「使命を果たせ! 天秤を正せ! いつか星となるその日まで!」
正義の剣と翼のエンブレムを掲げるアストレア・ファミリアの本拠『星屑の庭』にて、
「天空を駆けるが如く、この大地に星の足跡を綴る!」
団長であるアリーゼが言葉を綴る。その声を他の団員は静かに聞き、自らの使命を胸に刻む。
「──『正義の剣と翼に誓って』!」
「「「『正義の剣と翼に誓って』!」」」
アリーゼの締めの言葉に続き、他の団員が復唱する。これはアストレア・ファミリアが活動しに行く前に決まってするルーティンのようなもの。皆の顔が引き締まり、一人一人と扉へと歩いていく。
皆がホームから出ていく中、アリーゼは後方にいる白髪の少年へと向き、手を差し伸べて微笑んだ。
「さ、行くわよ────
「はい、アリーゼさん」
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邪神エレボスによるオラリオに対する死刑宣告にも似た宣戦布告が為された時、他の冒険者が唖然とする中で、ベル・クラネルは闇派閥の対処に走った。
まだ活動している闇派閥がいる以上、被害の鎮圧に動かなければならなかったからだ。
闇派閥達は、今回はここまでだとでも言うかのようにあっさりと引いた。しかしそれは相手の戦力を削ることができないということで、オラリオは闇派閥に大敗した。こちら側の被害と闇派閥の被害、どちらが大きいかなど一目瞭然だった。
「……これからどうしよう」
今回の一番の功績者であるベルは非常に困っていた。
この時代には知り合いと呼べる存在が一人も居ないのだ。ベルからすれば見知った人は何人も見てきたが、やはり時代が違うからか相手はこちらのことを何も知らない。
故に頼れる相手が居ない。
これから自分が何をすべきか、それは分かる。暗黒期に飛ばされた以上、闇派閥の無力化だろう。それはベル自身も望むことだ。
だがしかし、問題は住処。活動拠点だ。教会で生活することも案のひとつだが、やはりベルとしては協力者の一人くらいは欲しいものだ。
「──ベル?」
悩んでいると、後ろから女性の声が聞こえた。その声には聞き覚えがあったし、何よりもベルのことを名前で呼んだ。ベルの名前を知っているのは限られた人だけだった。
振り向けば、赤い髪をなびかせる女性が立っていた。やはりアリーゼだ。ただ、今の彼女は吹けば飛んでいってしまいそうな程に傷心しているようだ。前に見た元気が消えている。
「どうしたんですか? アリーゼさん」
尋ねられたアリーゼは肩を震わせて今にも泣き出しそうな目でベルの目を見た。
震える口をゆっくりと開ける。
「……私、目の前の人達を、いっぱい死なせちゃった……」
「っ」
「救えた命を、私が守らないといけない人達を、守れなかった」
「アリーゼ、さん」
それは、懺悔にも似た何かで。自分の力不足を嘆いていることが重く伝わってくるような声だった。
「私、団長だから。私がこんなんじゃ、みんな不安になっちゃうのに。こんな顔……見せられない」
アリーゼは一人で歩いていた。ベルを見つけたから来たのではなく、たまたま歩いていたらベルがいたのだ。我慢できないほどの感情の放出にみんなの前から逃げてきたのだ。
ベルから目を逸らし下を向くアリーゼに、ベルは歩み寄った。
「……アリーゼさん」
あと一歩で触れられる距離になるところで止まったベルがアリーゼに声をかける。アリーゼは尚も下を向いたままで静かに言葉を待った。
(……非難されるのかな)
アリーゼはベルと少しの間でも行動を共にしていたから分かる。ベルはアリーゼ達が救えない命を多く救っていた。アーディもベルがいなければ今頃灰になっていただろう。
闇派閥に襲われていた女性もそうだ。アストレア・ファミリアで一番の敏捷を持つリューでも間に合わなかったのに、ベルは難なく救って見せた。
そんな場面を何度も見せられたことで、アリーゼは劣等感を強く抱いてしまった。彼に救える命は、自分には救えない。アリーゼの目の前で散っていった命は、ベルが居れば救えただろう。ベルによって救われた命は多いはずだ。
救ったベルと、救えなかった自分。比べれば比べるほどに劣等感が増大する。
アリーゼはベルからの宣告を待つ。何を言われても受け入れよう。そんな気持ちで言葉を待った。
「──下を向かないでください、アリーゼさん」
糾弾するような声でなく、寄り添うような優しい声に思わず顔をあげたアリーゼはベルの顔を見た。その顔は、慈愛に満ちた表情で。思わず吸い込まれてしまいそうな魅力があった。
「確かに、今回の騒動で多くの命が失われました。それは僕たちの力不足のせいでもあります」
その言葉に、アリーゼは反論したかった。決して『僕たち』の力不足ではない。あなたは十分すぎるほどに命を救った。力不足なのはあなたではなく私だ、と。「でも」と言ったベルはアリーゼとの距離を一歩詰める。
そのままアリーゼの手を両手で握った。
「あなたに救われた命も多いはずです」
「──ぁ」
「あなたがいたから。あなた達がいてくれたから救われた命もある。僕一人じゃ救えきれなかった命を、あなた達は救った。あなたに感謝している人がいることを、忘れないでください」
手を優しく包み込むベルの手はとても暖かかった。その温もりを、その言葉を受け止めたアリーゼの右目から一滴の涙がこぼれる。
「僕は、あなたがいてくれてよかったと──心からそう思います」
その一言がトドメだった。アリーゼの目からダムが決壊したかのように涙が溢れ出す。
感謝なんてされないと思っていた。あれだけの被害を食い止められなかった自分に糾弾はすれど感謝する人なんて、いないと思っていた。
でも。目の前にいる人は、自分なんかよりも多くの人を救った彼は、自分に感謝してくれている。その表情と声を聞くだけで、本当に心の底から思ってくれているのだとわかった。
アリーゼの涙は止まらない。ベルの服にしがみつき、声を殺して泣きじゃくる彼女を、ベルは肩を寄せて受け止めた。
「みんなに自分の弱さを見せたくないのなら、僕に見せてください」
「──ぅ」
「どうしても挫けてしまいそうな時は、僕が話を聞きます。いくらでも。だから、前を向きましょう、アリーゼさん」
「──ぅん」
「一人で抱え込む必要なんて無いです。そのための仲間なんですから。いつでも頼ってください」
「ぅん、うん!」
それから10分ほど、アリーゼはベルの胸に額を当てていた。
ようやく泣き止んだアリーゼの目は真っ赤になっていた。それに頬も自分の泣いてる姿を見られたのが恥ずかしかったからかほんのりと紅く染まっていた。
「ベル、今から負傷者の救助をしに行くんだけど、手伝ってくれる?」
「はい、もちろんです」
ベルが即答したことに嬉しくはにかんだアリーゼはベルと共に被害者の捜索に向かった。
「ねぇ、ベル」
「なんですか?」
「この後、私たちのホームに来ない?」
「……いいんですか?」
アリーゼの思いがけない提案にベルは喜んだが、よく良く考えればアストレア・ファミリアは構成員の全てが女性だ。そんなところに自分が行ってもいいのかと思っていたが、その考えを見抜いたアリーゼが「いいのよ」と言う。
「だってあなたは私たちの『英雄』なんだから!」
満面の笑みをこちらに向けてそう口にしたアリーゼに思わずベルは赤面した。真っ向から『英雄』だなどと口にされて気恥かしい気持ちもあるが、先程までとはまるで違う笑顔に面食らった。
目を逸らして「ありがとうございます」と言ったベルにアリーゼは首を傾げたがすぐに前を向き、やるべき事へと意識を切り替えた。
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被害者の救助はほとんど済まされた。瓦礫に埋まっていた者、頭を打ち気絶している者。様々な者がいたが、やはり被害は大きい。
命を救えた者ももちろんいる。だがしかし、安否不明や救えなかった者の方が多い。これは早く救えなかったからとかではなく、即死が多いからだ。首を切られたもの、腹を裂かれたもの。
息をしている者はアミッド達により一命を取り留めたが、死者までは蘇生できない。
なんとも不甲斐ない結果となってしまったガネーシャ・ファミリアやアストレア・ファミリアの空気は重い。ガネーシャ・ファミリアはそれぞれの配置に戻り、アストレア・ファミリアは一度ホームへと戻ることを決めた。ベルはアリーゼとは別行動で捜索に当たっていたので今は居ない。
彼女達はホームへと足を進める。その際に周りの被害を見て顔を俯かせ、気力を落としていた。中でも酷いのはリューだ。彼女は自らの『正義』に疑問を持ってしまった。『正義』とはなにか。そんな考えが頭を駆け巡る。
「リオン。下を向いちゃダメよ。何か喋らなきゃ駄目。ずっと塞ぎ込んでるでしょ?」
「アリーゼ……」
アリーゼがリューに声をかける。アリーゼも皆と同様に周りの被害に顔を強ばらせていたが、何か吹っ切れた様子だった。
そんなアリーゼの様子を見てリューが疑問を口にしようとしたところで民衆がこちらへと迫ってきた。
その顔は今まで自分たちに向けてきたようなものではなくて。怒りの矛先に向けるような表情をしていた。
「……アストレア・ファミリアは正義の派閥じゃなかったのかよ?」
「なんで守ってくれなかったの!?」
そう非難した民衆はアストレア・ファミリアに怒声を上げ、石を投げた。お前たちのせいだと。なんで守れなかったのかと。そんな本来ならアストレア・ファミリアへと向けられるものでは無いものが彼女達に突き刺さる。
「……なんだ、なんなんだ、この仕打ち!?」
「貴様ら……!!」
リューは自らは民衆を守るために力の限り働いたというのになぜ我々が糾弾されるのかを酷く困惑し、輝夜は民衆の意味の無い行動に心底腹を立てていた。それは他の団員もそれぞれが思っていることで。なぜ都市のために動いている私たちを責めるのかが分からなかった。
今にも爆発しそうな輝夜をアリーゼが制して前に出る。民衆は石を投げてはいるものの彼女らに当てる気などなかった。しかしアリーゼに動いたことによりアリーゼの頭に石が迫る。
この石を避けてはいけないと考えるアリーゼはその場を動かずに傷を受け入れた。これで少しでも民衆の気が和らげばいいと。そんな考えでいたが、その石はアリーゼに当たる寸前で受け止められる。
誰が止めたのかと目を動かせばそこには別行動だったはずのベルがいた。彼は受け止めた石を地面に落とし民衆を見据える。彼らは突如現れたベルに混乱していた。それはアストレア・ファミリアも同じである。
「……被害を食い止められなかったのは僕たちの力不足のせいです。でも、それでもアリーゼさん達はあなた達を守るために奔走しました。そのことを、どうか理解してください」
注目を浴びていたベルは民衆に向かって深く頭を下げる。その行動にその場にいた者全てが動揺した。民衆だって分かっている。自分たちの行動の意味の無さに。でも、それでもこの苛立ちをぶつける相手を探してしまうのだ。
「あなたは、中央広場で戦っていた……」
民衆の中に中央広場でのベルの戦いを見ていた人が何人かいた。その人たちはベルに頭を下げて感謝の言葉を各々口にした。
「顔を上げてください」と頭を下げてきた人達にベルは言う。頭を上げた後も感謝の言葉を続ける人達に周りの民衆は自分たちの行動を振り返り反省した。なんて意味の無いことをしたのだろうかと。
「あ、あの! お兄ちゃん!」
そんな中で、ベルたちの横から一人の少女が駆け寄ってきた。そちらを見るとクマのぬいぐるみを抱えた女の子がベルの方を向いている。その後ろからはその子の両親らしき人が走ってきていた。
「お兄ちゃん! あの時は助けてくれてありがとう!!」
「うちの子を助けて頂いて、本当にありがとうございます、冒険者様!」
その子は以前リュー達が助けたことのある少女だった。彼女はベルに助けて貰ったのか、両親揃ってベルにお礼の言葉を伝えていた。
ベルはその言葉を聞いて「無事でよかったよ」といい少女の頭を撫でる。その子は気持ちよさそうに顔を綻ばせて受け入れていた。
そのようなものを見せられてしまった民衆は握る石を地面に落として自分の行動を恥じた。
少女は「じゃあね! お兄ちゃん! お姉ちゃん!」とベルだけでなくアストレア・ファミリアにもお礼を言い両親と共に去っていった。手を振り見届けたベルは民衆の方へと体を向ける。
「……必ず、守ります」
そう告げたベルに今度こそ民衆は何も言えない。「失礼します」と頭を下げたベルはアリーゼの方へと向き、「行きましょう」と言った。
アリーゼは民衆へと深く頭を下げる。
「私たちは、あなた達を守ります」
そう言ったアリーゼは団員にホームに戻ることを伝えた。アリーゼはベルの横まで駆け寄り歩き出す。そんなアリーゼについて行くように団員達も進んで行った。
「……そういやアリーゼ、なんであの冒険者が居るんだ?」
「あ、言ってなかったわね。ベルには私達のホームに来てもらうのよ!」
「「「は?」」」
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「お願いを聞いて頂いてありがとうございます、アストレア様」
「いいのよ、気にしないで」
茶髪の長髪をもつ美しい女神、アストレア・ファミリア主神アストレアは目の前のベルを見る。
『星屑の庭』にたどり着いたベル達はアストレアに出迎えられた。事情を話したアリーゼによりベルはアストレアに歓迎されたが、その後にベルの「二人で話がしたい」という願いをアストレアは承諾して現在は神室にてベルとアストレアの二人だけで話をしている。
「それで……あなたはどこのファミリアの冒険者なのかしら?」
アストレアはベルの容姿を観察するが、やはり今までに見たことの無い人物だ。これがLv1などであれば納得するが、アストレアは知っている。ベルがザルドとアルフィアを相手に互角の戦いを繰り広げていたことを。故にアストレアは疑問を持った。ここまでの冒険者で名が知られていないのは有り得ない。
「その前に、僕のステイタスを見ていただきたいのですが。
「……他派閥の私に自らのステイタスを曝け出すの?」
「その方が理解していただけると思いますし、アストレア様なら問題ないです」
ベルの複雑な事情などを理解するためにはステイタスを見せるのが一番手っ取り早い。それに、ベルは一度アストレアに会ったことがある。
フレイヤ・ファミリアとの抗争の前に会った時は、一度しか会っていないにもかかわらず善神だと断言できた。それほどまでにはベルはアストレアを信用している。
「……分かったわ。服を脱いで背中を見せて」
机の引き出しの中から開錠薬を取り出したアストレアはベルの背中に中に入っている液体をかける。主神によりロックされていたステイタスの情報が浮かび上がって来た。他派閥のステイタスを見るのに少しばかり抵抗を覚えたアストレアだが、見なければ始まらないなと思いステイタスを見れば、目を見開いた。
「……
初めに目に飛び込んできたLv7の文字。ザルドとアルフィアを食い止めていたことで予想はしていたが今見ても信じられない。Lv7の冒険者は現在のオラリオには存在しない。【猛者】のLv6が最高だ。
それに【ヘスティア・ファミリア】。そんなもの
「ヘスティア様はまだ天界にいらっしゃるはずです」
アストレアの考えを読んだベルがその事実を伝える。アストレアはその言葉を聞くも、嘘ではない。下界に降りた神の数少ない権能を用いた判断だが、それはそれでおかしい。なぜまだ降りてきていない神の眷属が存在するのか。全知零能であるアストレアはひとつの可能性にたどり着いた。それ以外有り得ないが、それは有り得ないと言える。
「
「……」
だが、その発言で確信を得た。ベルは未来から来たのだと。そう考えれば納得がいく。
「……これは、他人にも神にも言えないわね。こんなの、神に知られればいい玩具よ」
娯楽に飢えている神にとって、逆行者の存在など興味を惹かれるに決まっている。そのままベルを玩具にして遊び回そうとするだろう。
そのアストレアの気遣いにベルはやっぱりこの神は善神だなと思う。自らの主神であるヘスティアとどこか似た雰囲気を感じて懐かしい気持ちになっていた。
「……あなたにひとつ聞きたいわ」
「なんですか?」
「暗黒期は、どうなるのかしら」
正義の神らしい質問。その質問に答えようとしたベルだが、言葉に詰まった。それは暗黒期が終わるきっかけにある。
「……暗黒期は終わります。リューさんによってほとんどの闇派閥が消えたと聞きました。でも」
「アストレア・ファミリアは崩壊します」なんてことは言えなかったベルだが、そのことを察したアストレアは「そう……」と悲しげな表情を浮かべて呟いた。気付いたのだろう。リューが復讐に走ったことを。リューを除くアストレア・ファミリアの末路を。
顔を伏せたアストレアだが、「なら」と顔を上げてベルの眼を見る。
「あなたがここに来たのは、救うためなのかもしれないわね」
そうだ。ここはまだアストレア・ファミリアが生存している時代。ベルは知らないが、アーディは元々あそこで爆発に巻き込まれて死んでいるはずだった。既に過去は改変されている。
「ベル、あなたはこの時代で何を為すの?」
その問いは、重いもので。この答えによってベルの今後の立ち回りが変わるだろう。ベルは十秒ほど考え、口を開いた。
「僕は──みんなを救います」
「……でも、それは」
「『偽善』、ですか」
ベルの考えは変わらない。この手で救えるものがあるのなら、運命を捻じ曲げてでも救おうと。
ウィーネを救うと決めた時に、ベルは『偽善者』になる道を選んだ。それでも救いたいと。そう願うから。
「僕は『偽善者』です。それでもいい。救いたいものが救えるのなら」
「そう……」
その返答に満足したアストレアは微笑んだ。
「なら、まずは偽名を考えないとね」
「偽名……ですか?」
「ベル・クラネルがこの時代に二人存在しているのはかなり危険なことよ。いずれあなたがオラリオに来るのなら、同姓同名は避けた方がいい」
「なるほど」
納得したベルに「何か案はある?」とアストレアは尋ねた。数秒考えたベルは思いついたように口にした。
「──アル」
「『アル』、ね。変に凝った名前よりシンプルでいいんじゃない?」
「はい、ありがとうございます」
自らの二つ名であり、一番好きだった英雄譚でもある『アルゴノゥト』から取った名前とは思っていないアストレアはうんうんと首を振る。
「じゃあ、改めて──アル、あなたにお願いがあるの」
その瞳は真剣そのもので。ベルも思わず背筋を伸ばした。
「こんなこと、子供であるあなたに言うようなことでは無いのだけど──あの子達を、お願いね」
「──はい」
そのお願いに、言われなくてもそのつもりだという気迫で答えたベルに笑みを浮かべたアストレアは「ありがとう」と口にした。そして、思い出したかのようにベルに質問する。
「そういえば、ヘスティアがまだ下界に降りてないのなら、私のところに
ヘスティアが降りてくるのは今から6、7年後だ。ステイタス更新などのためにも、改宗した方がいいのでは? とアストレアは思ったのだが。
「あ、いえ。僕まだ改宗できないんです」
「あら、そうなの? ヘスティアのところに改宗してからまだ一年経ってないのね」
「? いえ、僕まだ冒険者になってから一年経っていないので」
「──ん?」
アストレアの思考が停止したのは間違っているだろうか。いや、間違っていない。ベルが異常なだけだ。
(……あ、そういえば僕、異常なんだった)
周りに何度も言われてきたことを再認識したベルは「あはは」と未だに思考が止まっているアストレアに笑うことしか出来なかった。
「そういえば、あなたの嘘は神に通じるそうよ」
「え"」
【
・神に嘘が通じる。
・戦闘時の『敏捷』と『器用』のアビリティに高補正。
【時ノ旅人】はベルはステイタス更新をしていませんが時を逆行した時に何故か発言していた新スキルです。
ご都合主義です