ウマ娘 ワールドダービー 婚活RTA 《2:40:00》 作:婚活したのか、俺以外のヤツと?
いやー毎日投稿はキツイっす……(本音)
1ヶ月以内には再会できるように頑張ります。
「変じゃないよね? 本当に僕! 変な恰好じゃないよね!? 寝ぐせとかもないよね!?」
「大丈夫だってば、よく似合ってるよ。何を不安がるのかな……ね、マルゼン?」
「ええ! チョベリグよ!! ゴイスーでシャレオツに決まってるわよスイちゃん!」
「その評価が1番僕としては不安なんだけどぉ!?」
しつこく何度もバースイマジナリーがデートのためのメイクや衣装を見繕った状態の事をシービー相手にしつこく質問し続ける。なぜそこまでしつこく聞くのか、その理由の大半はマルゼンスキーに似合っていると言われていることだった。
マルゼンスキー、彼女は少し……というかだいぶ流行がズレて……否、遅れている。ナウい言葉だのナウなヤングにバカ受けだの、どう聞いても死語な言葉ばかり使うから恰好やメイクすら一昔前にされているのではないか、という不安が残るのだ。とはいえ、マルゼンスキーの美的センスはかなりのものだ。オシャレ自体はわかっているし、そのウマ娘に似合う衣服やメイクを見繕えるぐらいはできる。その点は間違いなく信頼できるはず。なのだが、やっぱり言動がそれらを不安にさせてしまっているのである。油断すると肩パッド入れられそうとか警戒の色がどうしてもバースイマジナリーには出てしまうのだ。
まあ元はと言えば、ミスターシービーにしつこくどれを着ていけばいいかとかそういう事を聞きまくっていたバースイマジナリーが悪いのだが。早い話、しつこく聞かれたシービーが私そういうの専門外だからマルゼンに聞いて。とマルゼンスキーを呼び出したのが原因なので、大本を辿れば、バースイマジナリーが悪いと言われても仕方ないのである。
「ま、本当に大丈夫だよ? メイクも、衣装もバッチリだから……自信を出していきなよ~?」
「そうね! スイちゃんならきっとうまくいくわ! 応援しちゃう!!」
「そ、そうかい? うん……頑張ってみるよ!」
パチン、と自分の頬を叩き気合を入れていざ戦場へ! と言わんばかりの様子で出かけるバースイマジナリー。そんな彼女を見届けるミスターシービーとマルゼンスキーだったが……
「ところでシービーちゃん」
「ん? なに、マルゼン?」
引っかかっていたことを気にして、マルゼンスキーはミスターシービーを見つめながら問う。
「
「そうだね」
「
「うん、出走するね」
「……なんでここにいるの?」
「んー、まあ大丈夫でしょ。トレーナーには一報入れておいたし」
「シービーちゃんのトレーナーさんが頭痛めてる姿が目に浮かぶわねぇ……」
彼女のけろっとした顔を見てマルゼンスキーは思わず顔を引き攣らせる。多分私と同じような顔、彼女のトレーナーもしてるんだろうなぁ……と考えて。あれ、これ私に白羽の矢が立つ……? とマルゼンスキーは思い至った。その予想は的中し、彼女の携帯に『ミスターシービーが居たらひっ捕らえて連れてきて 東条』というメッセージが送信されたらしい。そのあとミスターシービーとマルゼンスキーの全速力鬼ごっこが始まったことや、タッちゃん*1の助手席に麻袋で拘束されて乗せられたまま出荷されたミスターシービーと配送するマルゼンスキーが居たという話は全くの余談である。
────
ところ変わってバースイマジナリーはトレーナーとのデートの待ち合わせにやってきた。
「たしかここでいいんだよね? えーっと……そうだ、LANEで連絡しないと『今着きました』……と」
到着してすぐに連絡を入れる、するとすぐにトレーナーから『すぐそこの噴水前にいる』と返信がやってくる。そのメッセージを頼りにきょろきょろと周囲を見渡すとあっさりと隋川の姿を見つける。ぱぁっと表情を輝かせてトレーナーのもとに駆け寄る姿は大型犬というべきだろう。
「トレーナー、ごめん! 待たせたかい?」
「いや、そんな待ってないから大丈────」
「……トレーナー?」
バースイマジナリーの言葉に気にするなと返そうとしてピシリ、と隋川は固まる。そんな様子を見て、バースイマジナリーは訝しげな顔をする。そして、もしかして似合ってないのでは!? と彼女は申し訳なさそうに、恥ずかしそうに頭を下げる。
「ご、ごめん! あんまりしっかり決められなくて……似合って、ないよね……」
「ああいや、違うその逆!! めっちゃ似合ってる! てかすごい可愛い! 普段と全然違うから見違えたというか、困惑しただけであってって何言ってんだろうな俺! ごめんな!!」
慌ててバースイマジナリーの謝罪を止めようと言葉を返すが、思った以上に隋川自身も焦っていたのだろう、本音がボロボロ出ていた。当然それが本心からだと悟ったバースイマジナリーは────
「────ッ!? ッ!?!?!?」
顔を真っ赤にして口を金魚のようにぱくぱくさせていた。控えめに言っても彼女はきれいなウマ娘だ。美麗と言ってもいい。その身長やスタイル、性格を見ればどこか大人びている少女であったというのに衣装1つでここまで少女らしく、女の子らしくなるのかと、トレーナーは驚愕していた。
金の髪はさっぱりしたポニーテールに束ねられていて、うっすらと仕上げられた化粧で彼女の綺麗な顔は少し大人っぽく見えるようになっている。しかし、その大人っぽい色気を出す化粧に相反するように着込んだ衣装はフリルのついた可愛らしい、女の子らしいものとなっていた。それが普段とのギャップ差を感じて、妙に愛おしく思ってしまう隋川だった。
「あー……うん、本当にすごく似合ってるぞ。バース」
「そ、そうかい……? うん、それならその……嬉しい……」
お互い照れくさいのかあまり会話が長続きせずに気まずい沈黙が流れる。やばい、話が続かない。そう焦りはじめた直後に……
「あーもう! 僕のキャラじゃないねこれ!! トレーナー! 早速だけどデートに行こう!」
バースイマジナリーが声を上げてやけくそ気味に、トレーナーの手を握る。
「あ、おい! バース!? お前ちょっと掛かってないか!?」
「そんなことないよ! 僕は極めて冷静だとも!!」
いやそれ冷静じゃないやつの台詞────と言う事もできず、隋川はバースイマジナリーに引っ張られていった。諸行無常、人間がウマ娘に力で勝てるわけがないのである。
ぶらぶらと、バースイマジナリーに引っ張られるままにお店や公園に連れ回される隋川、そうして休憩のために立ち寄った喫茶店でちょっとした事件が起きた。
「! トレーナー、ここに入ってみよう! ちょっと疲れたし休憩がてら! ね!」
「いやこちとら振り回されてめっちゃ疲れてるんだが……」
「いいからいいから!」
グイグイと引っ張られて喫茶店に入ることになった2人。
「いらっしゃいませ! お二人様でしょうか?」
「はい、二人です」
「空いてる席にどうぞ~」
「はーい、さあ、いこう!」
「……はいはい」
店員に案内されてしまえばもう覚悟を決めるしかない。とトレーナーは渋々諦めて空いていた2人用の席に座る。
「あーつかれた……」
「おじさんくさいよ? トレーナー」
「元気いっぱいなウマ娘に勝てるやつはなかなかいないっての……」
隋川の疲れた表情に苦笑するバースイマジナリー。その言葉に対して反論しながら一息つく。そうしてメニュー表を手に取り確認した瞬間、トレーナーの手が止まる。
そこにははっきりと、『カップル限定スイーツ特集!』と書かれていたのである。
「バース、お前……これのためにわざわざ入ったな?」
「さて、なんのことかなー? あ、僕このパフェね?」
「……お前な」
すっとぼけながら、わざわざカップル限定のパフェを指差すバースイマジナリーに呆れながらも……こうなった彼女には敵わないと諦めたらしく店員にそのパフェを注文する隋川であった。
「お待たせしました、カップルパフェです。ごゆっくりお楽しみください~」
「いやお楽しみってなに」
ごゆっくりどうぞじゃなくてお楽しみって、ナニをしろと!? とツッコミを入れたかったが、迷惑をかけるわけにもいかないので困ったように顔を顰めるのであった。
「それじゃあ、いただきますっ♪ あむっ、んーっ! 美味しいッ♪」
「お気に召したならよかったよ」
美味しそうにパフェをほおばるバースイマジナリーの表情を見て頼んで良かったと思いつつ、その幸せそうな笑みに思わず見惚れてしまう。
「ふふ、どうしたんだい? もしかして……欲しいのかい?」
「いや、別にそういうわけじゃ……」
一応カップルパフェと名義してるだけあって、スプーンはもう1つ用意されていたりするのだが食べるつもりはなかった。早い話、いっぱい食べるバースイマジナリーの姿を見たかっただけである。
「まあまあ、遠慮せずに。ほら、あーん?」
「いや、ちょ……いいって!?」
「あーん」
「…………あーん」
バースイマジナリーの圧に屈した隋川は渋々と口を開けて、彼女が掬ったパフェを口の中に放り込む。
舌の中でとけるクリームや、プリンの味が甘く口の中に広がっていく。
「あ、これ旨いな」
「でしょー? 甘くて美味しいよね。って、あ……」
スプーンで再びパフェを掬って食べようとしたところで、バースイマジナリーは何かに気付いたように手が止まる。
「ん? どうした?」
「う、ううん! なんでもないよ!?」
気になって聞いてみた隋川に対して、顔を真っ赤にしながらなんでもないと返すバースイマジナリー。何か隠してると思ったが、別に悪い方向の事を隠しているわけではなさそうだと判断して触れないようにしようとしたところで、なぜ彼女の手が止まったのか、その原因に気付く。
「……あ、間接キス」
「────ッ!!!」
隋川にそう言われてしまい、改めて事実を再確認したバースイマジナリーはボフンと爆発したように顔を真っ赤に染めて俯かせる。さすがに羞恥心には耐えられなかったらしい。
「ふーん、ほーん??? バースは意外と初心か……」
「わーっ! わーっ!?」
これは良い反撃のネタを手に入れた、と隋川はニヤニヤと笑ってバースイマジナリーをからかう。普段は弄ぼうとしてくる側が、こうして弄ばれるのはなんだか新鮮でありトレーナーも思わずノリノリで彼女を弄っていく。
「ほら、あーん。だろ、バース?」
「あぅっ……ず、ずるいなトレーナー……!!」
「さあてな、どっかの誰かさんがいっつもからかってくる事へのお返しだとかそういうことは一切考えてないぞ?」
「それ絶対考えてるやつだよねっ!?」
結局このあと、バースイマジナリーは隋川にパフェを食べ終わって会計を済ませるまで、延々と弄られ続けたのであった。哀れなり、人生経験が豊富な大人には思春期の少女でしかないウマ娘は勝てないのである。
────
「んー! いやー遊んだね! イルミネーションも綺麗だったし……本当に楽しかった!」
「そうか、満足できたならよかったよ」
日が落ちて、夜になった街から出て少し外れた人気のないところを歩くバースイマジナリーと隋川 零斗。概ねデートとしては大成功だった。
「トレーナー、今日はありがとう」
「おいおい、どうした急に」
「言いたくなっただけさ。君には貰ってばかりだからね、お礼ぐらいは言わないと」
「……それはこっちの台詞だよ。俺だってお前にたくさん貰ったものがある」
「ふふ、そっか……」
少し照れくさそうに、トレーナーの言葉を聞いてにへらと頬を緩ませる。会話が途切れて沈黙が続いたというのに、なんだか少し心地良い。そう2人は感じていた。
「……あー、バース」
「ん? なにかな、トレーナー?」
「あーその、なんだ……クリスマスプレゼント」
恥ずかしくて誤魔化そうとも考えたが、いい誤魔化し方が思いつかなかったようで……隋川は素直にそう告げてラッピングされた箱を渡す。
「……僕に?」
「渡したら悪いか?」
「ううん、嬉しいけど……開けてもいい?」
「いいぞ、破いてもいい」
「さすがにしないよ、申し訳ないもん」
トレーナーに許可をもらったバースイマジナリーは、丁寧にラッピングを剥がしてプレゼントの中身を確認する。
「これは……!?」
そこには、彼女の耳飾りと似た、金色の丸い形をしたピアスがあった。
「トレーナー、これを僕に……?」
「あー……まあ、なんだ。お世話になってる礼にな?」
「参ったな……僕からすぐに返せるクリスマスプレゼントはないよ?」
「なくてもいいよ、阪神ジュベナイルフィリーズ……G1レース勝ってくれた時点でそれぐらいのを貰ったわけだしな」
バースイマジナリーは心が弾むような感覚を覚えながらも冷静に努めようとして、返事をする。ただ、頬はにやけっぱなしだが。
「それだけじゃ終わらないぞ? ほれ、そのピアス、線に沿って折ってみろ」
「え!? 壊れちゃうよ!?」
「いいからいいから」
「じゃ、じゃあ……折るよ……?」
言われるがままに、バースイマジナリーは渡されたピアスをパキンと折ってみせる。────すると満月から半月模様のピアスに変わっていた。
「あれ……ピアス……2つ?」
「お揃いにもできるってやつだけど……さすがにダサかったか?」
「……! ううん、そんなことないよ! すごく……嬉しい……! ありがとう! トレーナー!!」
「あ、ああ……えっと、気に入ってくれたならよかった……」
花が咲いたような笑顔を見せる彼女を見て、隋川はドキッとする。落ち着け、相手は学生だぞ? そう自分に言い聞かせてなんとか我を保つ。
「でも困ったな……僕がこれに返せるものが本当にないんだよ……こんなに素敵なものを貰ったんだ、やっぱりなにかお返しをしたい」
「いいってば、俺が好きで買ってプレゼントしたんだし、気にする必要は……」
「────あ、1つあるかも」
ない、そう言いかけた瞬間にバースイマジナリーは何か思いついたように声を漏らす。
「え?」
「あ、いや……えっと、僕が今すぐ君に返せるもの、1つだけあるなーって思って……」
「そうなのか?」
「えっと……その……目を瞑ってくれないかな、トレーナー。べ、べつにやましいことをしたりするつもりはないからね!?」
「いやそれやるやつの反応。……これでいいか?」
バースの反応にそうツッコミを入れながらも苦笑いをして、ゆっくりと目を閉じる。
「ありがとう、それじゃあ……失礼するね……?」
「失礼ってお前なに────」
「んっ……」
「────を……?」
その瞬間、隋川の頬に柔らかい感触が伝わった。どこか湿っているようでぷるんとした柔らかい感覚……って!?
「ば、バースお前なにして!?」
「……ふふ、内緒だよ♪ 僕からのクリスマスプレゼント……────大事にしてね?」
「な、ぁ……!?」
妖艶に微笑む彼女を見て、顔を真っ赤にしてしまう。まさに魔性という言い方が似合うようなそんな笑みに彼は吸い込まれそうになって────
(ああ……これは、とんでもないウマ娘を相手取ったのかもしれないな……)
困ったように苦笑いした。どうやら思った以上に、自分はバースイマジナリーというウマ娘にゾッコンだったらしい。
そんな教訓を、隋川 零斗は学んだのであった。
一応ジュニア級(第1部)完結なので感想と評価をください(乞食)