ベル・クラネルの治癒魔法の使い方は間違っているだろうか?   作:救命団副団長

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10連引いたら一発目でドンキとチョウさんと若いモリさん同時に出たんだけど。大丈夫俺、明日事故に遭わない?


防具を買いに行くのは間違っているだろうか?

 オラリオ北部、大通りに隣接するよう設けられた半円形の広場にてベルはエイナを待つ。

 女性と二人っきりのお出かけは久し振りだ。今度神様やアミッドさん、アーディさんなんかも誘おうと、異性が二人で出かけることに対する認識が一般人とズレている事に気付かないベル。

 

「おーい、ベールくーん!」

 

 時間になり、エイナが駆け寄ってきた。

 

「おはよう、来るの早いね。なぁに、そんなに新しい防具を買うのが楽しみだったの?」

「いえ、エイナさんと二人きりでお出かけなんて、楽しみで目が冴えちゃって」

「あ、そ………そう。そっか………な、なんか照れるなぁ。えへへ」

「…………?」

 

 ベルの言葉に顔を赤くしてなんとか笑みを浮かべるエイナ。何故そんな反応をするのかわからないベル。団員が女性一人のミアハ様ならこういった女の子の反応についてなにか知ってるだろうか?

 

「それにしても……」

「こ、今度は何……?」

「いえ、何時ものピシッとした制服姿のエイナさんも素敵ですけど、今日は年相応に可愛らしいなって思いまして」

「……………!」

「赤!? だ、大丈夫ですかエイナさん! ね、熱でも………!」

「だ、大丈夫! ほんと、大丈夫だから!」

 

 プシュウ、と頭から湯気を出しかねないほど真っ赤になったエイナを見てオロオロしだすベル。何だこの怪物、誰が育てた。

 

「も、もうベル君! かわいいとか、素敵とか、そういうのは誰にでも言っていいことじゃないんだからね!?」

「はい。だからエイナさんにはしっかり言っておこうと思って」

「〜〜〜!!」

 

 ビシッと指差し叱ればものすごいカウンターが帰ってきた。顔をさらに真っ赤にしハクハクと口を動かすエイナ。

 手でも繋いでからかってみようかな〜、と思っていたが今は無理だ。手なんて繋げない。

 

「それじゃあ、行きましょう」

「ひゃうわああああ!?」

「ええ!?」

 

 繋げないけど繋がれた。色んな感情が爆発しそうなエイナの叫びにベルがたじろぐ。

 

「あ、えっと……もしかして、嫌でしたか?」

 

 しょんぼり落ち込むベルに思わず垂れたうさ耳を幻視する。そんな顔されるとこっちがいけないことをした気分になる。

 

「ち、違うの! 確かにエルフは肌の接触を嫌がるけど私は別にむしろベル君とだったら嬉しいじゃなくて嫌じゃないから安心して!」

 

 早口でまくしたてるエイナ。とりあえず嫌ではないことがわかって一安心。

 

「良かった………それじゃあ改めて………行きましょうか、エイナさん」

 

 今度は手を繋がず差し出すだけ。エイナを気遣ったのだろう。何というか、年下なのに大人だなあと思いながらその手を取る。

 

「あ………あの、そういえば何処に向かうんでしたっけ?」

「……………」

 

 訂正、まだまだ子供だ。

 困ったように頬をかくベルを見てエイナは微笑む。

 

「もう、しょうがないなあ。こっちだよ、ベル君」

 

 こういうところが、放っておけないんだよなあ。

 

 

 

 

 バベルはダンジョンの『蓋』の役目を持つ。それと同時に、冒険者のための施設でもある。シャワールーム、簡易食堂に治療施設、そして換金所。

 そして空いたスペースをテナントととして商業者に貸し出す。その一つが【ヘファイストス・ファミリア】で、今回の目的の店。

 

「ベル君? その戦闘衣(バトルクロス)がどうかしたの?」

 

 その店に並ぶ白い戦闘衣(バトルクロス)という……一見すると服のようで、造り手によって凡庸な鉄の鎧すら超える強度を持つ品を見ていた。

 

「こういうのって、オーダーメイドだとやっぱりよりお金がかかるんでしょうか?」

「う〜ん。そうだね……デザインを指定するとなると、やっぱりその分お金がかかるよ」

「…………ですよね」

 

 ベルの防具。オラリオのものとはまた違った戦闘衣(バトルクロス)にも似た丈夫な服。彼がオラリオに来る前に世話になった救命団という組織の正装。

 18階層の事件でボロボロになったらしい。中層でも使える装備を、とは言っていたが本音は新しい防具は似たようなものが良かったのだろう。

 

「もっと稼げるようになれば、好きなデザインで注文もできるよ。【ファミリア】によっては大量発注する制服にしたり、【ロキ・ファミリア】みたいに全部オーダーメイド、なんてところもあるからね」

 

 どの道お金が必要ということだろう。仕方ない、名残惜しいけど又の機会に…。

 

「『神秘』のアビリティとかに目覚めたら、治癒魔法で再生する服とか作れないかなあ」

 

 ここに来る途中聞いた、『発展アビリティ』なる恩恵効果の一つ、『神の奇跡』を思い出し呟くベル。

 因みに『神秘』のアビリティを持つ歴史的有名人の『賢者』と呼ばれる存在は永遠の命を手にできる賢者の石を主神に砕かれ笑われたらしい。

 

「もしその人が無限の寿命を手に入れて今も生きてたら、作れたんですかね」

「どうだろう。『神秘』で作られる魔法道具(マジックアイテム)はなんでもありと思えるほどらしいし、ひょっとしたら出来たかもね」

「そうですか。でも、永遠の命は手に入らなかったんですよね……」

 

 エイナの言葉に残念がるベル。と……

 

「いらっしゃいませー! 今日の御用は何でしょうか、お客様!」

 

 店員の女の子が声をかけてきた。

 可愛らしい黒のツインテールを結ぶリボンには鐘がついており、小さな体躯に不釣り合いな大きな胸。

 

「…………何やってるんですか、神様」

 

 その少女は、ベルの主神であるヘスティアであった。

 

「べべ、ベル君!? それにアドバイザー君!? どうしてここに!?」

「こっちの台詞なんですけど!? 僕、リヴィラの臨時治療院で結構稼いできましたよね!? なんでバイト増やしてるんですか!?」

「い、いやぁその……ベル君ばかり働かせるのは悪いかなぁって…………」

「それは………確かに僕も逆の立場なら思うかも」

「そうそう! そうなんだ! はい、この話おしまい! あ、と。久し振りだね、アドバイザー君」

 

 酒場の宴会以来の再会だ。アーディは良く遊びに来るし何なら泊まるからもう一人の眷属(こども)ぐらいの感覚だったが、エイナはギルド職員という立場上、冒険者一人に親身にできない…………

 

「ん? 公私分けて、これ私としての行動?」

「えっと、そうですね。今日は非番なので、私事として来ています」

「ふ〜ん………」

 

 ジッとエイナを見つめたヘスティアは、ベルに離れるように手を動かしエイナの耳に口を近づける。

 

「君はベル君に気があるのかい?」

「ふえ!?」

「いや、そのね。ベル君って結構むちゃするから、いっそ世帯でも持ったほうが落ち着くかなって」

「しょ、ショタ!? は、早すぎます神ヘスティア! ベル君はまだ14ですよ!!」

「早すぎるもんか! 14でタケやミアハみたいに無自覚で女の子落としてるんだぞ! いっそ誰かと正式に付き合わないといつか刺されかねない!」

「………………」

 

 心当たりがある。いや、自分は落とされてないけどね? でもああいう人を勘違いさせる態度を取っていたらいつか本当に刺されるかもしれない。いや別に聞いた話の統計であって自分が落とされたわけでは断じてないが。

 

「まあ、最終的に決めるのはベル君自身だけどさ。ボクとしてはもう少し己を優先してほしいんだ。この前なんて肋骨が折れたまま地上に戻って人助けしてたってアミッド君が怒ってたし」

「…………ベル君、ちょっと来なさい。あ、神ヘスティア。ここって談話スペースありますか?」

「あ、はい。鍛冶師と冒険者が話すための休憩所はあちらになります」




対年上女性最強兵器ベル・クラネル

この世界のヘスティア様はベル以外にも助けてくれる人(アーディ)が居たので孤児の守護者の性質がめっちゃ出てる



因みにハクハクは誤字じゃない

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