そしてもう一つ・・・
「うわぁ・・・これヤバくない奏?」
「あぁ、まぁ・・・ヤバいな」
「それで、お前は動かないのか?」
「えぇ、動かないわ」
奏が私の近くに来てから、ノイズを片付けつつ結果を見守る事にした
再起した三人、風鳴翼、立花響、雪音クリスの三人がエクスドライブを発動して圧倒していた
私の発言通りになるだろう、殺さず生かさずが発言の主旨だが
「さて、と」
ボロボロのフィーネを支えながら立花さんが帰ってくる
しばらく話した後、フィーネは武器として使っていた鞭を・・・
「なっ!?」
「月の欠片を落とすッ!!」
そこから先は聞かなかった、月の欠片を見て、呟く自分の声しか聞こえない
「ふざけるな・・・!!」
怒りよりも呆れが上回った、そしてその直後、やはりコイツに死はぬるいと考える
そして生かす方法を考える、今のフィーネは半分人外だから、これを人に戻せればいい
方法は頭に浮かんでくる、それをやればどうにか出来ると確信して・・・
「このバカ女がぁッ!!」
ルガーランスを首元に据え、睨みつける
「やはりアンタには死すら生温い!!生かさず殺さずいたぶってやる!!」
「なっ・・・あ、あぁぁぁぁぁ!?」
至近距離で流れ込む力に困惑しながら叫ぶ、そして・・・裸ではあるが死ぬことはなくなった
砕かれかけていた肉体の修復までも完了し、人間として生かされ続けるという生き地獄を味わうことになったフィーネは憎悪の目で私を見てきた
「貴様・・・!!」
「殺したければどうぞやってみたら?遊んであげるわよ」
「くっ・・・!!」
今のフィーネはただの人間、特別な力も何もない普通の人だ
そんな相手が武装ガチガチの人間に挑んだところで意味がないし、フィーネもそれは分かっているのか屈辱に怒り狂っている
「だいたい、貴女ひとつ忘れていないかしら?私の名字は衛宮よ、父親は貴女の同期、母親はひとつ上の先輩。貴女とも会ったことがあるわ、2度ね」
「あの時の子供が、今こうして牙をむくか!!」
「もし当事者が両親だとしても、二人は貴女を救おうとするわ。優しかったから」
殺したのはお前だろうが。とは言わず、二人ならこうしたと告げる
「だから私も殺さない、償いが終わっても死ねると思うなッ!!」
そう言って、飛び立とうとする立花さんの足を掴んで地面に下ろす
「アレの破壊は私がやるわ、みんなは飛ばされないように気をつけて」
「なぁんて言わせるかよアホンダラ、お前も休んでろやカナタちゃんよ」
「森谷さん・・・」
後ろから私の頭を叩いて出てきたのは森谷さんだった、いつものように底の見えない不敵な笑みを浮かべながら空を見ている
いや、正確には月の破片を見ているのか・・・
「ざっと静止軌道の人工衛星位の距離か・・・うん、行けるな」
「行けるって・・・地上から迎撃する気か!?」
「あぁ、出来るぞ・・・アヤカッ!!」
「一番近い観測点に移動済みよ弾着観測は任せて、キアナもOK?」
「いいよ、3点観測出来る」
森谷さんはその声を聞き、何かを出してきた
それが展開を完了した時、私達・・・特にフィーネはその正体を知り驚愕する
「それはまさか、陽電子砲か!?」
「その通り、超長射程砲撃専用陽電子破砕砲、ローエングリン。それがコレの名だ」
そして、森谷さんが話してくる
「そこにいたらあぶねぇぞ、俺と中に入るか、カ・ディンギルの跡地の中にいるなりしてろ」
全員が中に入る選択をしたのは言うまでもない
中の方はかなり広く作られていた
「よし、エネルギー充填完了。観測データ受信同調良好、対象物距離確認OK。」
レーダー画面には砲システムの射程データが表示されており、破片は既にその中に全て入っている
出力は最大までセレクトされている
「よし、では吹き飛んでもらおう・・・ローエングリン、発射」
画面には白い光の線が走った、一時的な問題なのかすぐに回復する
残り2ヶ所からの映像も確認する、破片は跡形もなく消滅していた
実際には小さな欠片になっているんだろうが、半径は数mを超えなければ地上への着弾もない為安全だろう
その科学力に目を剥く皆と対象に私は・・・コレ、明かして大丈夫なのかな・・・?と思っていた
なにせ陽電子の兵器運用は机上の空論とされているものであるからだ
それが実用可能であると示してしまえば・・・間違いなく面倒な状態になるはずである
「さて、問題はフィーネの扱いだな・・・ウォルラスに預けろ。国際的な非難は俺達が受ける。まぁ、どうにか出来るし黙らせるさ」
「それは・・・」
「難しいのは分かっている。だから、こちらは保有する科学技術の一部をそちらに優先提供する。これだけでも数億の価値は確実にあるだろう」
流石は元貿易商の息子さん、妥協の点の用意は周到か・・・コレなら誰も文句は言えない
フィーネを無期懲役刑という法で裁くより、社会奉仕させたほうがマシだと判断したらしい
「う・・・む・・・」
「私は断る!!」
「いや、断れると思うのかオメー?諦めて連れて行かれろよ」
「弦十郎君!!」
「そういえば君には腹に穴を開けられたな?傷害罪として訴えることが出来るがどうする?俺としては彼らの提案に乗るというのが一番だが」
あれ、司令・・・もしかしてめっちゃキレてない?
普段使わなそうな手に出てるような気がする、元警察官であるから流石に法を使う方法はすぐに浮かんだのだろうけど・・・性格だとこんな手を使わなそうなのに
「珍しいですね、司令」
「流石に腹に穴が空いた状態で怒鳴るわけにはいかんからな」
「おーおー、マジで腹に穴空いてるな、うちの医療班のクソ弟子に任せろ、跡が殆ど見えないレベルで処置してくれっぞ?」
「カズマさんから抗議の電話来てますよ?」
「見えぬ聞こえる知らぬ」
さて、どうするかね・・・
「キアナさん!!」
「大丈夫!?」
「えぇ、大丈夫です!!」
「良かった、アヤカも心配しているから電話してあっ・・・」
おや、電話先のキアナさんが何か呻いている・・・もしかして?
「電話変わったわ、キアナは急に腹痛が来たそうよ」
「いやなぐっ」
「黙ってなさい」
「ダダ漏れですよ、アヤカさん」
ため息を付きながら、私は返答し・・・
「さてと・・・カナタ」
「はい」
「戦う以外に選択はないのね?」
「はい、今日で決意しました。私は自分自身のために戦います」
私の声にアヤカさんは、はぁ・・・と呆れながら返してきた
「覚悟があるなら、もう何も言えないな・・・で、どうせ続きがあるだろうから言っておくけど却下よ」
「ここまで示しても、ですか?」
「示したのは受け取る、だけど私達のはあくまで命を絶つこと。それは貴女の覚悟と違うものよ」
それは確かにそうだろう・・・それでも
「なら、正規の方法でやります」
「むっ・・・正規の方法だと?」
「えぇ、正攻法で」
「・・・困ったな、それは想定してなかった」
やはり、正社員として正規に応募を書けて選考を受ける・・・正攻法で来るとは考えていなかったようだ
確かに高校生ではあるが・・・ぶっちゃけ学力自体は大学生レベルは既にあり、高卒認定は余裕で取れる
なので学校を辞めてから高卒認定を取りつつ就職という選択もある、それだけは考えてなかったのだ
「次回は後期でそろそろでしたね?それに向けて行動しますので」
「ちょいまち、犯行声明してんじゃないわよ!?お断りです!!」
「ではアルバイトで、これもそろそろでしたよね?後は非戦闘員の事務方仕事・・・一時的なパートタイムも」
「ぐぬぬぬ・・・」
「アヤカ諦めなよ、これOK言うまで詰まされる奴だよ」
「キアナさんの言うとおりですよ」
クソォォォォォ!!と絶叫しながら、アヤカさんは・・・
「学校を辞めるなど言語道断です!!アルバイトとしてなら特別に許可を出しましょう!!ただしあくまで私の中での話です、採用に関しては正規の方法で考えます!!」
「ヤケになってもそこは変わらないんですね」
「最低でも高卒は現役で取りなさい、認定も確かに手ではありますがそっちに関しては許しませんよ」
「了解です、よろしくお願いします」
さて、これで一連の事件は一旦終わった
後は私の頑張りだ・・・
そんなこんなで約半月、私は船の中にいた
今日がアルバイトとしての面接日だ
「面接官はキアナさんなのか・・・緊張してきた」
そして、ノックして入る
「貴女、誰ですか?」
私の口から出たのは、その言葉だった
姿はたしかにキアナさんだが違う、キアナさんじゃない・・・
「いつも会ってるでしょ?」
「貴女と会うのは初めてです、誰ですか?」
「・・・」
瞬間、同時に動いていた
相手は私の目を潰しに、私は相手の首を潰しにかかっていた
「そこまでッ!!」
互いの身体が触れる寸前に、アヤカさんの声で同時に止まっていた
「一瞬で見抜かれていたわね、シーリン」
「まさか一瞬で見抜かれるとは思っていなかったわよ」
「どう言う事ですか?」
「あぁ、この子はシーリン。キアナの中にいる律者人格・・・名前は聞いたことがあるでしょ?」
「えぇ、聞いたことはありますが・・・」
所作が違いすぎる、キアナさんは一部粗暴なところがあるが・・・この人はそれがないどころか上品さが感じられる
まるで王侯貴族のような立ち振る舞いだ
「やれやれ・・・キアナがバレるといった通りじゃない」
「まぁ私もバレるとは思っていたけどね。で、シーリンから見てカナタはどうかしら?」
「合格ね。思い切りの良さ、相手の無力化を目的とした行動。どれも高水準ね」
「畜生あいつらニヤニヤしやがって・・・今日の訓練は地獄コースだ!!」
窓から下を見てたアヤカさんはそう言って下・・・港のコートで運動していた人達に向かって絶叫していた
私に格闘などの戦闘術を教えてくれた人達だ
なお、地獄コースと聞いてそんなぁ!?と絶叫が返ってきたのは言うまでもない
「さて、と・・・」
「仕事に関しては学校の休みの日どちらか1日だけ、それも時間は8時間。これは厳守してもらいます。残業はあるけどね」
「訓練もありますか?」
「1ヶ月に1回、それは事務方全員同じだから」
「了解です」
採用は確定したようだ、しかし条件は幾つか掛けられる、学生だからというのが大きい
「これから艦橋に行ってそこで酒飲んでるうつけ・・・じゃなかった、エデンに話をしてきなさい、制服を用意してくれるから」
「今ナチュラルにバカって言ってませんでした?」
「さぁ、何のことかしら?」
その人は最近、増員としてキアナさんの世界からこちらに派遣されてきた人で・・・一言言えば酔っ払いのお姉さんだ
しかしシラフでそんなわけではなく、酔いやすいという事で・・・でも飲んでる姿しか見たことがない
流石に今は仕事中だろうから・・・
「ねぇねぇ、貴方も飲んだら?美味しいわよ?」
「お前はバカか?俺はどう考えても仕事中なのだが?」
「イケズ」
「うるせぇ、次は酒瓶で頭かち割るぞ?」
訂正、全く仕事してなかった。カズマさんにうざ絡みしていた
「そういうカズマさん、貴方の足元にある袋の中身は?」
「空き瓶」
「何の?」
場が凍った、カズマさんのところだけ
「ねぇ、何の空き瓶?」
「・・・です」
「ん・・・?」
「お酒、です」
ハリセンの着弾音が2つ響いた。一つは飲み続けているエデンさん、もう一つは自分も持ち込んで飲んでいたカズマさんに落ちた音だ
「いったぁい!!」
「これは・・・効くぅ・・・」
「真面目に仕事やれ馬鹿ども!!」
一喝、吠えたら艦橋の皆様も震え上がっていた
・・・よく見たら皆様それぞれ足元にゴミの入った袋があるようですねぇ
「酒飲んでやがった連中は挙手!!袋隠しても無駄!!」
「は、はひぃ!!」
全員が手を上げた・・・呆れてものも言えない
「貴様らぁ!!」
「ご、ゴメンナサイィィ!!」
全員が慌ててゴミを片付けて艦橋の換気をしたのは言うまでもない
そしてエデンさんは首根っこ掴んで別部屋・・・彼女専用の仕事部屋に連行した
「アヤカちゃんから聞いてるわ、制服よね?」
「えぇ、正式に採用されたので・・・アルバイトで!!」
「おめでとう。はい、これね」
「ありがとうございます、冷蔵庫の酒は全回収ですね」
気になって備え付けの小型冷蔵庫を開ける、案の定酒で埋め尽くされていた
「おねがい、一本だけ!!一本だけ残してッ!!」
「なにか?」
「なんでも無いです・・・」
どうやら、O・HA・NA・SHIが必要らしい・・・
ちなみに没収した酒は非番の方達にタダで配りつくした
エデンさん、コッチでは飲兵衛お姉さん化している・・・