ウマ娘 ワールドダービー 婚活RTA 《2:40:00》   作:婚活したのか、俺以外のヤツと?

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ミスターシービーが引けなかったので初投稿です。

今回は特に物語に動きは)ないです。


EP.4 デビュー戦

「緊張してそうだな、バース」

 

「ああ……少し、緊張してるかな。実際にレース場に来た事は何度もある。だけど……こうして、自分が走る側になるのは初めてだからね。それに……1番人気と言われてしまえばプレッシャーも大きくなるさ」

 

 そうバースイマジナリーにとって、今日が初めての公式レースだ。併走トレーニングなんかをすればすぐにヒトが集まる彼女であってと、不特定多数の人に見られることになる正式なレースは初経験なのだ。

 しかも1番人気のウマ娘。ファンやマスメディアからの期待も大きいとなるとやはり緊張も大きくなる。

 

「それもそうか……体調はどうだ?」

 

「体調は万全だよ、100%とは言えないけど、僕の全力は出せると思う」

 

「了解、じゃあ俺から特に言う事はないな。盛大にぶち抜いてこい」

 

「ふふ、そうさせてもらうよ。まあ、先に……パドックでのお披露目があるけどね?」

 

 トレーナーの言葉に軽く頷きつつも、訂正するようににっこりと微笑む。

 

「おっと……ちょっと先取りすぎたか。俺も緊張してるな……手順がすっ飛んでる」

 

「お互い様だね、トレーナー」

 

 顔を見合わせて困ったように苦笑い。相も変わらず仲が良い。ミスターシービーがここにいたら呆れた顔をしていたであろうぐらいには。

 

「……それはそうとさ」

 

「? なんだい、トレーナー?」

 

「ゼッケンきつくないか、それ?」

 

「……正直ちょっとキツいかな」

 

 今にもはちきれそうというか、破れてしまいそうな『4番 バースイマジナリー』と書かれたゼッケンを見つめて彼女は苦笑した。

 彼女は身長も体格も大きい。そのため、URA側が彼女のサイズに合うゼッケンを製作できていなかったのがこの問題を引き起こしたのである。

 そもそも、180cm以上の身長のウマ娘が滅多にいないので仕方ないことではあったりするのだが。

 

「……次からは大きいサイズ用意してもらえるように打診しておくよ」

 

「ありがとう、助かるよトレーナー」

 

 流石に色々と、まずい。内心そう思いつつも口には出さなかった。だってあまりにも……思春期の子供にとっては目に毒なぐらい、はちきれそうな体操服とゼッケンを見せられているのだから。

 ポーカーフェイスを貫いただけ、褒められてもいいんじゃないだろうか。隋川 零斗はそう思った。

 

「……?」

 

 スーッと視線を逸らすトレーナーに首を傾げる。まだ少しだけ、視線には疎いバースイマジナリーであった。

 

「さて、時間だ。行ってこい、バース」

 

「ああ、行ってくるよ。次に会話をする時は……君に勝利を届けたあとだ」

 

 そうトレーナーに対してウインクをして、バースイマジナリーはパドックに向かうのだった。

 

 ────────

 

『ここ中山レース場で行われますデビュー戦。今日は絶好の良バ場となりました』

 

『晴天がウマ娘たちを祝福しているようですね』

 

『今年デビューのウマ娘たちの中から生まれるスターはいったい誰になるのでしょうか。注目の一戦です』

 

『一番人気はやはり譲らないか。バースイマジナリーです』

 

 デビュー戦、それはウマ娘たちにとって初めての公式戦。故に、負けられないと集中を高めるものもいれば、ガチガチに緊張するものもいた。

 バースイマジナリーは軽く緊張をしつつも、負けられないと気合を入れていた。……当然、彼女ほど大きなウマ娘が集中を高めていれば溢れ出る威圧感というものは凄まじいもので。出走前だというのに、彼女の圧に尻込みするウマ娘もいるほどだった。

 

『各ウマ娘、ゲートインが完了。阪神メイクデビュー、芝1800m……スタートしました!!』

 

 ガコン、という音と共にウマ娘たちが一斉に飛び出す。バースイマジナリーもそれに合わせて好スタートを決めていた。

 レースの展開は概ねトレーナーの予想通りに動いていた。7番と2番が逃げを打ち、ハナを奪い合っていた。

 

(やはり、トレーナーの予想通りの展開になった。すごいな……選抜レースを見ただけだというのに、どう彼女達が動くかも予想を立てたなんて……!)

 

 バースイマジナリーは走りながら、トレーナーのレース予想に感服する。レースの前日に、トレーナーはある程度どういう展開になるかを予想してそれを彼女に伝えていたのだ。

 そしてその予想通りになったのだから、バースイマジナリーだって驚くというもの。

 

(だったら……僕は、最終コーナー寸前まで息を潜める。先頭集団で大人しく……差すタイミングを図る)

 

 息を整え、バースイマジナリーは先頭集団の中に混ざり、ゆっくりと機会を伺うことにした。

 

 そうしてほかのウマ娘と走っていれば見えてくるものもある。

 

(さすがに失礼な話だけど……マルゼンやシービー、ルドルフと比較すると遅い……それでいて、圧がない。緩いわけでもないけれど、彼女達ほどの圧は感じない)

 

 それは当然のことだ。スーパーカー、三冠ウマ娘、皇帝と比較すれば彼女達が見劣りするのは普通の事なのだ。なにせ経験値が違う、幾たびのレースを走ってきたウマ娘と今日が初めてのレースのウマ娘。比較すれば当然緩く感じてしまうものだ。

 

(それでも……彼女達の勝ちたいという意思は、不思議と伝わってくる。そうか……これがレースか……!)

 

 圧は感じられなくとも、その熱い想いは伝わるものだ。バースイマジナリーは思わず、笑みを浮かべた。楽しいのだ。彼女達の想いを肌で感じながら競い合うのが。

 そしてなにより……彼女達の想いに感化されて自分も胸に隠している想いを曝け出したくなる。否、既にもう曝け出していた。

 

(君たちの勝ちたいという思いは理解できる。僕だってそうだ、勝利を譲りたくない……悪いけど、本気で勝ちに行く────)

 

 自分のために? 違う、それ以上にトレーナーのために。トレーナーに夢を見てもらうために。最強のウマ娘を育て上げたとそう、胸を張ってもらうために。

 

「見えた────ここッ!!」

 

 マイルのレースはウマ娘にとっては短い方だ。既に、第3コーナーにまで到達していたからこそ、バースイマジナリーは仕掛けた。

 

『おっとここで1番人気! バースイマジナリー仕掛けた!! 仕掛けました!! 第3コーナーからいきなり仕掛けたぞ!!』

 

「この勝負、勝つのは僕だッ!!」

 

「ッ……負けるかぁ!!」

 

 バースイマジナリーに追従するように、他のウマ娘たちも次々と仕掛けていく。デビュー戦を負けた瞬間、彼女達は一つ出遅れるのだ。そして、無敗という夢が途絶える。シンボリルドルフが今、ダービーまでを無敗で取った。故に、彼女達もまたそういうものに憧れているのだ。次は自分がと、全力なのだ。だから負けられない、何も始めないまま終わりたくない、勝ちたい。そういう想いを抱いて、スパートをかける。だが、それでも────

 

「届かないッ……なんでッ……!?」

 

 地力の差、そして天性の才というものには届かない。

 バースイマジナリーは、大きなウマ娘だ。身長はもちろん、脚も長い。故に、その一歩一歩が大きいのだ。走るたびに、芝がへこむ、沈む。そして少しずつバースイマジナリーより後続のウマ娘は引き離されていく。

 

 ハナを走るウマ娘達は、後ろからの圧を感じてペースを上げる。右も左も理解していないけれど、それでもこのままのペースだと追いつかれるということだけは本能的に理解できた。

 だから必死に走る、逃げる。勝ちたいから、全速力でありったけを振り絞る。

 

 でも……

 

「────ひッ」

 

「は、ァァァアアアアッ!!」

 

 彼女の圧には敵わなかった。その巨体と、獰猛にも思える笑みを浮かべた表情に、横に並ばれた二人の逃げウマ娘は恐怖を覚えた。

 バースイマジナリーの絶対に勝つという執念にも似た意志には、勝てなかった。

 

『バースイマジナリーがハナを奪った! そして伸びる伸びる!! 後ろをぐんぐんと突き放す!! 誰も届かない届かせない!! 圧倒的だ! 圧倒的すぎるバースイマジナリー!!』

 

 そうなれば、後はもうバースイマジナリーの独壇場だ。誰も彼女に追いつけない。それどころか、差をつけられていく。

 

『絶対』その言葉が、ウマ娘に……デビュー戦を見ていた観客たちの脳内に過った。シンボリルドルフが『このウマ娘には絶対がある』と言われたように、彼女にもまた『絶対がある』のではないか。そう思わせるには充分だった。

 

『バースイマジナリー! 突き放す突き放す!! 余裕だ、余裕をみせて今大差でゴールイン!! 勝ったのはバースイマジナリー!!』

 

 大差というには、あまりにもバ身差が離れていたから。文字通り『格の違い』を、見せつけられたのだ。

 観客席は大いに盛り上がった。当然だ、これほどの圧倒的な強さのウマ娘を見てしまえば彼らは虜になるだろう。

 

「ああ……楽しかった」

 

 彼女の言葉に、絶望するウマ娘もいた。次は勝つと奮い立つものもいた。彼女たちの夢の一つ。それを潰したことを理解しながらも……バースイマジナリーは笑っていた。それが勝者の責務だから。

 

「いい勝負だったよ。また走ろう」

 

 それはもはや『魔王』というべきだろう。余裕の笑みを見せる彼女は紛れもなくレベルが違うのだと、思い知らさせた。

 

 

 ────────

 

 圧倒的な強さを見せたバースイマジナリー、さすがに圧巻されたのだろう顔を引き攣らせて隋川は彼女を出迎える。

 

「ただいま……ってあれ? どうしたんだい、トレーナー?」

 

「ああいや……お前やっぱすげえな、バース」

 

「ふふ、当然だろう? 君のウマ娘は最強なんだから」

 

「選抜レースとデビュー戦、連続で大差勝ちとは恐れ入るよ」

 

 彼女の顔を見ながら、本当にバースイマジナリーが自分の担当で良かったとそう心の底から思った。もし彼女がライバルのウマ娘であったなら絶望していただろう。

 

「……それはそうと」

 

「なんだい?」

 

「……近い、バース」

 

「あっ……え、えっと……みた……?」

 

 当然、走り切った後であれば体操服は汗でびっしょりなわけで。トレーナーの視線に気付いたバースは顔を赤くして少し距離を離す。

 

「……ちょっとだけ」

 

「トレーナーのえっち……」

 

「ぐっ……誰のせいだよ誰の!」

 

 距離が近いバースが悪いのであって俺は悪くないぞ!? とアピールしながらも、謝罪をする。

 

「はぁ……悪かった、でもバースも気を付けろよ? あんまり無防備すぎるのも良くないからな?」

 

「僕は、トレーナー相手なら別にいいけど……」

 

「俺が良くないんだっての、年頃なんだからちゃんと線引きはしろ」

 

「あいたっ。……はーい」

 

 デコピンをされ、注意されたバースは渋々と頷いた。

 

「ほら、ウイニングライブがまだ残ってるだろ? 着替えていってこい」

 

「おっと、そうだった。それじゃあトレーナーさん。また後でね、ウイニングライブでもたっぷり魅了してあげるね?」

 

「言っとけ」

 

 とっくに魅了されている隋川からすればそんなもの意味はないのだが、言ったら絶対にバースイマジナリーが調子に乗ってくると理解しているので彼は何も言わずに彼女を見届けて観客席の方に移動するのだった。

 その肝心なウイニングライブはといえば……バースイマジナリーの綺麗でキレのあるダンスとファンサービス旺盛な対応に、とても好評だったらしい。彼女のスタイルに魅了された者も居たらしいが、それは余談である。

 

 こうしてバースイマジナリーのデビュー戦は圧倒的大差で勝利を迎えた。『絶対女王』と後に呼ばれるようになった彼女の伝説の一つとして、このデビュー戦は延々と語り継がれることになったらしい。

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