イナズマイレブン ノヴァ   作:麻婆麺

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第23話 7年の溝

 

長門「………。」

武蔵「………。」

 

病室に静寂が流れる。

2人は7年前の災害以降、一度も会っていない。

2人の故郷は、最早人が住める状態にはない。

その為武蔵は神戸に、長門は横浜へ引っ越していた。

距離的、時間的な問題と、気持ちの面でお互いに顔を合わせ辛かったからだ。

積もる話はあれど、何から話せばいいのかが分からない。

 

長門「あのっ…」

武蔵「なぁ…」

 

お互いに話題を切り出そうとして、ハモってしまう。

余計に気まずい。が、ここで止まっては永遠に会話が始まりそうにない。

武蔵は、「お先にどうぞ」っとジェスチャーで長門に発言を促す。

レディーファーストだ。

 

長門「優勝、おめでとう。

すごかったよ、武蔵。」

 

武蔵「あぁ、ありがとな。」

 

長門「でね。これ、お祝い!」

 

と言って、長門は大きな袋を見せる。

 

武蔵「ありがとう。

見てもいいか?」

 

長門「もちろん!」

 

武蔵が袋を開けると…

 

武蔵「……おい、長門…?お前…、これ…なんだ?」

 

長門「?スッポンだよ?」

 

武蔵「生きてるんだが?」

 

長門「新鮮でいいよね〜。」

 

武蔵は「そういう意味じゃない」と内心ツッコミつつも、思わず吹き出してしまう。

長門は、7年経って顔も体つきも女の子らしくなっていた。

にも関わらず、中身はあまり変わっていない。

相変わらず、こちらの予想と理解を軽く超えた発言や行動をとってくる。

 

武蔵「そうだな。それでこそ長門だよなぁ。」

 

長門「ちょっと?それどーいう意味かなぁ〜?」

 

しばし笑いあった後、次は武蔵が話を切り出す。

 

武蔵「大和は、どうなんだ。」

 

長門「…まぁ、見たまんまかな。

あの日以来、ずっとこう。」

 

武蔵「そうか…。」

 

見た所、大和には何の異常もないように見える。

外傷は見当たらないし、呼吸も正常らしい。

なのに、意識だけが戻らない。

所謂、「植物状態」というものだろう。

 

…思わず目を背けたくなるのを必死に堪える。

どんな姿になっても、どんな状態にあっても、大和は武蔵のかけがえの無い親友だ。

その親友から目を逸らすなんて真似は出来ない。

 

いや、それも白々しい話だ。

7年もの間何もしないどころか、見舞いにすら来なかったのだから。

 

武蔵「さっきいた女は誰だ?

学校の友達か?」

 

話題を変えようと、武蔵が長門に別の質問をする。

 

長門「違うよ。

玲名ちゃんとは、お日さま園で知り合ったんだよ。」

 

武蔵「お日さま園…?」

 

長門「うん。少しの間、お世話になったんだ。

あの日、ヨッシーも晶子さんも亡くなっちゃって…、晴兄が私を引き取ってくれたんだ。

けどまだ晴兄は学生だったから、直ぐには無理だった。

晴兄が高専を卒業して、就職するまでの間は孤児院にいたの。

そういえば、ご両親はお元気?」

 

武蔵「あぁ…。」

 

幸いなことに、武蔵の両親は丁度仕事の都合で島を離れていて、難を逃れている。

しかし、長門と大和の保護者である義人と晶子は、7年前に亡くなってしまっていた。長門は、二度も両親を失ったのだ。

 

武蔵「……悪い。」

 

話題を逸らそうとして、かえって長門の心を抉ってしまった。

辛い過去を思い出させてしまったかもしれない。

しかし、長門は笑顔で応える。

 

長門「気にしないでよ。

確かにあの時は悲しかったけど…、お日さま園では良い出会いもあったんだよ。

玲名ちゃんはその1人なの。

サッカー好きなんだ、あの子も。」

 

楽しそうに、お日さま園での思い出を語る長門。

その姿が、武蔵には眩しかった。

どんなに苦しい境遇にいても、強く前向きに生きている。

それに比べて…

 

武蔵「…そうか。それなら良かった。

サッカーは続けてるのか?」

 

長門「うん。続けているよ。

でも、なかなかうまくいかないなぁ~。

武蔵みたいには出来ないや。

でも、約束だからね。

いつかまた、あの「4人で一緒にサッカーする」って。」

 

そう。7年前のあの夏の日、もう一人の大切な親友、ジェラールと別れたあの時に交わした約束がある。

母を亡くしたジェラールが再び立ち上がる為の、4人がもう一度出会うための大切な約束だ。

それを長門はずっと大切に守っていた。

だからこそ、武蔵は長門との間に大きな溝を感じてしまう。

 

武蔵「…お前は強いな。長門。」

 

長門「え?どうしたの?急に…。」

 

武蔵「やっぱり、お前は俺とは違う。

俺とは違って強い奴だよ、お前は。」

 

武蔵はゆっくりと立ち上がり、

 

武蔵「今日は会えてうれしかった。

ありがとう。

…またな。」

 

足早に、病室を後にする。

 

長門「…待って!待ってよ!

怒ったの…?

気に障ったなら謝るから!」

 

長門は武蔵の手を掴んで止める。

武蔵は立ち止まり、悲しい笑みを浮かべて答えた。

 

武蔵「…違うよ。言ったろ、俺はお前とは違う

お前はずっと、あの日の約束を守る為にサッカーを続けてきたんだろ?

…俺は違うんだ。

俺は、必死だっただけだ。

姉さんがいない現実から目を逸らすために…

鬱憤を晴らす為にサッカーしてたんだよ。

…優勝した後、頭が冷えてようやく気が付いた。

俺は…、幸せそうな奴らを…、楽しそうにサッカーしてる奴らを叩きつぶして遊んでいたんだ。

ソイツらの夢を壊して、不幸にして…

そんな奴になっちまったんだ、俺は…。」

 

ポツポツと、独白の言葉を並べる武蔵に、長門はかける言葉が見当たらない。

「そんなことはない」と言いたかった。

けれど、長門自身薄々感じていた。

先日の決勝戦での彼のプレーは、サッカーを使った暴力だ。 

痛めつけたり、怪我をさせたわけではない。

その代わり、相手チームの選手の心を徹底的に嬲り、躙るような…

 

武蔵「…悪い。変な気分にさせちゃったよな。

けど、これではっきりしたと思う。」

 

長門「…何が………?」

 

武蔵「あの日、生き残るべきだったのは、きっと姉さんの方だったんだ。」

 

長門の手を振り払い、武蔵は去っていく。

 

長門「…そんな…、そんな悲しいこと…!言わないでよ!」

 

離れていく背中に、怒鳴りつける。

長門は本気で怒っていた。

同時に、とても悲しかった。

 

長門「…行かないで…。おいて、行かないで……。」

 

長門は遠ざかる背中に手を伸ばし、力なく呟く。

 

 

 

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姉さんは、もういない。

それじゃあ、何を追いかければいいのかが分からない。

 

大和は、ずっと目を覚まさない。

だからあの約束は果たされない。

 

だったら、何の為に?

 

もう分からない。

 

俺は、あいつらと一緒だからサッカーが好きだったのか。

サッカーが好きだから、あいつらのことも好きだったのか。

 

姉さん、アンタなら答えを知っているのか?

もしそうなら、化けてもいいから教えに来てくれ…。

 

 

 

 

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