ベル・クラネルの治癒魔法の使い方は間違っているだろうか?   作:救命団副団長

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祭りで襲われるのは間違っているだろうか?

 祭の空気に当てられ普段は買わない少し高い薬も買っていく客。中には逆に安くしろと言ってくる者も居る。

 ダンジョンに潜らない臆病者、怪物と戦ってやっている自分達に奉仕しろだの言う輩はベルの握手で彼我の差を理解し逃げていく。

 

「また【ソーマ・ファミリア】………ほんと、毎年毎年懲りないですよね」

「そうなんですか?」

 

 【ソーマ・ファミリア】なる【ファミリア】の団員達を追い返したベルは店員の言葉に首を傾げる。

 何でも何時も金稼ぎに奔走しており、犯罪ギリギリの行為も目に余る………何なら裏で犯罪行為もしているのではという噂が立つほどの素行の悪さだとか。

 

「大変なんですね」

「今年は君がいてくれるから対処が楽だよ」

 

 と、エルフのお姉さんが頭を撫でる。他種族との接触を嫌うとされるエルフだが、それにも個人差がある。彼女は比較的に寛容なようだ。

 

 

 

 

「はい、これ」

「おおぉ……!?」

 

 ヘファイストスから手渡された小型のケースにヘスティアは感嘆の息を漏らす。目の下に隈を作りながらも彼女の顔は輝いていた。

 

「要望には応えられたかしら?」

「十分十分! 文句なんてあるわけない!」

 

 箱の中身は漆黒の鞘に収められた漆黒の柄を持つ短刀。上から下まで黒尽くめの漆黒のナイフだった。

 刃の隅々に刻まれた複雑な刻印は【神聖文字(ヒエログリフ)】。

 

「いーい、ヘスティア? よく聞きなさい。このナイフはあんたが【神聖文字(ヒエログリフ)】を刻んだ通り、【ステイタス】が発生している。()()()()()()()、この武器は」

 

 つまり『神の恩恵(ファルナ)』を授かった子供達(眷属達)と同じ。装備者が獲得した【経験値(エクセリア)】を糧にすることで進化する武器。

 ナイフと同じ、ヘスティアの恩恵を授かった者のみに扱うことを許された、それ以外の者には鈍ら以下の武器と堕ちる不良品。

 そう語りながら水を飲むヘファイストス。

 

「なるほど、つまりボクとヘファイストスの子供ってわけだ!」

「ぶふっ!」

 

 秒でその水を吹き出した。

 天界時代とある女神と付き合っていたこともあるヘファイストス。別段、その気があるわけではないがそんなふうに言われると流石に動揺する。

 

「げほ、ごほ! あ、あんたねえ………誰彼構わずそういうこと言うと、アポロンみたいな馬鹿が現れるわよ」

「やだなあ、こんな事ヘファイストスにしか言わないよ!」

 

 満面の笑みでそう返すヘスティア。ヘファイストスの顔が羞恥で赤く染まる。

 

「そうだ! これから渡しに行くけど、ヘファイストスも一緒に行こう! ベル君に君を、君にベル君を紹介したかったからね!」

「あ、ちょっと! 引っ張らないでヘスティア! もう、解ったから着替えさせて……」

 

 元気に誘ってくる神友に仕方ないと微笑むヘファイストス。天界時代引きこもりだった彼女と祭りを回るのも、まあ悪くないだろう。

 

 

 

 

 

「お〜いベルく〜ん!」

「あ、神様!」

「いででで! は、離せ! わ、悪かったよ!」

 

 見覚えのある白髪に声をかけるヘスティア。ベルは小太りの男の腕を捻りながら振り返る。

 

「何事!?」

「この人がポーション安くしないっていった人に暴力を振るおうとしてたから」

「て、てめぇ! 折れたら解ってんだろうな!?」

「はい! ちゃんと治します!」

「何こいつ怖い……」

 

 男は顔を青くして、ベルが腕を離すとそそくさ逃げていった。

 女性店員達がキャーキャー黄色に声を上げていた。

 

「おかえりなさい神様。そちらの女神様は?」

「ふふん。ボクの神友さ………なんの神か当ててみるかい?」

「え、えっと…………美の女神様、でしょうか?」

「そう思うかい?」

「は、はい……」

「……………」

 

 頬を赤くして照れながら言うベル。神故に嘘を見抜けるヘファイストスは本心と見抜きこの神にしてこの眷属ありか、と頬をかく。

 

「ヘファイストスがきれいなのは認めるけど、不正解だぜ」

「ヘファイストス……ってことは、【ヘファイストス・ファミリア】の……鍛冶の女神様なんですね!」

「え、ええ………そうよ。はじめまして、ベル・クラネル。私はヘファイストス。貴方の言うように【ヘファイストス・ファミリア】の主神。今度利用してね」

「そ、そんな! 【ヘファイストス・ファミリア】の装備なんて手が届きませんよ!」

「そんなことないわよ。ウチにだって駆け出しはいるからね。その子達の作品だって品質はいいし、お値段も手頃だしね」

「そうなんですね」

 

 なら今度寄ってみますね、と笑うベル。頭なでたくなってきた。

 

「それよりベル君、君にプレゼントがあるんだ!」

「プレゼント?」

「ああ、それ───!?」

 

 と、ヘスティアが箱をベルに渡そうとした時だった、ボガァン! とそう離れていない場所で何かが破壊される音が響く。慌てて振り返ると、緑の体を持った巨大な影………

 

「モ、モンスターだぁあああああっ!?」

 

 凍りついたかのように、平和な喧騒に満ちていた大通り一瞬言葉を無くす。

 蛇のような体躯を持ったモンスターは頭部を開き花の本性を顕に涎の垂れる口を開き………

 

「はぁ!」

「ギッ!?」

 

 ベルの蹴り(ラビットフット)が地に鎮める。余りの勢いで地面に叩きつけられ無理やり噛み合わされた歯が数本砕ける。

 

「グ、ギャ………!」

 

 怒りを滲ませ起き上がろうとした食人花。その花托部分をベルが踏み付ける。丁度その位置、口奥に存在する魔石が圧壊しその身を灰に還す。

 

「オオオオオオ!!」

「っ! まだ居る!」

 

 その食人花が出てきた穴の中からさらに飛び出す食人花。その数、3匹。

 無手で倒すには地面に押し付けた上で魔石のある場所を叩くか口内に手を突っ込むか無理矢理引きちぎる必要がある。と……

 

「ベル君! 受け取れえええ!」

「神様!?」

 

 ヘスティアがベルに向かって何かを投げる。

 箱だ。中身は、ナイフ。

 

「やっちまえ、ベル君!」

「────っ!」

 

 次の瞬間、ベルの姿が消える。

 最大Lv.2しかない周辺の冒険者達や零能の神には視認不可能。一閃、二閃と振るわれた斬撃はナイフで足らない刃渡りを補い首を切り落とした。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 食人花が出てきた際破壊された路面の瓦礫で怪我した市民を魔法で治癒するベル。遠くから悲鳴が聞こえてくる。1つ2つ、ではない。もっと多い。

 屋根の上に駆け上がるベル。食人花、そして奇妙な芋虫が街の各所で暴れていた。




因みにこのベル君は弟力が高いです。お兄ちゃんがいてお姉ちゃん達がいたので。無自覚魔性ショタ

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