the lost story   作:闇谷 紅

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第二十話「現実」

「ふぁぁぁっ」

 

 あれから俺は布団に潜って寝直した。だと言うのにあくびが出る。

 

(夢だって言うなら、寝れば続きが見れたっていいのにな)

 

 ただ疲れがとれなかったのか、あの世界に未練があったのかはわからない。

 

「あふっ」

 

 夢も見ることなく目が覚めて、寝過ぎたのか漏れるあくびを噛み殺す。

 

「はぁ」

 

 もやもやする。心の中がモヤモヤして、気持ちが晴れず。

 

「ゲームでもしようかな?」

 

 まるで自分に言い聞かせるようにして立ち上がり、ゴリラか何かの様な姿勢でのっしのっしとテレビの前まで移動する。

 

「ドラクエは……貸したままだっけ。と言うか、こいつでドラクエⅢは出てないしな」

 

 テレビ台の引き出しを漁って「それ」を探してしまう辺り、重症かも知れない。

 

「もういいや、ゲームからは離れよう」

 

 ただ気が滅入るだけだと気づいて、引き出しを押し込むと、今度はパソコンに近寄って電源を入れる。

 

「んー、あと一時間ぐらいだな」

 

 いつも見ているサイトがたいてい昼の12時に更新されるのだ。しかもほぼ毎日更新。

 

(もう完全に日課になっちゃってるよなぁ、ネットサーフィン)

 

 日曜日だからこそこんな時間に見ている訳だが、時間が変わってもやることは変わらない。お気に入りに入れている最トを巡回して、漫画を読み、携帯電話を開きゲームをやったり、友達と遊んだり。

 

「ケータイと漫画、どっちにすべきか」

 

 パソコンをつけっぱなしにしたまま腕を組んで見る先には、充電器にセットされたままの携帯電話と何冊か抜き取られ斜めに傾いだ棚の漫画本。

 

「だあああぁっ」

 

 結局決められず、俺は奇声を上げながら椅子の上で手足を投げ出した。

 

「何がしたいんだ、俺って」

 

 いや、わかっているのだ。勇者達が、あの後のことが気になるのだと。

 

「ああ、くそっ」

 

 頭を振ってももどかしい気持ちは消えてくれない。

 

「はぁ」

 

 ネットサーフィンのつもりで無意識に立ち上げたブラウザを見て嘆息し、お気に入り一覧を見てマウスに乗せた手が止まる。

 

「ドラクエ……」

 

 奇しくもそれは、俺があのゲームの世界でキャラに憑依する直前に見ていた筈のサイト。ドラクエにナンバリングされてるゲームを初めとした二次創作小説を扱っている。

 

「っ」

 

 気づけば俺は『ドラクエⅢ』をキーワードに検索を実行していた。

 

(今更こんなことしたってどうにもならないのに……)

 

 女戦士に渡す為の本の在処、どこに出るのか覚えていなかった旅の扉の先。

 

「うぐっ」

 

 調べる内に中には思わず唸ってしまうようなものもあったけれど。

 

「コレハヒドイ」

 

 うろ覚えであるからこそ間違えて覚えていた事柄が幾つか出てきたのだ。

 

 ちなみに、子供は見ちゃ行けないサイトをうっかり開きかけたことはないと敢えて明言しておく。うん。

 

「キャラメイクの時の夢の声、あれってルビス様じゃないのか」

 

 といったどうでも良いものもあれば、知ってしまうと矛盾するものもある。

 

(いや、これが正しいとするとバニーさんって)

 

 遊び人の戦闘中行動一覧、お尻を触るのはレベル15以上の男だけで、女の場合は化粧直しをするとなっていて、俺は困惑する。

 

(あれが詰め物……ってことはまず無いよな)

 

 妙なところで謎が出来てしまった。

 

「他には……えっ?」

 

 そして、中には知らぬが仏だったこともあって。

 

「たかが、ゲーム。そう、ゲームの世界じゃないか……」

 

 独りぼっちの部屋の中で、言い訳するように俺は「ゲーム」と繰り返す。

 

「だいたい行き方だってわかんないのに」

 

 それは、真実とは言えない。寝ては見たが、試さなかったことがまだ一つある、心当たりが一つ残ってるのだ。

 

「昨日の条件を完全再現……」

 

 あくびが出ると言うことは、また寝ることはできるかもしれない。

 

(そ、そうだよな。危なくなったら「ぼうけんのしょ」に記録して貰って戻ってくればいいだけだし)

 

 心の中で必死に言い訳する。

 

(そもそも制限はあれどあんな可愛い女の子が親しくしてくれるなんて、『現実』じゃありえないじゃないか)

 

 実は修行の折、シャルロットがお弁当を作ってきてくれてたりしたのだが、俺にしてみれば「女の子がお弁当を作ってきてくれる」というのは初の体験だった。

 

「お師匠様ぁ」

 

 勇者の呼ぶ声が頭の中でリフレインするだけで、気持ちが揺れる。もちろん、下心だけが理由ではない。

 

「少なくともセーブすればこっちに逃げて来られるってのはわかったもんな」

 

 逃げる算段はついたも同然、なら約束を守っても罰は当たらないだろう。

 

「まだ、免許皆伝したわけじゃないし」

 

 むろん、再現出来たからと行ってあの世界に行ける保証はない。なのに、いつの間にか俺は乗り気になっていた。

 

 

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