「バブみ」が強いボクっ娘ギャルが、俺の恋路を邪魔してくる件について    作:けるたん

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第7話 その男、文豪にして性豪!★

 あれから古羊は色んな意味で大変な目に遭っていた。

 

 海から上がってきた古羊を、ボロボロと涙を流しながら抱きしめる羊飼さん。

 

 あまりにも号泣するものだから、古羊の方が苦笑を浮かべて彼女を宥めるハメに。

 

 ほんとどっちが助けられたのか分かったものじゃない。

 

 よほど古羊が心配だったんだろうなぁ。

 

 友達のために涙を流す羊飼さんに、改めて惚れ直す俺。

 

 いつか絶対に彼女をお嫁さんにしてやる! と決意を新たにしつつ、古羊は念のため病院の方へと足を運ぶ流れとなった。

 

 もちろん付添いは羊飼さんだ。

 

 そして多大なトラブルに見舞われながらも、無事にボランティアをやり終えた翌日の月曜日。

 

 俺、大神士狼は――

 

「……反省文が書けねぇ」

 

 

 

 ――俺、大神士狼は危険行動を学校側に咎(とが)められ、3日間の自宅謹慎を言い渡されていた。

 

 

 

「女の子を救った英雄にこの扱いかよチクショウ……」

 

 俺は自室の机の上に広がった反省文とにらめっこしながら、愚痴るようにそう呟いた。

 

 そうっ、俺は古羊を救った代償にこっぴどく学校側に怒られ、停学を喰らっていたのだ。

 

 いやまぁ、学校の言い分も分かるよ?

 

 助けに行って二次災害になったらどうするんだ!? とか、俺も分かってはいたんだけどさ、身体が勝手に動いちゃったんだからしょうがないじゃん?

 

 しかもあのあと、何故か水着姿のまま警察に連行させられ、その後はもう……すごいぞ?

 

 警察署内では完全な変態扱いをされるは、婦警の皆様方からドM大歓喜の汚物を見るような目で睨まれるは、あまつさえ誤認逮捕と判明してもロクは謝罪もなく上から目線で説教されたあげく、ヤベェ薬をキメているとしか思えない謎の人形の在庫処分をさせられるとは……人生って何が起こるか分からないよね♪

 

 いやぁ、マッポの皆さんに囲まれて半裸のまま事情聴取が始まったときは「人生ォワターッ!」と北斗神拳伝承者のように声を張り上げたよね!

 

 なんで俺がこんな目に遭ってるんだ? ゴルゴムの仕業か?

 

「今ならこの溢れんばかりの殺意に身を任せ、警察署内のマッポ共を鬼神が如く千切(ちぎ)って投げても世界は俺を(ゆる)してくれるんじゃないだろうか?」

 

 まぁもちろん、そんなことはしないんだけどね?

 

「ハァ……それにしても、反省文ってナニを書けばよいのやら」

 

 一体何を反省すればいいのか皆目見当がつかない。

 

 パッ、と机に置いてあるデジタル時計に視線を移す。

 

 そこには【月曜日 午後3時】とデカデカと映し出されていた。

 

 どうやら俺はかれこれ9時間近く反省文とにらめっこしていたらしい。

 

「ジーッとしててもどうにもなんねぇし、とりあえず書くか」

 

 よしっ! と気合を入れ直し、俺は再び反省文と睨み合った。

 

 

◇◇

 

 

『反省文タイトル 【パンスト・ニーソは和の心】

 

                          2年A組  氏名 大神士狼

 

 

 パンスト。正式名称をパンティ&ストッキング。

 

 これほど我ら日本人の心を鷲掴みにしてならない魅惑の布きれが存在していただろうか? いやない。

 

 まるで名刀を収めるかのように、そのナイロンとポリウレタンで出来た漆黒の宝具に脚を通した瞬間……世界は輝きを増し、その日1日の主役は彼女たちになるであろう。

 

 照り返す黒と白のコントラストもさることながら、その脚のシルエットがより強調され、彼女たちの美しさをより愛でることが出来ると言っても過言ではない。

 

 それはオーバーニーソにも言えることである。

 

 ふとももにぷにっ♪ と食い込んだ絶対領域からなる造形の美しさもそうだが、何より区切られることにより脚という要素のみを抽出することに成功した、人類が持つ最古のオーパーツと言えるだろう。

 

 かの有名な茶人は、無駄をそぎ落とした黒の湯飲み茶碗(ちゃわん)を愛用していたという。

 

 つまり不要なモノを削ることにより、脚の本質を浮かび上がらせるパンスト・ニーソは和の心……すなわち『わびさび』の世界へと繋がっているのである』

 

 

◇◇

 

 

「――おいおい。これはとんでもねぇ傑作が生まれたんじゃねぇのか?」

 

 もう自分の才能が怖いっ! 

 

 今年の直木賞は俺で決まりだろ、コレ?

 

 改めて、今、書き終えた反省文を読み返しながら満足気に頷く。

 

「さてっ、ここから『パンストは下半身の髪型である』というテーマをもとに、生足を黒髪ロングと仮定し、パンストをポニーテールとする第2部が幕を開け――」

 

 

 

 ――ピンポーン。

 

 

 

「ん? 誰だこんな時間に?」

 

 やっと筆が乗って来たというタイミングで、運悪く我が家の呼び鈴が俺の集中を遮った。

 

 たくっ、誰だ? 俺のゴッド・タイムを邪魔する愚か者は?

 

 ママンは現在出張中。

 

 パパンは普通にお仕事。

 

 姉ちゃんは1週間前から肉体を現世に置き去りにし、ネットの海へダイブしたっきり消息を絶っているので、今、我が家には俺しか居ない。

 

 つまり対応できる人間が俺しかいない。

 

 が、大抵こういう場合は新聞の勧誘、もしくは変な宗教と相場が決まっている。

 

「うん、無視だな。無視」

 

 ほっときゃ勝手に帰るだろ。

 

 俺は再び反省文へと向かい合って

 

 

 

『ごめんくださぁ~い。大神士狼くんと同じクラスの羊飼芽衣ですけど、誰か()りませんかぁ~?』

 

 

 

「はいはいはいはいっ! 居る居る居る居るっ! 今開けまぁぁぁぁぁすっ!!」

 

 瞬間、弾かれたように玄関へと駆け出す俺が居た。

 

 頼む、俺の身体よ! 今だけ羽より軽くなれ!

 

「お、お待たせしましたっ! 大神士狼、ただいま見・参☆」

「こんにちは、大神くん。連絡もなく急にやって来てごめんなさい」

 

 玄関を開けると、我が心の女神さまが8時でもないのに集合していた。

 

 一瞬「夢か?」とも思ったが、違う。現実だ。

 

 現実にあの羊飼さんが俺の家に来てくれているっ!

 

 そうか、幸せというものはこうやってチャイムを鳴らしてやってくるものなのか。

 

「実は大神くんが休んでいた分のプリントと、猿野くんと三橋くんの荷物を預かっているので渡しに来たのですが……今、大丈夫ですか?」

「大丈夫っ! 全然大丈夫っ! ささっ、汚い我が家ですが上がってくださいよっ!」

 

 感動に打ち震える身体に鞭を打ち、素早くスリッパを用意し「上がって♪ 上がって♪」と催促していたところで、ハタッ、と気がつく。

 

 あれ? なんか羊飼さんの後ろに誰か居ないか?

 

 彼女の後ろに隠れるようにしてコソコソしている亜麻色の髪をした女の子に「んん~?」と不審そうな瞳を向けると、羊飼さんが苦笑したようにそのプリティな唇を震わせた。

 

「ほら洋子。いつまでも隠れてないでちゃんと挨拶しなさい?」

「う、うん……」

 

 羊飼さんに促されて彼女の背後からおずおずと出てきたのは……派手に制服を着崩した白ギャルこと、

 

「おぉっ、古羊。おまえも居たのか」

「こ、こんにちはオオカミくん」

 

 太陽に焼けたのか、頬を若干赤らめながら膝を擦り合わせるようにモジモジしている古羊。

 

 その様子を見て「あぁやっぱりまだ俺、怖がられているんだなぁ」と心の中で苦笑してしまう。

 

 ん? でも何で古羊がここに居るんだ?

 

「あ、あのあのっ! こ、コレっ!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 まるで初デートに挑む男子中学生のようにガチガチに緊張している古羊が、ズイッ! と手に持っていた紙袋を俺の方へ突き出してきた。

 

 えっ、何コレ? 爆弾?

 

「ソレは先日、海で助けていただいたときのお礼ですよ。ねっ、洋子?」

 

 困惑する俺にさりげなくフォローを入れてくる羊飼さん(結婚したい)。

 

 その横で古羊がコクコクコクコクッ! と無言で首を高速で縦に振っていた。

 

「ふ、フルーツタルトケーキ……ですっ。ぼ、、お菓子作りにはちょっとだけ自信があって……オオカミくんはタルト、嫌い?」

「いや大好きさ、おちこぼれフルーツタルト」

「誰もアニメの話はしていませんよ?」

 

 困ったような笑みを浮かべる羊飼さん(そのおみ足をペロペロしたい)と「よかったぁ~」と顏を破顔させる古羊。

 

 ほにゃっ、と安心したように笑みを浮かべる古羊にうっかり惚れそうになりつつも、我が心の伴侶である羊飼さんの姿を視界に納め、気を引き締め直す。

 

 俺は一途な男なのだ、浮気はしないっ!

 

「ささっ! 立ち話もなんですし、どうぞ上がって♪ 上がって♪」

 

 へへへっ、と爽やかな笑みを湛(たた)える俺に促され、2人はしずしずと我が大神ハウスに足を踏み入れた。

 

「それではお邪魔しますね?」

「お、お邪魔しま~す……」

 

 優雅に微笑みながら俺の後ろを着いてくる羊飼。

 

 そんな彼女とは対称的にキョロキョロと物珍しそうに我が家を見渡す古羊。

 

「お、男の子の家に初めて入っちゃった……」

 

 と、おっかなビックリとした様子で俺たちの背後を着いて回る古羊がちょっとだけ面白く、俺は人知れず笑みを溢した。

 

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