ベル・クラネルの治癒魔法の使い方は間違っているだろうか?   作:救命団副団長

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因みにローズの声優(ドラマCD版)はアルフィアと同じ。
ウサトはヘルメス
アマコはクロエ
スズネはフェルズ
そしてブルリンは









フィンだ!
ティオネさん! 団長の声でガウガウ言う熊がいるってよ!


祭の日に手伝うのは間違っているだろうか?

 オラリオには多くの神々が集う。

 迷宮都市故に殆どが探索系【ファミリア】。しかしそんな探索系に必要な薬、武器を作る、または魔石製品を開発、販売する医療、薬品、鍛治、商売と様々な【ファミリア】が存在し、様々なコミュニティを持つ。

 そんな神々が方針関係なく集まる『神の宴』。

 今回の主催者はガネーシャのため、【ガネーシャ・ファミリア】の拠点(ホーム)『アイアム・ガネーシャ』。

 巨大なガネーシャ像がそのまま【ガネーシャ・ファミリア】団員達の住居。入り口は胡座をかいたガネーシャの股間だ。

 

『本日はよく集まってくれた皆の者! 俺がガネーシャである! 今回の宴もこれほどの同郷者に出席して頂きガネーシャ超感激! 愛しているぞお前達! さて、積もる話はあるが、今年も例年通り三日後にはフィリア祭を開催するにあたり、みなの【ファミリア】にはどうかご協力をお願いいたしたく──』

 

 ガネーシャの大きな肉声が響き渡るが皆談笑しながら聞き流す。が………

 

『そしてえ! 本日地下にて発見された新種のモンスター! ダンジョンより運んだ方法、数も不明! これが祭りの際解き放たれる可能性がある!』

 

 しかし聴き逃がせない言葉にざわりと動揺が走り皆がガネーシャの言葉に反応する。

 

『打撃に強く、無手で倒すのは第一級でも厳しい! 眷属達を武装させて警備を手伝ってくれ! モンスターを倒した【ファミリア】には俺から報奨金も払おう! 勿論、市民を優先してくれたならな!』

「おお、流石ガネーシャ!」

「パネェっすガネーシャさん!」

「ガネーシャ! ガネーシャ!」

『うむ、皆やる気でガネーシャ感激!』

 

 

 

 

「相変わらず元気だなぁ………」

 

 というか無手で倒すのはきついって、ベル君今日ナイフすら持ってなかった気がするんだけど? まあベル君だしと思っておこう。

 

「それよりごっはん〜ごっはん〜♪」

 

 ヒョイヒョイと食材をタッパーに入れていくヘスティア。

 

「はいヘスティア様、台を持ってきましたよ〜」

「おおアーディ君。ありがとう!」

「いえいえ〜」

 

 ヘスティアがお礼を言うと台を持ってきてくれたアーディは去っていった。変わりに呆れた様子の女神が一人。

 

「何やってるのよヘスティア」

「あ、ヘファイストス!」

 

 男装でもすれば貴族子女でさえ虜にしそうな凛とした顔立ちを眼帯で隠した麗人。

 ヘスティアとは付き合いの長い神友であり、地上に降りたばかりの世話をしてくれた女神だ。まあそのヘスティアが明日から本気出すとか言い出して追い出したのだが。

 それでも教会の地下を与えたりバイト先を紹介したりとヘスティアにかなり甘いが。

 

「久し振りね。そんな姿、見たくなかったけど」

 

 魔石灯の光を浴び煌めく紅色の髪を見て相変わらず綺麗な髪だなあと思いながら、ヘスティアは嬉しそうに彼女に駆け寄る。

 

「いやぁ良かった。やっぱり来てると思ってたよ」

「何よ、お金なら貸さないわよ?」

「し、失敬な! ベル君の稼ぎを甘く見るなよ。今回だって………!」

 

 地下のモンスター発見の功績で【ガネーシャ・ファミリア】から、と言いかけ慌てて口を抑えるヘスティア。これは秘匿事項だった。何者かがベルを狙うかもしれないからだ。

 

「今回だって、何よ?」

「こ、今回だってドレス代節約してるし〜?」

「………………」

 

 呆れたような目で見るヘファイストス。と、不意に思い出したかのように言う。

 

「でもそんなにお金が溜まってるなら、自分で紹介していてなんだけどもう少しちゃんとした宿に泊まったほうが良いわ」

「どうして?」

「さっきガネーシャの言っていたモンスター……地上に持ち込んだのが闇派閥(イヴィルス)の残党なんじゃないかって皆噂してるの」

闇派閥(イヴィルス)って、オラリオで昔暴れてたっていう?」

 

 秩序を嫌う者達。混沌を望む邪神達(かみがみ)に率いられた過激集団。

 その邪神達も平穏を嫌悪する者から、地上で国規模のモンスターとの戦いが見たい者、司る権能に従い人を殺す生業を補助する者、一度滅んだ秩序を新たに組み直したい者から、果は暇潰しやゲーム感覚でやる者と千差万別の目的であったが、その主な行動方針はオラリオの壊滅。再びモンスターが地上に進出する世界の再来。

 

「7年前も多くのモンスターを率いてたし、皆結構ピリピリしてるわよ?」

 

 その言葉に改めて周囲を見回せば、なるほどにこやかな笑みの下で探り合いをしている光景が目にとまる。

 

「うわ、あれデメテルじゃないか。あんなに苛立ってるのはじめてみたぜ」

「彼女の眷属は都市外に出ることが多いからね。でも地下では繋がってる場所もある。戦闘員がいなくて、【ガネーシャ・ファミリア】の対応も遅れる………早めに解決してほしいのよ」

 

 とても美しい笑みを浮かべながらも付き合いのあるオリュンポス出身者達の何割かは気付ける大地の女神の警戒心。普段優しい女ほど、怒らせて怖いものはない。

 

「今話してるのは……………デュオニュソス? 地上じゃ丸くなったって聞いてたけど」

「そうよね。私もてっきり闇派閥(イヴィルス)の邪神として行動するのかと思ってたからビックリ。7年前といい、オラリオのために尽力してるのよ」

「ふ〜ん? まあ()()が治ったならボクから言うことはないけどさ」

 

 デュオニュソスの天界での病気と称される行動を思い出しながら言うヘスティア。まあ神々を唆し殺し合いをさせていたロキも下界では善神の一人として数えられてるし。

 

「まあとにかく、物騒な世の中だから貴方も気をつけなさい」

 

 と、話を切り上げようとするヘファイストス。ヘスティアはここに来た本来の目的を思い出し慌てて引き止める。

 

「待ってくれヘファイストス! 今日は君に頼みがあったんだ!」

 

 色々助けられていて、本当に厚かましいとは思う。それでも、ベルの力になりたいのだ。

 

 

 

 

 

「おお狼兎(ウルフラビット)、今日もダンジョンがえりか?」

「狼の兄ちゃんこんにちわ〜!」

 

 巨大狼を背負って【ガネーシャ・ファミリア】とダンジョンを行き来する兎のような少年。最初はぎょっとしていた住人もなれてしまえば問題ない。まあモンスターであるフェルを怖がってはいるが、【ガネーシャ・ファミリア】の存在もあってか怯えない者も数割いる。

 ベル自体は怪我や病気を治してくれる好青年ならぬ好少年だし。

 

「おおベル、今帰りか?」

「あ、ミアハ様」

「ワフ」

「うむ、フェルも元気そうだな」

 

 ミアハに撫でられ目を細めるフェル。この(ひと)は割と最初からこんな感じ。怖くないのかと聞けば、ダンジョンのモンスターとは気配が異なるらしい。オラリオの民が受け入れたのが早いのも、その辺りが関係しているとか。

 

「聞いているぞ? この辺りでよく治療をしてやっていると」

「アミッドさんには怒られちゃいましたけどね、他の医療系、薬品商業系の【ファミリア】の仕事を奪うことになる、って」

「なに、彼奴も本気で言っているわけではないだろう。それこそ、アミッドとて行うこともあるからな」

 

 休日でも人を癒し、今は休日だからと代金を受け取らない。

 

「やっぱり優しい人ですね」

「うむ。同時に大手の医薬【ファミリア】の団長でもある。だから無体を働く者も少ない。だがベル、お前は零細【ファミリア】の唯一の団員、無償で奉仕を当たり前のようにしろと、前例があるゆえに言ってくる者もいるだろう。アミッドはそれを心配しているのだ」

「大丈夫です! 余裕があるのにただにしろって言う人は殴り飛ばしますから!」

「うむ、その意気だ」

 

 その意気かなあ? と周りの誰もが思った。

 

「そういえばミアハ様、神様を知りませんか? 神様達のパーティーに行った日から、帰ってこないんです」

「ふむ、ヘスティアが? 生憎と私は神の宴には参加しなかったから…………力になれずすまない」

「い、いえそんな!」

 

 

 

 

 

 その頃のヘスティアは、神友ヘファイストスに土下座していた。

 

「何時までそうしてるのよ。そこでそうやって虫みたいに丸まられると集中力が落ちるんだけど」

 

 呆れてため息を吐くヘファイストスだが、ヘスティアは動かない。

 

「はぁ………あのねヘスティア。何度も言うけど【ヘファイストス・ファミリア】(ウチ)の上級鍛冶師(スミス)の武具は最高品質。()()()()()()一流なのよ」

 

 自慢ではなく、純然たる事実として告げるヘファイストス。

 

「子供達が血と汗を流して造り上げる武具。それを友神の誼で格安で譲るなんて出来るわけないでしょう?」

 

 それがヘスティアがヘファイストスに頼み込んできたこと。ガネーシャの開催した宴から2日、ずっとこの体勢で動かない。何が彼女をそうまでさせるのか。

 因みにこの土下座なるポーズはどんなことも許してもらえてどんな頼み事も聞いてもらえる最終奥義としてタケミカヅチがヘスティアに教えたらしい。何教えてんだあいつ。

 

「……ヘスティア、教えてちょうだい。どうして貴方がそこまでするのか………」

 

 我ながら甘いと思いつつも、このままでは仕事に手が付かないと内心の言い訳を用意しヘスティアに尋ねる。

 

「あの子の力になりたいんだ! あの子は、憧れている人達のように人を救える、そんな存在になろうとしている。そのために、ボクがしてやれることをしてあげたいんだ。何もできないのは、嫌なんだよ………」

「………………」

 

 本気、なのだろう。これは梃子でも動かない。

 ヘファイストスははぁ、とため息を吐いて立ち上がる。

 

「もう、仕方ないわね」

「ヘファイストス?」

「何百年掛かろうと、お金は返してもらうわよ?」

「もちろんだよ!」

 

 

 

 

 

 

「…………………」

「ベルさん? 先程からどうしたのですか?」

 

 怪物祭(モンスター・フィリア)当日。ギルド職員も忙しくなるとハシャーナから聞いていたベルは換金などの作業も邪魔になると考えダンジョンにいかず街をふらついていたらディアンケヒトに出店を手伝えと言われて手伝っていた。

 オラリオ1の治癒師(ヒーラー)であるアミッドといる姿が目撃されるだけで得になるだろう、と金をなるべく払わないつもりのディアンケヒトと異なりアミッドは後で別口で用意してくれるらしい。

 

「ああすいません、お手伝い中なのに」

「気にしないでください。祭り事の際は冒険者の怪我人は減ります。調教師(テイマー)の方か、人が多く集まり起きた喧嘩の怪我人は増えますけどね」

「そうなんですか」

「……今年は、【ガネーシャ・ファミリア】の方が見つけたというモンスターの不安要素がありますが」

 

 と、アミッドの言葉にベルは目を細める。

 

「アーディさんから聞きましたが、手を怪我するほどの相手をわざわざ素手で倒したそうですね」

「──」

 

 ギクリと身を竦ませるベル。アミッドははぁ、とため息を吐く。

 

「別に怒りません。ただ、今は【ガネーシャ・ファミリア】も見回ってくれています。わざわざ無茶をしないでくださいね」

「はい」

「はい、いい返事です……」

 

 とベルの頭を撫でるアミッド。

 あのモンスターは打撃にこそ強いが斬撃に対する耐性は殆ど無い。武装している限りLv.3程度でも十分対処できるだろう。

 

 

 

 

 ギルドや【ガネーシャ・ファミリア】でさえ全容を測りかねている入り組んだダイダロス通り。その地下……

 蠢く2種類の影。うち一つが()()()()()道を作る。

 下水道を通り、人通りの多い場所の下は見張りがいるため仕方なく人気のない場所を目指し移動する。

 悪意はゆっくり広がり始めた。




フレイヤは来ませんでした。来る理由がなかったから。


因みにベルの現在のオラリオ内好感度は

ヘスティア=フェル>アミッド=アーディ>シャクティ=ミアハ=クロエ=エイナ=ガネーシャ>ベート>ミア母さん>豊穣の女主人店員=ロキ=ハシャーナ=リヴェリア=砂漠であったマッチョ>フィン=超凡夫>じゃが丸くん屋の店長>アイズ>覗き見してくる誰かさんです。
初対面でも懐かしさを感じさせる人には親しみを覚えやすいぞ。
どうした原作ヒロイン、下にいるぞ

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