えんだーりりーず! ~リリィの秘密の日記帳~ 作:ひょうたんふくろう
今日はようやく、黒騎士が復帰しました。でも、せっかく黒騎士の病気が治ったのに、みんなちょっと変な感じ(?)で黒騎士を見ていたのを覚えています。あと、ファーデンさんはおなかを抱えてゲラゲラと笑っていました。何か面白いことでもあったのかな?
そうそう、ファーデンさんと言えば、今日はファーデンさんが楽しそうに鼻歌を歌っていました。『かわいいかわいい、愛しのミーリエル~♪』って歌です。初めて聞くメロディでとっても愉快だったので、せっかくなのでリリィも一緒に歌わせてもらいました。
ないしょだけど、照れて恥ずかしそうにしているミーリエルがとってもかわいかったです!
……うん、リリィ今日もたくさん書いた! 今日はこの辺で、おしまい!
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リリィへ。
六日目にして早くも面倒くさくなってきたな? たくさん書いた、と言う割には今までの半分の量も無いぞ。どんなことであれ、一度始めた習慣を継続するのは難しいのはこの世の常だが、しかしもう少し頑張ってみないか? サボるにしたってもう少し体裁を繕う必要があると私には思える。
そうだ、少しユリウスに相談してみると良い。あいつは元騎士団長なのだから、部下の訓練を継続させる方法にも熟知していることだろう。日記を書くのも剣の修練も継続と言う意味では根は同じなのだから、きっと助けになるはずだ。
さて、しょうがないので今日ばかりは私がしっかり記述していこうと思う。
今日は何故だかリリィが非常に上機嫌であった。あの子はいつだって明るく無邪気だが、今日は特にそれが顕著だったと思う。にこにことほほ笑みながら、らん、らん、ららん……と鼻歌を歌っており、私も──おそらくほかの連中も、ここが滅び荒廃した世界であることを、一瞬とはいえ忘れ去っていた。
あのシーグリッドが、どさくさに紛れてシルヴァに肩を抱かれても、その足を強かに踏みつけるだけに留めていたと言えば、それがどれだけ優しい光景だったのかわかってくれると思う。
しかし、リリィのあの歌は一体どこで覚えたものなのか。リリィ自身、自分がどこであの歌を覚えたのかはわからないらしい。なんとなく頭に浮かんだメロディをそのまま口ずさんでいる、と言っていた。
不思議なのは、あの旋律は私達にもどこか聞き覚えがあるものだったという所だろう。シーグリッドやシルヴァはもちろん、ヘニールやウルヴまで。文字通り、全員がどこかで聞いた覚えがあるというのだ。
先代の白巫女が歌っていたのか、はたまた何か別の理由があるのか。気になるのは事実だが、考えても答えは出そうにない。
さて、せっかく私たちがリリィの可愛らしい歌声に心を癒していたというのに、それを邪魔するやつがいた。他でもないファーデンだ。
あの野郎、リリィが無邪気なことをいいことに、『僕も歌に混ぜてほしいな!』などとぬけぬけと抜かして……まぁ、酷い歌を歌っていたよ。いや、あれを歌と形容するのは歌に失礼か。
いや、酷く心外と言うか信じがたいことに、ファーデンの声そのものは綺麗で歌もうまいのだ。なのに、その歌詞だけがあまりにも酷くて全てを帳消しにしてしまっている。それをあえてリリィの歌にかぶせてくるというのだから、あの男の底意地の悪さがうかがえるというものだ。
例えるなら、上等のステーキに上等のはちみつをブチまけるかのような愚行。もっと言えば、そんな惨状に悲しむ人間を見て、ファーデンは心底おかしそうにゲラゲラ笑うことが出来るのだ。あいつはそういうやつなのである。
やめよう。少々愚痴っぽくなった。ただ一つだけ知っておいてほしいのは……リリィのあの歌声は、とても可愛らしく愛おしいものだった、ということである。
──ファーデンの歌が上手いだって? いやあいつ普通に下手くそだよ。
──あまりにもセンスが無い。性格の悪さが歌にも出ている。
──シンプルにダサい。
──ごめんなさい、これに関しては私も擁護できないです……。
【TIPS】
イレイェンの筆跡
シルヴァの筆跡
シーグリッドの筆跡