「噛みちぎれ。」
猛顎が雄叫びを上げながら玲奈に齧り付く。齧り付いた瞬間、パキパキという音がし、猛顎の顎から血が噴き出す。玲奈がそのまま真っ直ぐに黎人に突っ込んでくる。
『滅塵術・抹消の大鎌』
『死ねェェェ!!』
人の頭蓋骨を模った大鎌を振り翳し、黎人に向けて振り下ろす。
「死ね、ね。そっちに返すわ。」
グサッグサッグサッ!!!
肉体の肉と骨を貫くーー
玲奈の体は列状に大きな穴が空き、そこから大量の血が噴き出した。
『ぎぃ、きゃ、は?』
「猛顎の物理攻撃は防御不能、しかもいつ肉体にダメージが入るかは自分で決められるんだよ。しかもその傷は、俺の反転術式じゃないと治せない。あとそれからーーー」
「ーーグォォォォォォ!!!」
「ーーそいつの攻撃は、俺の術式と合わさって
空を切り、玲奈の脇腹に打ち付けられた大樹の幹のような尻尾、凄まじい衝撃と共に黒い雷光がほとばしる。
黒閃を経験した現京都呪術高専1年担任・東堂葵曰く
「その現象を起こすのは世界をも捻じ曲げる全能感。
打撃との誤差、0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間。
空間は歪み、呪力は黒く光る。」
その
『ーーいぎぃゃぁぁァァァア!!!』
紫色の血を撒き散らしながら、玲奈は空性結界を突き破り何度も何度も結界内に現れては結界壁にぶつかり突き破るを繰り返した。黎人の術式は、あらゆる現象を操る。その術式対象は自然界の現象だけでなく、呪術的な現象だって操ることができるのだ。
(いくら憑依体の受けたダメージは呪霊側にしかいかないとはいえ、行きすぎた攻撃は両者にダメージが通る。出来るだけつばめにダメージが入らないようにしねぇと。)
黎人は心の中でそう決めていた。
(あと一撃だけ、攻撃を喰らわせる。もし相手が領域を展開したらこっちも領域を展開しないといけない。)
黎人は満身創痍の玲奈に肉弾戦を仕掛ける。
目に止まらない勢いの拳。それを全て受け止める玲奈。
「っ!!」
気づけば黎人の拳から呪力と表皮が無くなって、血塗れの痛々しい赤い姿になっていた。彼女が持つ滅塵術の粉塵は、対象の肉体や呪力を消滅させる。その粉塵を手に纏い、黎人の拳を受け止めたのだ。
『死ねっ、死ねっ!!後悔しろォォ!!!』
再び振り上げられる大鎌。
「グァァァァ!!!」
後ろから大きく口を開ける猛顎。玲奈は鎌の持ち方を変え、粉塵を纏った刃を振り下ろした。彼女は宙で前転、まるで風車のように素早く風を切った。
猛顎は真っ二つに切られ消滅、いくら破壊されないとはいえ制限はある。一撃で破壊されると、それから一週間再顕現出来なくなってしまう。
そして黎人の顔から胴体にかけて、スパッと血が噴き出した。
(ーーーークソッ。手加減するのに意識を奪われちまった!?しかもこの傷、反転術式の治りが遅い!!しかもどんどん傷口から崩壊していく!!)
黎人の誤算。
1つは相手の呪力特性を見抜けなかったこと。彼女の呪力特性は粉塵と一緒で当たった箇所からどんどん崩壊させる。
2つ目は手加減することに気を取られすぎたことだ。だが、この時点で玲奈も誤算をしていた。これはこの勝負の勝敗を左右するものだった。
「ーーー手加減無しだからな?」
玲奈の誤算は、自分の実力以上の相手を敵に回したことだ。
黎人の周囲が淡く青色に光り、凄まじい突風が吹き荒れる。日本には激しい突風で腕や足が切れることを『鎌鼬』という。
「
風が肉体を打ちつけるたびに、玲奈の服や肉体がみるみるうちに削れる。そして首が掻っ切れ、重要な血管のある部位がさらに掻っ切られる。
『ぐーーなー舐める、なーー「舐めてんのはテメェだろ!!」ぐふっう!!?』
黎人の拳が玲奈の腹と胸に突き刺さる。そしてーー
「黒閃!!」
二度目の黒閃、からの回し蹴りの踵落とし。
「黒ッ閃!!」
三度目、からの顔面への拳の一撃。
「黒ッッッ閃ッッ!!!」
四度目・・・の黒閃玲奈が顔面で受け止めた。血を流しながら、彼女はニヒルに笑うそして、左手と右手を合わせ与願印と施無畏印の構えをとる。
(ーーまさかっ!?)
黎人もすかさず、法界定印の手印を結ぶ。
『「領域ーー展開ッ!!」』
重なる領域、制するのは誰か!?