「それでルルーシュ、どこに向かってるのよ?」
「蜃気楼だ。アヴァロンから直接通信を入れても、不信感を募らせるだけだからな」
「私がついていくのはルルーシュが本物のゼロだと証明するためよね」
「その通りだ。俺が一人で行っても星刻にしてみれば敵の皇族でしかないからな」
「星刻さんが先に扇さん達から貴方のことを知らされていたとしてどうするの?」
「その時は……その時だ。だが話せば俺たちに付いてくれると信じている」
「信じてるって……貴方にしては楽観的ね」
「星刻は黒の騎士団の人間だがそれ以前に中華の人間だからな……っと、着いたぞ」
カレンは気になっていたことをルルーシュに確認している間に、格納庫に着いていた。そこで蜃気楼に乗り込み、合衆国中華──黎星刻に通信を試みた。
「私だ。貴様は……いや、蜃気楼からの通信、そして隣に紅月カレンがいるという事実、本当に貴方が
ゼロだったのか。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」
「ほう、私の正体を知ったか。さしずめ扇からの入れ知恵かな」
「そんなところだ。それで、黒の騎士団を追放された貴方が、黒の騎士団の総司令である私に何の用事かな?それとも、合衆国中華としての私に用事かな」
「……合衆国中華の黎星刻に言う、私に協力してくれ。見返りは」
「了解した。合衆国中華は、貴方に協力しよう。ゼロ……いや、ルルーシュ」
「合衆国中華の……え?今何と言った?」
自らの正体がばれていた時の問答を想定していたはずが、斜め上の回答をされてルルーシュは混乱した。
「合衆国中華は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに協力するといった。なに、天子様や神楽耶殿にも既に話はつけている」
「なぜだ?俺の今の立場は君たちと敵対しているはずなんだが」
「……扇から君の正体とそれに伴う対処を聞かされてな、私は正直信じられなかった」
「ほう、それは何故だ?」
「まず一つ、私を通さずに現場の判断で貴方を追放したこと」
「なるほどね、確かに仮にもCEOである人間を総司令、ひいては超合衆国最高評議会の判断を仰がずにに処分したこと、ということね」
今まで静かだったカレンが話に入ってきた。
「その通りだ、カレン。だがまぁルルーシュの謎の行動──ブラックリベリオンや第二次トウキョウ決戦での行動を考えれば、分からなくもない」
「俺も感じていたことだから耳が痛いな」
「しかし、それとこれとは話は別だ。組織として考えたとき、扇らの行動は狂っている。そして第二に、扇たちは直前にシュナイゼルと対談していた事実を知った」
「その言い方だと、扇や藤堂はそのことを隠していたようだな」
「その通りだ。情報源をかたくなに語ろうとしなかったが、ディートハルトが吐いてくれた」
「ディートハルトが?意外だな」
「なんでもヴィレッタとかいうブリタニアの女軍人を拘束して、扇を脅迫した腹いせだろうと聞いたが、分かるか?」
「あぁ……理解した。そりゃタレこみたくもなるさ」
ルルーシュはその行為について、おそらくディートハルトはヴィレッタがブリタニアの軍人であるというよりは、扇が職務を全うするために行ったのだと考察した。
その考察が正しければ扇要という男はどうしようもないが、さすがにそうで当て欲しくないとも、ルルーシュは思う。
「奴にも事情がありそうだな。それにしても、敵国の宰相の情報を鵜吞みにして行動するのには、私も絶句だったな」
「扇さん……」
カレンはルルーシュよりも扇との付き合いが長いからか、思うところがあるらしい。
するとそこに、ルルーシュの思いもよらない特大級の爆弾が降って来た。
「私もいますわゼロ様!」
「か、神楽耶様?!」
なんと星刻の隣にあった椅子に合衆国日本の代表であり最高評議会の議長たる神楽耶が現れた。さすがのルルーシュも狼狽する
「なぜあなたがここに?!」
「私も星刻さんと同様の話を聞きました。言語道断です。第一に組織の拡大に尽力した人間に対する仕打ちではないし、黒の騎士団は『人種にかかわらず弱者の味方』です。今は亡き桐原卿もゼロ様…いえ、ルルーシュ様の素顔を見て信頼なさったのに…」
「桐原卿は、俺の境遇を知っていたからな…」
「合衆国日本も協力できれば良いのですが…」
「超合衆国決議第壱號はどうするんです?それが有効な限りは、超合衆国とブリタニアは戦争状態が続きますよ」
「自分たちで仕掛けた戦争を負けてもいないのに降伏するのは、黒の騎士団も国民も納得がいきませんね。それ以前の問題として、仇敵であるブリタニアと手を組むのは国民が許さないでしょう」
「……ブリタニアが正式に合衆国日本に日本列島を割譲するのも無理です。ブリタニアもまだまだ戦えるから、いくら専制国家だとしても国民の感情を抑えられません」
「私個人でできることはありませんか?」
「神楽耶様個人…むぅ」
ルルーシュは返答に困る。
「無理そうですか?」
「下手に神楽耶様がブリタニアと協力したと知られればイメージダウンに繋がります。私としては、神楽耶様には戦後日本のかじ取りをしてもらいたいと考えているから、それは避けたいのです」
ルルーシュも星刻も考え込むが答えが出る様子は一向に来ない。それを見計らい、神楽耶が声を上げる。
「……保留しましょう。残念ながら、現状ブリタニアと日本が協力して行えることはないようです。ですが、その時が来れば喜んで協力することを約束しますわ」
そう言い残すと神楽耶は席を外し外へ出て行った。
「さて星刻、では計画を伝える」
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「そのように頼む」
「了解した。では、また」
星刻との通信を終え、ルルーシュは緊張の糸がほどけたのか、ぐったりとしていた。
「だ、大丈夫、ルルーシュ?」
「さすがに、疲れた……」
ルルーシュはそのまま寝てしまうのではという勢いで横にいるカレンにもたれかけた。
「ちょ?!ルルー、シュ?」
「くかー」
寝ていた。黒の騎士団を追放されてから環境が変わりすぎて碌に寝れていなかったのだろうと、カレンは考えた。
しかし、碌に寝れていないのはカレンも同じである。
「せめてベッドまでもっていかないと……」
その思い一つでなんとかアヴァロンでのルルーシュの個室にたどり着き、彼を横たえた。
カレンも限界だったようで、彼女もそのままルルーシュの横に横たわり、二人で寝てしまったのであった。
正直に申し上げると今回は難産でした