数日が立った後、ルルーシュとカレンは神根島に降り立った。シャルルを殺す以外の選択肢を得られなかったルルーシュであるが、それだけではなく皇帝シャルルの目的を察した為である。
「ではカレン、行ってくる」
「先に言っておくわ。この計画、私は反対よ」
「だろうな……しかしシャルルにギアスは効かないし、物理的に殺害することも不可能だ」
ルルーシュが導き出した答え……それは出口を封鎖して半永久的にシャルルと自らを檻に閉じ込めること。しかしそれはルルーシュ自身の帰還の可能性が0に近い事を意味する。
「ねぇ、私を連れて行ってくれないの?」
「……済まない。俺が帰ってきた時に蜃気楼がそこにある必要がある。現状、蜃気楼を守ることができるのは君だけだ」
「分かったわ……貴方が帰ってくるつもりなのはね。……だから」
「だからな……ん」
カレンはルルーシュの言葉を遮るように口を重ねていた。この時間がずっと続けば良いのに、と思ったが、それを許してくれる理性はいなかった。
「だから必ず帰ってきなさい、ルルーシュ」
「約束しよう」
ルルーシュが蜃気楼のコックピットから降りて姿が見えなくなってから数分の後、カレンは1人身悶えていた。
「ん────!何よ私、あんなに乙女チックに“だから必ず帰ってきなさい、ルルーシュ”って……恥ずかしい……穴があったら入りたい」
「私ってあんなキャラだったっけ……私もあんなキャラでいいのかな……?」
時間が許せば、カレンはルルーシュが戻ってくるまで見悶えたことだろう。しかし、蜃気楼に一通の秘匿通信が入る。
「サザーランド・ジーク……ジェレミアね。なぜ今になって通信を……?でも今は一人でもルルーシュの力になってくれる人が欲しい……」
意を決してカレンは通信を許可した。
「ルルーシュさ……いや紅月!?なぜルルーシュ様の蜃気楼に?!」
「訳あって私が蜃気楼を守っているの。紅蓮は、今私の手元にないわ」
「ルルーシュ様は今どこに!?」
「具体的には私も分からない……彼はシャルルを相打ってでも殺す計画は聞いたわ」
「なっ……相打ってでもとは……!?このジェレミア・ゴッドバルト、お側にいられない事が一生の不覚……!」
「でも!彼は私に必ず帰ってくると約束した……だから」
「分かっている。座標を送ってくれ紅月。どんなに遠くとも1時間でたどり着いて見せるとも」
「助かるわ……」
ジェレミアに座標を送り通信を終えた一時間後、サザーランド・ジーク……ではなくその核とも言える、オレンジ色に塗られたサザーランドJが降り立った。
「あれ、ジークフリートの部分は?」
「アレはここに持ってくるには大きすぎるのでな、隠してきた。なに、直ぐに回収できるとも」
「そんなことよりも、聞かせてくれ。君とルルーシュ様の身に何が起きたのかを」
「分かってる……。先に断っておくけど私達も真相を全て把握してる訳じゃない」
「……」
カレンはジェレミアに現在彼女たちが置かれている状況を説明をした。ゼロの正体がブリタニア人であるルルーシュである、と黒の騎士団の面々に何者かが明かしたことを。それにより黒の騎士団が敵対したことを。そして命からがら自分とルルーシュは脱出し、ルルーシュは今、父であるシャルルと対面していることを。
「ジェレミア、聞きたいことがあるわ」
「答えられる範囲で答えよう」
「ブリタニアの皇族でゼロの正体を知っている、ないしは察していて、それを材料に黒の騎士団と交渉を持ちかけるような人物」
「ふむ……私が思いつくのはお一人だ。その御方はシュナイゼル殿下」
「シュナイゼル……ブリタニアの第二皇子ね」
「その通り。あの御方は、なんというか恐ろしいお方だ。常に温厚でいらっしゃるが何をお考えになっているかまるで分らない」
「そういえば……」
「どうしたのだ、紅月?」
「爆発音がない。当初の計画なら入り口を潰してシャルルを閉じ込める手筈だったのよ」
「ルルーシュ様の身に何かあったのでは……すぐに案内をしてくれ!」
ジェレミアが走っていこうとした瞬間、ルルーシュが……スザクとC.C.を連れて戻ってきた。カレンはジェレミアを押しのけてルルーシュの元へと駆け付けた。
「ルルーシュ無事だったのね!それにC.C.と……スザク?!」
「ルルーシュ様!ご無事で何よりです。このジェレミア御傍にいられなかったことが何よりの不覚……!」
「ジェレミア……!お前も来てくれたか」
「このジェレミア・ゴットバルト、ルルーシュ様のおわす場所ならば、たとえ火の中でも水の中でもお供いたしますとも!」
「相変わらず暑苦しい男だ」
「え、ジェレミアさんって普段からこんな感じなの……?」
「割と普段からこんな感じだぞ」
「は、ははは……」
「いやいやいや何当たり前かのようにスザクがそこにいるのよ?!」
「そうだな。結論から話すとしよう」
「俺はシャルルから皇帝の位を禅譲された」
時は、ルルーシュが父であるシャルルと対面し、母であるマリアンヌと再会したところまで戻る。
「私は、優しいぃ世界を、作ろうとしたぁ」
「嘘のない、優しい世界をなぁ」
「しかしぃ、ルルーシュよ、お前の動向を見ていて私も思ったのだ」
「何をだ?!」
「果たして嘘のない世界がぁ、本当にやさしい世界なのか、だ」
「……どういう心境の変化だ?」
「私はぁ、裏切られ続けた。嘘で塗り固められた世界がぁ、嫌だった」
「……」
「ナナリーを見ているとぉ、お前がぁ、彼女に真実を伝えるのは酷なことだと、思ったのだ」
「それは貴様らの所為だ!貴様らが俺たちを捨てなければこんな苦労は……!」
「分かっているともぉ。だから落とし前は、つけよう。それでよいな、マリアンヌゥ?」
「貴方が決めたことならばかまいませんわ」
「それで、貴様は俺に何を施すというのだ」
「皇帝の位、だ」
「ふむ」
「ブリタニア皇帝の力をもってして、貴様の言う優しい世界を、作って見せよ。その代価として儂のコードを継承してもらうことになるが……」
「皇帝陛下。それは僕が納得しかねます」
話がまとまりそうな雰囲気の中、枢木スザクが現れた。
「枢木ぃ、お前は何故ルルーシュを殺したいと願う?」
「決まっています。ユフィへの復讐のためです」
「ユーフェミアは、最後お前に何と言った?」
「……行政特化日本は成功したかと、そして僕に学校に行って欲しい、と」
「ユーフェミアは、貴様にとっての、そして日本人にとっての優しい世界を望んだ。同じ夢を、見てはくれないのか?」
「……一つ、お聞きしたいことがあります」
「言ってみろぉ」
「“コード”を引き継ぐと、どうなるんですか?」
「死ねなくなる」
「なっ?!」
スザクは酷く動揺していた。それは当初の目的であったシャルルの暗殺が事実上不可能であったことからであろうか、それとも、個人が負うべき罰として、不死はあまりにも大きすぎることからであろうか。
「ルルーシュ、君は良いのかい?不死なんて、到底人の背負える罰じゃない……」
「構わないさ。それに、俺の理想の為に散っていた命に対する償いとしてはこれ以上ないじゃないか?俺は、俺が作った世界を未来永劫見守るんだ」
「……分かった。君に、僕の夢を託す。共に成し遂げよう。だがそれはそれとして、1発殴らせろ」
言うや否やスザクはほぼ全力でルルーシュの頬を殴った。ゴリッと嫌な音がしてルルーシュは倒れ込む。
「あのなぁ、殴るのは構わないが全力を出すな!俺の体はお前のと違って貧弱なんだ!」
「あ、なんか、ごめん」
シャルルはそんな息子と、その親友のやり取りを微笑ましく見ていたが、不意に、C.C.が現れた。
「私の約束はまた反故にされるのだな、シャルル」
「すまんなぁ、C.C」
「なに、構わないさ。この坊やの作る優しい世界とやら、私も気になったのでな」
「そうかぁ……。では、ルルーシュ!コードを、お前に継承する。目を瞑れ」
「了解した」
3秒とかからないうちにシャルルがもう良いぞ、といいルルーシュが目を開けると、左手の甲に赤くVの字が刻印されていた。
「そのVの刻印がぁ、コードの保持者たる証だぁ」
「ではさらばだ、ルルーシュ」
「待て!まだ一つ、聞きたいことがある。……なぜ俺にコードを授けた?その気になれば、計画の障害になる俺の事を殺せた筈だ」
「そうだなぁ、まだ儂に人の心……いや、子を持つ親の心があった、と言う事だ」
「そう……か。ありがとう。そしてさようなら、父さん」
ルルーシュはそう言い残し、スザクとC.C.を連れてその場を脱出し、今に至る。そしてルルーシュはカレンの目を見つめて話しかける。
「カレン、俺と共に地獄の道を歩むことすらも承諾してくれたのに、本当にすまない……」
「馬鹿……っ」
カレンはルルーシュの胸の中で泣き出した。自分の愛する人が死ねない体になったことに。そしてそれ以上に、自分がその道を共に歩めないことに……。
カレンのルルーシュに対する愛は少し重いくらいが良いと思います。
ここに至るまでが不幸すぎたのでルルーシュにとって少し都合が良すぎるくらい優しい世界線があって良いと思うんですよ、私。
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