ベル・クラネルの治癒魔法の使い方は間違っているだろうか? 作:救命団副団長
サポーターと契約するのは間違っているだろうか?
少女、リリルカ・アーデは小柄な女性に仁王立ちで立たれ小さくなってる兎のような少年を見つめる。
自分より大きいが、年下だろう。髪は白髪だが、老人のように抜け落ちたというより処女雪のように白い。
生まれつきなのだろう、若いし。
「それで? 肋骨が折れていたのも、それを無視して他の人を優先したのもまだ許しましょう。なぜ地上に戻って、わざわざここに来て、そのまま帰ろうとしたのですか?」
「ほ、ホームにはマナポーションもあるので……」
「ええ、でしょうね。しかしわざわざ怪我人をここに運んできたのだから、ここで買えば宜しかったでしょう」
マナポーション?
怪我には普通ポーションだろう。となると彼は
この世の汚れなんて知らない、幸せ者の目だ。
内心の嫌悪を押し殺し、リリルカは二人に話しかける。
「あの………」
「自分がどんな状況でも他人を思える、そこに好感は覚えますが………ああ、目が覚めました。何か不調はございませんか?」
「全部治したつもりですけど、痛いところはありませんか?」
「はい、大丈夫です。ええっと、ここは?」
「ここは【ディアンケヒト・ファミリア】の経営する治療院です。私は団長のアミッドと申します」
「【ディ、ディアンケヒト・ファミリア】!?」
大手【ファミリア】御用達の、高額の!?
そんな大金
そんな考えが顔に出ていたのか、女性は白髪の少年を見る。
「代金は彼が払ってくれました。と言っても、個室の使用代だけですが」
「……え?」
「彼は【
「え、お金なんて別にいりませんよ。好きでやったことです」
「…………そうですね。ただ、仕事としてやる時はきちんと代金をもらうんですよ。あなたの【ファミリア】は余裕があるとは言えないのですから」
派閥が別になっちゃった弟を心配するお姉ちゃんかな?
お金はいらないと言い切ったベルに微笑み頭を撫でるアミッドを見てリリルカはそう思った。というか………
「冒険者?
「ええ、自分で自分の傷を癒やしながら戦い続ける、戦場を駆け回る回復要員です」
ナニソレコワイ。
いや、しかし冒険者、か…………。
「助けていただきありがとうございます冒険者様。リリはリリルカ・アーデと申します。リリは、お礼に何をすればいいでしょう? サポーターのリリに出来ることなど限られていますが」
ニコニコ微笑み下手に出るリリルカ改めリリ。冒険者を相手にするのだ、謙るぐらいが丁度いい。何を目的としているのかは知らないが、自分からこれ以上奪えると思うなよ、そんな感情を表に出さぬよう務めるリリに、少年も自己紹介をする。
「僕はベル………ベル・クラネル。お礼なんて、気にしないで。僕が好きでやってることなんだから」
「…………え」
だがベルはあっさりと報酬を断る。
「え、あの………え? リリは、サポーターですよ?」
「? うん、聞いたよ?」
サポーターとはダンジョンにおける非戦闘員。魔石やドロップアイテムといった戦利品を回収する荷物持ち。戦えぬ弱者が選ぶ道と蔑みの対象になる専門職。
「そういうことですか」
「どういうことですか?」
「彼女を襲っていたという冒険者、彼女がサポーターだからこそ暴力を振るっていたのでしょう。自分には勝てないであろう相手だから。もっとも、その原因は定かではありませんが」
「っ!」
アミッドの一瞥にリリは息を呑む。気付かれている?
いや、明確な確信こそ持っていないが、何かをしたとは思われている。
そりゃそうだ、街の住民は勿論【
あの冒険者は馬鹿の類だが、会っていない彼女からすれば冒険者もリリも疑う。
「自分には勝てない相手に…………」
ベルが明らかに不機嫌な顔になる。弱い者を我欲で甚振る者が許せないというように。でもどうせ貴方も冒険者なんだろう、とリリは思った。
なるほど、きっと駆け出しだ。だからまだ無垢。でもすぐに力に溺れる。戦う力を持つが故に、戦わぬ者を嘲り、自分が誰かより強い、力で支配できるという快感に溺れる。そうに決まってる。
「お礼を気にするなと言われても、冒険者様に助けられ何もしないなんて知られたら、それこそリリはもっと追い詰められてしまいます」
「え、そうなの? じゃあ………どうしよう………」
「お金を受け取りたくないというのなら、どうでしょう。リリを雇いませんか!?」
「雇う?」
「はい。リリは新しい冒険者様に雇ってもらえるというメリットもあります。どうでしょう?」
リリの提案に考え込むベル。アミッドはジッとリリを見つめる。
「……どうするか決めるのはベルさんです」
「ううん。じゃあ、お願いしようかな。フェルは荷物運びは出来ても回収はできないし」
「………そうですか」
アミッドとしてやはりまだリリを疑っているようだ。
まあ別に良い。バレたところで、それでもいい。
「よろしくね、リリ」
ただの八つ当たりだ。気に入らないだけだ。
どうせ汚く染まっていくこの真っ白な冒険者に、最初に泥をつけるのが自分なら、ほんの少し満たされる。
「はい、よろしくお願いしますね、ベル様!」
『ベル・クラネル
Lv.1
力:I84→H162(+78)
耐久:E421→D534(+113)
器用:E418→E458(+50)
敏捷:D501→D562(+61)
魔力:D527→C601(+74)
《魔法》
【治癒魔法】
・速攻魔法
・治癒魔法
・怪我、病気、毒の治癒
・使用魔力量により効果変動
∟系統強化:他者への効果上昇
∟系統劣化:自己への効果上昇
【】
《スキル》
【
・早熟する
・憧れが続く限り効果持続
・憧れの丈により効果向上
【
・治癒魔法の効果向上
・治癒魔法に対呪詛性能付与 』
(トータル300オーバー!?)
特に耐久の上がり幅が高い。続いて魔力、敏捷。
かなりのダメージを追い、回復しながら、恐らく他の誰かの怪我を治すために魔法を使い続けたのだろう。
「ベル君、一体何があったんだい?」
「そうですね。一言でまとめると、モンスターの群れと凄く力の強い人が攻めてきて、冒険者の皆さんを回復させながら走り回ってたらその人にボコボコにされちゃいました」
「ベル君ってロキのところの第一級にも勝ったんだろう?」
「酔ってましたけどね」
あと油断してた。
とは言うが、ベルを追い詰められる存在なんてそうないないだろう。
「う〜ん。ベル君の救命団衣もボロボロになったし、新しい防具を買ったほうが良いかもね。そのへんはアドバイザー君に聞いてみたらどうかな?」
「というわけでエイナさん、なるべく安く中層でも使える防具って何処で買えますか?」
「中層……? いや、うん。ベル君だもんね………18階層でも大活躍した白髪の冒険者だもんね」
18階層での
でも実は
「中層に通じるかどうかは置いといて、掘り出し物を安く仕入れる場所なら知ってるよ。掘り出し物だから、運と見る目が重要だけど」
「本当ですか!? じゃあ、その場所を……!」
「う〜ん…………ベル君、明日開いてる?」
「午後からはダンジョンなので、午前中で良ければ」
それぐらいなら、時間も十分だろう。とエイナは頷く。
「じゃあベル君、明日少し時間もらえるかな? 案内するよ」
「わかりました。デートですね」
「ふぇ!?」
サラリと言われ言葉にボッ、と赤くなるエイナ。ベルもハッと気付く。
「ご、ごめんなさい! 何時もの癖で、つい!」
「い、いや別にいいの! って、何時もの? ふぅ〜ん、癖になるほどデートしてるんだ、ベル君って」
「はい、お姉ちゃん達とローテーションで………」
「あ、ああ………お姉さんか。ベル君、お姉さんいたんだね」
「はい、沢山!」
想像できるな、姉達に可愛がられる末っ子のベル。なんとなく、悪い意味でなく女性との間に壁を感じないのはその姉達の影響なのだろう。
因みにお姉ちゃん達に鍛えられたベルは
弟モード(みんなの影響
上流階級モード(お姫様達や貴族の奥様お姉さま、悪乗りした女勇者の影響
俺マンモード(ほぼ女勇者の影響
と複数のモードが存在するよ!
感想待ってます