ベル・クラネルの治癒魔法の使い方は間違っているだろうか?   作:救命団副団長

3 / 25
派閥を決めるのは間違っているだろうか?

 飛び込んできた小柄な女神。

 はあはあと肩で息をしていた女神は息を整えビシッとポーズを取る。

 

「そこの君! もしや【ファミリア】をお探しかい?」

 

 右掌を上に向け親指と人差指を立てベルを指差す。

 

「はい。それで、ちょうどアミッドさんが【ファミリア】に誘ってくれて!」

「んぐ! んん……ま、まあそこまで慌てて決めなくても良いんじゃないかい? 【ファミリア】は沢山あるんだぜ?」

「いえ、その……知ってると思いますけどあっちこっちで断られちゃって。あ、でもゴブニュ様っていう神様は応援してくれました!」

「……知ってる?」

「はい。えっと、ずっと僕をつけていた人……あ、神様ですよね?」

「…………」

 

 スッと移動しベルの前に立つアミッド。その目には明らかな警戒心が浮かんでいる。

 

「気づかれてた!? いやいや待って待って、違うんだ! ボクは可愛い男の子がいるな〜ぐへへへ〜とか考える神様じゃないやい!」

「神々はいつもそういうのです」

人類(こどもたち)からの信頼!? いやいや信じて! 本当なんだって!」

「では何故、ベルさんをつけていたのですか?」

「その、ね………実はボク、地上に降りてきたはいいけどまだ誰も眷属に出来てなくて……」

 

 と、気まずそうに言う女神。ようするに、眷属になってくれそうな人類(こども)を探している途中、断られ続けているベルを見つけ、彼ならと勧誘するタイミグを測っていたらアミッドが現れ、慌てて出てきたということだろう。

 

「おっと、申し遅れたね。ボクはヘスティア! よろしくね!」

「はい。ではヘスティア様、【ファミリア】を立ち上げた後の方針は?」

「っ! えっと………ダ、ダンジョンに潜って……その、お金を………」

「………………」

「紙くずを見る目!?」

 

 アミッドの視線に耐えられなかったのか後ずさる女神ヘスティア。計画性がないのだから仕方ない。

 

「………通常、探索(ダンジョン)系ファミリアは都市外で人員や資産をためるものです。いきなりベルさん一人ダンジョンに送って、死なせる気ですか?」

「そ、そんなことないよ! 彼、ロキのとこの眷属(こども)殴り飛ばしてたしすっごく強いと思ったから!」

「……………ベルさん?」

 

 と、アミッドがベルに振り返る。

 

「えっと……その、何処のファミリアに行っても馬鹿にされて、苛立ちがたまってつい」

「まあ新入りとか聞こえたし、弱いと思ってる相手に槍向けるような奴だからね。全くロキのところの眷属(こども)は躾がなってない!」

「だとしても、手を出すのはやりすぎです。下手したら都市最強派閥から狙われるかもしれないんですよ? はあ………【ロキ・ファミリア】には私が話を通しておきます。槍を向けられたのが事実なら、ロキ様なら話を聞いてくれるでしょう」

 

 暫くは自室待機です、と言うアミッドにはい、と落ち込みながら返すベル。

 

「って! だからその子を【ファミリア】に入れた前提で話すんじゃなーい!」

「ですが、貴重な治癒師(ヒーラー)を抜きにしても計画性もなくダンジョンに眷属を潜らせようとする神の下に知人を送りたくはありません」

 

 と、ヘスティアからベルを庇うように抱き締めるアミッド。姉弟子から不思議と母性本能をくすぐると言われたベルは伊達ではない。きっと直ぐに「お姉ちゃんと呼ばれたい冒険者ランキング」上位に仲間入りすることだろう。

 

「正論ばかりが通じると思うなよ〜!」

「暴論ばかりが通じたら破滅しか待ってないでしょう」

「だ、だいたい! 決めるのはベル君だい! さっきの会話からして、ダンジョンには潜りたいんだろう!?」

「え、あ……はい!」

「…………解りました。では新興派閥におけるメリット、デメリットを説明した上で、ベルさんが決めてください」

 

 このままではヘスティアも引き下がらないと判断したのか、アミッド仕方ないというように話を進める。

 

「まずデメリットは、先程言ったように人員と資産がないことです。人員に関しては他派閥の方を誘うという手もありますので、それほど大きなデメリットとは言えませんね」

「なるほど。タケやヘファイストスのところから頼めるかもなあ……」

「ベルさんは治癒師(ヒーラー)ですから他の派閥からも十分借りれるでしょう。あまり有名になりすぎると狙われるかもしれません。これが第二のデメリットですね。力がないゆえに、力で無理を通される」

「殴り飛ばせばいいですか?」

 

 グッと拳を強く握るベル。無理はいけませんとなだめるアミッド。【ロキ・ファミリア】の新人を殴り飛ばしたとのことだが、オラリオはモンスターだけでなく冒険者も質が違う。化け物みたいな連中がゴロゴロいる。

 

「メリットとしては、団長になれるのと、ステイタスの更新を好きな時に行えることですね。人数が多いと順番性になり、ファミリアによってはノルマを決めるところもあるそうです

「ボクなら何時でも更新するぜ!」

「後は………ありませんね。強いて言うならヘスティア様は具体的な運営方針もないので、ベルさんが決めてもいい、ぐらいでしょうか」

「運営方針………」

 

 

 

 

 

「冒険者になりに来ました!」

 

 と、元気良く挨拶してきた少年。

 年下というのもあるのだろうが、それにしたって可愛らしく感じる容姿。ようするに、悪い言い方をすれば弱そう。

 そんな少年が冒険者になりに来たとくれば、ギルドの受付嬢達はきっと直ぐに死んでしまうだろうと思った。しかも──

 

「【ヘスティア・ファミリア】………新興派閥、ですか……」

 

 出来たてホヤホヤ。構成員も一人という始末。活動方針はダンジョンに…………んん?

 

「行方不明者の探索、及びダンジョン内での治療行為……? クラネル氏、その………これは?」

「はい! 【ヘスティア・ファミリア】の活動方針は、救命です!」

 

 後にオラリオで知らぬ者の居なくなる治癒師(ヒーラー)が、聖女に続きもう一人現れる。

 冒険者いわく、兎の皮を被ったトロル。人の姿をしたミノタウロス。ドワーフに生まれなかったドワーフ。子供の姿をした筋肉。

 神々いわく。やべーよ、ちょうやべーよ。あいつ頭おかしいって。聖女ちゃんとの姉弟丼ハスハス。

 治癒魔法を使いダンジョンを兎のように駆け回りモンスターを暴走ミノタウロスのように吹き飛ばす。とある冒険者の英雄譚が、今始まった。




因みにアミッドは心配して色々手助けしてくれます。ただしヘスティアとの交流でポーションの類を買うとはミアハ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。