ベル・クラネルの治癒魔法の使い方は間違っているだろうか? 作:救命団副団長
プロローグを書くのは間違っているだろうか?
勇者召喚。
この世界ではない異世界より素質ある者を呼び出す儀式。素質ある者の素質は、勇者召喚という仰々しい名に相応しく規格外。鍛えれば相応の強さ、魔王を倒すほどの力を手に出来る。
しかしそんな、素質ある二人の近くに居たことでたまたま巻き込まれた兎里健………そして、
ベル・クラネルは未だ地獄を見ている。
「くそがあああ! あのゴリラ女ああああ!」
「グルウウ」
相棒のグレイウルフという
怒りのままに叫び爆走する彼がこの世界に来たばかりの頃は泣き虫な幼子であったと、この光景を見ても信じる者はいるだろうか。
「今日、は……せっかく、休日だったのにいい!!」
ウサトの活躍も含め世界が平和になった後も、何故巻き込まれたかさえ不明なため帰れなかったベルはそのまま救命団に所属していた。
国王達は未だ真摯にベルを帰還させる方法を探してくれている。
「なのに! あの、女は! 悪魔かあ!」
遊びに行く予定だった先輩治癒魔法師が急患が入ったと謝罪してきたと思えば、いつから居たのか加虐的な笑みを浮かべる団長に連れ去られ訓練が始まった。
「フェルもごめんね、のんびりしてたのに」
「くぅ……」
大丈夫というようにベルの顔を舐めるフェル。大きいから一舐めでベトベトだ。
「まあ、もうフェルぐらいなら3日は担いで走っても余裕が………!?」
ズドン、とベル達の真横を巨大な岩が落ちる。
錆びついたブリキのように、恐る恐る振り返るベルとフェル。そこには鬼のような笑みを浮かべたベル達の師匠、ローズが立っていて。
「余裕持って走ってんじゃねえよ。また根性から鍛え直してやろうか?」
「ひぃ!」
「キュゥン…!」
慌てて走り出すベル。時速80キロはゆうに出ている。ローズは、なんの重りも持っていないとはいえサボらぬよう監視するためか、普通に並走してきた。
「今となっては懐かしいなあ………」
フェルの背に揺られながら空を見上げるベル。細かいことは省くが、無事元の世界に帰ってきた。王様達には感謝してもしきれない。
祖父はベルが行方不明になった7年前、殺されかけたんじゃからなあ! と泣きついてきた。
でもベルの誕生日のたびに、そうでもない時も、ベルの大好きな英雄譚を増やしてくれていたらしい。それを読みながら、ベルも異世界で知り合った、誰よりも優しくて誰よりもかっこいい一人の英雄の話を祖父にした。
そして、英雄になりたければオラリオに向かえと送り出された。
「お、あれがバベルかな?」
天を突かんばかりの巨大な塔が見えた。ダンジョンの蓋、であり、迷宮都市の象徴。
「よしフェル! 全速力だ!」
「ワオン!」
「なるほど、それでモンスターの襲撃だと勘違いしちゃった衛兵達を、叩きのめしちゃったんだね〜」
「はい」
「クウン……」
灰色の髪に、空色の瞳の少女は項垂れる少年の巨狼のモンスターに、困ったように頬を描く。
Lv.5の自分が駆り出されるほどのモンスターなんて、と慌ててやってきたらモンスターよりもやばい兎が暴れていた。でも不思議なことに誰一人として傷付いていない。気絶しているだけだ。
「いや、うん………君のお友達に武器を向けた私達も悪いけどね〜。まさか都市の外でもテイムを行う人がいるなんて………」
「これぐらい、普通なのかなって………」
「モンスターを恐れてる人は多いよ。この子は大人しくしてるし、良い子なんだろうね………ほ〜ら、ワシャワシャ〜」
「クゥ〜、キュゥン」
少女に撫でられ気持ちよさそうな声を出すフェル。初対面の人にここまで気を許すのは初めて見た。いや、それともローズみたいに一瞬で屈服させたのだろうか?
「なんか失礼なこと考えてるでしょ〜?」
「い、いえ! すっごくきれいな人だな〜って」
「あはは! ありがとう。戦ってる時は『こんなもんかよ!』とか『ふきとびやがれぇ!』って言ってた子とは思えないよ」
「その、フェルを殺そうとしてたから………」
「…………そっか。本当に、仲がいいんだね………わわ!」
ベロンと舐められ、やったな〜とワシワシする女性。
「うん。じゃあ、はいこれ」
「これは?」
すっと差し出された象を象った装飾品のついて首輪。
「
「…い、良いんですか?」
「良くない!」
「あう!」
と、新たに現れた女性がベルと話していた女性の頭を殴る。
「勝手に決めるな」
「あ、お姉ちゃん……」
「すまないな、少年。その狼は、暫く我々に預からせてくれ。そのうえで、安全を確認した上でダンジョンと畜舎間での行動を許そう」
「大丈夫だと思うけどな〜、おとなしいし」
「お前を前にすれば大抵のモンスターは大人しくなるだろう」
はぁ、と疲れたようにため息を吐く。
「君は、このオラリオで新たな主神を探しに来たのだろう? もし、何処のファミリアにも所属できなかったらうちに来るといい。テイマーは何時でも歓迎だ」
「はい! あ、でも………新しいも何も、僕まだ神様の恩恵もらったことないですよ」
「「………え?」」
ベル・クラネル
神の恩恵を必要としない
フェル
グローウルフの希少種グレイウルフ。出会った当時はまだ子供だった。親は呪いの武器で死んだ。親の敵の呪いの魔剣を持ったオーガはベルと共に戦い追い詰めるもあと一歩及ばずローズが粉微塵にした。
ベル
因みにメス