インフィニット・ストラトス 〜絶望の未来から来た戦士〜 作:HOPE
空を裂くかのように瞬く雷鳴が地に落ちる。まるでいつしか忘れられてしまった神々の怒りを体現しているかのように…そう感じられた。
ポツポツと…次第に激しい雨粒が降り注ぐ。暗闇に覆われ、天からの光すら届かないこの世界において、赤く点灯し続けるネオンサインがとても不気味に感じられる。
雨粒は次第に地面にできた水溜りに波紋を作っていく。波紋が広がれば広がるほど、まるでこれから不吉な事が起きるかのような、そんななんとも嫌な気持ちにさせてしまう。
人間が地に足をつけ、その知恵を持ってしてこの世界に文明を築いてから一体どれだけの期間が過ぎたのだろうか。空を飛ぶ車に何年も住む事ができる住居、宇宙へと旅立つ事を可能としたロケット、そして質量保存の法則を無視した小型カプセルなど人類の叡智とも呼べる化学の進化。いつしか、それは人に近しい存在…人造人間すら生み出せるものとなっていた。
だが、進化には犠牲がつきものだ。なんの代償もなく永遠に進化し続けることは不可能。とある破壊の神が言った言葉がある。
創造の前に破壊あり…と。
新たな進化の前に過去の物は一度破壊されなければならない。それは必然であり変えられようのない事実なのだ。どんなに抗おうと絶大な力の前には無力。蟻が恐竜に勝てると思うだろうか?新たな進化を目の前にして
そんなふざけた話が許されていいだろうか。
いやいい筈がない。決して許してはいけないのだ。
再び雷鳴が地に落ちる。その光はこれから行われる最後の…文字通り
どこか顔立ちが似ている少年少女…いや、人の身を捨て技術の最高峰とも呼べる、人が生み出した人になった哀れな双子。纏っていた衣服が意味を成さないぐらいまで破壊され、肩から落ちそうになっていながらも彼らの表情は変わらない。正にマシーン…人を殺すためだけに生まれた殺戮マシーン。その17番目と18番目、それが彼らだった。
対してもう1人…この惑星とこの惑星ならざるものの血を受け継いだ、人の身で神すら凌駕する力を得た戦士が、黄金に包まれた闘気を発しながらその力強い碧眼を殺戮マシーン達に向ける。雨風に吹かれ、本来あるべき筈のものがないその左袖を風に靡かせながら。
戦士から放たれるその力の波動…彼らの世界の言葉で言う
「やるじゃないか…まさか俺たちのフルパワー相手にここまでやれるとは思っていなかった。流石はサイヤ人だな…孫悟飯」
「でも随分とパワーを使っちゃったんじゃない? 息も切れてるし…そろそろ終わりにしちゃおうよ17号」
「それもそうだな」
戦士…孫悟飯の頬に一筋の汗が流れる。目の前の17号が言う通り、怒りで己の限界を超えた今の悟飯はなんとか人造人間達に食らいつけているという状態。それも、あの2人のMAXパワーにだ。ここまでついていけた自分自身の力は誇っても良いと言えるだろう。
だが、それでは勝てない。互角では勝てないのだ。限界がある自分と、限界が永遠に来ない相手だ。短距離走がいくら速くともマラソンにおいては長距離走が速い人間には勝てないのと同じ。既に体力の限界が来ている悟飯と永久のエネルギーを持つ2人の人造人間。決着は目に見えているのだ。
言わば負け試合…負けると分かって挑む最後の勝負だった。あわよくばと儚い期待があったものの、現実とは非情なものである事を再確認させてくれた。ならここで己が負けてしまうのは必然であり、それは何の意味もなかったと言う事なのだろうか。敵わないと知りながら散っていった戦士達の想いを、果たす事なく終わってしまうのだろうか。
いや違う。ここで散ったとしても、その死に意味がないわけではない。次の戦士を…この星の最後の希望を守る戦い。それが今なのだ。これは
「はあああああああっ!!」
己に喝を入れるかの様に叫び、気を入れる。残された全ての力を振り絞り再びその体を黄金の嵐が駆け巡る。その凄まじい気迫に、感情などあるのか疑わしい彼らすらたじろいだ。だが、すぐにアイコンタクトを取ると、同じような構えを取った後に悟飯に向けて駆ける。そして、その距離を詰めると拳撃のラッシュを放ってきた。
その攻撃を片手で捌いていくが、すぐに限界が来る。余りのスピード…それこそ音速を軽く超える彼らのスピードを1人で捌き切るのは不可能だ。しかも元々この2人の人造人間の元は双子の人間。もっとも血の繋がりが深い存在であり、その抜群のコンビネーションを上回る物はこの世にはいないだろう。
「こっちだ!」
「ぐあっ!?」
いつのまにか背後に先回りしていた17号の蹴りを食らい、近くのビルを突き抜けながら悟飯は地面に叩き落とされる。背中を強打された事で、肺の中の空気を吐き出させられ、地面にはたき落とされた羽虫のように身動きの取れなくなってしまう。いつのまにか、悟飯を包んでいた黄金の気はなくなり、逆立っていた黄金の髪も元の黒髪へと戻ってしまっていた。
そんな悟飯を見下ろしながら17号と18号は最後の攻撃を叩き込まんとする。2人の掌が光り輝いている中、悟飯の意識は遠ざかりかかっていた。彼の命運も最早これまで…
「…まだ…だ…!」
だが、無情にも天から降り注ぐ光の槍とも言えるべきエネルギー弾が、皮肉にも彼の意識を再び呼び起こす。
(オレが…最後にできる事を…最後の最後まで…)
「か」
(例えもう力が残っていなかったとしても)
「め」
(諦めずに抗い続けろ)
「は」
(何故ならオレは…オレはっ!)
「め」
(孫悟空の息子なのだから!!)
「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
正真正銘
互いに譲らない攻防。威力は同じ。あとはどちらが押し切り、相手に当てるかだけだ。この一撃を食らったら最後…命が尽きるのは確実。だが、余裕がない悟飯と違って人造人間達の顔から余裕の笑みは消えない。あの状態からの最後の抵抗には驚かれたものの、自分達の勝利は揺るがないと確信していたのだ。
そして、この攻防も終わりの時が来た。
「じゃあな…孫悟飯!」
「バ〜イ」
「く…ぐっ!? くっそぉ…!」
「「はっ!!」
無尽蔵のエネルギーを持つ人造人間達は、更に威力を上げる。一気に押されてしまい悟飯の放った一撃は次第に輝きを失い…そしてエネルギー弾が悟飯を貫く。
「ぐあ……ああっ……!」
業火のように燃え盛っていた悟飯の命の灯火が、今この瞬間燃え尽きる。そして、自分の中の何かが切れて、体中の力が抜けていくことを感じ取った悟飯は、自分の死を察した。
そんな最期を終えようとする悟飯の脳裏に浮かんだのはこの世界の最後の希望であり、父の
(トランクス…生きろ…君が最後の…希…望…)
──── すみません…母さん
意識が消える直前、本当の本当に最後に現れた1人の女性。自身の帰りをこれから1人で永遠に待つ彼女を想い…1人の青年の命はこの世から消える…
だがなんの偶然か、はたまた仕組まされていたのか定かではないが、孫悟飯は死ななかった。
3つの人智を超えたエネルギーの衝突は空間を歪め、
そう、
少なくともこのことを孫悟飯がそれを理解する事はまずないだろう。あるとしたら時の管理者達ぐらいだろうか。
そして、絶望の世界で最期まで抗った1人の戦士が目覚めた時…この物語が動き出す…
5年後。孫悟飯が希望を託した少年が、人造人間を打ち倒す事になるのは、また別の話である…
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