愛と呪いは紙一重   作:ランハナカマキリ

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設定

①東京都立呪術高等専門学校・静岡分校
2年生3人、3年生2人

②呪術名家

御三家を除く強力な呪術師の家系。
呪言の狗巻家をはじめ、蟲毒の蟻ケ谷家、塵滅術の南雲家などが主な例。







子安つばめは過去を明かす

 

 

「・・・私が4歳の頃、両親と兄が海外に行く用事が出来て私は日本に残ってたの。その時、玲奈さんは私の親代わりになってくれたの。」

 

つばめは、その玲奈という女性をすごく慕っていた。当時大学生だった玲奈は学業と私生活の合間に、毎日1日も欠かさずつばめの元に会いに来て面倒を見てくれたのだ。元々母子家庭だった玲奈は基本的に家でひとりぼっちだったため1人でいる怖さや寂しさを誰よりも分かっていた。明るくて、とても優しい女性だった。

 

『つばめ様、私がいますからね!』

 

『う、うん!』

 

両親が帰ってきてからも関係は続いた。彼女が6歳になる頃には、もう家族の一員のようになっていたのだ。

 

 

 

つばめは彼女が読み聞かせてくれる本が好きだった。特に彼女のお気に入りは結婚式に関する絵本。白いウエディングドレスを着た花嫁が母親とバージンロードを歩く姿は、当時のつばめには美しく見えた。

 

『ねぇ、れいなさーん。』

 

『なぁに?』

 

『どんなひとが、はなよめさんとあるけるの?』

 

『そーねぇ、例えば花嫁さんが1番ありがとうって言いたい人じゃないかしら?』

 

 

 

 

 

 

『じゃあ〜!わたしがはなよめさんになったら、れいなさんがいっしょにあるいて!!おねがーい!!!』

 

『あらあら、いいですよ。指切りしましょうか!』

 

 

『『ゆびきーりげんまん、ウソついたらはりせんぼんのーます、ゆーびきった!!』』

 

 

 

 

 

その次の日、つばめは小学校の入学式に玲奈や両親と共に向かっていた。校門の前、赤いランドセルを背負ったつばめは玲奈と手を繋いでいた。

 

その日、玲奈はつばめにあるものを渡した。

 

 

『はいこれ、入学のお祝いよ!』

 

それは鳥の形をした、小さなキーホルダーだった。

 

『これはね〜私がつばめ様くらいの時に、お母さんからもらったものなの。大事にしてね?』

 

『うん!ありがとう!!』

 

それをランドセルに付けてもらい、喜んでいると信号の反対側から友達が手を振っていた。

 

 

つばめは、早くこのキーホルダーを見せてあげたいという思いでいっぱいだった。周りを見ずに走り出し、歩道を渡り切ろうとしてたその時。

 

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

誰かに背中を強く押され・・・

 

 

 

キィィィィィィィ!!!!

 

グシャ!!

 

 

アスファルトがタイヤを削る音の後に、何かが砕ける音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁ!!!?」

 

「おい、誰か救急車!!!」

 

「バカ、よく見ろ!!助からねぇよ!!!」

 

 

 

 

「体が、千切れてんだぞ!!!」

 

 

 

 

 

「・・・え?」

 

振り返ると、そこには玲奈だった(・・・)肉塊が転がっていた。

 

上半身と下半身の間が千切れ、頭の上半分が潰れている。

 

「玲奈、さん?」

 

顔を青くして駆け寄ってくる親の姿も、慌てふためく人たちも見えなかった。ただ心から慕っていた人の残骸を、見つめていた。

 

 

 

『つ、ばめ様ぁ"・・・』

 

 

すると、肉や血の塊の中から声が聞こえた。次第に声は大きく禍々しくなり、とうとう子供ほどの大きさの異形が卵の殻を破るように、肉塊から出てきた。

 

『私が・・・い"ますからねぇぇぇえ"!!』

 

 

 

こんなのは、玲奈さんじゃない。そう否定できたらまだ楽だったかもしれない。だが、幼いつばめはその口調に玲奈の面影を感じた。いや、感じてしまったのだ。

 

 

 

ゆびきーりげんまん、ウソついたらはりせんぼんのーます、ゆーびきった!!

 

 

遠い正気の奥で、昔交わした指切りが聞こえた。

 

 

 

△▲△▲△▲△▲

 

 

 

 

放課後、黎人はつばめと屋上の柵にもたれかかっていた。誰も来ないように鸞に見張らせている。黎人はポケットからタバコの箱を取り出した。

 

「ちょっ、タバコはだめだよ!?」

 

「俺国籍コロンビアなんで(嘘)。コロンビアは15歳から喫煙しても問題ないです。」

 

「でも、ここ日本だし学校だよ!?」

 

「バレなきゃ合法なんですよ、母がそう言ってました。・・・口止めに、一本吸います?」

 

「いや、いらない!!体に悪いでしょ!?」

 

「いや、さっき俺が手を生やしたでしょ?あれの原理で肺を毎日新しくしてるんで健康維持できます。」

 

つばめは口で断っていたが、結局一本手に取りそれを指で弄る。黎人はそれを横目で見ながら本題に入った。

 

 

「日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10,000人を超える。そのほとんどが人の肉体から抜け出した負の感情“呪い”の被害だ。」

 

あの呪霊『南雲玲奈』について聞いた後、一旦授業を受けた後に屋上で会う約束をしていた。

 

「呪いに対抗できるのは、その身に呪力を宿す呪術師だけ。俺はその呪術師を育成する都立呪術高等専門学校静岡分校から派遣された。」

 

「・・・玲奈さんの事で?」

 

「いえ、俺が派遣されたのはこの学校にある呪物と呪具の捜索と回収の為だ。アンタと玲奈さんとは関係ない。」

 

簡単にここに来たあらましを伝えた後、彼女は口を開いた。

 

「そうなんだ・・・ねぇ、呪いを祓うって言ってたよね。てことは玲奈さんも、祓われるってこと?」

 

「可能性は捨てきれませんね。」

 

「・・・・そうなんだ。」

 

 

 

 

「私ね、好きな人がいたの。優しくて、とても明るい人。」

 

「・・・。」

 

「でも告白しようとした時、玲奈さんが彼を本棚の下敷きにしたの。その際で彼、まだ病院に居て、私と関わると碌なことがないって言われちゃったの。だからもう、誰にも傷ついてほしく無いから、誰も好きにならないようにしてきた。」

 

「・・・・へぇ。」

 

「・・・今思えば私、他人に玲奈さんを求めちゃってるんだと思う。だから、玲奈さんは・・・それはいけないんだって言いたくて、そういう人たちを私から遠ざけてるのかな・・・」

 

 

 

 

 

黎人はタバコに火をつけながら、遠い夕日を眺める。

 

「これはとある呪術師の言葉だけど、『愛ほど歪んだ呪いは無い』。」

 

その言葉に、つばめは唇を噛みながら涙を堪える。きっとその通りなのだろう。死んでも尚、自分の面影を他人に求める主人を、道を間違えないように周りの人間を遠ざける。それが誰のためになるのかは分からない。でも、そこには彼女なりの思いやりがあるのだろう。

 

「・・・その、呪術ってのを学んだら。玲奈さんの、呪いを解けるかな?自由にさせてあげるかな?」

 

こちらを見ないで呟くつばめに、黎人は紫煙を吐きながら、人として、呪術師としての言葉をかける。

 

「・・・・分かりません。ですが、子安つばめ先輩。貴女にかかった呪いは、使い方次第で人を殺すこともできるし、救うことだって出来る。」

 

 

 

 

「もしアンタが自分にかかった呪いを解いて、彼女を救いたいのなら、俺がアンタに呪術を教える。」





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