「はい、お待たせ。今日のメニューは親子丼の大盛だよ。お代わりもあるからな。」
「待ってました!」
「ようやく飯にありつけるぜ。」
「ええ、もう一時はどうなるかと思いましたけど、この団長と恋愛雑魚店主のせいで。」
「輝夜、そう言うのは止めるべきだ。すいませんルドガー。」
「いや事実そうだし、否定はしないよ。」
ハハハと苦笑いをする。恋愛は…うん。振られた記憶しかない。しかも女性運は余り高くないしな。混浴行ったら消化されそうになるとか…あまり考えないでおこう。
「ところで…アルフィア。そろそろ機嫌直せよ。」
「(プイッ)」
あ…そっぽ向いた。
参ったな。こういう時の対処法がさっぱりだ。
他の女性陣に助けを求めると
「(自分でどうにかしろ)」
「(巻き込むな)」
「(すいません。こう言うのは疎くて)」
「(ガンバ!)」
うん。頼りにならないな。
「あー‥アルフィア…その…っと。」
機嫌を取ろうとすると丁度伝書鳩がやって来た。
しかもこれはウラノスからの依頼書だ。
内容は…
「……はぁ。」
「どうしました?ため息ついて」
「ん?強制任務。」
「「「うげっ」」」
アルフィア以外の面々が女性らしからぬ声を上げる。
気持ちはわかるぞ。俺は今こんな状況だから尚更な。だけど…
「大丈夫だよ。俺個人の強制任務だ。皆は関係ないよ。」
「なら安心か。…安心なのか?」
「…度合いによるな。」
「ルドガーが出動ってよっぽどよね。」
彼女達がそれぞれ頭に?を浮かばせながら言う。
それを尻目に詳しい内容は手紙には書かれておらずただウラノスの元で詳しい話をするとだけ書かれてあった。
「でもそっか~強制任務なら仕方ないけど、怪物祭はルドガー参加出来ないのね。」
「怪物祭って…あーそっか、あと数日後か。普段なら出店してたもんな。」
「お祭り事の時ってピンク色の綿飴とか作ってたわよね。」
「そうそう、ところで何でピンクの綿飴なの?」
「何でって…気分?」
実際、本当に気分なのだ。セオリー通りに作るのも良いがこう一捻り欲しいって思ったら取り敢えずピンクにしてる気がする。
「…これがピンキストを極めた結果なのか…」
「ピンキスト?」
「いや!何でもない!」
脳裏にピンキストの少女と喋る人形が浮かぶ。
うん。ピンクにするのも程ほどにしよう。
「それにしてもルドガー。毎度毎度祭りの時の売上は上々のようで。なんなら普段よりも稼いでいるのでは?」
クスクスと袖で口元を隠しながら輝夜が口ではそう言うが目から「阿漕な商売をやりやがって」と訴えかけてくる。
「そうそう!ところで何時も気になってたんだけど儲かってたの?」
「それが「どっこいだ」アルフィア。」
「たまに私とザルドも暇潰しに手伝うが最終的にギルドが半分ぐらい持っていってる。幾ら材料費が砂糖だけとは言えな。」
「いや。二人がいるときだけ売上結構悪いからな。こう遠目で見るだけで寄り付かなくなる。」
「…チッ」
「あらあら。案山子…いんや?人型の強臭袋といったところか?一級冒険者でも客寄せは苦「【福音】」あ痛!」
輝夜の身体が軽くのけぞった。それを見た一同は「え゛っ?」と驚愕しており、対してアルフィアは「?」と頭を捻っている。
「~~~ッッッおいっ!幾ら本当の事とはいえ魔法を放つアホがいるか!?」
「……。おい、何をした」
「あ゛っ?」
「だから何をしたと聞いた。今のは軽く天井が吹き飛ばせるぐらいだした。そんな小さい怪我ではすまない筈だ。」
その場に居た全員がゾッとした。彼女の魔法の強さを身をもって知っている為、確実に一筋縄では行かないからだ。
「…よかった!着けておいて本当によかった!借金がまた増えるかと思った。」
「うん。ちょっと待った。ルドガーお前何した?」
ジッと目線が集まる。あ…やべっ。
「何ってアルフィアに指輪を着けたんだ。」
「指輪…というとこれか。」
該当する指輪を示すとキラリとタイミング良く光を反射する。しかも左手の薬指に着けてるものだからアストレアの面々が「あらあら。」と云う反応をした。
「それ、前の世界で偶然手に入れた、全ての攻撃がデコピン一発程度になる不思議な指輪なんだ。」
「「「「マジで?」」」」
「ああ。アルフィアがジェノスしても全然大丈夫だよ。」
「そういえば確かに先程放ってましたね。」
「ちょいまち。それいつ着けた。」
「さっき着けたね」
「さっきって何時よ。」
「ジェノス放つとき。」
「…何時?」
「だから【アンジェラス!】っていうちょっと前。時間を止めてちょいっと。」
「…今なんつった?時間を…止めた?」
「うん。」
「はい!皆!今のは聞かなかったことにした方が良い案件ね。ルドガーは後でアストレア様のところで話があるわ。」
「お…おう。」
…相手の攻撃を避けただけで時間を止める指揮者がいるんだけど、言わない方がいいか。
「ところでアルフィアその指輪「貰う」あ…そうですか。」
先程までの不機嫌が吹き飛び、背景に大量の花が見える。
「それじゃあちょっと着替えてくる。食器は洗ってくれると助かるんだけど。」
「それは此方でやっておきますよ。ゆっくり着替えてきてください。」
「ありがとうリュー。」
取り敢えず…あの格好でいっか。
◆◇◆◇◆◇◆
「ところで、アルフィアの仲間に時間を止める奴っていたの?」
「いるわけないだろ。良くて時間が止まったんじゃないかって位早く動くやつらだけだ。ゼウスとヘラの団長がそれだ。」
「マジでか。じゃあ止めたルドガーって…」
「化物だな。」
「化物ね。」
「化物か。」
「あとそれよ。その指輪をアルフィアが身に付けるだけで超長文詠唱がデコピン一発っておかしすぎるわよ。どういう構造なのかしら。」
「……。ある意味良いかもしれないな。」
「それってどういう?」
「私のlevelとなると基本的に深層に行かなければ歯応えが全くないんだが、これを身に付けていればゴブリン相手でも練習になるかもしれないと言うことだ。」
「それって…所謂サンドバッグじゃ。」
「そういうことだ。」
「もしかしてルドガーとかって。」
「だな。今のアルフィアと同じ事を考えていたのかもな。」
「おっそろしいわね。」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「お待たせ~って何で皆してそんな得たいの知れない者を見る目で此方を見る。」
「「「「別になにも」」」」
「まあ、いいんだけど。」
「……その格好でいくのか。」
「そうだけど…ダメか?」
「いや。構わないが…。」
今の俺の格好は髪を全て黒に染め、目元から鼻辺りまで隠れた仮面を着け、嘗てのエージェントの服を着ている。
「でた。ルドガーの第二形態。あれ初対面だと意外とわからないのよね。構えを除けば。」
「確かに…構えを除けばですけど。」
「他の武器を使えばもっとわからないと思うんだけどな。」
「他の武器か…これとか?」
手元に取り出したるは、白と茶色の食べ物…のような物だ。見た目はあの食材に酷似しているが歴とした武器である。
「うわっでた。あれでモンスターを倒すのを見ると可哀想なんだよな。モンスターが。」
「ええ。生まれて初めてモンスターに同情したものです。」
「それじゃあ…これとか?」
取り出したるは黄色い柄で先端が赤色の槌である。誰かが見れば何処と無く見覚えのあるシルエットだがこれでも歴とした武器である。
「「「「それも変わんない!」」」」
「わかったよ。それじゃあ今回はこれでいくから。」
余りに不評…みたいだから嘗ての仲間の武器である、【棍】を持つ。
「棍か…そういや冒険者で持つ奴ってあんまいねえよな。使えるのか?」
「なんとなく?」
「大丈夫なのか…それは。」
「まあ大丈夫だと思う。あとは…あ~あーあ゛~う゛ぅん!」
いつもの声より一つ二つ音程を下げる。すると…見た目も相まって俺が私だと特定するのは難しくなる。
「あ~私…この声も良いのよね。渋い声っていうか一児のパパの声っていうか。」
「なんとなく言いたいことはわかりますな。雰囲気がガラッと変わるというか。」
「人によりけりって言ったところか。」
「…取り敢えず私は出る。戸締まりは「待て」…なんだアルフィア。」
「……ネクタイが曲がってる。」
「…堅苦しいのは苦手なんだが。」
「身だしなみは大事だ。ほら。これで大丈夫だ。」
「礼は言っておく。」
首もとのネクタイをキュッと締めたあと、頑張れと云わんばかりにポンと肩を叩いてきた。
…くそ。年上の女性にはいつまでたっても勝てるイメージが持てない。
「なんだ…その目は。」
「「「「べっっっつにー」」」」
ニヤニヤするな。生暖かい目で此方を見るんじゃない。
「…それじゃあ行ってくる。」
「「「「「いってらっしゃい!」」」」」
スキルが更新されました。
時ト無ノ恩賞
new・祈祷の間
new・50階層
「♪♪ふんふふふーん♪♪」
「機嫌いいな。アーディ。なにかあったのか」
「いや異端児達に会えるなって思ってさ!あとルドガーさんと一緒に久々にダンジョンに潜れるって思ってね!」
「ルドガーさんか…あの人だけで良くないか?おれ要らないだろ。」
「駄目だよ!ハシャーナさん!代金貰ってるんでしょ!」
「そうだけどよ。なんか嫌な予感がするんだよ。具体的には女に殺されそう。しかも超別嬪に。」
「あーハシャーナさんそういうの引っ掛かりそうだもんね。」
「自分で言ったけどひでえな。」
「まあ大丈夫でしょ!なんならルドガーさんにお願いすれば何か貰えるかもよ!」
「そうだな。なんか頼んでみるか。」