「・・・」
目が覚めた時、私は病室にいた。身体を動かそうとするが上手く動かせない
過去に一度、今と似た状態になったことがある
「あぁ・・・」
その時と同じ存在に、私の日常はまた奪われた
その存在の名は、ノイズ・・・認定特異災害とも言われるものだ
「また・・・」
そしてまた、
多くの人を犠牲に、自分が生き残って・・・一度目の時と変わらず、無力なまま、何も出来ず
「そこから先は言っちゃダメだよ」
「あ・・・」
横から声が聞こえた、目線を向ければ、椅子に座る銀髪のキレイな
「あなたは・・・?」
「キアナ・カスラナ、貴女を今いる場所まで運んだ一人だよ」
「ついでに言うと君の手術で足りなくなった血の提供元でもある」
更に別の方から声が聞こえる、立ってこちらを見下ろしている黒髪の男性がいた
「俺は藍澤カズマ、君の手術の執刀をした医師だ。ちなみに君はあの日から今まで約1ヶ月昏睡状態にあったぞ」
「1ヶ月・・・」
それから色々と説明された
私の手術のために輸血が不足し偶然適合していたキアナさんから提供を受けたこと
全身にわたって踏まれたり潰されたりした結果、臓器の一部が壊死し始めていたので偶然適合していた検体から移植を受けたこと
それだけでなく骨も一部移植されていること・・・
ちなみにその検体は後に焼却処分されたそうである・・・検体って確か死体だから、違法に焼却したら重罪だった気がするけどいいのだろうか?
「それを、一度に・・・?」
「あぁ、流石に一度で成功しないと君が死んでしまうからな。神業なんて領域じゃないからな?俺とここの設備でないと絶対不可だからな?」
「ありがとうございます」
自然とその言葉が出ていた、目の前の人達が命の恩人だからだ
「目が覚めたなら後はリハビリだ、今日は流石に首を動かすので限界だろう。これから地獄のようなリハビリが待っているから覚悟しろよ?」
そう脅されるけど、この2回のノイズ遭遇に勝る地獄があるだろうか?このときはそう思った、そしてそれは間違いだった
確かにリハビリは地獄だった、部屋の中を這って移動するところから始まり、物に掴まって歩けるようになれば船の甲板を船首から船尾までの距離150mを往復させられた
リハビリの終了が宣言されたときには、災害に巻き込まれる前よりも身体が鍛えられていたのはきっと間違いではないだろう
目が覚めてから4ヶ月でここまで回復したことはカズマさんも驚いていたけど・・・
「弓道の腕が落ちてないか心配?」
「はい、半年近く触れてませんから・・・」
「そう言われるかと思って持ってきたわよ、貴女の道具」
「アヤカ・・・朝からいないと思ってたら、この子の家に行ってたの?」
「えぇ、そろそろ必要になってくると思ってからね」
リハビリ終了宣言の翌日、私は悩みをキアナさんに話していた時、私の後ろから声が聞こえた
キアナさんは親しい人のようだけど、私は何気に初めて会う人だ、お世話になっていることを告げると気にしないでいいと返ってきた
そのままお茶を渡されると同時に、その人が持ってきていた私の道具を貰って中を見る
「あれ、一部新しくなってる」
「だいぶ使い込んでたでしょ?あちこちガタ付き始めてたから補強と交換をしておいたわ、使用感は出来るだけ元に近いものにしているけど、試してもらっていいかしら?」
「レギュレーションの問題とかは?」
「範囲内に収めているから安心して」
そう言われたのでそのまま案内されて船内の一室にお邪魔する。そこは倉庫のようなところで、中には既に的が用意されていた
服を着替えて道具を持ち、的を見る。そして矢をつがえ、的を撃ち抜いた
撃ち抜いたが、中心より僅かに左下方にズレた。弦のブレが予測より強く、指を離すタイミングがズレてしまったのが原因だ
それ以外はまるで・・・
「どうかしら?」
「新品に近いレベルで仕立て直されているのに、まるで最近まで使っていたような感じがしました・・・でも少しだけ弦のブレが強いですね」
「やっぱりね、私も自分で試した時ブレが強いと感じたもの」
その言葉を聞きつつ、私は微調整をしていた。調整を終えて今度は2回連続で試す
今度は2本とも予測通りの位置に当たる
「すごいわね」
「腕は衰えてなかったので安心しました、でも少しだけ体の動きが固くなったので、今までより集中力を使いますね」
私自身の腕が落ちたと思っていたが、以前と変わらず確信して撃てば当たった。そこに少しだけ安心する
でも、集中力が衰えてしまったのは少しだけ寂しく思った。今度はここの鍛え直しが必要だ・・・
「あ、それと君の親友の子から伝言預かってる。元気になったなら電話の一つくらいよこせって」
「あ・・・」
親友って言ったら間違いなくあの子だ・・・姉御肌である意味豪快な性格なのに妙に心配性で気が利く・・・
「ちょっと電話かけてきます!!」
「いってらー」
その人とキアナさんに頭を下げて退室し、電話ができるスペースで親友に電話をかける
電話はスリーコールで繋がった、その直後・・・
「連絡が遅いっ!!」
「今まで完全に忘れてた、奏」
「だろうと思ったよ、心配してたんだぞ?」
「ごめん・・・」
そう返すと、奏・・・天羽奏は一枚の画像を送ってきた
奏の住んでいる家の写真だ・・・って
「奏、私はこれを片付けに帰らないといけないのかな?」
「いやぁ、これでも片付けてるんだけどなぁ・・・」
「どこをどうやって片付けてるのかいってみなさい、全部叩き潰してあげるから」
「すみません、出来ないのでマジで助けてください」
半年近くの間に汚部屋と化していたその部屋は私の横の部屋である
このままでは問題になるから、早急にお願いしないといけないようだ
「今度帰れるか相談してみるわ」
そういった瞬間、扉がノックされた
振り返ってみると、キアナさんが明日でOK!!と書かれた紙を見せてくる
その後ろにいる人もOKしてくれているようだ
「訂正、明日は休み?」
「ん?あぁ、休みだけど?」
「震えて待ってろ」
そう言って電話を切る、終話ボタンを切る直前にヤベ、とか聞こえたけどもう知らない
「ご友人の部屋、汚部屋になってるの?」
「えぇ、私の横の部屋に住んでるんですけど、昔から整理整頓とか片付けがあまり上手じゃなくて・・・月一くらいに抜き打ちで検査したりしてたんです」
それから色々と話しているうちに食事の時間になり、そして夜となって明日に備えるべく眠った
翌日は朝早くから移動して一旦自室によって掃除道具を持ってきて、奏の部屋に合鍵で入りダラシなく寝ている本人を叩き起こして私の監視のもと掃除をやらせた
誰かが見ていれば人並みに出来るのにズボラなせいでこうなるんだから・・・
奏ちゃん@汚部屋の主
主人公@おかん