「少し、落ち着いた?」
榛名はジェラールを胸に抱きながら、優しく問いかける。
「…うん。」
落ち着きを取り戻したジェラールは頷きながら答える。
「ごめんね…。
私達、何も知らなくて…。辛かったよね…。」
榛名達は、善意でジェラールの元を訪ねた。
体調を崩していないか。
トラブルに巻き込まれていないか。
もしそうであるなら、力になれないかと。
酷い思い上がりだと、榛名は思う。
離れて暮らしていたとはいえ、母親を失った子供の心を救う術は榛名にはない。
妻を失った男の背中を押すこともできない。
かえって2人を苦しめてしまったのではないか、そう考えると辛かった。
自分の無力さが恨めしい。
「そんなコト、ナイデスヨ。」
クリストフは榛名の心境を理解しているかのように語りかけてくる。
「オハナシできて、うれしいデス。
ココロ、すっきりしまシタ。」
と、榛名に優しく笑いかける。
強い人だと、榛名は思った。
「さて、なごり惜しいデスガ、おわかれデス。
ジェラール、皆サンにサヨナラしてください。」
「いやだ」
「ジェラール?」
「いやだ!ここにいたい!もっとみんなといっしょにいたい!!」
ジェラールが榛名に抱きつきながら叫ぶ。
「クリストフさん、私からもお願いです!
もう少しだけでも、ここにいるわけにはいきませんか⁉︎」
榛名もまた、涙ながらにクリストフに訴える。
あまりにも急すぎる別れ。
武蔵も、長門も、大和も、榛名自身も、現実を受け入れられない。
「…ワタシも、シンケンに考えマシタ。
デモ、むりデス。
明日マデにニッポン出ないと、妻のソウギに間に合いマセン。」
「……あ」
そうだ、その通りだ。
亡くなったのは一昨日、既に2日も経っている。
本来なら、今日くらいには葬儀が行われる筈だ。
奥さんの縁者の人達は、ギリギリまで2人を待ってくれている。
せめて最後に一目でも、家族の顔を見られるように…。
それを失念していた。
なんて軽率なことを…。
改めて、自身の至らなさを思い知らされる。
きっと、晴兄は気づいていた。
だから、余計な事は言わなかったんだ。
自分の無力が悔しい。
自分の無知が恥ずかしい。
思わず涙が溢れる。
「ルナ姉ちゃん、泣かないで」
ジェラールが榛名の涙を拭う。
(私は、馬鹿だ。)
何を感傷に浸っている?
何が「無力」だ。何が「無知」だ。
そんなの始めから分かりきっていた。
私は一度でも、自分だけの力で何かを成したことがないのだから。
それでも、私はこの子達の「お姉ちゃん」だ。
船は2時間後。
まだ、少しだけ時間がある。
「クリストフさん
少しだけ、お時間ください」
「why?ナゼデスカ?」
クリストフが、目を丸くする。
榛名はジェラールの手を取り…
「ジェラール君、サッカーしよう」
部屋を飛び出した。
ゴールデンウィーク明けの仕事ってなんか憂鬱ですね。
完全に学生時代の頃の生活習慣になってたので朝めちゃくちゃ眠かったです。
そんな話は置いといて…今話は前話の半分くらいの分量ですが、キリが良さそうなところで切りました。
今話では、前話が割と重めの内容な気がしたので、その分ジェラール君の心のケアをちゃんとしておかないとと思って少しだけ構想を変えました。そのせいで話が一向に進まないのは…、まぁ、ご愛嬌ということで…。
過去編はもっとさっくりさせるつもりだったのですが、次々と書きたい事増えちゃって終わる気配が微塵もしなくなっちゃった…。もっと入念に構想を練ってから書き始めればよかったと後悔してます。
まぁ、それ以上に楽しんでますけども
それではまた、次のお話で