楽園にて生き抜く 作:no w here
案内人の先導の元、露天並ぶ大通りを抜けてたどり着いたのは一見したら民家であって店ではないと勘違いしそうな一軒家。案内人が軽くノックをした後何処か無愛想な老父の声で「入りな」と返ってきた。
「ではジンさん、此方は案内へと戻ります故」
「有難う、案内人」
そのあいさつの後に案内人は優雅な一礼を返し、元来た道へと歩いて行く。それを見送った後、ドアノブに手をかけて――この扉が洋式のドアではなく和式の襖に近い物だと気付き、横へ扉を開ける。
「…らっしゃい」
「席は何処に座ればいいだろうか?」
鼻先で示されたのは向かいの座布団。大きな1つの部屋に畳が敷き詰められており、向かいの座布団と老父の中央には囲炉裏が隔てている。その傍には手製で書いたと思われる"お品書き"の文字。草履を脱ぎ、正座しつつお品書きを手に取る。
「…老父殿、川魚の串焼きを主食とした和食一式を頼む」
「…あいよ」
のそりと起き上がり、二つの桶と野菜・魚・二本の串・一膳の箸が乗った大籠を持って帰ってくる。囲炉裏へ懐から出した紙切れに火打石で火種を作り、暫くすると火がともる。橙の光が囲炉裏の天井から吊り下げられた鉄鍋を舐め、鍋を介して中の水へ熱が伝わる。
「普段から、此処で食べているのか?」
首肯。店、というよりは民家を借りての宿泊に性質が近いのかもしれない。そう考えながらもインベントリから出したであろう手持ち包丁で具材を乱切りにしながら沸騰した鍋の仲へ入れていく。どうやらインベントリについてはこの世界において広く認識されているものらしい。…ならばなぜわざわざ奥へ取りに行ったのだろうか。
「…開拓者のそれと比べ、儂らのそれは容量が少ない」
「成程」
分かりやすかっただろうか。その意図を込めて首をかしげると老父は器用に片手で魚に串を通しながら首を横に振った。…「隠す気もないだろう」という意味合いだろうか、それは其れで少しばかり悔しいものがある。
尚その後特に会話もなく出来上がった料理*1は先程の籠に乗ってきたが、特に問題なくいただけた。ファステイアが近いようだったら寄っていこう。
食後、ドロップアイテムの換金を済ませて手持ちの打刀を脇差を強化する。それに合わせて防具で白の羽織を購入した。足場の悪さなどに対しては無力だが、特定の条件下では役に立つだろう。序でではあるがスキル秘伝書を買った事で新たに刀スキルを取得した。
そして換金している際の世間話でレアモンスターとエリアボスについての話を聞けたのも大きい。
レアモンスターは曰く
エリアボスは曰く「巨大な蛇であり、毒性がある物であっても食べる」「それは
そう思いつつもできるのであれば必要最低限の戦闘で済ませ、奥へと進んでいく。その道中に、鹿の角が生えた兎が此方へと飛び掛かってきた。まあ強さもほどほど未満で興奮しているわけでもない為、狙われるのは仕方ないと割り切る。相手の飛び込みに合わせ、伏せるように躱しながら居合から打刀を抜き
「…まあ、知性を持っていたとしても。
麻痺によって機動力と共に
二刀流を悪用した
声にならない声と共に、その場から逃げ出そうとするそれへ、逆手に持つ脇差で兎の脚を地面へと縫い付ける。脇差の耐久が抵抗によって減っていくのを見ながら両手で構え。
「天誅」
兎の首へと上段から大きく振り下し、斬という音と共に兎は赤いポリゴン片へと散った。それと同時にテロップと共に「スキル:霧幻萌踊*3を獲得しました」というメッセージ。スキルの記載を見る限りだと、然程適用の場はないだろう。それこそ森林地帯で使うか否か程度の物ではなかろうか。
「…いや、それなら手はあるか」
一度引き返し、一冊の魔導書を買い込んだ後に奥へと進んでいく。暫くすると髑髏を巻く蛇が見えた。あれが、目的の存在だろう。自身のレベルは7だが…まあ、
「…先ず聞くが、退いてもらえないだろうか。此方に争う意図はない」
その言葉によって、蛇は完全に一度動きを止める。
然し、巻かれたどくろが解かれることは無く依然として警戒の目を向けたまま。目の前にドロップアイテムである兎の肉を投げても首だけを動かして喰らった後、動く様子はない。
「…ならば、すまないが。押しとおろう」
打刀を引き抜き、殺意を蛇へと叩きつける。我自身の強さは然程なくとも、殺意を向けられたことに気付き此方を敵として認識する蛇。それがどくろを解き、此方へと迫りくる形に合わせて踏み出し、襲い来る口目掛けてすれ違いざまに両手で持った打刀を奔らせる。返る手応えは堅い、流石に蛇の鱗という所だろうか。引き続いて返ってくる蛇に対してワンステップを挟み、相手が誘導されたのに合わせて大きく後ろへ跳び直す。
直後その場を開店した蛇の尻尾が通り過ぎた。頬に感じる風圧は少なからず今まであってきたモンスターのどれと比べても大きく、強い。
――生命よ
故に言葉を謡う。
――母なる大地に宿るものよ、力を貸してほしい
それに警戒しながらも、自身を拘束するために蛇は周囲をぐるりと回る。対して自身は詠唱しながら鑪を踏む。
――外来故に宿らぬ我らに、母なる大地の抱擁を
締め付けようと、迫りくる鱗の壁。然してすでに詠唱は成った。
「――
相手からの締め付けと同時に、
「ギシャァアアア!?」
魔術的なものであるために物理的な防護は役に立たず、時としてクリティカル判定を伴って貫いて行く。何故気付かなかったのか。単純だ、
空中で錐揉みしつつ、重力へと従って落ちていく。そして相手に刀の刃が振れる瞬間に合わせスピンラッシュを叩き込み――自身のHPは奇跡的に1残り、蛇の体は赤いポリゴン片となって砕け散った。
牙突からのスピンラッシュ
イメージはダークソウル3の法王攻撃モーション
牙突からの空中跳び
イメージはSEKIROの大忍び突き/落とし