名前:伊吹 政道 (いぶき まさみち)
愛称:ブッキー、みっちゃん
年齢:14歳
身長:169cm
体重:64㎏
好きな物:榛名
嫌いな物:ホラー全般
「ヤバい、これ絶対に間に合わない…。」
獅子王榛名は困っていた。
共働きの両親の帰りが遅くなることから、保育園に通っている10歳程離れた弟の武蔵のお迎えは榛名の仕事だった。
「こりゃ武蔵、絶対怒ってるだろうなぁ…。
しかも、何で急いでる時に限って踏切に捕まるかなぁ…、ついてない。」
「遅刻は確定だな。舞姫殿。」
「だからその呼び方は止めてって…、みっちゃん?何でここに?」
「乗れ。少しは遅れを取り戻せるだろう。」
「………どうしよ、何かみっちゃんが白馬の王子様に見えてきた。」
「それは光栄だ。行くぞ!」
「おーーー!」
荷台に榛名が乗り込み、政道の腰に手を回す。
背中にあたる柔らかい感触…。
一瞬理性が蒸発しそうになるのを耐えながら榛名に提案する。
「悪いが、別の物を掴んでてくれないか?」
「え?」
「しゃべるな、口を閉じていろ。…舌を噛むぞ?」
踏切が開くのと同時に急発進し、立ち漕ぎで一気に加速する。
幸せ過ぎる感触と劣情を振り払うようにガムシャラにペダルを漕ぎ、その甲斐あって閉園時間ぎりぎりに到着した。
「遅いですよ、ハルちゃん。」
「ごめん、雪姉。忘れてたワケじゃなんだけど。」
「忙しいのは分かるけど、時間は守らないとダメ。武蔵君、待ちくたびれて寝ちゃったわよ?」
「あはは…。かたじけない…。」
「ほら、アンタも彼氏ならちゃんとハルちゃんを支えないと…」
「そうだな、俺の監督不行き届きだ。」
(え?もしかして今私さりげなく外堀を埋められた…?ご近所に噂されるやつ…?)
「えっと…、ありがとうございました。さようなら。」
眠ってしまっている武蔵をおぶりながら足早に帰ろうとする。
「荷物を忘れているぞ、榛名。」
「…あ」
荷台に乗せて貰った時、鞄を自転車の籠に入れていたのを忘れていた。
受け取ろうにも、弟とその荷物で両手がふさがっている…
「家まで送ってやる。」
「……お言葉に甘えて…。」
厚意を断る口実も言い訳も思いつかず、後ろからの生暖かい視線を受けながら二人並んで帰路についた。
「それにしても、次の土曜にはいよいよ決勝だな。短かったような、長かったような…」
「うん。当然というかやっぱりっていうか…、相手はあの帝国だよ。」
「……。」
「緊張してる?」
「あぁ。」
「え?」
「ん?」
「意外…。もっとクールだと思ってた。」
「…カッコつけてそう振舞っているだけだ。基本的に俺は心配性で、割とビビりだよ。」
「へー。…カッコ悪」
「………」
悔しいけど何も言い返せなさそうに榛名を見つめる政道。
「まぁでも、その方が助かるかも。
私は無鉄砲で大雑把だからさ、足りない所をみっちゃんが補ってくれるならお互い支え合えるいい関け、い…に…?」
榛名の顔がみるみるうちに紅くなる。
マズい、今のは受け取りようによっては「そういう意味」に聞こえはしないか。
いや、単なる考えすぎか。
ならば今の反応は明らかに意識しているような感じに見えてしまわないか。
ぐるぐると思考が混乱してくる。
おまけに足元がふらついて…。
「榛名…!!!」
「…!?」
突如足元が大きくグラつき、転倒しそうになる。
(今尻もちをついちゃいけない!)
背中の弟を庇い、咄嗟に手を付いた。瞬間、
「…ぐッ!」
右手首に走る激痛。
榛名と武蔵、二人分の体重を右手だけで支えた代償は大きかった。
「大丈夫か!?」
政道が駆け寄り、榛名の右手を見る。
「…うん、平気平気。びっくりしたね。また地震?最近多いよね~。」
と必死に話題を逸らして誤魔化そうとする。
「う…ん。姉ちゃん?」
おぶられていた武蔵は、今の衝撃で流石に目が覚めたらしい。
「ああ、ごめん。起きちゃった?」
ゆっくりと武蔵を降ろそうとした。
その時、背中を強く押されて榛名と武蔵は突き飛ばされる。
突然のことで受け身も取れず、榛名は盛大に転んだ。
「ッ!いきなり…」
ドンッ!!
次いで訪れる大きな音。そして、自動車のブレーキ音。
先ほどまで政道がいた場所に、彼はいない。
ドサッ
不吉な音が聞こえる。
その音の発生源では、赤い水たまりの中に横たわる少年が見えた。
「あ…」
瞬間、何も見えなくなった。
何も聞こえなくなった。
何も分からなかった。
脳が、心が、現実を理解することを拒んでいた。
続きまして榛名ちゃん中心のお話でした。
10コ離れた弟を溺愛する、ちょっとドジな感じのお姉ちゃんです。
基本的には文武両道な感じの優等生ですが、生粋のドジっ子です。
でも人当たりが良くて明るい子なのでみんなから好かれるタイプ…という感じに仕立てました。
そんな彼女に好意を抱く男子も多いとか…?
チラっと出てきた保育園の「雪姉」は政道君の叔母という設定です。
世間って狭いんですよね。
特に舞台は島ですからね。(具体的にどういう島かは決めてないです。「瀬戸内海にいくつかある島のどれか」くらいの認識で…)
それではまた、次のお話で