白き英雄譚   作:ラトソル

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文字数少なっ


あ!おばs

 時は少し遡る。

 

 闇派閥の動きが活発化してきて被害の報告が数多く来る中で、フィンの思考は鈍らない。

 常人なら頭が破裂しそうなほど情報が舞っているなかで、彼は最適と言える指示を出していた。

 

 ロキ・ファミリア団員や、他の冒険者も、そんなフィンの眩しいまでの立ち振る舞いに鼓舞され、絶望の表情を浮かべるものはまだ居ない。

 

 だが、そのようなものは、圧倒的力の前に容易く崩れ落ちる。

 

「……!? なんだ!?」

 

 都市が震える。たった一撃の轟音が都市中を駆け巡る。それまで忙しなく動いていた冒険者も、その音が聞こえれば動きを止めた。

 

 都市が静まり返る。

 

 フィンの親指は、暗黒期を迎えてから疼きが止まったことなどない。大小様々な疼きが毎日続いていた。

 

 だが今は──()()

 それは過去最大級の警報となり、フィンは状況把握を急ごうとした。

 

 静まり返った都市の中、次に聞こえてきたのは──闇派閥の歓声だ。

 

 それは命を捨てる時のやけくそ気味な叫びではなくて。ただ、大将を打ち倒したような、喜びの叫びに聞こえた。

 

 フィンの中で最悪の可能性が浮かび上がる。

 自分の勘を疑ったことなどない。まして親指の疼きが出た時は決まって何かが起こる。

 ただ、今だけは。今だけは、自分の勘が外れて欲しいと。いつものフィンならば絶対に思わないことを願い。

 

「────だ、団長!!」

 

 そんなものは、

 

「ほ、報告!! 闇派閥により」

 

 簡単に裏切られる。

 

「──【猛者】が、敗北、しました」

 

「ーっ」

 

 考える中での最悪。オラリオ最強の敗北の事実に、すべての冒険者の思考が停止し、動きが止まる。

 皆の顔を見れば、今までで見たこともないほどの、絶望の表情。

 都市最強がいるという、最後の希望が呆気なく散り、皆の目が曇る。

 

 対照的に闇派閥は活力を取り戻しており、勢力を拡大している。

 

「……オッタルは、誰にやられた?」

 

 オッタルを倒すことの出来る実力者など、闇派閥の中で、いや、オラリオの中にはいないはず。Lv5が数名で取り掛かれば倒せるかもしれないがそんな戦力は相手にはいない。

 有象無象が集まったところでオッタルは負けないと言える自信があった。

 

 フィンは答えを待つ。質問を投げかけられた団員は、どこか怯えたような、信じられないような顔を向け、告げる。

 

「──ゼウス・ファミリアの、『暴喰』です」

 

「──」

 

 今度こそ、フィンの思考が止まる。その名は、痛いほど知っている。

 

 かつての最強のファミリア。何度も挑み、敗北してきた相手。

『暴食』のザルドとも、幾度となく挑み、敗れた。

 彼はガレスとはよく酒を飲み交わしていた。親交も深かったが、そんなことよりも重大なこと。

 

 彼はLv7だ。

 

 今のオラリオの中で、彼に勝てるものなど一人もいないだろう。

 Lv7が一人闇派閥側に入っただけで、力のバランスが大きく傾いた。

 それほどまでに、Lv7というものは圧倒的なのだ。

 

 だが、彼が闇派閥に入った理由が分からない。いや、そんなことはこの際どうでもいい。

 こちら側が圧倒的不利になった。どうする。

 

(……いや、こちらの主戦力全員で相手をすれば、なんとか──)

 

 そんな楽観的な考えも、すぐに覆される。

 

「ロ、ロキ! 団長!」

 

 また一人、報告に来た団員がいた。正直先程の報告で手一杯だったのだが、司令塔であるフィンが断る訳もなく続きを促す。隣にいた主神であるロキも、苦い表情をしながら報告を待った。

 その団員の顔を見れば、やはり絶望の表情を浮かべていて。

 

「リ、リヴェリアさんとガレスさんが……敗北したと、報せが……」

 

「なんやと!? 二人は無事なんか!」

 

「【万能者(ペルセウス)】がお二人を回収したそうですが……重症で、すぐに再起は不可能だと……!」

 

 その報告に真っ先に反応したのはロキ。自慢の子供がやられるとは思わなかったのか、だいぶ焦っている様子だ。

 無言のままのフィンも彼らが負けるとは思っていなかった訳では無いが、それでも可能性は低いと思っていた。

 

 親指の痛みはなおも増幅している。

 

(──待て、ラウルはなんと言っていた?)

 

 フィンの中でひとつの可能性が浮かび上がってくる。

 

(『大剣を持った戦士』と『女の魔道士』に上級冒険者がやられた。『大剣を持った戦士』は間違いなくザルドだろう。だが)

 

『女の魔道士』がリヴェリアとガレスを倒したと見て間違いないだろう。ならばそれはザルドと同格かそれ以上。

 フィンの中での候補はもはや一人になっていた。だが、もしフィンが思い浮かべている人物ならば、それは想定される最悪を超える最悪だ。

 

「敵の情報は!!」

 

 半ば確信めいたものを持ちながら、それでもそうであって欲しくない、間違っていて欲しいと思うフィンは団員に尋ねるが、やはり絶望は訪れる。

 

「は、灰の髪の魔導士、妙齢の女! 超短文詠唱を駆使し、桁違いな攻撃はおろか、魔法による砲撃も効かないそうです!」

 

(やはり……アルフィアか!! ゼウスだけでなくヘラの眷属まで……!!)

 

 両者共にLv7。中でもアルフィアは神時代で最も才能に愛された女とまで言われるほどの怪物だ。どちらもこちらの主戦力を大きく上回っている。

 

「戦況を掌握された……! これが『切り札』か、闇派閥! ヴァレッタ!」

 

「【猛者】達の敗北を受け、各【ファミリア】の士気が下がっています! 南方を中心に、敵の蹂躙を押し返せません!」

 

「だ、団長! せめて援軍を! リヴェリアさん達のもとへ……!」

 

「駄目だ! 僕達は中央広場を、『バベル』を死守する! この戦いの中で、敵の狙いは間違いなく……!」

 

 まさに絶望的な状況。こちらの戦力もどんどんと削られている。

 まだ親指の疼きが止まらない。絶望はまだ続くのか。

 

「!?」

 

 轟音が中央広場まで届いた。それは、先程のオッタルがやられた一撃に匹敵する、いやそれ以上のもので。

 

 その音は一度に収まらず。二度三度と繰り返し鳴り響いた。

 それは剣と剣のぶつかり合う音のようで。その一撃一撃が大気を揺らす。

 

 その音の方向は、やはりザルドがいるであろう方向。ならば音の正体はザルドの剣撃で間違いないだろう。

 

(まて)

 

 フィンはその状況に疑問を抱く。

 

(ザルドは誰と戦っている?)

 

 オッタルを降した一撃を上回るものは、なおも続いている。オッタルより高位の冒険者は今のオラリオには存在せず、ザルドと打ち合える者などいないはずだ。今オラリオにいる中でやり合えるとすればアルフィアだが、それは論外だろう。ならば誰だ? 

 

 その音は大きさを増していた。いや、こちらに近づいていた。

 今までよりも一際大きい衝撃を鳴らせば、こちらに向かって何かが降ってきた。

 

 人だ。白髪の少年。ナイフと太刀をその手に収めている少年は辺りを見渡してこちらを見るとなぜか驚いたような表情をしていた。

 

 だが、フィンからすればそんなことはどうでもいい。

 

 フィンはその少年を見たことがない。こんな冒険者の存在など知らない。

 しかしその少年の特徴を見れば目を見張る。

 

(彼は、まさかヴァレッタを倒した……!?)

 

 ヴァレッタを吹き飛ばしたという白髪の冒険者。彼で間違いないだろう。

 

 彼のことを注視していたものの、中央広場の地面を吹き飛ばす何かが落ちてきたことでフィンはそちらを見る。

 

 鎧を纏い、大剣を背負った男──ザルドだ。

 フィンはやはりザルドと少年が戦っていたのかと考えるのと同時に両者の状況がおかしい事に気づく。

 

 白髪の冒険者の体には目立つ傷はない。しかしザルドの体には何本もの傷が入っている。つまり、

 

(彼はザルドの攻撃をすべて捌いた上でザルドを圧倒していたのか!?)

 

 ザルドがこちらを、いや、周りの冒険者を一瞥する。それは有象無象を見るような退屈な目をしていた。だが、すぐに視線を外し白髪の冒険者の方へと向き直る。

 

 互いに向き合ったところで、先に動いたのは白髪の冒険者だ。その速さはフィンの目でも捉えることが難しいほどのスピード。オラリオ最速の【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】よりも速いであろうことが容易にわかった。

 

 ザルドが詠唱を始めた。Lv7の魔法の威力など計り知れない。それでもここら一帯が吹き飛ぶことは想像できた。

 団員に指示を出そうとしたフィンだが、鈴の音が聞こえてきたことで動きが止まる。

 その音は白髪の冒険者の方から聞こえてきたもので。彼を見れば、ナイフが白く輝いていた。その光は時間の経過とともに眩しく、強いものとなっていた。

 

 ザルドの詠唱が終わるのと同時に互いが向き合う。ただ向き合っているだけなのに、こちら側が押しつぶされるかに思えるほどの圧力を感じた。

 

 そして、両者の必殺の一撃が放たれる。

 

「【レーア・アムブロシア】!!」

 

「──【聖火の英斬(アルゴウェスタ)】!!」

 

 互いの全力がぶつかり合う。その余波だけでも立っていられる者はいなかった。離れた場所にいるにもかかわらず熱い。それほどまでのエネルギーが互いの間に収束されていた。

 

 その余波は中央広場に留まらず、あたりの瓦礫を吹き飛ばし、都市全体を震わせる。都市中の誰もが動きを止め、音の発信源を見た。

 

 互いの一撃が拮抗する。やがてそれはザルドの方へと傾き、徐々にその距離を縮める。

 もう間もなくザルドへと到達し、打ち倒されるところで。

 

 才禍の怪物により静かに終わりを告げた。

 

 ──────────────────────────────

 

 自分の全力を容易く打ち消して見せた舞い降りてくる女性を見る。

 

 ザルドにアルフィアと呼ばれていた女性のオーラは、はっきり言ってザルドを超えていた。

 彼女だけを相手にするのもきつそうだが、まだザルドには余力が残っていそうだ。正直二人同時で来られるとやられかねないとベルは冷や汗を出す。

 

 それに、彼女が唱えた詠唱。あれは──

 

「派手にやられたな、ザルド」

 

「ああ、まったくだ。俺の魔法もお前が来なければ負けていたな」

 

「お前を打ち倒す存在が今のオラリオにいるとはな」

 

 そう言ったアルフィアはベルの方を見る。いや、観察しているのだろう。ザルドを倒しかけた存在がどんなものなのかを。

 その視線に妙に居心地の悪さを感じたベルは少し背筋を伸ばした。

 

「……見たことがないな。だが、あの赤い眼は何故だか無性にくり抜きたい」

 

「ヒッ!?」と心底恐ろしい発言にベルが顔を青くし、アルフィアのそばにいたザルドはドン引きしていた。

 すぐに表情を戻したザルドがそうだ、とアルフィアの方を向く。

 

「あの冒険者、ベル・クラネルと言うらしいぞ」

 

「……なに?」

 

 ザルドからベルの名前を聞いたアルフィアは眉をピクリと動かし、ベルの方をさらに凝視してきた。その状態を保ちながら、なにやら真剣な表情で考えている様子のアルフィアにベルは困惑していたが、やがて誰にも気づかれないほど一瞬微笑を浮かべたアルフィアはすぐに表情を戻した。

 

「ならば、私たちがすることなど決まっている──まだ動けるな? ザルド」

 

「当たり前だ。俺もまだあいつと戦いたい」

 

 ザルドとアルフィアの瞳がベルを捉えると同時に二人は闘気を纏う。それを察知したベルはすぐに戦闘態勢になり、武器を構えた。Lv7三人の睨み合いは圧倒的なプレッシャーを放ち、周囲の冒険者を震え上がらせた。

 

「小僧。()()()()()を教えてやる──【福音(ゴスペル)】」

 

「がっ!?」

 

 先に動いたのはアルフィア。正確にはその場からは一歩も動いてはいない。彼女がしたことは、ただ一言呟いたのみ。そのたったワンワードから放たれた魔法の威力はベルの【ファイアボルト】を上回っていた。

 

 アルフィアの魔法【サタナス・ヴェーリオン】。その内容は『音の塊を放つ』。ただそれだけ。だが、シンプル故に強力。空気を伝う音の塊は体の内部へと侵入し、実質防御不可能の攻撃だ。

 

(超短文詠唱!? しかも威力が高い!)

 

「集中が足りてないぞ!!」

 

 速すぎる魔法の行使とその威力に戸惑い、既に懐まで来ていたザルドの対処が遅れる。ギリギリのところでナイフを間に合わせたベルはザルドの一撃を受け流す。

 

 ベルは二人に比べれば冒険者としての経験は浅いと言える。それもそのはず、まだベルは冒険者になって一年経っていないのだから。

 一年未満でLv7へと到達したベルが異常だ。

 

 それでも自らの憧憬である【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの師事により、対人経験を積み、戦闘技術を学んだ。

 その成果を発揮する場面は幾度となく現れていた。故にベルの技術は洗練されている。それは歴戦の戦士と遜色ないほどに。

 

 一年弱の間に濃密な経験をしたベルだからこその、圧倒的成長スピード。

 その点では、誰にも負けていないと自負できる。

 

 その間にも無手のアルフィアは背後に迫ってきており手刀を首目掛けて放つ。寸前で身を屈めて手刀を避けたベルはそのままアルフィアの足元に回し蹴りを放つも読んでいたアルフィアはバックステップで回避。同時にアルフィアの方へと掌を向ける。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

「【魂の平穏(アタラクシア)】」

 

 退くアルフィアに魔法を放つも超短文詠唱による魔法の無効化が発動しベルの炎を消し去る。

 

 隙を晒すベルの背後からザルドはベルを蹴り飛ばした。

 

 未だ空中にいるベルの元にザルドが走り、大剣を振り下ろした。受け流すのは不可能と判断したベルは二刀をもってその大剣を受け止める。しかしその力は重く、地面を沈め両者が拮抗し動きを止めた。

 

 そのような隙を逃すほどアルフィアは優しくない。

 ベルは背後から悪寒を感じる。ちらりと見れば背後にアルフィアが立っていた。そして彼女は歌を紡ぐ。

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

 もはや回避不能。ザルドに押し込まれているベルは身動きが取れない。

 アルフィアの一言から凄まじい威力の魔法がベルの元へと向かう。このまま当たればかなりの一撃になる。力が弱まり、ザルドに押し負け潰されるだろう。

 

 だが、しかしベルの表情は曇らない。やがてベルの口が動き、一言呟く。

 

 

 

 

 

 

「────【母の静寂(アタラクシア)】」

 

 

 

 

 

 

 

「──なんだと?」

 

 ベルの一言と共にアルフィアの放つ魔法が消える。魔法が消えたことが予想外だったのか、はたまたベルの詠唱がアルフィアのものと同じだったことに対してか、ザルドとアルフィアが動きを止めた。

 

 ザルドは思わず力を抜き、その隙を突いたベルが大剣を押し返して脱出し、二人から距離をとる。

 

 なおも二人はベルの方を静かに見つめた。それでも互いに気を緩めない。いつ相手が攻めてきても対処できるように構え────

 

「──なっ!?」

 

 二人の後ろの方向から光の柱が天に昇っていた。その光景を、ベルは知っている。

 

()()()()

 

 つまり、あちらの方向で神の一柱が殺された──正確には死んでいないが──のだろう。

 

 思わず注意をそちらに向けたベルだが、二人は襲ってくる気配はない。二人は光の柱を見ると、アルフィアは舌打ちをし、「時間か」と呟いた。

 

「今回はここまでだ。また戦う機会はあるだろう。その時がくれば、再戦といこう、英雄」

 

 ベルの方を向き、そう言い残した二人はどこかへと立ち去ってしまった。

 

「ま、待ってください! まだ──」

 

 その二人を追いかけようとしたベルだが、視界の端を明るい何かが捉えたことで動きが止まる。

 そちらを見れば光の柱が天へと向かっていた。それだけではない。様々な場所で複数の光の柱が立ち昇っていた。

 

 神の一斉送還が行われた。

 

 送還された神の眷属は恩恵を失い、一般人と同等の肉体になった所を、闇派閥に蹂躙されていた。

 

 辺りから悲鳴が舞う。思わず脚を止めていたベルは、すぐに闇派閥に襲われている人たちを助けねばと動こうとして。

 

「──聞け、オラリオ」

 

 都市中に響いた男の声に足を止めた。

 

「──聞け、創設神(ウラノス)。時代が名乗りし暗黒の名のもと、下界の希望を摘みに来た」

 

「『約定』は待たず。『誓い』は果たされず。この大地が結びし神時代の契約は、我が一存で握り潰す」

 

「全ては神さえ見通せぬ最高の『未知』──純然たる混沌を導くがため」

 

 声の主を見れば、美しい顔の男神がいた。その両隣に佇むのは、先程まで戦っていたザルドとアルフィアだ。

 

「傲慢? ──結構。 暴悪? ──結構」

 

「諸君らの憎悪と怨嗟、大いに結構。それこそ邪悪にとっての至福。大いに怒り、大いに泣き、大いに我が惨禍を受け入れろ」

 

「──我が名はエレボス。原初の幽冥にして、地下世界の神なり!」

 

「冒険者は蹂躙された! より強大な力によって!」

 

「神々は多くが還った! 耳障りな雑音となって!」

 

 彼の言葉は、酷く耳に残った。彼の持つ神としてのカリスマ故か、彼から目が離せない。

 

「貴様らが『巨正』をもって混沌を退けようというのなら! 我らもまた『巨悪』をもって秩序を壊す!」

 

「告げてやろう。今の貴様らに相応しき言葉を」

 

 そして彼──エレボスは、間を空けて都市全体に向けて言い放つ。

 

「────脆き者よ。汝の名は『正義』なり」

 

 その一言は、都市にいる全ての者に刺さった。特に、以前エレボスと接触していたリューにとって、今の言葉は重かった。

 

「滅べ、オラリオ。──我等こそが『絶対悪』!!」

 

 そう告げたエレボスだが、ベルはどこか納得がいかない表情だ。エレボスには会ったことは無いが、ザルドとアルフィアは違う。実際に戦った。二人とも、会ったことは今回が初めてのはずなのに、どこか懐かしい。そんな気分だった。それに、どうにもあの二人が都市を滅ぼそうとしているようには見えなかった。

 

 違和感の拭えないベルだったが、ふと視線を感じる。視線の主は、今まで演説を繰り広げていたエレボスだった。かなり距離があるが、エレボスは真っ直ぐにベルの方を見ており、笑みを浮かべていた。

 

「……お前ともいずれ出会うだろう。楽しみにしているぞ、『英雄』」

 

 

 




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