観客A「…なぁ、今の…、見えたか?」
観客B「……」
観客C「…だよな…。」
スタジアムが静まりかえる。
試合開始のホイッスルは聞こえた。
しかし、その後何が起きたのかが分からない。
落雷の様な音が聞こえたと思ったら、ボールはゴールネットを揺らしていた。
敵チームメンバーA「何だよ、アイツ…」
敵チームメンバーB「反則だろ、今の…」
敵チームに動揺が走る。
一切の対抗も出来ずに得点を許したのだから当然のことかもしれない。
「まだ試合は始まったばかりだ、切り替えよう。」と、相手チームのキャプテンがメンバーを励ます。
得点されたチームのボールで、試合を再開する。
相手チームの選手の1人が味方へパスを出すが…
武蔵「伏雷(ふすいかずち)。」
武蔵がインターセプトでボールを奪い取る。
武蔵「ありがとう。」
武蔵はゴールへ向けて単身で突撃する。
近くにパスを回せそうな味方の選手はいない。
側から見れば暴走だ。
当然、相手の選手はボールを奪い返そうと武蔵に迫る。が、
武蔵「裂雷(さくいかずち)。」
全身から放電し、迫り来る相手選手を悉く吹き飛ばす。
そして…
武蔵「鳴雷(なるいかずち)…‼︎」
再び武蔵シュートが炸裂し、追加点を上げる。
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その試合は、一言で言えばワンサイドゲームだった。
「蹂躙」と言ってもいい。
相手の反撃を一切許さず、一方的に攻撃し続ける。
観客C「よ、容赦ねえ…」
観客D「っていうかあれ…。遊んで、いやがる…?」
実況も、解説も、観客達の歓声も途切れたスタジアムに虚しくホイッスルが響きわたる。
武蔵「…終わりか。
驚いたな。律儀に時間通りに終わらせたよ。
途中で切ってもよかったのに…」
武蔵は相手チームの選手達を一瞥しながら、
武蔵「どうせ、勝ち目なんてなかったんだから」
冷たく、言い放った。
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「優勝おめでとうございます!」
「どうも」
「今試合の手応えは?」
「まぁ、それなりに良かったかと」
「好きな食べ物は?」
「……それ、試合と何か関係ある?」
試合後、武蔵はマスコミの取材を受けていた。
面倒なので適当に流す。
武蔵(鬱陶しいなぁ、早く帰りたい)
「それじゃあ、この辺で…」っと、武蔵が足早に立ち去ろうとすると…
「この喜びを、誰に伝えたいですか?」
「……え?」
「サッカーを始めたきっかけは?」
「……それは…」
「目標にしている人はいますか?尊敬している人は?」
「…………それ、…は……」
誰に喜びを伝える?
…両親か?いつも助けてもらっている。感謝もしている。けど…
なぜ、サッカーを始めた?
初めにあったのは…、憧れだった。
何に憧れた?
目標にしている人は?
尊敬している人は?
その人物は………?
武蔵「姉、さん…」
小さく、武蔵は呟く。
「…あの、武蔵君?」
記者達が驚いたように、心配するように、武蔵の顔を覗き込む。
その目からは大粒の涙が流れていた。
そうだ
俺が今、誰よりも先に喜びを伝えたいのは、姉さんだ。
サッカーを始めたきっかけは、姉さんに憧れたからだ。
俺の目標は、姉さんみたいになることだった。
だけど…
もう、その姉さんはいない。
だったら一体、何の為に……?
俺は、何を目指してサッカーを続けるのだろう。
武蔵の心に大きな亀裂が入る。
そして、何かが崩れていくような感覚がした。