「バブみ」が強いボクっ娘ギャルが、俺の恋路を邪魔してくる件について    作:けるたん

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第1部 正しい彼女の落としかたっ!
第1話 『はじまり』の鐘の音は祝福の風と共に★


――古羊洋子(こひつじようこ)

 

 我が県立森実高校に在籍している男子生徒で、彼女の名前を知らないヤツが居れば、ソイツはホモかハードゲイに違いない。

 

 その男の背後(はいご)に立つ時は、お尻の穴に気を付けろ?

 

 古羊洋子――2年C組在籍、出席番号10番。

 

 彼女を一言で表すなら『可愛いの暴力』である。

 

 まるで羊のようなふわふわの亜麻色の髪に、幼さが残る愛らしい顔つき。

 

 青空のように澄んだ蒼玉(そうぎょく)のような瞳は少し垂れており、彼女のおっとりとした性格を具現化したかのようで、とても愛らしい。

 

 イマドキのギャルのように簡単に制服を着崩し、服の上からでも分かるほど豊かに隆起(りゅうき)した胸が目に眩《まぶ》しい。

 

 街を歩けば野郎共が鼻の下を伸ばして見惚れるレベルで可愛い――それが古羊洋子である。

 

 彼女が森実高校に入学して2年、いまだに()()羊飼芽衣と並んで学校の話題をかっさらっている女の子。

 

 おまけに生徒会の庶務までこなすスーパーな才女と、もはや名実ともに学園のアイドルと言っても差し(つか)えないだろう。

 

 

 本来であればクラスも違えば性格も違う、ただのイケてるモブマッチョBである俺――大神士狼とは何の関わりもない女の子。

 

 ……のハズだった。

 

 神のイタズラか、はたまた悪魔の罠。

 

 交わることのない俺と彼女の2つの道は、ある日、唐突に交差することになる。

 

 

 人はきっとソレを――『運命』と呼ぶのだろう。

 

 

 だが正直な話、俺はこの言葉が好きじゃない。

 

 だってさ? 何もかも最初から決められた物語なんて、ツマンナイにも程(ほど)があるじゃん?

 

 俺の前には無数の選択肢があるハズなのに、何を勝手に神様(おまえ)が決めてんだって話なワケよ。

 

 だからさ。

 

 だから、コレは、俺が自分で悩んで、迷って、考えて、選び取った物語だ。

 

 

『運命』に喧嘩を挑んで、宿命を蹴り飛ばし、ハッピーエンドへ至るまでの。

 

 

 そんな俺と彼女の、たった1つの恋物語だ。

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 春――それは希望に満ちた日本特有の季節。

 

 世界を旅してきた風が、優しく肌を撫でるようにサラサラと通り過ぎていく。

 

 真新しい制服に身を包んだ者。

 

 愛する者と笑い合う者。

 

 社会という荒波に出航する者。

 

 みながそれぞれこれから始まる自分だけの物語(ストーリー)に胸を膨らませていた。

 

 それはこの俺、大神士狼にも言えることだった。

 

 この春、無事に進学することに成功し、県立森実高校2年A組に在籍することになったばかりの俺を祝福するかのように春風が身体を駆け抜けていく。

 

 ふと窓の外を見やると、ハラハラと桜の花びらが散った。

 

 散っていく桜の花びらと相まって、夕日に照らされた町並みが酷く幻想的だ。

 

 そんなノスタルジーな光景を前に、大きく息を吸い込むと、すもものような甘酸っぱい匂いが肺いっぱいに広がった。

 

 その瞬間、一陣の風が吹き荒れ、まるで物語のカーテンコールが幕を開くかのように、部屋の外では桜吹雪が舞いあがる。

 

 そして、これから始まるであろう俺の物語は、

 

 

「あ、あばっ!? あばばばばばばばばっっっ!?!?」

 

「おっと、動かないでくださいよ大神くん? 下手に動けばわたしの手で、大神くんが放課後、女子更衣室で古羊洋子の下着を被って匂いを()いでいるこの動画を、学校ないしは保護者に提出することになりますよ?」

 

 

 

 

――開始数秒でエンドロールを迎えようとしていた。

 

 

 

 

「ちょっと待ってくれ羊飼さん。どうやら何か不幸な行き違いが発生しているらしい。まずはお互いに落ち着いて、腹を割って話し合おうじゃないか。大丈夫、人は分かり合える生き物なのだから」

 

「ストップです、大神くん。ソレ以上近寄ったら……分かりますね?」

 

「あばばばばばっ!? あばばばばばばばばっっっ!?!?」

「洋子もいつまでも『あばばばっ!?』してないで、正気に戻りなさい」

 

 そう言って、我らが生徒会長こと羊飼芽衣様は、顔を真っ赤にしてお目目をグルグル回していた生徒会の庶務ちゃんこと、古羊洋子の頭を軽く(はた)いた。

 

 ハッ!? とした状態になる古羊の隣で、ニッコリと俺に向かって微笑む会長。

 

 廊下を歩けば10人が10人とも振り返るような素敵な笑顔だ。

 

 が、残念ながらその瞳はとんでもねぇ変態と遭遇したかのように冷たくて仕方がない。

 

 まったく、(たぐい)まれなる精神力を持つこの俺、シロウ・オオカミじゃなければ、今頃盗んだバイクで走り出している所だぞ?

 

 俺は肩を(すく)めながら、やれやれ、と言った様子で目の前の黒髪の美少女に……我がクラスメイトである羊飼さんに視線を向けた。

 

 羊飼さんはあいも変わらずニコニコしながら、スマホで隠し撮りした俺の動画を印籠(いんろう)代わりにこれでもかと見せてくる。

 

 彼女のスマホの画面、そこには……青と白の縦縞(たてじま)ストライプ模様をした女性用下着――パンティーを被ったナイスガイが恍惚(こうこつ)とした表情で深呼吸を繰り返していた。

 

 そうだね、みんな大好き大神士狼くんだねっ!

 

 ありがとうございます!

 

「あ、あのねオオカミくん? べ、別にメイちゃんもボクも、オオカミくんが嫌いだからこんな事をしているワケじゃないんだよ? だ、だからね? この動画をバラ|撒(ま)かれたくなかったら……あとは分かるよね?」

 

「くぅっ!? わかったよ……」

 

「……ほっ、よかったぁ~。分かって貰えなかったらどうしようかと――って、ちょっと待って!? ど、どうして制服を脱ぐの!? な、何でスッポンポンになったの!?」

 

 ゆっくりと身に纏っていた森実高校の制服を脱ぎ捨て、パンツ1丁へとシフトチェンジする俺。

 

 最後の防壁であるボクサーパンツに手をかける寸前で、何故か「全裸になれ!」と強要したハズの古羊が激しく|狼狽(ろうばい)していた。

 

「『なんで』って……古羊が言ったんじゃねぇか。『この動画をチクられたくなければ、代償として大神くんのそのイケてる身体(ボディ)をムチャクチャにさせてもらおうか! さぁ、服を脱げ! レッツ☆ダンシングオールナイト♪』って。お、俺だって恥ずかしいんだぞ?(ぽっ)」

 

「言ってないよ!? 頬を染めないでよ!? ボクそんなコト一言も口にしてないよ!?」

 

「耳にエキサイト翻訳でも搭載しているんですかアナタは……」

 

 首よ外れろ! と言わんばかりにブンブンと亜麻色の髪を振り乱し、首を左右に振る古羊。

 

 その隣で羊飼さんがゴミ虫を見るような瞳で微笑んでいた。

 

 俺がドMなら今頃感謝の言葉を並べているところだ。

 

「あ、あれ? 違うの?」

 

「全然違うよぉ!? ぼ、ボクはただ、『この動画をバラ撒かれたくなかったら、ボクたちの質問に正直に答えてください』って言いたかったんだよぉ!」

 

 それくらい分かってよぉ! と顏を真っ赤にしながら威嚇するように吠える古羊。

 

 えぇ~? なんか俺が悪いみたいな雰囲気になってるけどさ、俺、悪くないよね?

 

 だって今の言い方は確実に『身体目当て』な言い方だったよね? 

 

 エロマンガで何度も予習してきた俺が言うんだから間違いないよ。

 

 なんとも納得いかない視線を古羊に投げかけていると、隣で沈黙していた羊飼さんが「茶番はここまでです」と、力強く俺を見据えてきた。

 

「いいですか大神くん? 今からわたし達の質問に正直に答えてくださいね? もし逆らったり嘘を吐いたりするようなら……えっちを通り越してもはやド変態のように映っているこの動画を、学校ないしは大神くんの保護者に見せちゃいますよ?」

 

「おいおい、ちょっと待ってくれよ会長? 俺のどこがド変態なんだよ? こんな英国人も裸足で逃げ出すようなジェントルメン、他に居ないぞ?」

 

「……なら今1度、ご自身の姿をよくよく見返してみるといいですよ?」

 

 それでも同じ台詞が吐けますか? と、何故か恐怖を感じる笑顔でそう言ってくる我がクラスメイト。

 

 ん? 今の俺の格好?

 

 はて? と首を傾げながら、更衣室に備え付けられたの姿見に映り込んだ自分の姿に視線を移す。

 

 

 

 ――そこにはビシッ! と、ボクサーパンツ1枚に、頭をパンティーで武装したイケてる知的な16歳が俺を見つめていた。

 

 

 

 完全な変態へと完全変態した俺が見つめていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「……ふむふむ、なるほどな」

 

 人気の居ない女子更衣室。

 

 ほぼ全裸で美少女2人と向かい合っている状況の中。

 

 頭にはパンティーを被り、性義のヒーローと化したナイスガイな俺。

 

 しかも頭部に被るパンティーは『王冠スタイル』ではなく、まさかの股間部分が鼻・口を完全に(おお)っている『変態仮面スタイル』である。

 

 そこから導き出される結論は――1つだ。

 

 

 

 ……今、彼女たちを見逃がせば、次に会う時は間違いなく法廷だ。

 

 

 

「どうやら、やっと自分の立場というモノが理解できたようですね?」

 

 ほっ、としたように吐息を溢す古羊と、ニッチャリと邪悪な笑みを浮かべる羊飼さん、いや羊飼。

 

 このとき、ようやく俺は『自分がハメられた』ということに気がついた。

 

「さて、この動画を拡散されたくなければ、わたし達の質問に正直に答えてもらいましょうか?」

 

「大丈夫だよ、痛くしないから。……たぶん」

 

 そう言って1歩こちらに踏み出してくる羊飼と古羊。

 

 気がつくと俺は逃げるように1歩後ろへ後退していた。

 

「お、落ち着け2人とも! おまえら正気か!?」

「今のオオカミくんにだけは言われたくないよぉ……」

「堂々と女性用下着を被っている男の子に正気を疑われるのは酷く心外です……」

 

 何故かゲッソリしながらワケの分からないことをほざく2人。

 

 くぅっ!? な、何とかして羊飼が持っているあの動画を抹消しなければ!

 

 あんなモノが我が家のビックボスにでもバレてみろ……考えるだけで恐ろしい!?

 

 しかしどうすれば……。

 

 と、並みの男ならここで「アババババババババッ!?」と壊れたロボットのように全身を痙攣させている所だろうが、シロウ・オオカミは違う。

 

 そう、俺は知っているのだ。

 

 こういう時は情に訴えるのが一番だということを!

 

 俺はまるで刑事ドラマに出てくるベテラン刑事(デカ)さながらのキリッ! とした表情で、羊飼と古羊の心に響かせるように魂を()めてこう言った。

 

「2人とも、いい加減にしろっ! こんなコトをして……親御さんが泣いているぞ?」

「大神くんのね……」

 

 何故かドン引きした様子でパンツを被った俺から1歩距離をとる羊飼。

 

 クソッたれめ! 本来ならここで、

 

 

 大神くん……ゴメンね?

    ↓

 わ、わたしのことをこんなにも心配してくれて(キュンキュン♪)

    ↓

 大神くん好き、抱いて!

    ↓

 ゴー・トゥ・ホテル

    ↓

 輝かしい未来

 

 

 という鮮やかなコンボが炸裂するハズだったのに、いやはやどうしてか、羊飼の瞳からは俺への侮蔑の色しか感じ取ることが出来ない。

 

 ナニアレ? 同級生に向けていい瞳じゃないよ? 生粋のサイコパスを見る目だよ?

 

「チクショウ……どうして俺がこんな目に?」

 

 俺は全身の筋肉を硬直させつつ、、何故こんなコトになってしまったのか、必死にこの1週間の出来事を思い返していた。

 

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