ヤバい奴らを纏められるのはやっぱりヤバい奴しかいなかった件 作:ジューク
「…ふぅ」
一通りの事務作業がようやく終わり、パソコンから顔を離したウマ娘…シンボリルドルフは横で仕事をしていたウマ娘…エアグルーヴに声をかける。
「エアグルーヴ。私はそろそろトレーニングがあるから抜けさせて貰うぞ…いや、手伝おうか?」
「いえ、後は私がしておきます。まったく…ナリタブライアンはどこへ行った…?」
「やれやれ…」
彼女のサボり癖も相変わらずだな、と考えながら、シンボリルドルフは更衣室でテキパキとトレーニング用のジャージに着替え、チームの部屋が並ぶ部室棟を歩き…一つの扉の前に行き着いた。
扉には『チームカオス』の他に『混沌注意』や『入るな危険』、『自己責任』と書かれた紙が貼られている。モラルの欠片もないが、当のトレーナー本人が気にするなと言っていることを思い出し、シンボリルドルフは扉を開けた。そこには…
…何故か七色に発光しながら頭をブンブン何かの音楽にノリノリになっているかのようにヘドバンするという狂人のテンションでパソコンに向かい合うチームカオスのトレーナー、混山堅斗。
「おぉいトレーナー!マグロ捕ってきたから寿司か鉄火丼頼むぜ~!」
…何故か目算で90キロはあろう巨大なクロマグロを肩に背負って扉の反対側の窓から入ろうとしているゴールドシップ。
「ふぅむフム…ではトレーナー君。次はこっちの『目が醒める薬』を飲んでみてくれ」
堅斗に何やらフラスコに入れられた紫色の粘着質を勧めるアグネスタキオン。
「うぇ"へへ…まぁた良いウマ娘ちゃんの写真が撮れちゃいましたぁ…」
明らかに堅斗とは別のベクトルで顔がキマっている状態で何やら犯罪臭漂う写真を見ているアグネスデジタル。
「寿司か鉄火丼…!トレーナー。早速頼む」
ゴールドシップが持ってきたクロマグロと、それから調理されるであろう料理を想像し、涎の水害を口から少しずつ漏らしているオグリキャップ。
「ト、トレーナーさぁん…何かがポストに届いてましたぶぇっ!?」
堅斗に何かの封筒を渡そうと小走りし、ずっこけて地面に顔を激突させたメイショウドトウ。
「あらあら、大丈夫ですか~?」
そんなメイショウドトウをバブらせようとしているスーパークリーク。
「マスター。ミッション『ウォーミングアップと柔軟』が完了しました。指示をお願いします」
カオスの祭典の真っ只中でもブレずに堅斗の指示を待っているミホノブルボン。
扉の先には普段のチームカオスの光景が広がっていた。
シンボリルドルフは一瞬、そっと扉を閉めようとしたが、すぐに開け直して堅斗に話しかけた。
「トレーナー君。トレーニングを始めるぞ」
「フォオオオオオオオ…お、ルドルフか。取り敢えずウォーミングアップと柔軟終わったらまた来てくれ。ブルボンと一緒に指示出すわ。ブルボンはルドルフの柔軟のサポート頼む。ゴルシは棚から捌き包丁出しとけ。オグリはテーブルと皿と体液受けの布の用意頼む。クリークは棚から氷嚢とティッシュ出してドトウの鼻塞いで氷嚢で冷やしとけ。タキオン、薬はこれ終わったら飲む。デジタルはさっさとルドルフ同様ウォーミングアップと柔軟してこい以上」
変なテンションから一瞬で戻った堅斗は聖徳太子よろしくパソコンしか見ていなかったのに、まるで魚眼レンズでチームカオスの部室一帯を視認していたかのように的確な指示を出す。他のメンバーもその指示に従ってすぐに行動に取りかかった。その様子を見ていたシンボリルドルフは、メンバーが一人いないことに気づく。
「…おや?テイエムオペラオーはどうした?」
「今日はオフ。インスピレーション来たっつって台本書いてると思う。多分」
「そうか…わかった。では行ってくる」
「桶丸水産。オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、オラァァ!!!」
そう言って、再び堅斗は奇声を上げながらパソコンと格闘し始めた。
混山堅斗。
今の会話からある程度(?)はわかるだろうが、所謂『頭が逝った男』である。しかし、それは様々なベクトルに、と付け加えなければいけない。
普段からある時は一人で、或いはゴルシと組んで学園内で奇行に明け暮れているが、仕事はキッチリを超え、言ってないところまで完璧にこなし、一見パソコンしか見ていないながらも死角にいる者にまで的確な指示を出し、料理は家庭料理どころかフルコース料理を作り、果てはクロマグロのような巨大魚を一から捌ける。更に本人命名の『
では普段から外面モードでいろよ、と思うだろうが、彼はイカれた方が素なので仕方ない()
「トレーナー君。終わったぞ」
「URYYYYYYYYYYYYYY!!!!!よし完了。じゃタイム測定しに行くぞ~」
シンボリルドルフがウォーミングアップと柔軟を終わらせて再び来たのとほぼ同時にパソコンとオラ無駄のスタンドバトルを終わらせた堅斗は、ストップウォッチを両手に2個ずつ、計四つを器用に持ち、なぜか高速ムーンウォークでグラウンドに向かっていった。あまりのスイッチの切り替え速度に、シンボリルドルフは額に若干汗マークを浮かばせながら堅斗に続いてグラウンドに出た。
「………フム」
トレセン学園内。その中枢に位置する豪華かつ落ち着いた部屋では、なぜか頭に黒猫を乗せた少女…この中央トレセン学園理事長である秋川やよいが資料に目を通していた。そして何かを思い出したように顔を上げ、声を出す。
「質問ッ!たづな、彼の作ったこの活動資料だがまた色々とおかしい点はないだろうか!?」
「…まぁ、彼らですから」
既に諦念したような仏頂面で、緑一色の服を着た女性…理事長秘書の駛川たづなは答えた。
活動に関する資料の内容としては、主に校内でゴルシと飛び入り参加型阿波踊りを開催して、
「はい………はぁ」
普段のおかしな言動さえなければ完璧なのに…そんなたづなの思いは虚空へと消えていった。
そして、その時に限って堅斗が学園内にいなかったことに、再度「ムッキィーーー!!!」と姦しい声を上げるやよいの姿が見えるのは、もう少し後である。
ちなみにその時堅斗は…
結局部室が汚れたら嫌だという理由で、仲の良い居酒屋でメンバーを全員集めてクロマグロパーティーをしている真っ最中だった。
実際にそうなったレースがあるとか知らん()
また気が向いたら出す(と思う)