イナズマイレブン ノヴァ   作:麻婆麺

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第18話 虹の翼

9月14日 AM8:00

ドイツ ベルリンにて

 

雲雀島が半壊した事件は、各メディアを通して世間に知れ渡っていた。

それは、遠く離れた異国の地も例外ではない。

 

「まるで、ツングースカ大爆発だな」

 

男は朝のニュース番組を見ながら、呟く。

男の名は「ダニエル・キルヒアイゼン」。ドイツ在住の医師である。

普段であれば極東の島国での出来事などにはさほど関心を持たない。

しかし、今回ばかりは無関心ではいられなかった。

 

「君は運がよかったな。マサミチ君…。」

 

ほんの数ヶ月前に治療を施し、現在経過観察中の患者の故郷が吹き飛んだのだ。その子は気が気じゃないだろう。

肉体的な傷や怪我の処置は出来ても、メンタルケアは自分の専門ではない。しかし、放っておくわけにはいかない。

 

ダニエル「さて、どうしたものか…」

 

ダニエルがコーヒーを啜りながら思案していると…

 

「パパ、「ツングースカ大爆発」って何?」

 

近くにいた女の子が男に向かって問いかける。

おそらくは娘だろう。

 

ダニエル「今からおよそ100年前、ロシアのとある地域で起きた大爆発だよ。「隕石の空中爆破が原因」という見解が多いらしい。

ちなみにその威力は、あのヒロシマに投下された原爆の185倍とされている。全く、自然の力は恐ろしいな。」

 

報道によると、今回の災害の原因もまた「隕石の空中爆破による衝撃波」とされている。しかも、その破片が爆心地の周囲に降り注いだというから、余計にタチが悪い。

 

ダニエル「ともかく、彼の友人達の無事を祈るばかりだ。」

 

ダニエルはコーヒーを飲み干し、背広を羽織って仕事へ向かっていった。

 

 

 

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10月13日 PM8:35

雲雀島にて

 

 

 

「…生きている…!生きている…!生きている!」

 

榛名は武蔵を抱き抱え、安堵の声を漏らす。

隕石の爆風に吹き飛ばされて離れ離れになってしまっていたが、どうにか探し出すことができた。

武蔵は気を失ってはいたが、呼吸も脈拍も正常だ。

幸運なことに、目立った外傷もない。

とはいえ、安心は出来ない。

爆発による熱で、至る所に火の手が上がっていた。

榛名も武蔵もその煙を吸いすぎている。

一刻も早くその場から離れなければならない。

 

「もう大丈夫、お姉ちゃんがついてるから…!」

 

武蔵をおぶり、歩き出す。

 

「…く、…ぅ…」

 

瞬間、眩暈がした。

 

血を流しすぎたのだろう。

 

頭がくらくらする。

冷や汗が出ている。

寒い。

息が苦しい。

真っ直ぐ歩けない。

 

明らかに、血も酸素も足りていない。

 

しかも、先ほどから妙なモノが見える。

 

炎の様に揺らめき、七色に輝く翼を持つ鳥。

それは榛名の背後から「出現」していた。

 

(これが、守護霊ってやつなのかなぁ…?

本当にいたんだ。

こんなモノが見えちゃうなんて、そろそろお呼びがかかっているのかな?)

 

土手っ腹に穴があいた状態で、大量の煙を吸いながら歩き回った。

もう限界を迎えてもおかしくはない。

なのに、活力だけは無限に湧いていている。

 

その力の源泉は間違いなく背後にいるモノだろう。

根拠はないが、榛名はそう確信していた。

 

「まぁ…、ありがたく使わせてもらおうかな」

 

肉体の限界を超えて、気力を糧に歩みを進める。

 

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「…ここまで、来れば…」

 

開けたところに腰を降ろす。

 

「少し、重くなったね」

 

そっと、武蔵を膝に寝かせる。

困ったことに、もう指先の感覚がない。

最後に少しでも弟の体温を感じたかったけれど、叶わない様だ。

 

そういえば、この子をおぶったのはいつ以来だっただろう。

あれは確か、みっちゃんと2人で保育園に迎えに行った時だった。

 

「ごめんね、みっちゃん。

約束、守れないや。」

 

遠い空に向かって呟く。

まさかあの通話が今生の別れになるとは思いもしなかった。

世の中厳しいものだ、と苦笑する。

 

視界の端には七色の翼が映っている。

正体不明の謎の存在に、榛名は語りかけた。

 

「あなたもありがとうね。

もう私のことはいいの。

ただ……」

 

膝の上の弟に目をやる。

 

「あなたさえ良ければ、私の代わりにこの子を見守ってあげて欲しいな。

この子が何を見て、何を思って、誰と出会って、どんな…大人になるのか…。見届けて欲しいな。」

 

ソレは何も応えない。

ただ、微かに首を縦に動かした。気がした。

 

「ありがとう。よろしくね、「鳳凰」。」

 

瞬間、ソレは空気に溶ける様に消失した。

不思議な存在だと、榛名は思った。

しかし同時に、ずっと前から、生まれた時から一緒だったような気がする。

「鳳凰」という名も、考えるより先に自然と浮かんできた。

まるで、元々知っていたかのように。

 

フッと、目の前が暗くなる。

次いで、膝に感じていた「重さ」が消える。

そして、音が聞こえない。

 

「その時」がやってきた。

 

榛名は目を閉じ、

 

(さようなら、先にいきます。

パパ、ママ、武蔵…、みんな…、ゆっくり来てね。)

 

そっと意識を手放した。

 

 

 

 

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