ということでダンまち更新します
あと、意外とこのまま原作突入の声が多くて嬉しい
とある場所。ある程度の広さがある修練場のような場所で、二人の男が戦いあっていた。
いや、もはや蹂躙と言えるだろうか。
片や大剣を保持する屈強な戦士。
片やナイフと短刀を携えた少年。
体格だけを見れば、どちらが優勢なのか想像にかたくないが、現実は違った。
滝のように汗を流し、膝をついて肩を激しく上下させているのは屈強な戦士。それを汗ひとつ見せずに未だ余力を残し見下ろしている少年。
何分、いや何時間続けているだろうか。何度も手をつき、立ち向かい、避けられ、倒される。その繰り返し。
さすがに体力の心配をする少年は休憩を挟むように相手をしている戦士へと声をかけた。
「……そろそろ、休憩を入れた方が──」
「いや……もう一度、頼む」
「あ、はい」
闘気を減らす気配など見せず、むしろ滾らせている。Lv2くらいの冒険者ならば目だけで殺せそうなほどの視線を少年にのみ向けていた。
対する少年は、深くため息をつくと同時に、また武器を構えた。
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ザルドとアルフィアの逃走を許してしまった後。
辺りは
ある者は命があることに喜びを隠しきれずに叫び。
ある者は英雄たる存在に羨望の眼差しを向け。
ある者は頬を紅く染めてベルを見ていた。
その中で、ベルは喜ぶ様子は見せず。逃走を許してしまったことに後悔とともに、どこか安堵していた。
そんな中。クイっと服の裾を後ろから引かれた。
なんだ? と思い後ろを振り返るも、そこには誰も居ない。
「ねえ」
「え?」
気のせいかと思っていると、今向いている方から声がした。今見ているところより、もっと下。そこに目を向けると、長い金髪をたなびかせる幼女がいた。
知っている。ベルはそれが誰なのかをすぐに理解した。こんなに幼くはなかった。自分より少し年上の、自らの憧憬を。
(アイズ、さん?)
自分よりはるかに小さく、感情があまり見えない無表情の幼子であるが、見間違えはしない。
この時代に来て初めて見たアイズの姿に、ベルは真っ先に思った。
──ちっさっ! 、と。
「ねえ」
「あ、えと。なんですか?」
そんな失礼極まりないことを考えている間に、返事がなかったことで再度服を引っ張ったアイズ(幼)から声をかけられたので意識を戻して返事をする。何を言うのだろう、と言葉を待つ。
「あなたは、『英雄』?」
「えっ、と……?」
「フィンが言ってた。『英雄』に、会ったって。あなた?」
「……」
突然の質問に困惑する。アイズの言葉を分析して、何を聞かれているのかを把握する。フィンが言っていた。フィンが会った。僕のことかな? と思ったが、自分で「はい、僕は『英雄』です」なんて恥ずかしくて言えない。
どう答えるべきだろうかと思案していると、アイズは何を思ったのか目線をベルの目から逸らしてベルの空いている手をぺたぺたと触り始めた。
質問の答えを待たず別のことをしだしたことにさらに困惑する。
「なんか、暖かい……なんで?」
「いや、僕に聞かれても……」
「眼、赤いね」
「え? そ、そうですね」
「さっきの戦い、見てたよ。強いね……どうやって強くなったの?」
「……」
──会話が、成立しない。
幼女の口から遠慮なく放たれるマシンガントーク。共通点など存在せず、相手からすれば完結しているのかもしれないが話を聞く側からすればついて行くことが叶わない速さ。スピードに自信があるベルと言えど、この幼女の口から次々と飛んでくる言葉に対応できなかった。
「──アイズ!!」
「ふぎゅっ!!」
この時代に飛んできて初めて誰かに助けを心の中で求めたベルの元に救いの手が差し伸ばされた。その手はそのまま拳となってアイズの脳天を直撃する。可愛らしい悲鳴とともに頭をさする少女はベルの後ろにササッと隠れ、殴った本人を恨めしげな目で見る。
「……リヴェリア、痛い。わたし、この人と喋ってただけなのに」
「ただ一方的に言葉を発し続けるのは会話とは言わん。彼も戸惑っていたぞ」
「……そうなの?」
「え!? えーっと、まあ……はい」
「そうなんだ……ごめんね?」
「い、いえ、別に気にしては──」
「どうやったらそんなに強くなれるの?」
一瞬で間合いを詰めてきたリヴェリアにさらにもう一発ゲンコツがアイズの頭に響いた。「ふギュッ!!」とまたしても可愛らしい悲鳴をあげて今度は蹲って痛がっている。
「話を聞いていなかったのか、アイズ」
「……リヴェリア、また殴った」
「当たり前だ、馬鹿者……と、悪かったな、『英雄』殿」
「いや、まあ、それはいいんですけど……『英雄』呼びはちょっと……」
今までアイズに向けていた視線をベルに向けたリヴェリアの口から、この時代に来てから何人の人に呼ばれたか分からない『英雄』と呼ばれたので、少し居心地が悪くなった。
「ふむ、それは失礼した。フィンから君の特徴は聞いていたが、名前までは聞いていなかったのでな。良ければ君の名前を教えて貰えないか? 私はリヴェリア・リヨス・アールヴ。ロキ・ファミリアで副団長を務めている。こっちはうちの団員のアイズだ」
「僕はアルと言います。よろしくお願いします、リヴェリアさん、アイズさん」
アイズの呼び方を迷ったが、まあ前と同じでいいかと『さん』付けで呼んだ。が、それに異議を唱える者がいる。
「私、アイズ」
「え? そう、ですね、アイズさん」
「アイズ、だよ?」
「???」
どういうこと? と保護者であるリヴェリアに疑問の目を向けると、リヴェリアはアイズの難問を理解したのか、はあとため息をつく。
「どうやら、アイズは君に……アルに敬称なしで呼んで欲しいのだろう」
(なんで?)
謎の我儘にまたもや戸惑うベル。幼いアイズの言葉は解読が難しく、解読できても理解が難しい。なんという難問か。
元いた時代では「アイズさん」呼びが普通だったが……まあ、子供だしいいか、と考えることを放棄した。
「じゃあ……よろしく、アイズ」
「うん。アルも、よろしくね」
今まで無表情だったアイズの表情筋が僅かに動く。初対面では絶対に気づかないであろう些細な変化だったが、ベルとリヴェリアはアイズが笑みを浮かべたことに気がついた。
ベルの知っているアイズは今に比べて表情が分かりやすかったが、リヴェリアはアイズの変化に驚いた。
「……驚いた。アイズがここまで懐くとは」
「な、懐かれてるんですかね……」
「ああ、かなりな」
ベルの脚をがっしり掴んで離さないアイズの様子はリヴェリアからすれば考えられないもので。なにやら感傷に浸っているリヴェリアの様子に頭の上に「?」を浮かべるベルだった。
「アル──ぐえっ!!」
「おわっ、と」
謎の空気が流れたそこに突撃してくる赤髪の少女、アリーゼはベルに飛びかかるも、ベルはその程度では微動だにせず、
その後ろからアストレア・ファミリアの団員達が歩み寄ってきて、アリーゼの様子を皆一様に馬鹿を見る目で見ていた。
「Lv3の力でLv7を動かせるわけないだろ、アリーゼ」
「そりゃそうなる」
「アリーゼ……」
「みんな!? なんで私の心配をせずに馬鹿にしてくるの!?」
「「「しん……ぱい?」」」
「ちょっとぉ!!??」
「あ、はははは……」
団員からのアリーゼの対応が辛辣なものだったので、ベルは苦笑いを浮かべた。そこに輝夜が近づきベルの肩を掴んだ。
「アル、私と寝るぞ。拒否は許さん」
「え"っ」
「「「ちょっと待て!!!」」」
急な輝夜の奇行に正義の使徒達は輝夜の全身を掴み、ベルから引き剥がす。「離せ!!」と暴れている輝夜を無視して引きずって行った。
突然の展開すぎて何がなにやら飲み込めていないベルはただ苦笑いを浮かべるのみだった。
「……何をやっているんだ、お前達は」
「リ、リヴェリア様!? 申し訳ございません、お見苦しいところをお見せしてしまいました」
「いや、構わん。そんなに畏まるな、【疾風】」
腕を組みため息をつくリヴェリアにリューは膝をつきかけたが寸前でリヴェリアが制した。
そういえば、と何か思い出したようにリヴェリアが口を開く。
「アリーゼ・ローヴェル。フィンからの伝言だ。各ファミリア代表を招いて会議を開くのでアルを連れて来て欲しい、と」
「【勇者】から? 分かったわ!! 私が責任をもってアルを連れていきます!!!」
「なぜ胸を張って威張っている……」
何故か威張る様子を見せたアリーゼに雰囲気を崩された。それでも、やることは終わったとフィンたちの元へ戻ろうとするも、アイズはベルを掴んで離さない。
「アイズ、帰るぞ。だからアルを離せ」
「アルも、一緒」
「アルはアストレア・ファミリア側だ。我々の派閥ではない」
「じゃあ、
「いや、そういう訳には……」
「アイズ、アルが困っているだろう。これ以上迷惑をかけるな。それにすぐに会える」
「……ほんと?」
「ああ」
「……じゃあ、我慢する」
渋々という様子で掴んでいた脚を離し、「またね」とベルに手を振ってからリヴェリアの元まで行く。「失礼する」といいリヴェリアはアイズを連れておそらくフィンたちの元へ帰って行った。その姿が見えなくなるまでの間チラチラとアイズが振り返ってきたのでベルは手を振り続けた。
嵐みたいだったなあ、と脱力したベルにアリーゼが肩に手を置いてなにやら興奮したように喋りかけてきた。
「アルったら、ロキファミリアの【戦姫】ちゃんをもう落とし込んでいるのね! 凄いわ!!」
「いや、落とし込んだわけでは」
「脚の速さだけじゃなくて手を出す速さも英雄級ね!! あ、膝枕してあげましょうか?」
(この人もか……!!)
アイズ同様のマシンガントークが炸裂する。どこから出てきたか「膝枕」という単語が出てきたのでさらに混乱するが、今回も同様に救いの手は伸ばされた。
「アリーゼ。アルが困っています。離れてください」
「えー、いいじゃないリオン! アルも疲れているだろうし、私がいや、し……?」
アリーゼの手とベルを引き離そうとアリーゼの手とベルの肩を自らの手で引き離した。そう、アリーゼの手と、ベルの肩に触れて。
「……リオン。あなたアルに触れて平気なの?」
アリーゼが信じられないものを見る目でリューとベルを交互に見た。そして不快感を示さないリューを見て肩を震わす。
「リ」
「「リ?」」
「リオンに春が来たわ!!!!!!!」
「ぶっ!?」
「「「どうしたアリーゼ!!」」」
「みんな聞いて! リオンが自分からアルに触れたのよ!!」
「「「な、なにぃ!!??」」」
「そういえば、あん時もアルに肩触れられたのに拒否しなかったな」
「は、春……!? ち、違います! 誤解だ、アリーゼ!!」
「もう! 隠さなくてもいいのよリオン! 一度掴んだのなら、離しちゃダメよ!」
「ア、アリーゼぇ……」
「一番槍は私が貰い受けるがな!!」
「おい! 誰かあの淫乱の口を塞げ!!」
「おいおい、英雄様ぁ。どうやってリオンを落としたんだよ?」
「ライラさん……落としてませんって……」
もはや収拾がつかないほどの賑わいを見せたアストレア・ファミリア達。それでも、皆の明るさが取り戻されたことにベルは一人笑っていた。
「でもごめんなさいリオン!! 今日アルは私と添い寝するのよ!!」
「初耳ですけど!?」
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「また、会えたね」
おー、と両手を上げながらこちらに突撃してくるアイズに苦笑いをするベル。現在、ファミリアの代表を集め秘密裏に最後の作戦会議が行われる。
ベルとアリーゼが来た頃にはほとんどの大手ファミリアの団長副団長が集まっており、注目を浴びた時にアイズが駆け寄ってきた。
「まさか、君にアイズが懐くとはね。想像できなかったよ」
珍しいものを見た目で言いながら近づいてくるのはフィン。その横にはリヴェリアもいる。
「今回の会議に参加してくれてありがとう、アル」
「いえ、僕で良ければ」
差し出された手に応じる。その間にもアイズはベルの脚にしがみついていた。周りを見れば、見知った顔がいる。その中にはアミッドもいた。ちょうどその時にこちらを向いたアミッドと視線が合うと、アミッドは軽く会釈をしてきたのでベルもそれに倣って会釈を返した。
(アミッドさんも参加するんだ……)
以前アリーゼにそれとなく聞いてみると、アミッドは既に
そんなことを考えていると、現オラリオの二大ファミリアであるフレイアファミリアの姿がないことに気づいた。後ろで「アルったら、【聖女】ちゃんにも興味があるなんて!!」という言葉を無視してフィンに尋ねようとしたが、それは杞憂に終わる。
ガチャり、と扉が開く音と共に、屈強な戦士が入ってきた。
(……オッタルさん)
ベルとしてもオッタルは印象深く、会議の場であっても途絶えない気迫は、ザルドへの再戦を望んでいることを物語っていた。
これで、フィンに招集された全てのファミリアの代表が揃った。それぞれがひとつの円卓を囲うように座る。アイズはベルの膝の上に座った。もう慣れてしまったベルはその事に何も言わなかったが、アリーゼはアイズのほっぺをちょんちょん触っていじっている。
「──今回の招集に応じてくれて、感謝する。これが、最後の会議だ」
フィンが立ち上がり、皆を一瞥する。その声を聞き逃さぬよう皆もフィンへと意識が集中する。
「『決戦』は近い。闇派閥側の戦力は大きく分けて4つ。まず、ヴァレッタ率いる闇派閥。そして、【暴喰】ザルド。並びに、【静寂】アルフィア。そして、邪神エレボスが深層にて『大最悪』が生まれた」
初めて聞く情報に緊張が出る。
「現在、『大最悪』はダンジョンを上り続けている。地上に届くのも時間の問題だ。よって、戦力を分散。地上組と迷宮組に分かれてもらう」
フィンは今まで周りに向けていた目をベルに向ける。急に向けられた視線にビクッとなりそうになったが、寸前で抑えた。
「敵のLv7にはこちらもLv7で対抗したい。そこで、アル。君なら、二人を相手に勝てるかい?」
ベルがLv7だということを知らなかった面子の顔がベルの方に向けられる。
その中でベルは冷静に今二人と戦って勝てるのかを分析した。
「……二人を相手にするとしたら、時間がかかると思います」
「勝てない、とは言わないんだね……なら、片方だけ……ザルドだけなら、どうだい?」
勝てないとは言わないベルに周りの──特にオッタルの視線は強くなる。
数秒考えたベルが答えを出す。
「二……いや、一分あれば、無力化できます」
「──はは」
虚言ではなく、それが事実であることにフィンは気づいているので、その強さに思わず乾いた笑いが出てしまう。膝上のアイズは「すごいね」とベルの顔を見上げて言っていた。
「────待て」
小さい空間を低い声が木霊する。その声の発信源に皆の注目が集まった。
「──ザルドは俺が倒す。これは俺の、ヤツらに敗北し続けた、俺の義務だ!!」
その目は、既に
「……分かった。ならばザルドは、オッタル。君が倒すんだ」
「ああ、無論だ……もうひとつ、頼みがある」
ザルドとの決闘にオッタルの闘気は膨れ上がる。しかし、ベルがザルドを倒す作戦よりもやはり勝率は低い。オッタルは立ち上がるとアルの方へと歩み寄っていく。ベルの前まで来るとピタリと止まった。
「──手合わせ願いたい」
「え?」
「ザルドをくだしたお前と戦い、今の俺と奴との距離を知りたい……あとは、お前と戦ってみたい」
(絶対後半が理由のほとんどですよね……)
「頼む」
「──分かりました」
図体のでかい男が少年に頼み込むという謎の絵面が完成した。アスフィなどはその光景を信じられない表情で見ており、アリーゼは吹き出す寸前だった。
「『決戦』は近い。時間制限は設けさせてもらう。ちょうどいい広さの修練所があるから、後で案内しよう。ただ、治療師を連れていった方がいいか」
「私が行きます」
そこで手を挙げたのはアミッドだ。既に
そして、会議は進んでいく。
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会議終了後、すぐに修練場へと向かった。
アイズは行きたいと言っていたが、リヴェリアが強引に引き剥がしていた。Lv3のアイズが二人の戦いを見て「私も戦う」と言い出したらそのまま参加してしまうだろう。ベルはリヴェリアに感謝した。
移動中に度々アミッドからの視線が気になったが、後で聞けばいいかと気に留めずに気づけば到着し、フィンは残りの仕事を終えに一度ホームへと戻った。
フィンがもう一度ここに来るまでがタイムリミットなので、オッタルはすぐに武器を構える。対するベルはナイフ一本のみを構えた。アミッドは隅の方で戦いを見る。大怪我などしてもすぐに駆けつけ治療するだろう。
「始めましょうか」
「──よろしく頼む」
オッタルが踏み込む。地面を抉る程の踏み込みで近づき自前の大剣を振り下ろす。加減不要。戦闘を見たことはないが、ザルドを倒すほどだと言うことは知っているオッタルは遠慮なく全力で臨んだ。
オッタルがベルを見た印象は、パワー系ではなく、速さで翻弄するタイプだというもの。この一撃も、当たることなくいなすか避けるかするだろうと思っていた。
その考察は間違いではない。事実ベル最大の持ち味は誰も追いつくことが叶わないその脚。ベル自身、力でゴリ押す場面はなかった。が、それは格上に対する話で。
ベルは右手に持ったナイフで大剣を
大剣を受け止めてもなお壊れることの無い漆黒のナイフにもそうだが、ベルの力に驚愕する。
そのままナイフを振り上げ大剣を弾く。オッタルの体勢は崩れ、その隙は大きく、がら空きの腹に加減をした蹴りを入れた。
「がっ!!!」
そのまま吹き飛ぶオッタルは腹部に伝わる激痛に耐えるもその顔は驚愕と痛みでいっぱいだった。
膝をつき動きが止まるも、ベルからの追撃はなく、その場に留まりオッタルを待っていた。
ベルに悪気はないが、それはオッタルのプライドを刺激し、立ち上がるとすぐに駆け出す。
大剣の横薙ぎをぶつけるも、ナイフで防がれ、すぐさま右足で回し蹴りをするも、左手一本で防がれた。そのまま脚をつかみオッタルを空中に投げ飛ばす。踏切がつかなくなったオッタルに向かってベルは飛び上がり、かかと落としを防御体勢をとったオッタルの大剣にぶつけ地面へと叩き落とした。
受け身をとることに成功したもののダメージが大きいオッタルだったが、落ちてくるベルに向けて大剣を振り上げる。
(とった!!)
思わず決まったと思ったオッタルだが、ベルは迫る大剣の横面を利用し回避する。そのまま何事もなかったかのように着地し武器を構えこちらを見据えるベルにオッタルは戦慄した。
明らかにザルドを超えている。いや、Lv7ということすら疑わしい。かつてのゼウス・ファミリア団長を超えているのではないかとすら思ってしまうほどの、圧倒的な実力差。それでも、オッタルの気力は上がるばかりだ。
フレイヤ・ファミリアの中ではまともだと思われるオッタルだが、その中身はやはり戦闘狂の脳みそ筋肉ダルマだ。相手が強ければ燃えるタイプの戦士である。
完全に戦いに没頭したオッタルには、既に頭の中には
駆け出そうと脚に力をこめた瞬間に、目の前にベルが現れた。
ただ走っただけで、瞬間移動と見間違うほどのベルのスピードに驚愕しながら反射的に大剣を振るう。
横から迫る大剣を、ベルは左手で掴み取った。
「なっ!?」
思わず驚愕の声をあげたオッタルは間違っていない。自身の全力を武器で防がれることさえ認めたくないのに、つかみ取られるなど信じられなかった。
空いている右手でオッタルの鳩尾付近に拳を沈める。血が混ざった空気を吐き出しながら吹き飛んだ。
戦闘開始から数分と経ってはいないが、オッタルは既に滝のように汗を流している。
ナイフで切られていないため切り傷などはないものの、殴り蹴られた場所にはどす黒い打撲の跡がある。
対するベルは息も乱れずに余裕の表情。傷などひとつもない。
さすがにやりすぎたかと反省していた。
以前オッタルとやり合った時はベルの方が格下であったので本気で臨んでいた。その時の感覚が残っているため上手い加減が出来ずにいた。
「あの、一度休憩を──」
「いや──もう一度、頼む」
ベルの提案は虚しく散った。オッタルの目は死んでいないが、体力と傷が気になる。しかし、ここには【聖女】が居る。
「【──私が癒す────ディア・フラーテル】」
アミッドによる全治癒魔法。理を逸脱するその魔法により、オッタルのダメージなどが全て治る。
アミッドの方を見れば万能薬と思われていたものは全て精神力回復薬であった。
「傷は私が全て治します。存分に戦ってください」
「──続きを」
アミッドの頼もしすぎる言葉にオッタルは目の前の戦いに意識を全て向けた。
殴っては癒し、蹴り飛ばせば癒し、投げ飛ばしては癒す。常人では卒倒してしまうような程の蹂躙が、フィンが再び戻ってくるまで数時間続いた。
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『お話があります。着いてきてください』
オッタルとの訓練が終わりを告げた後、アミッドから言われたその言葉に従ってベルはアミッドの後ろを着いて歩く。
この時代に来てアミッドと話したことの無いベルにはなぜ呼ばれたのかは分からなかった。
(まさか、オッタルさんとの訓練がやりすぎだったとか……)
もしもその「お話」というのが説教の類ならば、ベルは過去のトラウマから終始怯えることだろう。
今回は自分に怪我はひとつもないので、鎖でベッドに縛り付けられることは無いだろうが、それでもキレたアミッド程怖いものは無い。
「ここでいいでしょう」
想像を膨らませていたところで着いたのは人気のない廃墟。ここなら何をしても周りには気づかれないだろう場所だ。
「えっと、アミッドさん、でしたっけ。先程はありがとうございました」
この時代では知り合っていないため、わざと知らないふりをして喋る。知らないフリも慣れては来たが、面倒くさいことではあるし、何より知っている人から初対面の対応をされるのはきついものがある。
「初対面のフリは結構ですよ、
「──え?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。なぜ、自分の本名を知っているのか。言い間違いではないかとも思ってしまう。
「……僕は──」
「【
「っ!? なん、で」
二つ名、本名、所属ファミリア。主神であるヘスティアはこの時代ではまだ天界にいるはずなので、その名前が出ることは有り得ない。ならば、もしかして。
「まさか……アミッドさん?」
「お久しぶりですね、ベルさん。このような形での再会とは思いませんでしたが」
ベルが元いた時代のアミッドであることが確定した。自分と同じ境遇の人がいた事に、感動を覚える。同時に、疑問が浮かんだ。
「あれ、でも、体……」
「私は精神だけこの時代に来たようです。あなたは体ごとのようですが」
アミッドがいつここに来たのか、どうして自分は体ごと飛ばされたのか。疑問は尽きないが、今はただ。
自分を知ってくれている人がいることが、何よりも嬉しかった。
やはり筋肉
あと五話くらいでアストレアレコード終わるかなと個人的に思ってます