白き英雄譚   作:ラトソル

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白光凱旋
第三の試練(堕ちた正義)


『──神月祭?』

 

『うん。月を神様に見立てて奉り、モンスターという脅威からの無事を祈る祭りなんだ』

 

『神……ですか』

 

『やっぱり、神は嫌い?』

 

『そう、ですね……あなたの言うように、千年後のこの地に神は降臨するのでしょう。それでも、あの日あの時、下界を観測しているはずの神々は私達に何もしてくれなかった──神なんて、クソ喰らえ。それが、私の中での一番の気持ちですね』

 

『……僕も、神様達があの惨劇を見て何もしないことには疑問は残るよ。本当に観測しているのか……いや、一柱の神は僕のことを絶対に視てるはずだけど』

 

『その神というのはどのような?』

 

『……地下世界の、冥府の神様、だったかな。絶対悪という言葉を身に纏って、正義の答えを求める、下界を混沌に導こうとした諸悪の根源たる邪神……だけど、心から下界の人間を愛してやまない、そんな神様だよ』

 

『そのような神が……いや、私達は神というものに会ったことがないので想像でしか語れませんが。やはり神々しいものなのでしょうか』

 

『いや……どうだろうね』

 

『おや? 何やら興味深い会話の御様子。私もお聴きしても?』

 

『失せなさい、吟遊詩人。私と彼の時間の邪魔をするな』

 

『ははっ。手厳しいですなぁ、フィアナ殿。しかし、私は吟遊詩人。未だ誰も合間見えたことの無い天上から見下ろしている神々の話に興味を持たないはずもなく! それに、私は彼、光の英雄殿のファンですので。ベル殿が描く軌跡の全てを私は綴るのです!!』

 

『うわっ!!』

 

『やめろと言っているのが聞こえないのですか吟遊詩人。彼の腕に貴方の腕を絡ませるな。というか、そろそろハッキリさせた方が良いのでは?』

 

『はて? 何をでしょうか』

 

『決まっている──付いてんのか、付いてないのか』

 

『どこ見ながら言ってるの……』

 

『貴方もそこの吟遊詩人と同じで怪しいものですが』

 

『なんで!?』

 

『時折見せる微笑み。絵に書いたように「えへへっ」と頬を掻きながら笑う仕草はもはや狙っているのではないかと思うほどに女性ですよ?』

 

『その点については激しく同意します。ディム殿は時折「あいつの笑顔とか仕草見てたらなんか新しい扉開きそうで怖いんだ」と自分に言い聞かせていますよ』

 

『髪を長くしてスカートなど履いてしまえば美少女の完成ですよ。私が嫁に貰いに行きます』

 

『それはおかしいから!! 僕は男だから! っていうか話題それすぎ!!』

 

『ユーリ殿もこの間貴方の照れ臭そうな表情を見て動揺してしまった自分を戒めるべく滝行に────』

 

『あー!! 神様の話だったよ、ね!!』

 

『付いてるか付いてないかでは『それはもういいから!!』』

 

『はぁっ、はぁ……えっ、と。神々は神々しいのかって話……だけど。僕が見てきた神様達はまず一目見て存在の格が違うんだと分かる程のオーラみたいなのが溢れてる。けど、神々しいかと言われれば首を傾げるかな』

 

『ほぉ。それはどういう?』

 

『昼からお酒を飲んでる神や、貧乏で借金まみれの神様もいるし。というか大半が堕落してるんじゃないかな……下界に降りてきた神々は全知零能。神の力を封印して唯一許されるのは子供の嘘を見抜く力とそれぞれが持つ権能の劣化版だけだから』

 

『つまり、権能の類を除けば我々人類とそう変わりはしない……むしろ堕落している分劣っている、と』

 

『まあ、そうだね。タケミカヅチ様……武神なんかは、一般人程度の力しかないけど技術だけで神の恩恵を授かった冒険者と呼ばれる人達を投げ飛ばせるだけのものはあるけど』

 

『神──精霊を生み出した最上位の存在ですな。ベル殿と共存している大精霊達の生みの親はさぞかし高名な方なのでしょう』

 

『うん……みんな凄い神様達だよ。僕を育ててくれたお祖父ちゃん、路頭に迷っていた僕を拾って下さったヘスティア様』

 

 言い出したらキリがないと、白髪の少年は天をみあげる。

 

『誰よりも気高く、清く。そして、生まれ変わっても尚僕に会いに来てくれると約束してくれた月女神』

 

『月……なるほど、神月祭とはその方をモチーフに……』

 

『神月祭ですか! 良いですねぇ、イルコスの民達も祭りごとに飢えている事でしょうし! オルナ殿に早速提案してみましょうとも!』

 

『はい』

 

『ああ、そうだ。訂正するのを忘れていました』

 

『どうしたの?』

 

『私の槍は貴方に捧げていますが────貴方の槍は是非とも私に突き刺して──』

 

『はいっ!! この話おしまいっ!!!』

 

 

 

 

 ────【光の英雄譚ー空白の章ー】より抜粋。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

「……ぁっ、ぐぅっ!」

 

 意識の浮上と共に感じた腕の痛みと倦怠感。

 鋭く走る痛みに飛び起きなかったのは全身が重度の筋肉痛により腕の一本動かすことが叶わないため。

 唯一動かすことの叶う目で状況の確認を行うと見たことの無い天井と独特の匂いが鼻を突き抜ける。

 

「いむ、しつ……?」

 

「お目覚めですね」

 

「え────」

 

 誰も居ない知らない空間に1人きり。そう思った途端隣から聞こえてきたこれまた聞いた事のない女性の声。

 抑揚は感じられず、淡々とそれでいて凛とした女性の声に首は筋肉痛では無かったために首を捻り声の主の姿を目に収める。

 

「おはようございます、ベル・クラネルさん」

 

 そこにいたのは一人のヒューマン。

 薄い水色の長髪を後ろで纏め、前髪は帽子で隠し如何にも看護師という名前が似合いそうな可憐な女性。

 

「骨折や怪我は完治させましたが、異常はありますか?」

 

「え、と。筋肉痛、が」

 

「運動不足ですね。日頃から体を動かすことを勧めます」

 

(し、辛辣……!!)

 

 医務室のベッドに横になっているであろう僕の隣に立つ女性は僕を見下ろしながら感情の起伏を見せずに淡々と言葉を紡いでいく。

 

「二日間」

 

「え」

 

「貴方が【剣姫】に私の元へと運び込まれてから眠り続けていた期間です」

 

「【剣姫】……ぇえ”っ!?」

 

 その方の言葉の意味が理解するのに時間がかかって、思わずと言ったように野太い声が出てしまったのは許して欲しい。

 

(アイズさんが僕を運んで……えっ!? 居たの、あそこに!?)

 

 言葉が出ない僕に特に反応を見せない女性はいつの間にか持っていたコップを僕に差し出し「喉が乾いていますね。水をどうぞ」と言い渡してくれた。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「アイズさんが貴方をお姫様抱っこで連れてきた時は『あれ、逆じゃね?』と思いながらよく見たら似合いすぎていたので面白かったですよ」

 

「何を言ってるんですかっ!?」

 

「ふふっ……最近はそのような慌てた姿を見ることが少なくなったのでなんだか新鮮ですね」

 

 その人とは初対面であるためにその言葉の意味が分からず首を傾げると「気にしないでください」とだけ言うと改めてこちらを向く。

 

「申し遅れました。私はアミッド・テアサナーレと申します。よろしくお願いします」

 

「お、お願いします」

 

「貴方の身体の状態ですが、左腕の骨が粉砕されていたこと以外は特にこれといった重症は見当たりませんでした。骨折も既に治しているので、早くてもう一日程で退院していただいて結構ですよ」

 

「ありがとうございま……あ! あ、あの! リリ……もう一人、小人族の女の子はいませんでしたか……あがっ!!」

 

 身を乗り出し、慌てて聞き出そうとした僕は体を動かしたことによる激痛が電流のように全身を駆け巡りもう一度ベッドへと倒れることを強要された。

 馬鹿ですね、とその様子を見たアミッドさんはやはり棘のあるというか、かなり遠慮のない言葉遣いで冗談交じりにそう言いながら「安心してください」と一言。

 

「彼女は既に退院しております。今はたまたま席を外していますが、すぐに戻ってくるでしょう」

 

「そう、ですか……良かった」

 

 現状思いつく懸念点が解消されたためにホッと一息。

 そして段々と頭が目覚めてきて気絶する前の記憶が蘇ってきて実感する。

 

(倒したんだ──ミノタウロスを)

 

 勝利の感触を確かめようと無意識的に拳を握ろうとして比較的マシではあるものの少しの痛みを感じる。

 

(ああ……たったの一戦で全身筋肉痛で数日間動けないこの状態をザルドおじさんに見られたら、『鍛錬のやり直しだ』って言いながら追いかけられそうだなぁ……)

 

 振り返り、親指を立てて白い歯を輝かせながら口角を上げてサムズアップするおじさんの姿を脳内で消し飛ばす。

 

 ははは、と乾いた笑いが溢れた瞬間、あることに思い至りピシリと全身が硬直する。

 

「……あ、あのぉ〜」

 

「はい?」

 

「ち……治療費は、どれくらいに……」

 

 震える声でそう尋ねる。

 アミッドさん……あー、聞いたことあるなぁ。都市最高の治療師だとか。

 

 あ〜、終わった。

 団員が僕一人の零細ファミリアの資産で払えるような治療費で収まるのだろうか。いや、無いだろう。

 

「そうですね……500万」

 

「ごっ!?」

 

 まずいまずいまずい。何をどう頑張っても払える気がしない。

 

 500……ごひゃ、ごひゃく!? 

 ムリムリムリムリムリムリ。今の貯金じゃ十分の一も無いのにローンなんてしたら神様に怒られちゃうっ!! 

 

「……なんでも」

 

「はい?」

 

「なんでも……します……」

 

「そんな悲壮な表情を浮かべながら言わないでくださいよ……」

 

 神様が言っていた『ドゲザ』を心の中で何度も繰り返し、もう何も見ることが出来ないと目を瞑り震える声を振り絞って声に出す。

 

 アミッドさんは呆れたような声を出した後、打って変わって面白そうにクスリと笑い「冗談ですよ」と言ってくださる。

 

「お代は既に頂いておりますので」

 

「えっ……ま、まさかっ、リリ!?」

 

「違いますよ」

 

 僕が飲みやすい位置に水を置いてくれて。

 

「じゃあ……誰が……?」

 

 思い当たる人物が居ないことでアミッドさんにその人を聞き出そうとするも唇に人差し指を添えて口角を少しあげた。

 

「────内緒、です」

 

 その姿が、どんな絵画よりも美しく思えて。

 聖女という言葉が具現化したような。顔が熱くなって人から見れば真っ赤になっているのだろうなと漠然と思った。

 

「──そうだ、クラネルさん」

 

「え……あっ、はい!?」

 

 数分しか話していないけど、こんなにも表情が変わるような人なんだなと、第一印象とは違った感想が出ていた。

 その人は、なにか面白そうに、からかうように。

 

「────アルフィアさんとザルドさんは息災ですか?」

 

「………………………………………………………………………………………………………………え”っ」

 

 アミッドさんからの質問内容に思考が真っ白になり固まる。

 そんな僕の様子を見てやっぱりと面白そうに笑う彼女が今度はとても恐ろしく思える。

 

「その様子を見るに、悪化はしていないようですね。それは何より」

 

「なんで────」

 

「ベル様ッ────!!」

 

 どうしてあの二人のことを知っているのか。

 元から知っていたのか、それとも僕が寝言で呟いていたのか。

 前者ならその関係性を聞いてみたいと言う好奇心が。後者ならお義母さんにアミッドさんが殺されるのではないかという恐怖が頭の中でぐるぐると回り続ける中で、医務室の扉が強く開かれ聞き慣れた少女の声が高く響いた。

 

「くれぐれも安静にしてください……絶対にですよ」と念押しされてそう告げた後に、僕が呼び止める暇もなくアミッドさんは部屋を後にした。

 

 涙を流したリリが僕に抱きつこうとして触れた途端に筋肉痛による激痛が走り叫び声が上がったのは言うまでもないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神々の原罪────だと?」

 

 オラリオから遠く離れた田舎に建てていたアストレア・ファミリアのホームから離れ、アルフィアは大神を訪れる。

 

 テーブルに置かれた紅茶に手を出すことなくアルフィアはただ脚を組み両目は閉じた状態で静かにそして苛立ちを顕にしながら続きを催促する。

 

 そうじゃ、と首肯して大神ゼウスは冷静を保ち話を続ける。

 

「ベルにとっての……『一度目の道』と呼ぶべき世界。下界を観測するに留めるべきだった儂ら神々が終末の到来を切っ掛けとして神の力を解放し結果として下界は滅亡を迎えることとなった」

 

 これは、一部の大神にのみ共有されている真実。

 

「神の中でもオリュンポス十二神の一席に座っていたヘスティアは神々の力の解放による世界の滅亡を予感しただ一人の生存を願った。それに同調したのは儂やヘラを含めた大神、そしてその先を予見した邪神」

 

「邪神だと……?」

 

「神々の力の波動は遠く離れた全てを観測するカオスまでに届きベルは時を遡った。一度目の道のベル・クラネルが今の世界──『二度目の道』に来たことで既に世界の枝分かれにより別のルートをこの世界は辿っておる」

 

 感情の揺れが見えないゼウスに眉を顰めるアルフィアを無視してゼウスは続ける。

 

「ヘスティアの願いは純粋なベルの生存。しかし儂を含めたその他の神々がヘスティアの力に同調したのは目的が違う」

 

「目的だと?」

 

「──世界の救済(マキア)

 

 息を飲む。閉じられた瞳がオッドアイを表に見せる。

 

「ベル・クラネルを救済措置として過去へと送り、世界の救済を強制させる。英雄気質であるあの子ならと己の価値観を押し付け、世界の全てを託し確定された終末の到来の礎に据える」

 

「たった一人の子供に……世界を、背負わせるのか」

 

「『一度目の道』で死した子供達は死の運命に縛られ本来ならばどんな形であれその時を迎えれば死に直面する。しかし現存の戦力であの黒き終末を迎撃はおろか傷をつけることさえ叶わなかったのは明白だった故にお主やザルド達死者の死の運命をねじ曲げねばならず、死者の救済を成立させるための条件として儂らはあの子に試練を与えた」

 

「何を言って……」

 

「七年前にお主達を救うためにベルが受けた最初の試練は古代にて交わされた『約束』の履行。しかしあの子だけでは勝つことは出来ないことは明白だったために一度目の道のゼウスは己の眷属たる雷の大精霊(ジュピター)を邪神達の目を掻い潜り逆行するベルの懐に潜めてこの道に送り込んだ」

 

「私たちを救う……一度目の道にて死んだ私達を救うための試練を私達ではなくあの子が担った……」

 

「救ったのはお主らだけでは無い。アーディという少女の生存は黒竜討伐の必須条件と言えるもの。そしてアストレアの眷属達の生存も必須でありその救済は二度目の試練で正義の使徒達の死を捻じ曲げたのじゃ」

 

「二度目の試練……」

 

「それが、お主の知りたがっていた『光の英雄譚』」

 

「待て。光の英雄譚の内容こそ聞いてはいないが概要は把握している。あれは────」

 

「二度目の試練の記憶は儂に準ずる大精霊によって封印されておる。それは今の器では耐え切れる情報量では無いからであり一度目の道の記憶も同様」

 

 苛立ちは消え。

 あるのはただ己の死の救済を無意識的に押し付けていた自責の念。

 

「一度目の道と二度目の試練の記憶の解放を迎える『約束の時』はそれぞれ決まっておる。そして全ての試練に共通するのは儂ら神々の直接的関与は不可能という点」

 

 だからこそ一度目の道のゼウスは大精霊に任せるという出来うる限りの最大限の貢献を見せた。

 

「世界の救済を強制されているあの子を救えるのは子供達のみ。試練の時期も内容も事実を知る一部の神々でさえ知らずことが起こる直前にのみ、その試練の把握をすることが可能」

 

 なぜ今になってわざわざその話をするのか。その意図を探るまでもなく、アルフィアはひとつの答えにたどり着き「まさか」と組んだ脚を解き立ち上がる。

 

「……無駄じゃ。三度目の試練は既に行われておる。間に合わんぞ」

 

「今の話を聞き入れた上で黙っていろと? 真実を知った私はあの子の救済を起こす責務があるはずだ」

 

「ウラノスはもう気づいているだろう……ダンジョンの深層で扉が開かれた」

 

「ちっ……」

 

 今の自分に出来ることは無いのだと。その事実を知った上で動くのはただの無意味な行動であり今の自分に出来るのは正義の眷属を叩き直しさらなる戦力の向上を来るべき約束の日までに備えること。

 

「儂はもうオラリオに行くことは出来ん。あの子に助言はできず助力も一度目の道の儂が送った大精霊だけが限度。あえて言う」

 

 目を背けてはいけなかった。

 ベル・クラネルに世界を背負わせ、死の運命もその身に受けて全ての救済を強要させているのは神々だけでは無いのだと。

 

「あの子を救済の運命に導いたのは他でもない……黒竜を討伐出来なかった儂らじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ぁぁぐぅぁああああっ!!」

 

 ダンジョン深層────59階層。

 

 穢れた精霊の魔法行使によりオラリオ全域がすっぽりと収まる広範囲は炎にまみれ、洪水し、凍りつき、枯れ、大規模なクレーターが至る所に出来上がる。

 深層の中でも既に魔境と言える様相。アイズの一撃により穢れた精霊は討伐されロキ・ファミリアは攻略階層を更新した。

 

 誰もが血を流し、膝を着き、これ以上の戦闘は不可能なまでに追い詰められ今はもう気力でたっているだけに過ぎず。

 

「アイズっ!!」

 

 今まで遭遇してきたモンスターを凌駕する強敵を討伐し、冒険を果たした彼ら冒険者達の意識は強制的に叩き起されることとなる。

 

「────アリア、なぜお前がここにいるのか。そもそもここは一体何処なのか」

 

 切断された左腕の切り口を右手で強く押え、痛みに顔を歪めるアイズは己を見下ろす存在を見上げ。

 

「────何故お前が生きているのかも……まあ、どうでもいいか」

 

 燃えるような紅い髪、翡翠の瞳は細く威圧的に見え、右手に携える長剣はおぞましい脈打つ血管のようなものが張り巡らされる。

 

「もうお前には……なんの興味もない」

 

 フィンの親指が弾けるほどの激痛に襲われる。誰も動けないのは疲労からか、それとも佇む女から放たれる圧倒的力の波動とおぞましいオーラか。

 

「足掻けよ、冒険者共」

 

 絶対的強者からの宣告。

 

「少しは退屈しのぎになってもらうぞ」

 

 それは、本来なら存在するはずのない絶対悪。

 

 ベル・クラネルという存在が生まれることのなかった世界において生まれてしまった特異点。

 

「【花開け(アルガ)】────【アガリス・アルヴェシンス】」

 

 地獄の業火が放たれる。

 

 ────レヴィス、参戦。

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