシンフォギアが解かれ、二人も倒れ伏した。
「もう時間切れか。…チッ、
そう呟くと彼は踵を返して破壊活動を再開しようとしていた。
「…何故私たちを殺さない?」
「お前らは今すぐ殺したいが、理央さんの命令なんでな。また戦えるようになったら来い。それまでここで何も出来ないまま見てるといい。とはいえ、俺はあいつらの仇を横取りしたくはないから、警察の特殊部隊や自衛隊が出動し始めてるからその相手をするしかないがな」
「…ッ!待て‼︎」
マリアの静止も気に留めず、彼はその場をあとにしようとしたその時であった。
アメイジングカバンシュート‼︎
どこからか黄緑色のエネルギー弾が飛来し、被弾した彼は爆発と共に吹き飛ばされると武装が解除された。
「ぐあぁぁ‼︎…誰だ⁉︎」
エネルギー弾が飛来した方に顔を向けると、紫色のボディにアーマーを着けた、どこか蠍を思わせる風貌をした存在が弓らしき武器を構えていた。
「早く逃げろ‼︎」
「え、えぇ…」
その存在に促され、マリアたちは近くの物陰に避難し様子を伺うと、彼は容赦なく武装集団に攻撃を加えていた。
「待って、その人たちは人間よ!」
「わかっている‼︎コイツらとの戦い方は
「それって、どういう…?」
彼の言葉に疑問を感じたマリアであったが、またしても爆発が響き、辺りを見渡すと彼と似たような姿をした者たちが三人、武装集団らと交戦していた。
一人は真紅の姿で短刀を携えて空を飛び回り、
一人は暗い赤色の姿で大型の刀を二つ持ち、斬撃や電撃を飛ばし、
最後の一人は白黒の姿で長い爪のような武器を振るっていた。
彼らは手慣れた様子で次から次へと武装集団らを倒していった。
「不味い…!一旦退くぞ‼︎」
バッファローの彼が再び武装を展開してそう告げると彼らは負傷者を連れていき、ライオンの姿をした武装者たちが持っていた爆弾を投げ、炸裂させると爆煙に紛れて何処かへと去っていった。
撤退を確認した先の4人は纏っている武装を解き、それぞれ金髪の青年、童顔の青年、中性的な女性、茶髪の青年へとなってマリアらに近づいた。
「大丈夫か?」
「えぇ。…それで、あなた達は?それに、さっきの姿は…?彼らについて何か知ってるみたいだけど…」
「正確には彼らが使ってたものについてだがな。こちらもお前たちに聞きたいことがあるが…状況が状況だ。お前たちの仲間のところに案内させてくれ。話はそれからだ」
「わかったわ…あなた達の名前は?」
「俺は滅。こいつらは右から迅、亡、雷だ」
「ハァッ‼︎」
「グゥゥ‼︎」
変身後のフィリストの猛攻に響たちは防戦一方となっていた。
高速移動からの殴打や蹴りに加え、手足から伸びた爪や、ベルトから生成された剣やショットガン状の武器による攻撃に翻弄され、また避難の完了してない都市部であるため強力な技が使えないこともあり苦戦を強いられていた。
そして何より厄介なのが、先ほどから頭の中に流れ込んでくる『声』であった。
『死ね、人殺し‼︎』『何故お前が生き延びた⁉︎』『お前が代わりに死ねば良かった‼︎』『人を殺して得た金で暮らす生活は楽しいか?』『何故裁かれない?人を殺した癖に!』『人殺しの一色理央さーん‼︎出てきてくださいよー?』『お前の恋人も、どうせ誰かを踏み台にしようとしたんだろ?ザマァないな』『これでも喰らえ‼︎』『天誅だ‼︎』『法が裁かないなら、俺らが裁いてやるよ‼︎』
(何だこれは…!彼の記憶なんだろうが、何故自分のことのように感じられる…⁉︎)
翼だけでなく、クリスや響にも起こっているこの現象に三人は惑わされ、まともな戦闘が出来ずにいた。
「ハァッ、ハァッ…‼︎うぅぅ…」
「オイ、大丈夫かよ⁉︎」
特に響に至っては、自身の過去がフラッシュバックし、彼の記憶と混ざり合い混乱し戦意を喪失しかけていたのであった。この現象は、理央のフィリストとしての能力であった。
記憶とは脳の電気信号であり、フィリストのシステムが彼が送信したい記憶の信号を抽出、それを特殊な波長の電波に変換して頭部のアンテナから対象に送りこむことで相手の脳裏に自分の記憶を鮮明に映し出すという一種のテレパシーを起こっていたのであった。これはかつての世界でアークがA.I.M.S隊員に行なっていた思考破壊の発展系でもあった。
だがそのシステム上、理央自身もその忌まわしい記憶が鮮明に蘇るうえ、転送するしないに関わらず、『変身してる間は一定時間ごとに強制的に負の記憶を思い出される』という致命的な欠点があったが、理央はそれを好しとした。
アークの意思を宿したライダーは、悪意を糧にその力を増大させる。その為、記憶を強制的に思い出された彼はその度に、自身を迫害した者たちや真実を隠した装者や当時の二課たちへの憎悪という悪意を滾らせ、力に変えると同時に、己の持つ復讐の信念が揺らぐことを防ぐシステムとして受け入れていた。
かつて、アークの名の由来であるリオン=アークランドは悪意はやがて克服されると言ったが、それは時間の経過によりその気持ちが少しづつ薄まり、やがて周りの説得などで良心がそれを上回り、改心に繋がるからである。
─ならば、
悪意の根源であったその記憶を絶えず鮮明に蘇らせるフィリストのシステムはその性質上常に復讐心、引いては悪意を最高潮へと引き出させその力を増していき、そしてフィリストに変身する事は即ちその相手は彼が憎むべき迫害者や装者であり、復讐心を滾らせた状態でその対象が目の前にいる状況である為、決して克服される事のない悪意として彼は彼女らの前に君臨するのであった。
「…終わりだ」
フィリストインパクト‼︎
フィリストは体勢を低くすると翼に詰め寄り空中に蹴り上げるとそのまま響とクリスも同様に蹴り上げ、連続で両腕の爪で斬りつける。
そして響とクリスの頭を掴み、翼に膝蹴りを入れてその勢いで地面に叩きつけると大爆発を起こした。
ィ
リ
ス
ト イ ン パ ク ト
『ぐあぁぁぁッ⁉︎』
ダメージ超過を受けた三人のギアは解除され、そのまま三人はボロボロの状態で倒れ伏していた。
「……やはり記憶を読み取った方がデータ収集が早いか」
フィリストの持つ能力は自身の記憶の送信だけではなく、頭部を掴んだ相手から生体電気を通して記憶を読み取ることも可能であった。理央はそれを使い、響とクリスからこれまでの戦いの記憶を読み取り、
フィリストはベルトから何も描かれてない銀色のケース(ブランクキー)を生成し両腕のスロットに装填した。すると右のケースが黄色く、左のケースが紅く光り変化するとそれらを引き抜いた。
変化したケースにはそれぞれ、【GUNGNIR】【ICHAIVAL】と書かれていた。
「【ガングニールゼツメライズキー】と【イチイバルゼツメライズキー】…先ずは二つ入手したか。…試してみるか」
そう呟くとベルトから弓状の武器を生成させ、イチイバルゼツメライズキーと言ったそれを装填、ビルに向けて構えた。
「っ⁉︎待て、やめろ‼︎」
クリスがそう叫ぶも理央は無視して引き金を引いた。
イチイバルカバンシュート‼︎
放たれた光弾はすぐに無数のミサイル状のエネルギーに変わりビルへと殺到すると、跡形もなくビルを吹き飛ばした。
呆然とする三人を他所に、理央は変身を解除した。
「…検証完了。やはりギアの特性も反映されるか。アメノハバキリのデータも頂きたかったが、どうもイレギュラーが起きてるみたいだし、またにするとしようか」
「何故…こんな真似を…!」
「何故って、さっき放送した通りなんだが…まぁいい。せっかくの機会だ、俺がお前らのせいで今までどんな生活を送ってきたか教えてやるよ。……俺はあのライブの日、高校時代から付き合ってた彼女と一緒にライブに行ってたんだよ…ライブが終わったら、プロポーズする予定でな」
彼が言うには、彼の恋人はツヴァイウイングの大ファンであり、理央がやっとの事で手に入れたライブのチケットを見て大喜びしていたそうであった。
そして運命の日、二人はライブに参加し、大いに楽しんでいた。特に理央は、このあと行うプロポーズに心を躍らせていたのであった。
─しかし、その機会は永遠に訪れることはなかった。
爆発事故に続き、ノイズの大量発生により会場はパニックになり、観客は我先へと出口に殺到していった。理央も彼女を庇いながら避難しようとしていたのだが、背後から来た観客に突き飛ばされた結果、理央と恋人は座席の角に頭を打ち付けてしまった。意識が遠のくなか、理央は恋人のいた所からゴキッ、と嫌な音が聞こえたためなんとかその方角を見ると首があらぬ方向に曲がり、目を見開いたまま倒れた恋人の姿がそこにあり、それを最後に彼は気を失った。
気が付けば彼は病室におり、何故気絶していた自分が助かったのかがわからなかったが、恋人の安否が気になり医者に聞いたところ、彼女はあの時絶命していたと聞き、彼は酷く絶望したが、彼の不幸はこれだけに留まらなかった。
退院した彼を待っていたのは生存者へのバッシングであったが、民衆が生存者を叩くのは、生存者が他の観客を踏み台にしたからであり、彼と彼の恋人はその『踏み台にされた人間』の筈にも関わらず、彼は彼の恋人を殺した連中と同類に扱われ、バッシングの餌食となってしまった。職場には居られなくなり、また古くからの友人からも裏切られ、誹謗中傷の毎日を過ごしていた。
中でも許せなかったのは、恋人が『他の観客を押し退けようとして返り討ちに遭った自業自得の女』として扱われたことであった。
「死んだ彼女のためにも、必死に耐えて辛い日々を過ごしていたら、歪んだ正義の暴走を受けることになった……それが、『コレ』だ」
理央は顔につけていた仮面と
─仮面の下にあったのはほぼ全面が酷く焼け爛れた顔であった。
ところどころ縫い目と無事な箇所があることから、皮膚移植を行ったのだろうが、それがより不気味さと凄惨さを際立たせていた。ウィッグの下には頭髪はなく、焼け爛れた頭皮がそこにあるだけであった。
「こ…れは…⁉︎」
「自称正義の使者共にライターオイルを浴びせられた上に火をつけられた。炎に苦しむ俺を他所に奴らは容赦なく俺に正義の名を借りた暴力を振るったさ。アバラや足も折られたし、
幸い、事の異常さに気づいた近隣住民の通報により彼は病院に搬送され一命を取り止め、彼に傷害を加えた者たちもすぐに逮捕され、のちに実刑判決を受けたがそれでも世間の多くは彼に同情しなかった。
『何故人殺しの彼が罪を受けず、彼に天罰を下した彼らが裁かれるのか』
『そうされて当然のことをしたのに、何故被害者ヅラをするのか』
『彼らからさらに金を搾り取るのか』
そうした歪んだ正義の暴走がさらに彼へのバッシングを強め、さらにはその矛先は、
「なんで、お医者さんにまで…⁉︎」
「人殺しの俺を治したから。それだけの理由だよ。先生は悪魔の医者として耐えず勤務先の病院に嫌がらせの電話が相次いだよ……これでわかったか?生存者狩りで被害を受けるのは
医者として目の前の命を救っただけなのに、それを咎められる。嫌がらせの多さからその医者は勤めてる病院を抜けざるを得なくなり、かといって受け入れる病院があるかといえば苦情が来るのをわかってて受け入れるわけもなく、彼は医者として働くことが不可能に近くなってしまった。
やがて家を特定され、生存者たちと変わらない中傷を受けた結果、心を病んだその医者は自らその命を絶ったと、彼の家族から告げられたのであった。
「先生の家族は、俺を恨んじゃいなかった。助けなかったら、それはそれとして問題になるとわかってたからだ。訴えようにも、また同じ目に遭うことは目に見えたから、泣き寝入りするしかないのを見て俺は辛かった…‼︎」
ここで理央が死ねば、亡くなった医者に申し訳が立たない。故に彼はこの顔で出来る仕事を探し出し、食い繋いで今まで生活してるなか真実を知った彼は決起する事を決め、今に至っているのであった。
「これでも、お前たちは復讐をやめろと言うのか?俺らが行動しなければ、俺らの事を知ろうともしなかった癖に?」
「……」
「隠し過ぎたんだよ、お前たちは。勝手に俺らを利用して、失敗して被害を受けても何も話さない。機密だからか?それはお前たちの都合だろう?俺らはお前らの秘密の為の生贄じゃないんだぞ…!」
沸々と湧き上がる理央の怒りを前に、三人は何も言えずにいた。自分たちが手厚く保護されている側らで、普通の生活を送れていないのは彼だけではないだろう。その現実と、彼の凄惨な過去が彼女たちにのしかかっていたのであった。
「ライブだけではない、お前たちの罪は他にもある。それをいずれ知ることとなるだろう…‼︎また会おう装者たちよ、それまで遅過ぎる後悔をするがいい」
理央は再びフィリストに変身し、どこかへ去っていった。
彼女たちの胸の中には、どうしようもない敗北感と、罪悪感が渦巻いていたのであった。
✖️改心しない
○システム側が改心できないように常に地雷を踏んでくる
フィリストの能力もといデメリットは精神にダメージがくるタイプのヘルライジングみたいなもんだと思ってくれれば良いです。
また、彼が強制的に思い出される負の記憶には恋人が死ぬ瞬間の記憶や顔に火を付けられた時の記憶も当然あります。
また、あの時気絶してた彼が助かったのはご存じの通り奏の絶唱によるものですが、彼はそれをアズから聞くまで知りませんでした。
故に彼にとって奏は命の恩人であると同時に自らを不幸に陥れた一人という複雑な立ち位置の人間となっています。もし彼女が生きていて、彼と交戦してたら互いにやりづらい戦いとなっていたでしょう。
【ガングニール/イチイバルゼツメライズキー】
理央がアークライダーの物質生成能力の応用で装者らとの実戦経験や本人の記憶からデータを取って生成した、彼の計画に必要なゼツメライズキー。
これを使用した技にはそれぞれの特性が反映されると推測される。
ゼツメライズキーなのは、彼女たちの所持してる聖遺物はカケラである、つまりかつての完全聖遺物であった頃の姿を失っている為。モノがモノのため、ロストモデルは無いと思われる。
次回は滅亡迅雷の面々との絡みを中心に進めていこうと思います。