男は自身に迫り来る脅威から逃げ惑っていた。彼はパヴァリア残党の錬金術師であり、半年前から他の仲間との連絡が途絶え始めてきたのは知っていたが、先日のイカロスの太陽なる集団による米国の悪事の公表からその頻度は飛躍的に上がってきていた。
そして今日、彼のいるアジトのもとにもイカロスの太陽らが襲撃し、彼を除いた錬金術師は全員彼らに瞬く間に殺され、手持ちのアルカ・ノイズも構成員数名を分解したもののすぐに全滅した今、隙をついて逃亡していたのであった。
(何故だ…⁉︎何故こうも我々の居場所が特定される⁉︎人海戦術にしても的確過ぎる…!中には危険を予期して場所を変えたにも関わらず予測されていた奴もいる…おそらくあの『黒いやつ』が…!)
「その逃走ルートは予測済みだ」
「⁉︎」
男の目の前には左右非対称の全身が特徴的な黒いライダー、仮面ライダーアークゼロが佇んでいた。彼は恐れ慄く錬金術師に向けて指先を向け、レーザーを彼の頭部と心臓に撃ち込み、絶命させた。
「…こちら暗殺2号。対象地域の錬金術師及びアルカ・ノイズの絶滅を完了」
《こちら理央。よくやった、これで【南米の錬金術師は全滅した】。次は3号と共にユーラシアの錬金術師を頼む》
「了解」
あの日の公表以降、彼ら自身の演算能力や、理央が半年前の予行演習で捕らえた錬金術師から読み出した記憶などから錬金術師らの位置を割り出し、暗殺ちゃんを筆頭に各地域にいる構成員による残党狩りが本格的に行われていった。
殺害が目的のため捕縛の時間を取らない分進捗は順調であり、時折返り討ちに遭うものの、元より数をS.O.N.Gの活動で減らされていた彼らはその数をさらに激減させていった。
対するS.O.N.Gはというと、アルカ・ノイズの反応を確認してるものの、全世界で起きてることとすぐに消えてしまう=錬金術師の全滅となってしまう事で対応が遅れることに加えて、日本各地でゲリラ的に発生する迫害者への報復の対処で手一杯となり、残党狩りを食い止める事ができずにいた。滅亡迅雷の彼らも協力してるものの、六人から十人に増えたところで効果は微々たるものであり、装者たちもまだ戦えてはいるものの、精神的負荷が大きく、かつての響のようにギアを纏えなくなる可能性もあった。
また戦闘の最中で何名か構成員を確保したのだが、レイドライザーやプログライズキーの流出阻止に徹底しているのか、確認される前に増設されたバックル下のスイッチか手持ち式のスイッチで中枢部分を自爆させ解析不能にしていたのであった。構成員にしても罪こそ認めてるが仲間や理央の居場所については中々口を割らず、元々こちらを憎んでいるため取引にも応じずで恐らく手荒な手段を用いても喋ることはないとのことであり、そもそもそんな事をしたらアークの意思に目覚める可能性があり、提供元のアズの神出鬼没性を考えると悪手であるのは想像に難くなかった。
「こちらの戦力不足が完全に裏目に出てるな…」
「シンフォギアは確かに一騎当千の力を有してます。しかし千に値する力を有してもその数は一つ。滅亡迅雷の彼らを含めても十人で対応するには…」
これまでの敵ではパヴァリア光明結社という組織がいたものの、直接対決をしたのはその幹部や首魁のみであり、組織全体、しかも同時多発的に行動する相手は今回が初めてであり、苦戦を強いられていた。
亡によるZAIAスペックのハッキングも試みようとしたが、試しに押収したものにアクセスした途端、爆散するといった事態が発生し、どうやら不正アクセスを検知すると自爆するプログラムが施されているため追跡やハッキングによる無力化は困難であった。
「爆発の規模からして装着してる状態で起爆したら装着者は死亡する可能性はあります。しかしそれを利用した制圧は…」
「幾ら殺害許可が下りてるとはいえ、彼らを一斉に爆殺するのは倫理的な問題がありその後の処理で追求される恐れがある…雁字搦めか…」
亡の報告に弦十郎がそう呟くと警報が鳴り響き、イカロスの太陽が再び活動を再開した事が判明し、装者と滅亡迅雷のメンバーは現場へと駆けつけるのであった。
三ヶ所で破壊活動が行われていることから、翼・マリア・迅、切歌・調・滅・雷、響・クリス・亡の三手に分かれて鎮圧に動いていた。
「マリア、大丈夫デスかね…?ここのところ無理してるような気がするデスよ…」
「フロンティア事変の時、率先して行動した結果、余計に死者が出ちゃったからね…私たちも同罪だけど、自分のせいで巻き込んだってマリアはそう思ってる…なんとか支えになりたいけど…」
「ならば早く現場を鎮圧して彼女の負担を少しでも下げてやるべきだ。だが無茶はするな」
「不味かったら迷わず言いな。俺と滅がサポートするからよ」
滅と雷の言葉に頷きつつ、現場に到着すると彼女らの前に艶やかな黒髪を腰まで伸ばした女性が佇んでいた。その背後では数十人のレイダーたちが破壊や殺戮をおこなっていた。目の前にいる女性を見て、切歌と調はハッとした顔を浮かべた。
「もしかして…私たちと一緒にF.I.Sにいた…!」
「アヤお姉さん…デスか?」
目の前にいたのは、かつて切歌らレセプターチルドレンが集められていた施設で知り合ったアヤ・ディゼルでは思い二人は呼びかけるが、当の本人はその言葉を聞き怒りの形相を見せた。
「その名で私を呼ぶなッ‼︎ソレは奴らに付けられた偽りの名前…!私の本当の名前は、蒼月マヤだ‼︎理央さんのおかげで思い出せた…名前も、記憶も、両親のことも…!」
マヤと名乗った彼女はレイダーに攻撃を中止させると、自身のことを語り始めた。
研究施設に連れられた当時、彼女が研究員から告げられたのは、自分は事故に遭い両親は死亡し、そのショックで記憶を失っており、便宜的にアヤ・ディゼルと名前を付けられたのであった。しかし、理央と接触した際にフィリストの能力である記憶の読み取りで彼女の失われた、正確には思い出せなくなった記憶を読み取り、その後『記憶を読み取った記憶』を彼女に送ることで彼女は失った記憶を取り戻すと同時に、真実を知る事となった。
そもそも自分は事故に遭っておらず、両親は彼女の引き渡しを拒否した際にF.I.Sによって殺されており、それを見たショックで今まで記憶を失っていたという事であった。
「元々、ネフェリムの起動実験時の事故で仲良くしてた子たちが瓦礫に潰された時から恨んでたけど、記憶を取り戻した今、絶対に奴らを許さないと誓った…!それに奴らが私たちを拉致するきっかけになったフィーネも…‼︎」
「っ!待つデスよ!フィーネはもう既に…」
「知ってるわよ切歌。フィーネはあなたのイガリマの力でこの世から消えた…。けど、まだ見ぬ聖遺物の力で再び蘇る可能性はなくはないでしょう?今まで何千年と周りを騙してた彼女が今更改心なんて信じられないし、もし改心してても、死者を蘇らせて使役する聖遺物ならばそんなの関係ないわ。だからこそ、私は二度と彼女が蘇らないように
「⁉︎」
「それが、お前の持つ【悪意】か…」
マヤを含めた元レセプターチルドレンの構成員たちは細部は違えど同じ考えであり、
「とはいえ、どれくらいフィーネの刻印を持つ者がいるかわからない以上、私たちが出来るのは元F.I.S職員の殲滅や錬金術師狩り、それにあなた達の足止めくらいね。理央さんの計画が成功すれば私たちの目的も果たされるしね。…それじゃ、私もそろそろ戦おうかしら」
リヴァンドライバー‼︎
彼女はドライバーを装着し、プログライズキーを右手に持ち、展開させる。するとどこからかライオンともヒョウともとれる生き物のホログラムが駆け回り、彼女の近くに伏せた。
マヤは展開させたキーで右頬を二回つつき、ベルトに装填した。
「変身」
プログライズ‼︎アーク…
Destroy, the world that oppresses the weak for power
REAVAN the KAMEN RIDER
A retaliation who is willing to commit suicide and destroys immortal vessels
現れたのは、青い複眼に黒いボディをし、所々に青いラインや豹柄が見え、両手には五本のナイフを思わせるような鋭い鉤爪を装備したライダー、【仮面ライダーリヴァン】の姿があった。
「貴女たちのデータ、取らせてもらうわよ」
一方、響たちは
「運がいいなぁ〜。お前たちと戦えるとはな。ここに配置させた理央さんに感謝だな」
「…その様子じゃ、アタシらに恨みがあるみたいだな」
「その通りだよ
「確かにな…アタシはソロモンの杖を起動させて多くの死者を出した。けど、このバカは関係ねぇ!恨むならアタシを恨めよ…」
クリスがそう叫ぶと、宗人は何を言っていると言ったように首を傾げた。
「は?何を勘違いしている?そこの嬢ちゃんも関係あるし、ここにいない風鳴翼も関係あるぞ?…覚えてないなら教えてやる。お前ら三人はシャトルを救出する為だけに、唯一無二の自然であるK2とその周りの自然を破壊しただろうが‼︎なんて事をしてくれたんだ‼︎ただでさえ登頂困難なK2がお前らのせいで登山ルートが滅茶苦茶になって登れなくなったばかりか、よしんば登れたとしても『世界二位のK2』を登るという登山家の夢が未来永劫失われた…この自然破壊者共が‼︎」
「っ…!」
たじろく二人を前に彼は次々に彼女らに非難の言葉を浴びせていた。
「聖遺物に関わってるお前なら考えなかったのか?K2に未起動の聖遺物が埋まってる可能性や、K2自体が異端技術の制御装置の可能性とかよ‼︎それで起動なりして多くの被害が出たら洒落にならないだろうし、そもそもそんな事したら領土破壊となって戦争になってた可能性もあるだろう?…まぁ、登山者がいるかもっていう一番大事なことに気づかない時点でたかが知れてるがな……それに、
「え…⁉︎まさか……!」
「あぁ。お前らがK2を破壊したあの日…
俺の親友は、K2に登っていた。そしてお前らが起こした山崩れに巻き込まれて死んだ」
解説
蒼月マヤ: 元レセプターチルドレンの女性。名前の由来はアプリ『コードギアス ロストストーリー』の女主人公のデフォルト名+搭乗機の蒼月より。
性格も元ネタよりですが、若干鷹山さん入ってますかね。
風鳥宗人: 元自然保護活動家。名前の由来はそれぞれの漢字に『山』が付く事ができる漢字の組み合わせ(嵐、嶋、崇、仙)
彼に関しては聖遺物と直接の関係無しに悪意を持った存在ですね。
仮面ライダーリヴァン: マヤが変身するアークライダー。名前の由来は報復主義者や復讐者を意味するRevanchistより。ライダモデルはライガーと同じく、ヒョウとライオンの交雑種のレオポンです。
音声意訳は
『力の為に弱者を虐げる世界を滅ぼせ』
『ワタシがリヴァンで仮面ライダー』
『私はこの身が滅ぼうともフィーネの器を滅ぼしてやる』
また変身前にした右手で頬を二回つつく動作は日本の手話で『嘘、偽り』といった意味を持ちます。
能力とスペック等は次回以降に。
ぶっちゃけると自分がシンフォギアでダメだと思うのは迫害放置の次にK2破壊なんですね。初期のアグルが見たらブチギレますよ。
その後一体どういう交渉したんでしょうね?
ちなみに宗人がクリスをシンデレラと呼んだのは、彼女がソロモンの杖を起動し、使用しただけじゃ成り立ちません。それならF.I.S組にも言えますしね。
そもそもノイズが変換させるのは炭素、つまりは炭でありこのままでは【炭被り】です。
ならばどうするかというと、『炭』から【山を消せば】『灰』になり、灰被りとなります。
つまるところ、彼なりに恨みを込めた言い回しなんです。
彼の変身するアークライダーはまた次回に。