『SPY×FAMILY』×『Lupin the Third』〜輝く宝石はスパイと泥棒を呼ぶ〜 作:VOSE
…マクラルーン家の屋敷の中を、1人の執事がコツコツと歩いている。
黒髪はきっちりと整えられ、いかにも強そうな彫りの深い顔、着ているスーツはバッチリと決まっており、格闘家でもやっていたのかというくらいの肩幅が威圧感を醸し出していた。
そんな男を、ただ1人、違和感を持ってコソコソと尾行していた者がいる。
ロイド・フォージャー…あるいは『黄昏』…
胸騒ぎを感じたロイドは、その執事をずっと追っていたのだ。
(…やはりマクラルーン家の屋敷…これだけ歩いても2度同じ場所は通ってない…)
ここまで幾分か歩いていたロイドは、マクラルーン家の屋敷の膨大さを改めて実感していた。
(…しかしこの男…何をしているんだ?ずっと何かを探している様子なのだが…)
ロイドがそう思ったのは、執事がずっとキョロキョロと何かを探すように辺りを見回していたからだ。
(…まぁいい…とりあえずついて行こう…)
しばらく執事は館内を歩き回り、ようやくある部屋の前に止まった。
(…何をするんだ?こいつ…)
ロイドはさらに訝しんだ。
執事の男は部屋の前でキョロキョロと辺りを見回し、ふぅと、ドアの前で息を吐いた。
(…開けるのか?)
ロイドが男の動きを読んだその時だ。
「そこにいるのは誰だ?」
男が叫んだ。
ロイドに言っているかのように叫んだ男はただじっと、ドアを見つめていた。
(バレた…だと!?くっ…こうなったら…)
ロイドは仕方ないとばかりに、隠れていた角から姿を現した。
「いやーすみません。ちょっと怪しいと思ってしまって…」
「どういうことですか?」
「私、精神外科医なものでして。精神は行動によく出るものですから、あなたを見たときに怪しいと感じたもので」
「そういうことでしたか。でしたら、ここはお引き取りを…」
男がロイドを追い払おうとして言い放ったその時だった。
「こちらからもお引き取り願おうか」
ロイドの後ろから声が聞こえてきた。
声の主はショーンである。
そのショーンの後ろには、多くの執事がずらりと並んでいた。
「ショーンさん!?」
ロイドはショーンが現れたことにひどく驚いていたが、当のショーンはロイドを気にも留めず、目の前に対峙している男をにらんでいた。
「…ここまで我々の執事に成りすますとは、さすがだな…」
ショーンは不敵な笑みをにやりと見せた。
「何のことでしょうか」
男は白を切るつもりで声を上げたが…
「駄々をこねても無駄だぞ。今先ほどうちの者が、おぬしが化けている執事を発見したぞ。そろそろ正体を見せたらどうかね」
ショーンは見透かしているかのようにしゃべった。
「ちっ…しゃあねぇなぁ…」
男はバレたと確信し、声真似をすぐに解いた。
(やはり、変装していたか…)
変装の名人でもあるロイドの予想は当たっていた。
しかし、ロイドはこの声の主を頭の中で巡らすも、ヒットする人がいなかった。
しかし、ショーンは男の正体をも見透かしていた。
「さてと…何用かな?
「おぉおぉ。もうそこまで気づいていたのか、これは参ったぜぇ」
ショーンの答えに、男…に変装しているルパンがいつものようなおちゃらけた様子で答える。
(ルパン三世だと!?それじゃこいつが…『
ロイドは男の正体がルパン三世だとわかるや否や、周りに悟られない程度で臨戦態勢に入った。
ルパンはその気配に気づいてか気づかずか、ロイドの方をチラッと見た後にすぐにいつもの様子で話を始める。
「いやぁ、ちょぉっとばかし、ある物をいただきに来たんだけどな?今回は諦めようかなとね?」
「ほう?それなぜ?」
ルパンが珍しく盗むことを諦め、それに興味を持ったショーンが問いただした。
するとルパンは、いたずらっ子のような様子を見せて…
「だって、この部屋、
ショーンに問うように言った。
その一言を聞いたショーンは…
「んなっ!?」
驚いた様子でドアへと駆け寄った。
ショーンが持っている鍵を鍵穴入れてくるっと回すも、鍵が開いた様子はない…というよりも、そもそもドアが開いているという状態である。
ショーンは慌ててドアを開けて中に入った。
部屋の中はショーンの書斎になっており、数々の本が本棚に並べられていた。
その本棚の一角は、隠し金庫があるのだが、その金庫が開けられている様子が見てとれた。
「金庫がっ!?」
ショーンが慌てて中身を確認すると…中は空だった。
「くっ…貴様ァッ!」
ショーンが先ほどの落ち着いた様子とは全く逆の、ひどく混乱して怒っている様子でルパンを睨む。
「おおっと?俺は何もしちゃいないぜ?ここに来た時にはすでに開けられてたからな?」
ルパンはショーンの睨みをものともせず、いつものような口調で話す。
「さてと…俺様はそろそろ抜けるとすっかな。ここにお目当てのお宝がないってことがわかったし」
ルパンはそう言うと、服に隠していた煙玉を部屋いっぱいにばら撒いた。
「っ!?伏せろ!」
それを爆弾と勘違いしたロイドはすぐに大声で言った。
ショーンと周りにいた執事達は咄嗟にしゃがみ身構えた。
そして煙玉から煙が撒かれると、瞬く間に部屋一帯が煙まみれになった。
「くそっ!前が見えねえ!」
ロイドやショーン、執事達は口元を抑えながらあたりを見渡すと、どこからか風が強く吹き、煙をすぐに払ってくれた。
その風の正体は…ヘリコプターである。
そして、ヘリコプターから垂れているハシゴには、猿顔で赤いジャケットを着た男が捕まっていた。
「ルパン三世!貴様どこへ行く!」
ショーンはルパンに強く言いながら近づこうとするも、ヘリコプターの風で近寄れなかった。
「さぁ、そんなの教えられるわけないだろ?まぁ、今回はこのくらいにしておくさ。それじゃ、あ〜ばよ〜」
ルパンがそう言うと、ヘリコプターはグッと上昇し、館との距離を取った。
「待て!ルパン三世!」
ショーンは風が止んだ後にルパンを追うも、遠く離れたルパン逃げられてしまった。
(ルパン三世…あいつが…『
ロイドは強く拳を握って、ルパンの後を目で追ったのだった…
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…ハシゴでヘリコプターの中に入ったルパンは、隣にいた操縦している男に声をかけられた。
「…ルパン、目当てのものはあったか?」
次元大介である。
「いんや。誰かに先越されたみてぇだな」
「あそこにはなかったということか…しかし、『
「あぁ。間違いなく、
ルパンはそう言うと、ポケットからタバコを取り出し、火をつけて吸い始めた。
「それともう一つ聞きたいんだが…」
次元はふと、ルパンの顔をチラッと見て話し始めた。
「なんだ?」
「…お前、あそこで誰と会った?」
「どういうことだ?」
「いや、お前が別のところでワクワクしてると思ってな」
「お?そうか?まぁ…そうだな…」
ルパンはふと、ある男の顔を思い浮かんだ。
自分の変装を見破った男…
「確か…ロイド・フォージャーだっけかな…いや…『黄昏』か…」
ルパンは面白いことになりそうだと、不敵な笑みをつい浮かんでしまった。
「全く…浮かれるのもいいが、そろそろ下を見たほうがいいじゃないか?」
「下?」
ルパンがふと、下を覗くと…
「待て〜!ルパ〜ン!今度こそ逮捕してやる!」
大勢のパトカーを連れた銭形が追いかけていた。
「おっと、いっけね。とっつぁん、もう来てたのか…次元!頼むぜ!」
「任せとけって」
次元の操縦するヘリコプターは街中を自由に、そして逃げるように夜空へと消えていったのだった…
いかがでしたでしょうか?
もしよろしければ評価等よろしくお願いします。
では次回、お会いしましょう。