愛と呪いは紙一重   作:ランハナカマキリ

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家入黎人は見つけたい

転校初日

 

黎人の姿は学園内の中庭にあった。彼の視線の先にあるのは、生徒達の真上に浮かぶ蝿頭や三級呪霊の群れ。

 

「赤点、どっぢゃっだぁぁぁ」

 

「とうと、尊いぃぃぃぁぁ""!!」

 

 

 

「ここは魔境か?」

 

ハロウィンの渋谷と見間違う程の呪霊の群れが、彼方此方に蠢いている。正直に言うと気持ち悪い。比叡山や原爆ドームに匹敵する呪霊の濃さだ。

 

それもそうかと思う。この秀知院学園には嫉みや憧れといった様々な感情が向けられる。故に呪霊が大集合するのだ。そう、まるで集合フェロモンに群がるゴキブリの様に・・・

 

すると目の前を歩く少年に目が行く。ヘッドホンをかけて気だるげな雰囲気を放つ彼の背にはかなりタチの悪そうな呪霊が憑いていた。

 

「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。」

 

複眼のようについた無数の目と蜘蛛のように関節が折れ曲がった腕。見るだけで嫌悪感を引き立てる。

 

「・・・キッショ。」

 

呪霊を片手で掴み、一気に反転術式を送り込む。反転術式とは、負の感情である呪力の反対。正の感情を使う術式。簡単に表すなら、

 

(-1)×(-1)は1

 

負の感情を掛け合わせることで、正の感情に昇華させる。これには治癒能力だけでなく、アウトプット出来れば呪霊を消滅させられるのだ。

 

ポロポロと崩れていく呪霊を投げ捨てて彼は校舎に向かう。

 

 

 

「え、今キッショって言われた?」ガーン

 

彼『石上優』を知らない間にディスったことを彼はまだ知らない。

 

△▲△▲△▲△▲

 

 

放課後、既に時計は午後6時を差し人影の無い廊下を黎人は歩いていた。

 

 

闇より出て、闇より黒く

 

 

 

その穢れを、禊ぎ祓え。

 

帳を下ろし、学園内の呪霊達を炙り出す。帳を下ろした途端、窓ガラスやロッカーの隙間から呪霊が滲み出てきた。絵の具のように液状なものから、蟻のようなものまでサイズも見た目も様々な呪霊が現れる。

 

黎人は片手で印を作り、自身の式神の名を唱える。

 

 

夜刀影(やとかげ)

 

 

彼の影から、白と黒の大蜥蜴が現れる。その大きさは大型犬ほどあり、額や背に彫られた呪印がおどろおどろしい。2体は黎人の方に顔を向ける。

 

「喰っていいぞ。」

 

指示を出すと同時に2体は呪霊に襲いかかる。黎人自身も短刀を取り出し呪霊を始末し、直ぐに片は付いた。黒い夜刀影は呪霊の頭部を噛み砕き、白い方は黎人の方に歩き寄り差し伸べられた彼の手を舐める。

 

 

「・・・にしても何処にあるんだ?例の呪物と呪具。」

 

彼が探しているのは

 

三種の神器の1つ『草薙之剣』

 

壇ノ浦の戦いで紛失したとされたが、大正時代に回収されていた。だが戦後の動乱で再び行方が分からなくなり、捜索されていたのだが今年の初め草薙之剣がこの学園に保管されていた事が判明したのだ。

 

この剣は呪具としては特級相当の威力を持つ。だが1番の特性は、『認識の消滅』である。この剣は、斬りつけた相手から特定の認識を奪う事ができる。

例えば相手から"黎人への認識"を奪うと敵は黎人を認識できなくなるのだ。当たれば勝ち、それの具現化のような呪具なのだ。しかも使用者にも作用する事が出来るのでかなり強い。"他者からの認識"を奪えば誰からも認識される事がないからだ。

 

そんな物を野放しにはできないので、黎人が送り込まれたのだ。因みに確保したら封印又は皇居で保管する事が決定されている。

 

そしてもう1つ、彼が探しているのは特級呪物『八岐大蛇の骨』

 

8つの首、8つの尾。水を操る水の神の化身。非術師にも広く知られる日本の大妖怪の1つ。両面宿儺の指に次ぐ特級クラスの呪物である。かつて安倍晴明に封印され、骨だけになった特級呪霊。戦国時代に何者かに持ち出され行方不明となっていた。

 

 

 

そして何故かこの学園内に保管されている事が発覚したのだ。

 

 

長年術師が総力を上げて探し求めていた2つの呪具と呪物、これらが同じ場所にあるのは偶然だろうか、それはまだ分からない。

 

 

「見てる、見てるよぉ?」

 

「・・・資料室の方を調べたら、図書室の方に行くか。」

 

階段の上から降りてくるナメクジに人を掛け合わせたような二級呪霊に小刀を突きつけながら黎人は階段を登る。彼が駆け出した途端、夜刀影が呪霊目掛けて牙を剥いた。

 

▲△▲△▲△▲△

 

潜入から1週間後

 

「見つからない・・・」

 

妙だ。呪物どころか呪具も見つからない。特級相当なら気配だけでわかるはずなのに。考えられるパターンは2つ、1つは封印されていて呪力の感知ができない。もう1つは誰かが持ち出した。そもそも無い可能性だってある。

 

「・・・どうしようか。」

 

一旦別の術師の応援を要請する手もある、だが今は呪術師も繁忙期。呪物探しを手伝うほど暇な連中なんて・・・

 

 

 

いたな。

 

東京都立呪術高専"静岡"分校2年生、黎人の同級生であると同時に呪術高専の中で1番の問題児共・・・

 

準一級術師『南雲晶』

普通に悪口が辛辣過ぎて対人関係が壊滅的。

 

二級術師『篠崎要』

天然、なのに口より先に手が出る。術式の影響で自傷癖あり。

 

 

 

 

いや、アイツらに来られたらこの学校が魔境から地獄になる。首輪を外した狂犬を放つようなものだ。絶対に嫌だしそんな事態にさせたくない。むしろさせるつもりはない。だが、五条悟ならどうする?

 

『えーまだ見つからないの〜?じゃあ晶と要も行かせよっと。その方が効率上がるし〜』

 

面白そうじゃん(・・・・・・・)(笑)』

 

 

 

(・・・クソ教師が。)

 

絶対に見つけなければならない。その為なら腎臓の一つや二つくれてやってもいい。ストレスで胃に穴があく事態だけは避けなくてはならない。平穏な生活のために、何としても見つけ出さなければ・・・

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えながら、噴水前のベンチに座る。

 

 

すると

 

「あ、」

 

「あ。」

 

かつて出会った気だるそうな少年が居た。

 

 

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