インフィニット・ストラトス 〜絶望の未来から来た戦士〜 作:HOPE
もし…もしも、1つだけどんな願いも叶える事が出来るのだとしたら…人は何を望むのだろうか。
一生遊べて暮らせるほどの金なのだろうか。
永遠に死と老化が訪れない体なのだろうか。
愛しい人を得ることだろうか。
はたまた死者の蘇生なのだろうか。
どんな願いだとしても、それはきっとその人にとって幸せになる事を望むのが
手元に持っている…いや、浮かんでいると言うべきだろうか。少なくとも、おおよそ一般の人間が使うにはオーバーテクノロジーとも言うべきものを操作しながら、彼女はモニター越しに映る物を見ていた。
「…例えどんな頭脳を持ってしても、理解しかねない事は多々ある。今回もそう」
そう言いながら、彼女の手にはいつのまにか星が1つ入った
この広大な銀河の中で、地球という1つの惑星に生まれた知的生命体と同じ様に考え行動し、死に絶えるものはどれだけ居るのだろうか。そもそもそんなものが居るのかすら分からない。我々の認識している世界すら本当に正しいものなのかすら定かではないのだ。
ただ…この世界は彼女にとっては退屈な世界だった。自分の中の世界でしか生きれない彼女にとって、この世界はとてもつまらない…色のついていないアニメの様なものだ。
「その謎を追求するからこそ、この世界で生きようとする活力を得る事が出来る…少なくとも私はそうなのだろう」
再び手元の球体が消えると、再度モニターに顔を向ける。そこには1つの学園…この世界においての中心とも言える場所、IS学園の戦闘アリーナが映し出されていた。正確にいうのならば、幾分か前の映像が…永遠と繰り返されていた。
「私が私である為に、私は好奇心を持ってこの世界で生きる必要がある。例え全てを巻き込んだしても…ね」
歪んだ思想、ただの虚言。そんな言葉では片付けられない、言いようのない得体の知れない何かが彼女にはある。狂気じみている様にも見えるし、何処か言い聞かせている様に見える。結局はそれをどう捉えるか、受け手の問題だろう。
ただ…ただこのちっぽけな世界の中で、彼女は何を思い、何を感じ、何を成すのか…その瞳に映る青き星と、この世界に存在しない筈の
月に帰った姫が青き星を想うかのように、彼女もまたその想いを世界に馳せるのだった…
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寒い。ここはものすごく寒い。心すらも凍ってしまいそうなこの場所で、左袖を靡かせながら、青年は空を見る。光が届かないこの場所で空などを見ても何か意味があるのかは知らないが、少なくとも前や後ろ、ましては下を見るよりは良いだろう。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!」
「助けてぇぇぇ!!」
「いやぁぁっ!?」
声が聞こえてくる。人々の泣き叫ぶ声、喚く声、醜く抗う声。様々な声がいつしか恨み言に変わっていくことに青年は耳を塞ぎたくなった。
「お前がもっとはやく来ていれば!」
「アイツらを倒せよ!」
「なんで私の息子が死ななきゃならないのよ!」
死んでいった人々の無念…そして怨みの声が青年を責める。
なぜ、皆んなを救えないのかと。
「…っ!」
果たして彼らはそこにいた。
気づかなかった…いや、気づこうとしなかったのかもしれない。とにかく彼らはそこに佇んでいたのだ。顔にはモヤのような物がかかり、その表情は窺えない。しかし、全てを託し散っていった者たちの想いを成し遂げる事なく散っていった自分を彼らはどう思っているのか、そんな事は考えなくても直ぐにわかる。
目を閉じたくとも閉じれないその状況で、瞳に生気のない幼き黒髪の少年が、ゆっくりと口を開く。声は聞こえない。いや、心が不都合だと理解し、聞こえないようにしたのかもしれない。しかし、その目は少年の口の動きを捉えていた。故に気づいた。何を言っているのかを…
あぁ…どうやら、彼らはオレを許さないようだ…。
「はぁ…はぁ…はぁ…ここ…は…」
茜色に染まった空模様が、カーテン越しにこの部屋を赤く染める。自分が見知らぬ部屋で寝ているのだと気づき、目が覚めたばかりの悟飯はゆっくりと体を起こした。
(助かった…のだろうか…オレは)
瞬間、脳裏に浮かぶのは、人々を嘲笑うかのようにしながら殺していき、自身の命すらも奪っていた筈の彼らの姿だった。彼らこと人造人間…人が生み出しては行けなかった悪魔達。その悪魔達に自分は殺された筈だった。
だが幸運な事に自身は生き延び、誰かに手当をしてもらっているのだ。これで再び人造人間と戦うことが出来ると思うと、人知れず悟飯の気が高まった。
「もう目覚めたというのか」
扉が開く音ともに、1人の女性の声が聞こえてきた。見た目からして悟飯と同年代、いや少し上だろうか。
だがこの声に聞き覚えはない。
意識がまだ朦朧としているが、なんとなくここは西の都ではない事を察すると、悟飯はベッドから身体を起こす。その度に肉体が悲鳴をあげ、指一本動かすだけで激痛が走り、思わず顔を歪めてしまう。
しかし、それでもなんとかなるのはサイヤ人と言うべきか。
「全治8ヶ月と言われていながら既に体を動かせている…全くつくづくとんでもない奴が落ちてきたものだ」
「す、すまない」
自分のせいで相手が疲弊しているのを感じとった悟飯は直ぐに謝る。反射的に謝ってしまうのは、昔からの臆病な所が変わっていないという事だ。孫悟空が死んだせいで非情にならざるを得なかったが、元々争いを好まない心優しい少年だだったのだ。時代さえ違えば夢である学者になれただろうに。
そんなたらればを一瞬思い、そして布団が吹き飛ぶぐらいの勢いで慌てて体を起こすと、訪ねてきた女性…織斑千冬にまくしたてるように問いかけた。
「そんなことよりもここは大丈夫なのか!? あいつらは…人造人間はいったいどこに行ったんだ!! ここが西の都ではないところだとしても、奴らがここに来ないという保証はない! 最悪の場合はもう既に近くにいるかもしれない! その時には今度そこオレが───」
「落ち着け。そんなにまくしたてられては何を言っているのか理解できん。聞き取れた
「何を言って……」
千冬の否定に反論しようと声を荒げようとしてふと思う。はたして人造人間が自分を見逃すようなことをするのかと。
加えてエネルギー弾に貫かれた時に感じた命が終わる感覚。あれは紛れもない事実だ。
また西の都ならまだしも、人造人間を知らないのはいくらなんでもおかしい。どんなに田舎であったとしても、人造人間の極悪非道さぐらいは知れ渡っている筈だ。なにせ人類存亡の危機なのだから。
「その…ここの世界…いや、この国の地図を今持っているか? えっと…」
「織斑千冬だ。とりあえず混乱しているのか知らんが、これでいいか?」
そう言って、鞄から一台の携帯を取り出すと、その画面にこの世界の地図表を表示させ悟飯に見せる。その画面を食い入るように見て…次第に力が抜けたように、悟飯は首を垂れた。
知らない国、知らない地形、だが無慈悲にも『地球』と書かれた地図は、今の悟飯にはあまりにも重たすぎる現実を突きつけたのだ。
── オレはあの世ではなく、異世界に来てしまったのか
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重い空気。時すら止まったのかと思うようなこの空気で、耐えかねた千冬が口を開く。
「まだ訪ねていなかったな。お前の名はなんだ?」
「…孫悟飯…」
「そうか。孫悟飯…とりあえず悟飯と呼ばせてもらう。見たところ私と対して歳が変わらなそうだしな」
そう言って、ベットの横にあった椅子に座ると、何処か上の空の悟飯に向かって千冬は質問する。
「単刀直入に聞く。お前はここの世界の人間か?」
「……どうして、俺にそんな質問をするんだ?」
「…インフィニット・ストラトスという単語をお前は知っているか?」
「…インフィニット…ストラトス?」
「やはり知らないようだな」
千冬はため息を吐くと軽く説明する。曰く、インフィニット・ストラトス(通称IS)とは、女性だけが使える世界最強の決戦兵器とも呼べるものであり、本来は単独で宇宙飛行を目的として作られたらしいのだが、
そして、そんな女性だけがそんな力を得た場合、どうなるかは予想に難しくない。
「女尊男卑社会…それが
「あぁ。そしてここからが私がお前がこの世界の住人じゃないと思った理由なのだが…実はお前を発見する前にらIS学園の遮断シールドが破られたという事件が起きていたんだ」
そう言って死んだような目で話しを続ける千冬。この時既に悟飯は話のオチが読めていた。
「遮断シールドは並大抵の攻撃では破ることはできない…それこそISを使わない限りはな。だから最初私はお前が第二のIS装者なのかと疑い調べさせてもらった訳なんだが…」
「オレがISらしきものを持っていなかった…と」
「そこまで行けば馬鹿でも答えは出る…いや、非常識すぎて頭を抱えたくなったよ」
はたして
だが悲しい事に千冬はこの手の理不尽さにはある程度慣れている。だからそこまで慌てる事なく対処できたのだ。
「すまない…色々迷惑をかけてしまって…」
「かまわない…とは言えんな。お前のせいでこちらの仕事はかなり増えたわけだし、そろそろ私達も寝ない発狂しかねん」
今更ながら千冬のひどい隈に気づき、悟飯は引き笑いするしかできない。タイムマシンを作っていたブルマもこんな隈を作っていたことは多々あり、その時に声をかけるとトランクスも巻き添えにブチギレられた記憶がある。
「さて、こちらとしてもお前の世界の事情…特にお前が何故そこまでボロボロだったのかについて聞きたいが…まだ無理はさせない方がいいだろう」
鞄を持ち上げながら千冬は病室から出て行く。彼女はこの後色々後処理をしないと行けないのだ。滲み出る疲労によって吐きそうになるも、とりあえず伝えるべき事を伝える。
「また来る」
そう言って、今度こそ千冬は病室から居なくなるのだった。
「…別の世界…か」
人造人間によって人々が滅ぼされていた世界から、平和そうに見えていつ戦争が起きてもおかしくない世界にへと移動したと言うべきか。結局、どこの世界であったとしても人間というのは醜い生命体らしい。そう思うとついため息が漏れてしまう。
実に厄介な事になったものだ。それは孫悟飯にとっても、織斑千冬にとっても…この世界にとっても。
願わくばこのまま何も起こらずに終われるように…そう思いながら悟飯は目を瞑る。
茜色の景色が暗闇に染まり、今日もまた何気ない一日が終わる…
誤字報告、感想待ってます。