圧倒的実力差を体感させられるぞ!!
「修行ですか・・・?」
「あぁ、そうだ。君たちにはこれから修行してもらう。言っておくが修行の相手はその道のエキスパートだ、簡単には倒せんぞ」
ある日、俺はそう言ってシンフォギア装者達を見ていた
三者三様の反応である。雪音クリスは嫌そうに、風鳴翼は不承不承に。立花響だけは少しだけ前向きだ。
定期検診で離れているアヤカの代わりに指揮しているので問題はないと思うし、通信でアヤカともその話はして許諾は得ている
「人選は終わっている。ミドリ、お前は雪音クリスの相手を」
「了解、部屋はあの緑の扉?」
「あぁ、準備でき次第頼む」
「了解よ」
ミドリ。吉川ミドリ・・・雪音クリスと同様、銃器の扱いを得意とする戦闘員だ。
使うのは俺のブラックフレームの遠距離戦向け仕様であるグリーンフレーム、その自己改良型であるグリーンフレーム・ヘッジホック
「次、セリア。お前は風鳴翼を頼む」
「青の扉だな?」
「あぁ、お前の要望通りにしてある」
「そりゃ嬉しいねぇ。準備でき次第?」
「あぁ」
次に呼んだのはセリア。牧瀬セリア、俺の相棒であり近接戦に特化しているブルーフレームの使用者でもある。こちらは俺によりセリア向けに改修したブルーフレーム・ライトニングインパルスとなっている
超高速高機動近接戦闘仕様であり、使うのはほぼ剣のみという一点特化の尖りまくった機体である。セリアの得意とする戦闘スタイルに合わせた結果尖りまくっているが、完全にマッチしていたのか破格のポテンシャルになっている
その剣閃は冗談でも笑い話でもなく、時空さえも断ち切る一閃が何千にも増えて襲い来る狂気の域にある
「そして最後、立花響。君の相手は俺がしよう。言っておくが手加減はしないつもりだ。他のメンバーも手加減はしないがな。部屋は黒の扉だ」
「幼気なガキを痛めつける趣味はねぇぞ?」
「なに・・・?」
「セリア。からかうのはやめておけ」
「あーい」
セリアが少しふざけたが、あいつなりのヘイトの向かせ方だろう。これで風鳴翼はセリアに確実に悪感情を持ったに違いない。その時点ですでにセリアの術中だが・・・まぁいいか
「どういった戦い方か、見させてもらおうかしら?」
「見せもんじゃねぇ」
「後で好きなの買ってあげるわよ?」
「・・・ちょっと考える」
ミドリはミドリで手籠めにしようとしてやがる・・・はぁ
「君がどれだけ出来るか、見せてもらうぞ」
「わ、分かりました!!」
俺は少しだけ意地悪な顔でそう言ったが少しだけ拍子抜けした、緊張してその答えしか出てこなかったのであろうが・・・
「よし、では解散」
俺はそう言って席を立つ。それぞれの部屋に向かうためだ。
<施設内 青の部屋>
「・・・・・・」
俺は本を読みながら部屋の中にいた、ロッキングチェアに座り、更に入れたジェリービーンズを時折食いながら優雅にしていると、風鳴翼が入ってきた
「ふむ、時間通りだ」
事前に言っていた時間通りに来た、不機嫌そうな顔をしているのまで狙い通りだ
「やれやれ、先程の発言にご立腹かね?」
「あぁ、そうだ」
「それは重畳、俺の狙い通りだよ。遠慮なく斬ってくれて構わんぞ」
俺はそう言って立ち、机に立てかけていた杖を掴んで持ち上げ、床にコツンと音がなるよう先端を打ち付けながら続けた
「俺に剣を抜かせれば、の話だがな」
一瞬で場所が変わる、普通の部屋から廃墟の中に
驚く顔を見ながら俺は続ける
「この部屋は一種の亜空間だ。その影響で時間もズレている。他の子達も同じような部屋にいる」
「なんと・・・」
「ちなみにこの部屋の一日は現実で1時間程度になっている。つまり、一週間いても半日すら経過してないということだ」
俺はそう言って杖の先を向けながらさらに言い放つ
「今の君にはこの杖程度で十分、俺に勝ちたくば全力の先に到達してみせろ。君と俺の差はそれほど以上に離れている」
それにカチンと来たのか、風鳴翼はこちらを睨みながら言ってくる
「それは、剣を受けてから言ってもらおう!!」
そう言って踏み込んできた瞬間、俺は片手で彼女の剣を握っている手首を押さえた
「つっ・・・!?」
「言ったろう、離れていると。この程度、横目で見ているだけで余裕だよ」
そう、俺は横目で見ているだけでコレを成し遂げた。それは俺の実力と彼女の実力差があまりにも乖離しているからこそ成し遂げられるものだ
「なにを!!」
「おっと、それも計算のうちだ」
一瞬引いて体制を立て直そうとしたところに更に入り込み、剣を杖ではたき落とす。大きく退いたところを逃さず杖の先をギリギリ顎に触れないところで止めた
「くっ・・・!!」
「君が動くより俺のほうが速い。それはどういう意味か、分からんほど子供ではあるまい?」
「経験差・・・」
「そういうこと、場数が違うんだよ。生き死にの瀬戸際にたった数がな」
引っ込めた瞬間を逃さず反撃してきた。それを危なげなく杖で逸らし、今度は左目の前で止める
「それは悪手だな、君の練度でそれをやるならまず距離を取って敵の情報を収集するほうが先だ。攻撃一辺倒で倒せる
「・・・!!」
それが逆鱗に触れたのか、剣戟のラッシュが始まった。その全てが普通なら捌ききれず倒れるであろう絶技ではある。だが・・・
「甘いんだよ、小娘」
ツメが甘い。剣戟に重さがさほど込められていない。というより・・・あぁ、剣戟全てを逸らして分かる。
「ほい」
空いた腹に一撃お見舞いして距離を取らせ、俺は決定的なことを告げる
「家と流派に縛られて、俺に届くとか・・・馬鹿か、お前」
「なにを・・・!!」
「じゃあ、その剣をへし折ってやるよ」
俺に言われて更に怒る風鳴翼に返答し、俺は構える
「居合・・・!!」
「躱せよ、砕くぞ」
言った瞬間、一瞬もかからず懐に入り込み、持っている剣を杖で砕ききった
「馬鹿な・・・!?」
「言ったろうが、砕くとな」
そのままもう一撃、腹に叩き込んでふっとばし、杖の先を額に当たるギリギリでとどめ睥睨しながら俺は告げる
「お前が俺より弱いのは、お前自身の剣がないから。自分という核すらあやふやなお前の剣で切れるものなど、お前より弱い存在程度だ」
「・・・・・・」
よほどショックだったのか硬直する風鳴翼に俺は告げる
「それほどショックを受けるなら、俺との修行で自らの核を確かなものにしてみせろ。その暁には、俺に一太刀程度なら当てられるようになるだろう」
ゆらり、と立ち上がった瞬間。風鳴翼は牙を向いてきた。なるほど、激怒したようだ
<青の部屋 風鳴翼>
眼の前の男、牧瀬セリアという男に言われたことに、私は激怒した
私に核がない・・・?切れるものは弱い存在だと・・・?
「ふざけるなぁぁぁ!!」
怒りに任せて剣を振るう、いけないことだとは分かっている。だがどうしても!!
「貴様は、刀の錆にしてくれる!!」
「は、出来るわけねぇだろ」
鼻で笑われる、振るう剣が全て逸らされ、いなされる
全力を出してなお、届かない、掠りさえしない
「あぁぁぁぁぁ!!」
何故だ、何故斬れない?
何故、一太刀も届かない?
私の剣が、今日まで振るい続けた剣がこんなにも遠いはずが・・・!!
「遠いのではない。お前はまだ、その領域にすら至っていない。時も空間も断ち切る領域にな」
胸に杖を叩きつけられ、距離を取らされる。
取られるのではなく、取らされる・・・
「だが、剣の燦めきは本物。それならば核を確立するのも早かろう」
体力も底をつき、精神的にも肉体的にもボロボロにされてしまう
せめて最後の一撃と思うより先に、杖が地面に突き刺された
「なに・・・?」
「小休止だ。一日目でスタボロにするほど鬼でもないからな」
そこで時間を確認する、気がつけば周りは暗闇になっていた
「体力も相当なものだ。その意味では良い師を持っている。だが、核を確立させなかったのがいただけないな」
「それは・・・」
「風鳴という家の特質だろうな」
言われて、返す言葉がなかった。滅私を是とする家柄だからだ
「だが、先も言ったようにそれで俺には届かない。1時間ほどコレを飲んで休め。やばいものとかはないが体力は回復する」
「いただく」
出された飲み物を飲む、意外にも・・・
「美味しい・・・」
「そりゃな、ウチはこう見えて色々なもんが一級品だ。下士官から上級士官まで全て同じ釜の飯を食う関係だし、物資は箸から
微笑む顔は先と違い、柔らかなものだった
朗らかな、優しいものに驚く
「次は俺も歌いながらするかねぇ・・・流石に先のはフェアではなかったからな」
「・・・」
「あ、出来ねぇと思ってるな?言っておくが俺は割と歌は上手だぞ?あと声マネ」
そんな事を言いながら、1時間後・・・
「さて、再開と行こうか。宣言通り今度は俺も歌いながらだ」
そう言って今度は互いに構える、私が歌い始めると同時に相手も歌い始めた
「始まりの光 Kirali…kirali 終わりの光 Lulala lila」
歌う声はよりにもよって私の声を完全に複製したかのようなものだった。あまりにもキレイなのと澄んでいることに怒りを抱くことも出来ない」
「返さんel ragna 砂時計を 時は溢れん Lulala lila」
剣閃は先程の件もあり思い切りはせず相手の剣をうかがう。相手も同じなのか積極的に攻めては来ない
剣と杖で鍔迫り合いをしながら、私は一旦歌うのをやめて相手に感想を述べる
「驚くほど上手い。歌い手にもなれるのではないか?」
「あいにく、俺は歌より剣振るうのが大好きでな。歌い手はする気もなければ、売る気もない。その点では君を尊敬してるし敬愛していると言える」
「それにしては手厳しいようだが?」
「甘やかされるのも慣れてないだろう?」
「それはそうだ!!」
こちらは両手に加えて全体重をかけているのに相手は片手で涼やかな顔だ。男女の性差だけではなく、力のいなし方が違う
「さて、そろそろこちらから攻めてみるか。できる限り躱してみせろ」
「上等・・・!!」
その瞬間、振るわれた一閃を躱せたのは奇跡で、続いて迫ってきた杖先を反らせたのは僥倖だった
「はっ・・・!!はぁ・・・!!」
一瞬、自らの死が浮かんだ。心臓を貫く杖が見えた
「よし、まずは第1段階。死線が見えたな?」
「心臓を・・・」
「そう、心臓を狙った・・・二撃ともだ。よく躱し、逸らした。どちらか失敗すれば君はここで死んでいた」
淡々と事実を述べ、続けられる
「では第二段階。相手のペースを乱すことを覚えてもらおうか」
それから、この部屋での一週間が過ぎた。過酷ではあったが、不思議と悪くない気分になっていた
剣戟を通して伝わってきたのは、私と相手の隔絶した力量差だけではなく、同じ剣を振るう者としての格の違いだった
「よーしよし、今日で最後だ。少しだけ早いが、特別に俺も剣で相手してやろう」
「ようやくか」
「というのも、君との修行で割と杖がボロッボロでな。買い替えが必要なんだわ」
身も蓋も無い理由に呆れるが、一週間もすれば性格も分かってきていた
牧瀬セリアは嘘を言わない。結果的に嘘になることはあるが故意にはやらない。実に誠実な男だ
そして、過去に凄惨という言葉では生温いほどの地獄を見た事も・・・いや、経験したことがある
それをおそらく、自らの振るう剣の一振りで乗り越えた。流した血と、浴びた血の量はおそらくこれから私が歩むであろう人生でも追随できないものだ
お祖父様でもおそらく追随できないだろう
「結局、最後まで届かなかったか」
「そうでもないな・・・見ろ、袖が切れた」
結局最後の模擬戦でも一太刀さえ当てられなかった
それに歯がゆい思いがするが、見せられた袖は確かに切れていた
それは私の振るった剣の痕であった
「掠った程度・・・とは言えないか」
「だが、ここまで出来るだけ相当の腕だ。あとは自らの経験からモノにすれば良い」
にこやかに、朗らかな笑みに当てられ、悪くない気分になる
何故か、言われたことをしていけば自然とそうなる気がするのだ
「先にでたまえ、俺は後片付けがあるからな」
「分かった」
そう言って体力が回復してから挨拶して退室した。部屋を出て確認すれば、本当に半日も経っていなかった
<青の部屋 セリア>
「さて・・・」
風鳴翼を退室させ、俺はロッキングチェアにドカッと座り込んで切れた袖を見た
「俺も鈍ったかねぇ・・・袖どころじゃねぇや」
切れた袖の先にある腕には、本当に小さな切り傷があった。切り傷というのも正直怪しい。皮膚がほんの少し薄く切れている程度の代物だ、血も流れないほど薄い
だが、切られたのは確かで、俺の中では傷判定だ。本人の前ではおくびにも出さなかったが
「しっかし、なかなかいい剣だった。あと10年・・・いや、7年もすればもっと強くなってるだろうな」
風鳴翼にも飲ませた飲み物を飲みジェリービーンズを食べながら俺は彼女の強さをそう評価する。今はまだ後塵さえ拝めさせないが、7年も経てば多少は血を流すかもしれない域にいる
高校生の齢でそう感じさせるのだから、風鳴の家はなかなかエグい。だが、彼女の剣を持たせなかったのだけは正直言って許さざる所業と言える。
あまりにももったいなさすぎる。彼女が自身の剣を持っていたならば今よりもっと強く、しなやかで頑健だったのは語るまでもない事だからだ
何らかのきっかけで家を離れながらも剣から離れないようにして、自由に振るわせたならどれほど強くなるだろうか・・・それは俺にも分からないほどの可能性を秘めているというのに
「さて、俺も出るか」
最後に部屋の鍵を取り出し、俺は部屋を出た
悲報、セリアさん本気で戦ってない。(本気だったら死んでる)
なお彼が本気だったら風鳴翼は言葉を発する前に18分割されてる模様