「ただいま〜。
は〜、あっついなぁ…、焦げる溶ける灰になる…」
榛名は靴とジャージを脱ぎ、シャツ一枚になる。
今は8月のど真ん中、気温は30度を平気で超え、燦々と太陽光が降り注ぐ。
学校は長期休暇に入っているのがせめてもの救い…と思いきや、日中は部活動に追われるのは運動部員の宿命だ。
好きでやっている事とはいえ、辛いものは辛い。
ガチャっと居間のドアを開ける、瞬間。
榛名は天国に足を踏み入れていた。
冷房の効いた、心地よい空間。
「科学の力って凄い…!」
榛名は目を閉じ、文明の利器の恩恵を体全体で感じていた。
「姉ちゃん!ぼーっとしてないで閉めてよ」
ハッと我に帰る。
「「「おじゃましてます」」」
よく見ると、武蔵ら仲良し4人組が居間でテレビを見ていた。
あの日サッカーを始めていらいジェラールは3人と打ち解け、今では何をする時も一緒だそうだ。
チラッとテレビの画面を見てみると…
「ゴォォール!!村上中、ここでダメ押しの追加点!
「舞姫」、恐るべし!誰も彼女を止められないのか⁉︎」
録画してあったフットボールフロンティアの中継を見ていた。
「見たか?ジェラール!
今のが「あびすぶれいく」だ!」
「すごい、ルナ姉ちゃんってホントに強いんだ!」
「ところで〜「まいひめ」ってなぁに?」
「なんだよ、そんなことも知らないのかよ?」
「知ってるの?武蔵」
「ほら、「まいひめ」ってのはその…姉ちゃんみたいな人のことだよ」
「すごいシュート打つ人??」
「そうそう」
うん、違う。
全く違う。
舞姫とは、字の通り舞を舞う人のはずだ。
踊り子、あるいはバレリーナなんかを指す…のだろう。
間違いを指摘してあげたい一方、その「舞姫」とやらの話はしたくなかった。
正直、恥ずかしい。
一体誰がそんな二つ名を…。
「あのさ、私、明日はお休みなんだよね。
どこか遊びに行かない?」
子供達に「舞姫」から離れてもらいたくて、別の話題を振ってみる。
「USJ!」
武蔵が即答する。
「「ユナイテッド・スタンド・ジャパン」かぁ。ちょっと遠くて無理かなぁ。」
「すわたいひゃ!」
続いてジェラールが答える
「諏訪大社⁉︎そんなんどこで覚えたの?
諏訪大社はもっと遠いんじゃないかなぁ。」
「いんぺる○うん!」
さらに続けて長門が答える
「うん、あそこは怖い人しかいなくてめちゃくちゃ危ないからやめようね。
てか実在しないけど。」
「海がいい」
最後に、大和が答えた。
「海、か。それくらいならなんとか…」
事実、無難な選択だった。
歩いても行ける場所に遊泳可能な海岸はある。
ただ、幼い子供数人を引き連れての海は少々心配だ。
特に事故とかが。
榛名では引率は荷が重い。
しかし、言い出しっぺは自分だ。
これ以上彼らの要望を跳ね除けるわけにもいかない。
困った…。
「いいですヨ!行きましょウ!ウミ!!」
相談したところ、クリストフさんは快く引き受けてくれた。
幸い、彼も明日は休みだったそうだ。
本当に頼りになる。
「せっかくデスから、トウデしましょウ!
ワタシ、以前サイクリングのトチュウでスバらしいビーチ見ました!
「瀬戸原サンライトビーチ」です!
ワタシ、車ウンテンできるデス。たぶんヒガエリでいけマス!」
それを聞いた武蔵は大興奮だった。
八重崎さんの家にも電話で伝えたところ、長男の晴翔さんも来てくれるらしい。
いい思い出になりそうだと、榛名は確信した。
今回は日常パートです。
「サッカーそっちのけで日常パートしかないだろ」ってのは多分気のせいです(違う)。
何やらクリストフさんの存在感がハンパないですが、彼には暗い過去や心の闇、衝撃の真実だったりするものはありません。そして、今後そんな設定を生やす予定もございません。マジで
今日がゴールデンウィーク最終日なので今後はペースがガクッと落ちると思います。そうならなかったら多分僕は死にます(笑)。
それでは、次のお話で