「……」
「……えーっと。」
空気が重い。目の前にいる灰髪の美人さん。アルフィアから発せられる威圧感が周囲を圧迫する。
「……」
彼女からの目線が俺の腕。所謂、アリーゼとの腕を絡ませてるところに移った。
「…えーっと、あ!そうだ!僕はヘファイストスの所に用事があるんだったー。ではサラバダー。」
「おーっと俺もヘルメスの所に用事があるのを思い出した。ではなー。」
神様二人はさっさと退散した。しかも超棒読みで。もう一人の屈強な男はいつの間にか姿を消している。
「……あわわわわ、ど…どっどうひましょ。」
肝心のアリーゼは顔を青ざめ、更に身体を震わせており、その振動が俺に伝わってくる。
「……。」
すると目の前の彼女は唐突に身体の向きを変えた。そしてゆっくりと、散歩をするように歩き始めた。
「…ふぇ?」
「ん?」
よくわからないが、距離が出来たことにより空気が軽くなる。…機嫌治ったのか?
「…ねえ。ルドガー。」
「どうした?」
「あのさ…アルフィアが向かった方向って貴方の店の方よね?」
「だな。」
まあ頻繁に家に来るし珍しい事じゃない。ただ…
「珍しいよな。基本的には教会でゆっくりしてからいつも来てるし、店が休みの時は夕方辺りから来るのに。」
「それがどうかしたのか。」こういう時も有るのだろうと、アリーゼに言うと何故か額から汗を流してる。
「あの‥さ。申し訳ないんだけど、急いだ方がいいかも‥」
「え?」
ガバッと顔を勢い良く上げ「いいから!」と強く引っ張る。態勢を崩しながらも足を動かす。何か気付いたのだろうか。
◇◆◇◆◇◆◇
「………腹…減ったな。」
「…ええ。チッ…遅すぎるだろうが…あの糞団長め。」
「……輝夜。流石にそれは。」
所変わって此処は例のルドガーが経営する料理店。オラリオの中でも他の店と比べて一風変わった料理を出し、且つ提供する人物が大物過ぎることである意味有名なお店。
そこにはアストレアファミリアの中心人物の小人族のライラ。人間族の輝夜。妖精族のリューが居た。
「…くっそ。こんな時に昨日の訓練での経費がバカ高く付くなんて…ついてねえな。」
「…いや。あの女とやる時は何時もこんな感じだろ。」
「…否定は出来ませんね。」
「でもまあ、こういう時ルドガーの奴が意外と頼りになる。」
「ああ。同じファミリアってことで無料で提供ってのがいい。」
「しかも旨いってのが尚良い!」
三人とも腹減りでダウンしてるように見えるがこれから食べる料理が楽しみなのか、徐々に元気が見え始める。
「奇跡的にホームにあった物で私達以外は食事にありつけれて、食べた代わりに夕飯の調達。綺麗に別れることが出来たのである意味良かったのかも知れませんね。」
「だな。…にしても遅くね?」
「ああ。壁上から此処まで、往復でアリーゼの敏捷値からするとこんなに掛かるとは思わないがな。」
時間が気になり始めた三人。向かいに行くか?と話し始めた、その時…
「【……の……い……………罪】」
「……?」
「なんした?輝夜?」
「いや…今何か聞こえた気が…」
「気のせいか?」と輝夜が辺りを見回す。リューとライラは聞こえなかったのか、輝夜の方を不思議そうに見る。
「【……………く。………………救い。……………音色……………】」
「うわっ!」
「ライラ?どうしました?」
「いやっ!何か急に寒気がした。」
「何でだ?」と鳥肌も出てきたのか、腕を仕切りに撫でる彼女の姿。
「【神々………、……の竪……、……旋律、す……】」
「………」
「おい…リュー!お前すげえ汗出てきてんぞ!」
「だ…だい…大丈夫です…」
「大丈夫じゃねえだろ!ほれ!タオル!」とライラがリューにタオルを投げ渡す中、輝夜は先程から微かに聞こえてくる音に集中していた。
「【箱庭に…………運命よ砕け………。私は……………いる!】」
「…これは!まさか!」
「どうした!輝夜!」
「全員!今すぐ此処から離れろ!」
その声に裏口に真っ直ぐ向かう三人。先程からの嫌な感覚に自然と身体が従った!
「【代償………に。……証…………万物を滅す!】」
「【哭「始まりと以下省略!【ストップ・フロウ!】」
◆◇◆◇◆◇◆
「…あっぶな。」
時を止めた。といっても持って数秒が限界だが。アルフィアの無効化するエンチャントがどう働くか微妙だったが、上手く行ったみたいだ。
「さて…と、どうするか」
時間がない。詠唱を止めるのはぶっちゃけ無理。であれば被害を最小限に食い止める方法を探すしかない。
「…精霊術で打ち消しのは…無理だな。骸殻も…難しいな。」
となると……あ‥
「あったな。」
嘗ての世界でクランスピア社のビックリナイスな便利グッズ開発室で爆発から偶然産まれた、与えるダメージが全部一般男児のデコピン一発分のダメージになる特殊な指輪である。
「これをっ‥え…ちょっと。」
人差し指、中指と嵌めようとするがキッチリ嵌まらない。小指は隙間が出来てしまう。
「となると薬指は…何で綺麗に嵌まるんだよ。」
此所にあるのが当たり前と云わんばかりに綺麗に嵌まった。しかも
「…何でこういうときに限って右手が強く握られてるんだか。」
しかも血が出るんじゃないかと心配するぐらいに強く。
その時時間停止の効果が失くなり世界がまた動き出す。
「【け、聖鐘楼!】」
「【ジェノス・アンジェラス!】」
その時、頭上に灰銀の巨大な『鐘』が顕現し、咆哮に似た轟音が俺の店に降り注いだ。
―――――――――――――――――――――
「エレボス」
「ん?どうしたヘスティア。」
「ルドガー君ってあれかい?」
「ああ。人並みに勘とか恋愛とかを察知する力はあるが天然入りのタラシだな。しかも女難付き。」
「……下半神にならないことを祈ってるよ。」
「あ…そこまでじゃないが、何人か落としてるぞ。」
「え゛っ」
「だけどアストレアのライラは別な。ちゃんと勇者に一途だぞ。」
「もしかして…他の面々は…」
「……。」