ベル・クラネルの治癒魔法の使い方は間違っているだろうか? 作:救命団副団長
緑の光が体の中に吸い込まれるように広がっていく。それだけで、冒険者の顔色が戻っていく。
「終わりました」
「おお!」
「…………」
運営方針が救命と聞かされ、困惑していたタイミングでやってきた毒に侵された冒険者が運び込まれ、ギルドお抱えの
「ありがとよ、坊主!」
「いえいえ、ダンジョンに出張も考えてまして。その時に是非ご利用を」
「おう! 何なら護衛を引き受けてやるぜ!」
バン! と背中を叩いた冒険者の方が何故かバランスを崩した。毒は抜けても体力までは戻らなかったのだろう。仲間に今日はもう休むぞ、と連れて行かれた。
「クラネル氏………
「え、詠唱?」
聞こえなかったがあの発動速度はそうなのだろう。
「つまりクラネル氏は、ダンジョンに潜り治療行為を行いたい、と………それ自体は、我々としても助かるのですが…」
何せ年間でもかなりの死者が出るのがダンジョンだ。潜れるヒーラーはありがたい。ありがたいが、それでも全体的に少なく、その殆どが大手【ファミリア】に所属している。何故か?
【
「怪我とかしたら、大変なんだよ?」
「大丈夫です! 治せますから!」
「自分で自分を治せるから良いってものじゃないの……」
「………
何で驚いているんだこの子。
「とにかく、一人で行くのはお勧めしません」
「わかりました。なるべく誰かを誘います」
「なるべくというか…………はあ、取り敢えずダンジョンに入るならまず基礎知識を……」
「どうだったベル君!?」
【ヘスティア・ファミリア】の
「【ファミリア】申請は通ったんですけど、運営方針は探索系ってことになりました……」
「まあ、前例がありませんからね」
と、同じく待っていたアミッドが言う。
「ですが、これで晴れて貴方もオラリオの冒険者。ファミリアこそ違いますが、共に人の命を救わんとする身。何かあれば気軽に相談しに来てください」
「はい! ありがとうございます!」
自分の眷属が早速友情を築いているようで何よりだ、とヘスティアは親面してうんうん、と頷く。そして、ベルに刻んだステイタスを思い出す。
解っていたが、やはり背中に恩恵がなかった。そして新たに刻まれた恩恵………
『ベル・クラネル
Lv.1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
【治癒魔法】
・速攻魔法
・治癒魔法
・怪我、病気、毒の治癒
・使用魔力量により効果変動
∟系統強化:他者への効果上昇
∟系統劣化:自己への効果上昇
【】
《スキル》
【
・早熟する
・憧れが続く限り効果持続
・憧れの丈により効果向上
【
・治癒魔法の効果向上
・治癒魔法に対呪詛性能付与 』
「んん〜〜〜!!」
速攻魔法って何さ!?
しかも詠唱の長さによって効果が変わるはずの魔法を、単純に魔力量を増やすだけで効果を上げる!?
それに、このスキル。
早熟って………まさかステイタスが早く上がるとかないよね?
因みに、ヘスティアは呪詛を解呪可能な
「担当はチュールさんとのことでしたが、彼女なら安心でしょう」
「はい! 色々教えてくれました!」
元気のいいベルの頭に無意識に伸びかけていた手を止めるアミッド。
「冒険者になったからと言って、無茶をしてはいけませんよ。恩恵の得たて、ランクアップをしてすぐの慢心などは、冒険者の死因の大多数を占めています。どうしてもお金が足りない時は一時的にギルドと契約するのも手ですがロイマンギルド長はそう簡単に手放してくれないでしょうから、【ディアンケヒト・ファミリア】の手伝いに来てください」
「君はベル君のお姉さんか!」
「そっかあ、新興派閥………うん、おめでとう!」
ここは【ガネーシャ・ファミリア】の畜舎。
モンスターを
ライガーファングの毛づくろいをしていたアーディはニッコリと花咲くような笑顔でベルを称賛する。
フェルを撫でていたベルはありがとうございます! と返した。
「それとね、ガネーシャ様も君がダンジョンに潜る時、ついてあげていいって。モンスターと仲良くできる子は稀だからね……」
ニードルラビット、アルミラージ、
「あ、こら! 君の番は後!」
「キキ、アッア……」
アーディに毛づくろいして貰おうと列になったモンスター達。シルバーバックが他のモンスターを押しのけようとしてアーディに叱られ落ち込む。それでも素直に戻った。
「アーディさんも仲がいいと思いますけど」
「そうかな? えへへ」
「うむ、二人共ガネーシャだ!」
と、元気よく叫ぶ像の仮面を被った半裸の男性。何を隠そう、彼こそ【ガネーシャ・ファミリア】の主神、ガネーシャその人である。
「? いえ、僕はベル・クラネルです」
「アーディ・ヴァルマだよ〜」
ベルは改めて自己紹介し、アーディは慣れているのかあっさり返す。ガネーシャは何を納得したのかウンウン、と頷く。
「ベル・クラネルよ! 今後ともアーディを宜しく頼む!」
「えっと………はい」
「アーディは器量のいい娘だが、如何せん最高の
「ええ!?」
アーディがガネーシャの頬を引っ叩いた。え、眷属って主神を殴っていいものなの!?
「私は別に相手が居ないわけじゃないよ。今だって告白されるもん。ただ、その人達が皆に関わるのをやめろって言うんだよ。酷いよね〜」
アーディの言葉に賛同するようにモンスター達が唸る。
因みにエルフはユニコーンを飼ったりするので、エルフに告白される時はユニコーンはともかく、などと言われるらしい。
「酷いですね。殴ってきましょうか?」
「………ベル君って、結構過激?」
「大丈夫です! 僕は治癒魔法の使い手ですから!」
「う〜ん。何が大丈夫なのかなあ」
ワシャワシャとベルのフワフワな頭を撫でるアーディ。なんだろう、見た目可愛らしいのに取り敢えず相手を倒して解決する感じ。夜五月蝿ければとりあえず福音鳴らして物理的に静かにしたという噂の何処ぞの女王様を連想させる。気の所為か、ベルの後ろにぼんやり赤毛の女性が。誰だ?
「あ、そうだ! 僕そろそろいかないと。アミッドさんも待たせてる!」
「アミッド? 知り合ったんだ。何処行くの?」
「えっと………【ロキ・ファミリア】の人に、その………暴言吐かれて、つい殴り飛ばしちゃったので謝りに…」
「ええ〜………あ、私もついていってあげようか?」
「お願いします。もしもの時は、僕を止めてください」
聞く神が神なら大爆笑、もしくはテンション上がりそうな台詞を言うベル。まあ手が速いみたいだし、Lv.2の冒険者数名ふっ飛ばすと言ってもLv.1。暴れても止められるだろう。