「ぐ、ああぁぁ…ッ!やはり、一度に二人分読み取るのは危険過ぎたか…!」
拠点へ戻った理央は頭を抑えて呻いていた。
フィリストの能力の一つである記憶の読み取りはリスクがあり、自身の記憶を相手に追体験させるように、相手から記憶を読み取る際にも彼は相手の記憶を自身のように感じ取ってしまうのであった。
ましてや、それを行ってる時にもフィリスト自身のデメリットである負の記憶の強制再生も発生してるため、『他人の過去の記憶』『自身の負の記憶』『今現在の記憶』の三つが入り混じり、脳に多大な負荷が生じる行為であった。
今回に至っては響とクリス、二人の記憶を同時に読み取ったため、二人の記憶と自分の過去及び現在の記憶の四つが脳になだれ込んでいたため、今は激しい頭痛に苛まれているが、下手すれば脳が耐えきれずに廃人になっても可笑しくはない状況であった。
(あの時は特性の反映がわかりやすいイチイバルのデータが欲しかった故にやったが、今後は二人同時読み取りはやめておくべきだ…!目標達成前に廃人になっては元も子もない…)
「大丈夫ですか、アーク様?」
「あぁ、平気だ」
ある程度頭痛が治った辺りでアズが様子を伺いにやってきた。今の彼女の格好はどこから仕入れたのか、黒と赤を基調としたアイドルのような格好であり理央の癪に触るが、構わず彼は応対した。
「それで、同胞たちの報告にあったイレギュラーは、君の言っていた【滅亡迅雷.net】で間違いないのか?」
「えぇ。間違いないわ。何故ここにいるかはわからないけど、彼らはあなたの配下たちのレイダーの戦い方を知ってるし、リーダー格の滅に至っては、かつてアーク様の力を使ったことがあるわ…ま、悪意を克服されちゃったけど」
「そうか…それは厄介だな…」
こちらの持つ力の内容を知っている者が敵に加勢し、しかもその者たちは自分たち以上にこちらの力を熟知しているとなれば彼らを侮る理由はないし、理央は脅威と感じ取った。
それに、こちらの力の内容がわかればその対処も可能であり、次回に装者たちと戦う時は今回のようにはいかないだろう。
…尤も、彼女たちが自分らと戦う気があればの話であるが。
本来ならば出自も正体も不明な上にイカロスの太陽と似た力を持つ彼らを本部に連れてくるのは危険であるが、緊急性が高いこととマリアらを援護したことを理由とし、身体検査を受けた後で彼ら滅亡迅雷.netはS.O.N.G本部である潜水艦内に入ることができたのだが、その身体検査の結果に一同は驚いていた。
「人間じゃない?」
「はい。彼らには生体反応が一切見られませんし、構成物質も金属系が殆どということから、彼らは人型のロボットのようなものです。ですが
エルフナインの報告を聞き、弦十郎たちは今回の相手、正確にはその力の根源が別世界のものであることと、彼らに力を与えた存在が優れた情報収集能力を有していることを確信した。
そもそも彼らの決起理由であるライブ事故の真相やマリア達の真の経歴については機密情報であり厳重に秘匿されている筈であり、それらの情報がハッキングされた形跡も残さず抜き取られ、彼らに伝えられてる事から想像はついていたが、別世界の者が関与していたとなるとその対処は難しいものとなる。
その存在は何者で、どんな力を持っているのか、倒す手段はあるのか。いずれにせよ、彼ら滅亡迅雷.netに話を聞く以外に手段はなかった。
「それで、響君らの容態は?」
「多少の負傷はありますが、生活に支障はありません。しかしどちらかといえば、精神的なダメージが大きいかと…」
離れた場所で集まっている彼女らを横に見ながら友里がそう告げた。
かつての犠牲者たちからの直接の糾弾に加え、彼らが受けた被害を伝えられた彼女たちは罪悪感に押し潰され、医務室から戻ってきた彼女らからは暗い雰囲気が漂っていたのであった。
彼女らの元に近寄ると、それに気がついた響が弦十郎に問いかけた。
「師匠…理央さんの言っていた事は、本当ですか…?」
「あぁ。それは調査で判明した。一色理央、現在28歳。イカロスの太陽の他の構成員と同じく、半年前から消息を絶っていることが確認された」
「28歳…ライブの時は23歳で、高校時代から付き合ってた恋人さんは…5年以上付き合ってたんですね…」
添付された資料を見つつ、重苦しい口調で響がそう呟いた。
資料に載っていた顔写真は恐らく顔を焼かれる前のものであり、憎しみに満ちた眼差しはそこには無く、穏やかな好青年の顔が写されていた。その表情の差が、自分たちの不始末の結果がここまで彼を歪ませたことを再認識させ、彼女たちの表情はさらに暗くなった。
「それで、彼らの力の正体を知っていると言う者たちは?」
「今こっちに連れてきている。もうすぐ来るはずだ」
その直後、藤尭に連れられ滅たちが入室してきた。
「待たせた。では奴らの持つ力…【レイダー】と【アークの力を得た仮面ライダー】について話そう。それに加えて俺たちの世界のことや関連する事を話すが、そのあとでお前たちについて聞かせてくれ。でなければ解決の糸口が掴めない」
「あぁ。その件については俺が責任を持って話そう」
互いの情報共有もあり、説明にはかなりの時間を要したが、彼らの話に一同は何度か驚愕していた。
彼ら【ヒューマギア】についての話や、自らの会社の利益のため、ある人間に悪意をラーニングされその結果人類滅亡を計画した人工知能搭載の通信衛星【アーク】、それに伴う彼ら滅亡迅雷.netによる破壊活動やそれに対抗する【仮面ライダー】たちとの戦いとその顛末、そしてその後の騒動などが彼らから語られ、彼女たちは彼らの選んだ結末に驚きを隠せなかった。
「その…つまり、あなたたちは罠にかけられたのは事実だけど、アークの元で破壊活動をしてたのは事実だし、それを理由に後世のヒューマギアが人間に排除されないようにワザと悪となって滅びの道を選んだって…こと?」
「あぁ。そうでなければ俺たちと戦うためだけのヒューマギアが造られ、永遠にそれらと戦う未来しかなかったからな。だから何故死んだ筈の俺らがここにいるかはわからないが…それより、俺たちのいた世界の技術がこちらにある事の方が問題だ」
イカロスの太陽らが主戦力として使用しているレイダーは、元の世界ではZAIAが暴走したヒューマギア、もといマギアに対抗するために民間用に開発された兵器であり、同じくZAIAが開発したZAIAスペックと併用することでより効率的に運用できる代物である。民間用兵器であるため、元々は一般人だった彼らが容易く扱えたのは訳ない話であり、滅ら曰く元のレイダーに手を加えられているらしく、ダメージを受けての強制解除後の撤退や再度実装を容易にするためか、強制解除の基準が高くなっており通常のレイダーより少ないダメージで武装解除されるようになっているとの事であった。
「故にレイダーに関しては殺す気でやらない限りはある程度の攻撃を加えてもいいだろう。だが問題はリーダーである理央とかいう男が変身したライダーの方だ。記録を見るに、名はフィリストと言ったところか」
アークの力を得たライダーは滅らのいた世界でも滅自身も含めて何名かいたが、そのどれもが人類滅亡を達成しうる絶大な力を秘めており、実際にフィリストと交戦した響らはそれを実感していた。
「あの、そのアークの力を何とかすることは出来ないんですか?」
「アークの力を得たライダーは、自分の意志で動いている。操られているわけではないから無理だ。本人がその悪意を克服しない限りはどうにもならない」
「そう、ですか…」
「先ほどから話を聞く限りでは、アークは単なる人工知能ではなくなり、悪意そのものと変貌したのだろう?そして、この世界の人間である一色理央がその力を得たということは、つまり……」
「その通りだ風鳴翼。アークの概念はこの世界の悪意と同化した。下手をすればイカロスの太陽の構成員全てがアークになる可能性があるぞ。…もう既に何名かアークの力を得てるかもしれないがな」
理央を倒したところで、他の構成員がその事に対する悪意で新たにアークに目覚める可能性がある。さらに言えばアークの力は悪意に由来する事からこの場にいる全員はおろか、人類の誰しもがアークの力に目覚め、その力を振るう可能性もある。また、悪意とは人の心の一つである。つまりアークを何とかするには心を持つ存在、つまりは
「…諸君、今回はご苦労であった。我々の存在は無事に装者らに知らせる事ができた。我々を害した者たちに鉄槌を下した者もいる事だろう」
理央は通信にて構成員全てに今回の襲撃について語っていた。
彼らの今回の目的は世間、特に装者らに自分らの事を知らしめる事が主な目的であった。装者たちとの戦闘は今回あまり重要視しておらず、ゼツメライズキーを二つも製作できたのは嬉しい誤算であった。
「だが忘れないでくれ。今回の我々の活動により、最終的に人類を滅ぼすとはいえ我々とは無縁の者を巻き込み、死傷させたのも事実であり、我らを鎮圧しようとした警察や自衛隊を手にかけた者もいるだろう。
急な彼の発言に構成員たちはざわつくも、全員そのまま理央の言葉に耳を傾けていた。
「だが、俺は我々の行為を否定するつもりでこの言葉を言ったのではない。相手に刃を突き立てるには同じところにいなくてはならず、穴の中にいる狢を殺すには、同じ穴に入らなければならないのも事実である。復讐とはそういうものであると俺は考える。復讐をすればその相手の関係者から恨まれ、また復讐の連鎖になる。故に復讐はやめろと人は言うが、それは正しいものではないだろう」
「復讐の連鎖を断つには、他人に害されても誰かが報復を禁じなければならない。だが、そうする事でその人物を害した者が必ず然るべき報いを受けるのかと言えばそうでない事は諸君らはわかっているだろう。それに、報復は止めるべきと言う理屈でいけば、初めに害を加えた者のやったもん勝ちとなり、害された者は害された苦しみを得るだけとなるだろう」
そこから理央は一息つき、少しの沈黙のあと再び語り始めた。
「……話が逸れたな。まぁどちらにせよ行動した以上、我々には滅びの道しかない。我々の目標が人類滅亡であるため、その人類である我々も当然死するべきだし、失敗したら我々はテロリストとして処刑される。もしS.O.N.Gが我々に情けをかけて生かそうものなら自死を選ぼう。死ぬつもりの我らが奴らに生かされるなど、以ての外だ。無論俺は目標を達成させるつもりで戦いに臨む。諸君らもそうだろう?」
「国外の同胞たちよ、今回は日本国内の我々しか行動しなかったが、今後は君らにも活動してもらう。
米国政府主導のF.I.Sに子を奪われた者、もしくは親から引き離された者。
その米国政府の尻拭いをさせられ、上官や部下、戦友を失った者。
それらの戦いに家族を巻き込まれた者。
世界を守る彼女たちに、その世界の一部である自然を破壊され、友を失い夢を未来永劫奪われた者。
かつて世界を分解しようとした少女が造りし兵器及びそれを利用した錬金術師らに家族を奪われた者。
たった一人のために10万近い犠牲を好しとした外道に家族を奪われた者。
その外道に手を貸した者たちに家族を奪われた者。
共に報復しようではないか。例え自らの怨嗟の炎に身を焼き尽くされようとも、彼らや世界に我らの無念や怒りを知らしめようではないか」
直後、通信越しに彼らの歓声が聞こえたのを確認し、通信を終えると理央はアズに顔を向けた。
「アズ。計画は第二段階に入る。【彼ら】を」
「了解です、アーク様」
そういいアズはゼロワンドライバーを装着すると、【赤と白のプログライズキー】を取り出した。
アークゼロワン‼︎
オーソライズ‼︎
「ふふっ…。変身」
Final Conclusion
アーク・ライジングホッパー‼︎
A jump to the sky to gain hatred.
アズは真紅の鎧に左右非対称の頭部が特徴的なアークライダー、【アークゼロワン】へと変身した。その力は物質構成能力に秀でており、レイドライザーや各プログライズキーは彼女の手により作成設備をいくつか構築したことにより大量に配備できたのであった。
だが、彼女がかつての世界で構築したのはそんな生易しいものではなく、理央の命令により
「では再び蘇りたまえ、最高の暗殺者『たち』よ」
先ほどと違う男の声、アズ曰く『アークの声』で彼女がそういうとベルトから四つの光が放たれ、全く同じ顔をした四人の青年が現れた。
彼らに固有名はないが、当時の迅が名付けた名前を使うならば『暗殺ちゃん』となるだろう。
彼らは元々は『祭田ゼット』という名の和風舞踏専門ヒューマギアであったが、盗難に遭い見た目を変えられたのちにかつての滅亡迅雷.netに再び盗難され、途中脱走した五号機を除いた四人が暗殺特化ヒューマギアとして運用された者たちであった。
「俺たちの出番か…用件は?」
「彼ら全員のラーニングレベルは最後の時の状態にしてあるし、この世界についてもあらかじめラーニングさせてある。あとは指示があれば動ける」
「わかった…君らには、アルカ・ノイズ。そしてそれらを扱う錬金術師やテロリストの暗殺、いや…【絶滅】を依頼したい。君ら自身の能力と、君らが今与えられた力ならば、どこに潜伏してるかの予測は可能な筈だ」
彼らの腹部には、かつて蘇ったときと同じように【アークドライバーゼロ】が装着されていた。無論本物とは性能が劣るが、それでもこの世界では充分脅威であった。
彼らを運用したのは、パヴァリア残党を始めとした錬金術師らがどこにどれくらいいるか不明な点と、事前にレイダーには対アルカ・ノイズ戦が可能だと分かっているものの、大型のものを召喚されたり数で圧倒されれば構成員らが返り討ちに遭う可能性があるため、彼らに対する援軍として用意したのであった。
「了解。これよりアルカ・ノイズ及びそれらの使用者たちの絶滅を開始する」
そう言い暗殺ちゃんらは散り散りになっていった。アズは変身を解くと理央に話しかけた。
「錬金術師はわかるけど、何故アルカ・ノイズまで?」
「装者らが丁重に扱われてるのは、シンフォギアを扱える数少ない人材だからだ。そしてシンフォギアの使用目的は主に二つ。一つはノイズ、正確にはアルカ・ノイズの殲滅。もう一つが、完全聖遺物ギャラルホルンが繋げた平行世界への移動手段だ。ならば両者が無くなればシンフォギアの必要性は大幅に下がり、装者らを保護する理由はほぼ無くなる。最悪これらだけでも成し遂げる必要がある」
アルカ・ノイズの根絶とギャラルホルンの完全破壊。これらが理央の計画の最低ラインであった。特に後者は平行世界から援軍が来る可能性もあり、例えこの世界の装者らが援軍を望まなくても、ギャラルホルンの暴走などでやってくる可能性もあるため早急に実行する必要があった。
「いずれにせよ、優先して入手すべきなのは…神獣鏡のゼツメライズキーか」
【悲報】祭田ゼット、別世界でとんでもない風評被害を受ける。
というより暗殺ちゃん、名前のせいでシリアスブレイクになるのよ…
補足として、理央がわざわざ自分らを卑下したのは、自己の経験から下手に正義だといって構成員が正義の名のもとに予期せぬ暴走をするのを防ぐ目的があります。
アルカ・ノイズや錬金術師の殲滅を優先してるのは本文の目的以外に構成員自身が敵討ちをする目的の他に騒ぎを聞いた彼らが漁夫の利を敢行して横槍を入れられないようにするためでもあります。
ちなみに、彼が語っていた被害者たち、どれが何のことかわかりますかね?