えんだーりりーず! ~リリィの秘密の日記帳~ 作:ひょうたんふくろう
今日は頑張って、日記を書こうと思います。
昨日が昨日で大変だったので、リリィもみんなもお疲れ気味でした。特にシーグリッドとシルヴァはかなりぐったりとしていて、リリィが支えてあげなきゃ立っているのもやっとという感じです。
なので、今日はみんなでお休みと言うことにして、気分転換がてらに馬車でドライブすることにしました。
あちこちがボロボロになってしまっているこの国だけれど、それでも大自然の綺麗な景色はまだ残っています。リリィは特に魔術協会の近くの森が好きなので、そのあたりを中心にゆったりと景色を楽しみました。
あの、綺麗に輝く植物がリリィのお気に入り。どうせならもっといろんなところで見たいけれど……あの付近にしか生えているのを見たことが無いな。 日当たり、ってことは無いだろうし、お水が温度か、その辺の理由なのかも?
イレイェンならわかるのかな? それとも案外、ウルヴくんが詳しかったりして。ウルヴくん、お花が大好きだから。いつもね、綺麗なお花を見つけると真っ先にリリィに教えてくれるんだよ!
うーん、ちょっと短いけど、まだ昨日の疲れが残っているし今日はこのくらいにしておこうかな? 明日からはもうちょっと深いところを探索しようっていう話にもなっていたし。気分転換がしっかりできたのだから、体もしっかり休めないと……だよね?
うん、リリィ、頑張った! 今日はこの辺で、おしまい!
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毎度のことながら、あの御者はいったい何者なのだろうか? 初めて会った時からただものではないと思っていたが、それがいよいよ極まってきた感じがする。呼べば幾許もしないうちに風のように現れて、そして私たちを的確に目的地へと連れて行ってくれる……その存在自体は非常に頼もしいのだが。
考えても見てほしい。こうも荒れ放題のこの国の道……いや、もはや道とすら呼べない場所であっても、あの御者はいつも通りすさまじい速度で馬を駆る……駆る、でいいのか? 馬車も馬も御者も一体化しているから正しい表現がよくわからない。
ともかく、荒道だろうと獣道だろうと、なんなら崖の上だろうが塔の上だろうがあの御者は当たり前のように突き進む。水中を進んだ先の場所であってもやってきたときは、果たして彼が本当に御者なのか疑ったくらいだ。
水中どころか、凄まじい穢れ溜まりの先であっても平然としているからな彼。しかもそれでいて、一度たりとも正気を失ったりはしていない。私が知る限り、あれほどの穢れに侵されてなお……白巫女による浄化を受けてすらいないのに狂っていないのは、彼しかいない。
いや、待てよ?
改めて振り返ると、あいつ普段穢者にどうやって対応しているんだ? なぜ我々は安全に移動が出来ているんだ?
馬車でそのまま突っ込む……? いや、無理だ。巨躯を持つ穢者は珍しくもない。そうでなくとも穢者は尋常ならざる怪力を持つものが多いし、馬車くらいであれば簡単に止められてしまうだろう。
そして、遠距離攻撃をしてくる穢者も多い。道を歩ているだけで本当に泣きそうなくらいに集中放火される。
……えっ? あの御者、それなのに普通にこの危険地帯を行き来してるのか?
どんな場所であっても必ずやってくるというその行動力。おそらくは穢者を倒している(あるいは回避している?)その対応力。そして何より、それを今まで私たちに悟らせすらしなかったという御者としてのプロ意識。
もしかしたら、私たちの中で一番強いのはあの御者なのかもしれない。もう新しい場所の探索はあいつに任せた方がよくない?
おっといけない、忘れる所だった。
リリィへ。
実験体の壺の中に日記を隠すのはやめなさい。というか最近、日記を書くのよりも隠すほうが楽しくなってきてないか? 日記はかくれんぼのための道具じゃないということを、忘れないようにな。
──確かに御者殿は謎だらけだな……。影に潜んで確実に事を成すその実力、暗部に欲しいくらいだ。
──そう言えば彼、昔から影が薄かったような。たまにグローア様と話しているのを見たけど、最初は御者の人だってわかんなかった。
──あの人、グローア様に想いを寄せていたから。グローア様に快適に過ごしてもらうためだけに、どんな道でも揺れずに馬車を駆れる腕を身に着けたんだよ。たぶん、万が一に備えて剣と弓も覚えていたと思う。穢者に堕ちても、それだけは忘れられなかったんだろうね。
──えっ、あの人妻子持ちじゃなかった? 聖職者として倒錯的なのはちょっと……。
──シスコンがいったい何を言ってるんだ?