白き英雄譚   作:ラトソル

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今一番扱いに困ってるのがリリだったりする。
さてさて、久しぶりの投稿ということで、ふざけたサブタイトル開始ですはい。


ホントお願いします、ママ

 

 

「【森の先人よ 誇り高き同胞よ 我が声に応じ草原へと来れ】」

 

 それは、数ある魔法の中でも異質とされる効果を持つ魔法の詩。

 

「【繋ぐ絆 楽宴の契り 円環を廻し舞い踊れ】」

 

 レフィーヤが今まで出会ってきた同胞(エルフ)との繋がりを糧とする魔法。

 

「【至れ、妖精の輪 どうか────力を貸し与えてほしい】」

 

 ────【エルフ・リング】。

 

 レフィーヤを中心に地面には魔法陣、そして空中にはひとつの(リング)が展開される。

 

 輝かしい光とともに臨界した魔力はLv3の身から放たれているとは思えないほどの膨大な量。

 魔力の奔流に呑まれたティオネとティオナは荒れ狂う食人花を相手取りながら驚愕の表情を浮かべていた。

 

 アイズ自身、レフィーヤの全力を見るのは初めてだ。これ程の魔力を保有していたことに驚愕していない訳では無い。ただ、それ以上に意識を向けられる存在があったからこそ、別のものに意識を向けていた。

 それは、レフィーヤも同じで。

 

((大精霊……!?))

 

 自身の頭上、そして守るように浮遊している二つの光。

 精霊と馴染み深いエルフだからこそ感じられる神聖。

 そして、精霊の血が流れるアイズもそれは感じ取っていた。

 

 レフィーヤ自身、微精霊であればウィーシェでは身近な存在だった。妖精は精霊にも懐かれやすく、気づけば周りに精霊が浮かんでいることは何度もあった。

 

 しかし、大精霊はその限りではない。

 

 伝説上とまでは行かないものの、古代の英雄譚などでしか耳にしない存在。未だ存在しているのかすら定かでは無く、長寿のエルフの人生においても会う機会など無いものと思っていた。

 

 その大精霊が、二体。

 

 輝きこそ、小さなもの。微精霊よりも一回りほど大きいものの、サイズとしては小さなそれは、圧倒的なまでの存在感を放っている。

 

 どうしても大精霊に意識がいってしまうような状況だが、覚悟を決めたレフィーヤは自身の詠唱のみに集中する。並行詠唱を会得していないレフィーヤは食人花にとって格好の獲物。溢れ出る魔力が食人花を刺激し、ヨダレを垂らしながら襲いかかってくる。

 

 しかし、そんなことを許すほど、第一級冒険者は甘くはない。無手ではあるものの、アイズは魔法で、ティオナとティオネは力で押さえつける。

 複数いる食人花を押さえつけるのは至難の業だ。アイズの魔法に反応を起こすと言っても、レフィーヤの魔力出力はアイズの上を行く。より美味な方へと視線を向ける食人花の注意を引くのは一瞬に満たないほど。

 

「なんか挙動がおかしいんだけど!」

 

 レフィーヤのみを視界に捉えていた食人花は突然レフィーヤから意識を外し、空へ急速に振り返る。

 突然の奇行に呆気に取られるティオネだがそれも一瞬、好機と認識し、食人花の巨体へ拳を叩き付ける。

 食人花の行動を理解していないアマゾネス(戦闘狂)がそのまま追い打ちを仕掛ける中で、アイズは先程食人花が振り返った空へ視線だけを向ける。

 そこには、目を凝らせば見えるほどの黄色い球体が浮かんでいた。

 

 その球体……大精霊を感じ取り、やはり、とアイズは内心で頷く。

 

(アルのそばに居た大精霊)

 

 そのまま視線はレフィーヤの頭上に浮かぶ青い光へ向けられる。

 黄色の大精霊は感じたことのある気配だった。自身の憧憬たる私だけの英雄(アル)と共に戦っていたものだ。つまり、あの大精霊はアルが向かわせたのだろうと分かる。

 なら、あの青い大精霊はなんだ? 

 今までアルと関わってきて、しかし見たことの無い大精霊に戸惑う。

 

「【終末の前触れよ 白き雪よ 黄昏を前に風を巻け】」

 

「っ、レフィーヤ」

 

 背に守る……いや、共に戦う妖精の歌が加速する。

 溢れ出す魔力は風となり、レフィーヤを包み込んでいく。

 

(集中……しなきゃ)

 

 未知の大精霊は疑問に残るものの、それは今考えることでは無い。今度アルに会える時は何時になるのか分からないが、その時に甘え……もとい、聞いてみようと切り替えるアイズはレフィーヤへ突進する食人花の進路を塞ぐ。

 

「おらぁぁっ!」

「行かせないよー!」

 

 勢いの増した食人花の猛攻に、アマゾネスの闘争心に火がつく。

 飛び上がった二人は上から拳を叩きつけ、クレーターを作りながら食人花を地面へと捩じ込んだ。

 その一撃で終わることはなく、そこから始まるは一撃一撃が地形を変えるほどの連撃(ラッシュ)

 

「【吹雪け、三度の厳冬 我が名はアールヴ】!!」

 

 詠唱が完了すると共に、魔法円が拡大される。

 聞き馴染み深い詠唱が聞こえた三人は今から放たれるであろう魔法の射程から逃れるため、全力で脇へと退避する。

 

『グギャアアアアッッ!』

 

 邪魔者が消えたことで獲物までの道が開いたことにより、食人花達は一直線でレフィーヤの元へと殺到する。しかし、食人花の速さではレフィーヤとの間の距離を埋める前に、一単語告げる方が早い。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 放たれるは三条の氷の槍。それが作り出すのは氷の軌跡。地面を氷結させながら対象へと向かった魔法は、都市最強の魔道士リヴェリア・リヨス・アールヴの攻撃魔法。

 

 階層主さえも凍らせる魔法に、食人花程度が耐えられるはずもない。

 

 口を開けてヨダレを垂らしながら突貫する食人花は、その姿のままで氷の華へと姿を変える。まるでそこだけ時間が停止したかのように見える氷の彫像は、そのままアイズ達の手で跡形もなく砕かれた。

 

「レフィーヤぁ! ありがとー!」

 

「ティオナさ……わっ」

 

 拳を赤く染めつつも、ティオナは笑顔でレフィーヤの体へと抱きつく。恥ずかしそうに頬を紅く染めるレフィーヤは、そのまま安堵の表情を浮かべた。

 

「レフィーヤ」

 

 レフィーヤの元へと足を進める度に砕け散った食人花の破片を踏み砕く音が響く。倒壊しかけていた民家は凍結していることにより意図せず二次災害を防いでいた。

 

「すごかったよ」

 

「アイズさん……」

 

 レフィーヤにとって、アイズは憧れの存在だ。そんなアイズからの賞賛を受け、レフィーヤは今までの努力、そして今回変わることのできた自分が認められた気分になって涙が溢れだしてくる。

 

(言うんだ、ちゃんと)

 

 未だ痛む腹部を片手で抑えながら立ち上がるレフィーヤは涙を拭ってアイズを見る。

 

「アイズさん、私は」

 

 今までのような、傲慢な考えではなく。

 憧れの存在と、共に歩んでいきたいという願望を。

 そのための努力を続けていくという意思表示を。

 

 レフィーヤの言葉を待つアイズ、そしてティオネとティオナは、端的に言えば気が緩んでいた。

 それは、街中でモンスターが出現するという異常事態が起こっているこの場においては致命的なミスと言えた。

 言葉を上手く出すことの出来ないレフィーヤへと意識を向けている三人は、普段なら気づけたであろう微細な振動に気づくことは出来なくて。

 異変に気づくことが出来たのは、地面が隆起した直後だった。

 

「っ、レフィ──」

 

 レフィーヤの真下の地面が膨れ上がり、勢いよく破られ出てきたのは二体の食人花。

 リヴェリアの魔法を召喚したレフィーヤの高密度な魔力に吸い寄せられたモンスターは、的確に獲物の場所へと導かれるように忍び込んだ。

 

 予期せぬ奇襲に思考が追いつかないままレフィーヤは空高く打ち上げられる。ビキッ、という音が骨に響いた。

 

(あ、折れた)

 

 漠然とした思考しか出来ないレフィーヤへ食人花は巨体を使って飛び上がる。鋭利な歯を前面に出し、口を大きく開いてレフィーヤを待ち構える様は悪夢のようだ。

 

 反応が遅れたアイズ達は呆けた自身を立て直し、状況判断を完了した時には既に致命的なまでに遅く。

 走り出した時にはレフィーヤは食人花の息の届く場所まで迫っており、開かれた目は呆然と鋭い牙を眺め続けるだけで。

 

 あ、食べられる。そんな言葉が脳を埋めつくし、厭に時間の流れが緩やかに進む。ゆっくりと、自分の命が無くなるまでのカウントダウンのように時間が過ぎていく感覚を覚えながら食人花の口が間近に迫った時、閃光が輝いた。

 

 思わず瞼を瞑るほどの光量と、雷が落ちたかのような爆音に感覚が麻痺する。視覚と聴覚が機能しない中で、誰かが自身の体を優しく包み込んでいることは分かった。割れ物に触るように優しい触れ方。落下していく浮遊感を感じさせないままに地面へたどり着いた頃にようやく視覚と聴覚が戻ると少しぼやける視界に映るのは灰へと戻る食人花と自身を抱え込んでいる人物。

 

 フードを被っているその人は至近距離からでも輪郭が掴みにくく、かろうじて分かったのは特徴的な赤い瞳。

 

「大丈夫ですか」

 

 呆けた脳を少年のような声が叩き起す。それと同時に砕かれた脚が悲鳴をあげ、痛みに顔が歪んだ。

 レフィーヤの反応を見たその人物は彼女が抑えている脚と血で滲んでいる腹部を見るとゆっくりと地面へと下ろし腰に付けたポーチの中から装飾の施された容器を取り出すと、その中身をレフィーヤの腹部と脚へとかける。その液体が傷口に触れた途端に開かれた傷口は塞がり、脚の痛みもスっと消えた。

 

「アミッドさんのエリクサーなので大丈夫だとおもいますが、痛みがあるなら念の為医師に見てもらった方がいいかもしれません」

 

「あ、ありがとうございま……え、エリクサー!?」

 

「? はい」

 

「そ、そんな高価なもの……払います!」

 

「気にしないでください、貰い物なので」

 

「え、えぇ……」

 

 あっけらかんと最高級治療薬を消費したその人に申し訳なさと、なぜ自分なんかに、という気持ちが溢れ出す。

 

 

 ティオネとティオナは先程の光景を思い出し、戦慄していた。

 彼女たちの目では、レフィーヤが打ち上げられ、駆け出した時には、フードの人物がレフィーヤを既に抱えており、食人花は灰へと還り始めていた。

 

 眩い光が突如現れたことは分かる。レフィーヤと違い、光源と距離が離れていた二人の目は眩むことは無かったし、鼓膜も正常に機能していた。

 レフィーヤの危機に、瞬きなどするはずもなく、目を見開いてあの時の光景を見ていたはずだ。

 

 分からない。

 

 どのように食人花を倒したのか、どの方角から来たのか、いつレフィーヤを抱えていたのか、まるで理解できなかった。

 

 地面へと降ろされたレフィーヤはフードを被った人物と何やら会話をしているようだが、二人は口を半開きにしながら棒立ちしているのみ。

 

「見た?」

 

「……見た」

 

「……見えた?」

 

「……………………なにも」

 

 だよねぇ、と未だ呆けた顔で呟くティオナはようやく思考が回復し始めてきたことで以前友達であるアーディから聞いた話を思い出す。

 

『『白き英雄』って、あの最新の英雄のこと? 見たことあるのアーディ!?』

 

 身を乗り出して鼻と鼻がくっつく程に近寄ってきたティオナの圧に『う、うん』と気圧されたアーディが困った顔を浮かべながら少し仰け反る。

 

『当時の主要ファミリアの幹部は彼と会ってるよ? ロキ・ファミリアも』

 

『フィン達もたまにその話してるからさ、『英雄ってどんな人なの?』って何回も聞くんだけど、答えてくれないんだよねぇ。アイズなんかほっぺ膨らませて教えてくれないしさ』

 

『暗黒期……【死の七日間】を経験した人なら、顔は見てなくても姿くらいは見てるはずだよ。彼に助けられた人も大勢いるし』

 

『私もその内の一人なんだけど』と内心で呟き、『じゃあさっ』とティオナは名案を思いついたように目を輝かせる。

 

『白き英雄に助けてもらった人達はみんな顔みてるってことでしょ? じゃあそれっぽい人に聞いたら英雄の顔とか教えてくれるよねっ』

 

 絞り出した名案に、アーディは苦い表情を浮かべ、『無理だと思うな』と呟き。

 

『多分白き英雄に助けられた人のほとんどは彼の顔を知らないはず』

 

『なんで?』

 

()()()()()()。英雄譚に書かれてる『光の速さ』って言うのは、あながち間違ってないんだよ。少なくとも、当時の私たちじゃ彼の動きは見えなかった』

 

 当時のことを振り返るアーディは子供のように無邪気な笑顔を浮かべていた。

 

『治安が一段落ついた時にはフードで顔隠してたし、本当に少ないんだよ、今も彼の顔を知ってるのは』

 

 それは神も例外では無い。当時は主神は眷属達に厳重に保護されており、街中を出歩いている神はごく稀で、ロキやヘルメスなど、直接関わりのある神を除き白き英雄──ベルの顔を知る神は少ない。

 しかし神は見栄を張るものが多く、『白き英雄』というワードから「あいつめっちゃ白い肌してたわ〜」「目も舌も真っ白」「なんかめっちゃ白い」とまるで自分が英雄と話したことがあるように新しく出来た眷属に話して回った。

 

 しかし英雄の顔を実際に見たことのあるモブ神も居り、ベル・クラネルがオラリオへ訪れた際にそのモブ神が騒ぎ、ベルの髪が真っ白だったことでにわか神も騒ぎ出したことでベルは【英雄の生き写し】などと騒がれるようになった。

 

『でも、急にいなくなっちゃったんだよね? どこ行っちゃったのかなぁ』

 

『ウ、ウン、ソウダネ』

 

 突如目をあちらこちらに泳がせるアーディに気づかないままに思考に耽ける。

 白き英雄の行方を知るものはティオナの知る限り誰もいない。英雄譚にもそう綴られていた。ならば都市外に出てしまったのだろうかと、窓の外へと視線を向ける。

 

(いいなぁ)

 

 英雄を目に映したことのあるアーディを始めとした過去のオラリオに居た人達に羨望と嫉妬を浮かべる。

 

 5年前。

 

 突如として英雄が迷宮都市から姿を消してから5年の年月が過ぎていた。

 "白く"、"速い"。たったそれだけの事しか知らないことがもどかしい。

 子供のように足をじたばたさせ始めるティオナはそのまま顔をクッションへと沈める。

 

『私も会ってみたいな〜』

 

 

「────英雄だ」

 

 フードで顔を隠したその人物は、ある程度の体格しか判別することは出来ない。確かなことは、Lv5の動体視力をもってしても一切の動作の軌跡を追うことが出来ないほどの速度。

 確証を得るには薄すぎる証拠しか手元には無い。しかし、幼少の頃から英雄譚を読み続けてきたティオナには、レフィーヤを救った光景が攫われた姫を救い出した英雄の像にしか見えなかった。

 

 先程までピクリとも動かなかったティオナが突然自身の手を引き、目を輝かせながら「ティオネっ、ティオネっ」と興奮しだした妹を見てティオネは正気を取り戻す。

 

「どうしたのよ、急に」

 

「英雄だよっ、英雄!」

 

「は?」

 

「まだ居たんだよ! オラリオに!」

 

 アーディに伝えなきゃ! と飛び跳ねる妹の姿を見て、逆に冷静になりつつある脳が状況を整理しようと目の前のやり取りを注視し始めた。

 

 

「アル」

 

 依然としてエリクサーの使用に申し訳なさそうな表情を向けて居たレフィーヤは、後ろから響いてきた旋律にハッと振り返る。

 戦闘後にも関わらず、美しい金髪はそのままに、少し服が汚れているだけのアイズがそこにいた。

 

「お疲れ様、アイズ」

 

「ん……アルも、レフィーヤを助けてくれて、ありがとう」

 

「……いや、もっと早く駆けつけるべきだった。ごめん」

 

 レフィーヤの頭上に浮遊していた青い精霊が少しの発光をすると、真っ直ぐにベルの元へと戻っていく。既にもう一体の精霊はベルの元へ戻っており、青い精霊と同時にベルの身体へと吸い込まれるように消えていく。

 

「あ、あのっ」

 

 両手を胸の前で重ねながら、少し遠慮気味にレフィーヤがベルへと声をかける。思っていたよりも大きな声を出してしまったからか、頬を少し染めながら短めの歩幅で近づいていく。

 

 アイズとここまで親しい異性を、レフィーヤは知らない。少し前まで噂されていたことを思い出す。そして、先程アイズが呼んでいた彼の名前。

 

 憧れの存在であるアイズとどういう関係なのか、とか。色々聞きたいことはあった。何処の馬の骨とも言えない男がアイズさんに近寄るなんて許しませんっ、と声を上げて言ってやろうなんて少し前思った。

 それでも。

 

 一歩程の距離を開けて立ち止まると、言いづらそうに口を開いては閉じる。後ろからティオナのはしゃいでいる声が聞こえるが、それを加味しても静かな空間はレフィーヤの声を待っている。

 一度強く手を握りしめ、「あのっ」と顔を上げて口を開く。

 

「何処かで、会ったことがありますか……?」

 

 フードで顔は見えないものの、何処か懐かしい感覚に陥る。

「思い違いだったら、すいませんっ」と恥ずかしそうに手を振る彼女に対し、ベルはフードの影で僅かに驚きを浮かべるとすぐに平静を保つ。

 

「以前、僕が働いている酒場に打ち上げで来てましたよね? その時でしょうか?」

 

「え、酒場……? もしかして、『豊穣の女主人』ですかっ? その、打ち上げの時の記憶が何故か無くて……もっと前に、会いませんでしたか?」

 

「……すいません、思い当たりませんね」

 

「そうですか……」

 

 思い違いだったか、と眉を下げて縮こまりながら頭を下げるレフィーヤの頭をあげるように促す。実際には心当たりはめちゃくちゃあるのだが、あまり言うことでは無いだろうと胸にしまった。というか、

 

(僕の知ってるレフィーヤさんと全然違う……)

 

 顔を合わせれば『万年発情兎!』やら『アイズさんに近寄る害虫!』やら、果てには『性犯罪者』などと牙を剥き出しにして来た彼女と同一人物とは思えない。

 

 若干の、いやかなりの違和感にたじろぎつつ、まだ言うことがある様子のレフィーヤへと顔を向ける。

 

「その、なにかお礼をしたいのですが」

 

「お礼、ですか……なら、『豊穣の女主人』で食事を取ってもらえるとありがたいです。サービスしますよ」

 

「はいっ、今夜お邪魔させていただきます!」

 

「お待ちしてますね」

 

 頬を赤く染め、満面の笑みを浮かべたレフィーヤを見て、アイズは少し頬を膨らませると縮まっていた二人の距離を離れさせる。「アイズさん?」と不思議そうに声を上げると。

 

「レフィーヤ、近い」

 

「えっ」

 

「アルは、私の、だよ」

 

「え"」

 

 ベルの腕を取り引き寄せたアイズを見て物言わぬ石と化したレフィーヤを見てベルは苦笑する。

 

「アイズ、言い方」

 

「??」

 

(リヴェリアさん何とかしてっ!)

 

 意図していないだろうが、誤解を生む言い方をしたことにホームで事務作業を行っているであろうリヴェリアへと教育をなげうった。自分の言動を理解せずに首を傾げながら見上げてくるアイズの頭に軽くチョップをする。

 

「痛い……」

 

 腕を掴んでいない方の手で頭を押え涙目で見上げてくるアイズに少しの罪悪感と庇護欲をそそられ、少し困ったように自身の腕を掴む手に触れる。

 

「リヴェリアさんに色々教わってね。あと、そろそろ手を」

 

 

「────見つけたぜ」

 

 

 低く苛立ちの籠った声が響くと同時に宙から銀の閃光が飛来する。鈍く光る槍を携えたソレはベル目掛けて一直線に進んでいく。

 近くにいたアイズと追跡者を自分の体で遮るようにアイズを抱え、鋭く向けられた必殺の槍の柄を掴み衝撃を外へ逸らす。

 

 ベルの周囲の地面が衝撃で凹み、足は軽く埋まるほどに煉瓦を砕いた。

 

「……ですよねぇ」

 

 周りが突然の襲撃者と、その正体を一目見て驚愕している中、ベルはため息を零し、殺意がほとばしる猫人の視線から目を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




18巻のリューさんチートすぎて凄かった(語彙力)
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