楽園にて生き抜く 作:no w here
外したと手の感触から察し、両目でそれぞれの視界を確認する。その視界に姿を確認できないと把握し、踏み込んだ左脚を軸に右足をR灰の居た方へ進め。体の半身を維持した動きのままに右腕を振り抜く。
金属音。そして自分から見て右へと弾かれた相手は目を見開いていた。その数瞬の隙を刃藍で斬り込み。
「ッ、らァッ」
R灰は対応するように
「お前、本当に今日始めたてか?」
「如何にも。とはいえ
「――成程、
問いと共に振り下ろされた両手剣を沈黙と共に刃藍で止め、そのまま流す。地面を叩かれ、自身の左側から巻き起こる土煙を避けるように右へ踏み出す。そのまま踏み込んだ相手の足へ切っ先を走らせるが、金属音と共に後ろへ跳ぶ。どうやら金属製の長靴を上げる事で防いたらしく、それを証明するように1本の線が入っていた。
「えげつねぇな」
「躱しておいてよく言う」
踏み込み、血昇で鎧の隙間を穿つ為の牙突。咄嗟な反応も間に合う事無くR灰の左肩から赤が散ったのを確認し、後ろに跳びながら右腕を後ろへ退き左手を前にして刃藍を構え。
「獅子狩りッ」
現在残っている我のスタミナでは受けきれない――成程、
それを察し、跳び上がったR灰の下へ両手剣の軌跡を追うように抜ける。スタミナ回復の為に身構えながらも息を整え――地面に破砕痕を残したR灰が此方へ目を向けた。
「よく分かったな?」
「初合で察したのでな」
「…ったく、徹底してんなァ」
嫌な顔を向けたまま行う両手剣の薙ぎ払いを刃藍で弾き、その後を狙うように血昇を差し込む。振り抜いた勢いのままR灰は後ろへ身を投げて距離を取り――振り抜いたままの姿勢で一足に跳び込み、血昇を右へ返す。
「っとォ」
両手剣を背負うようにし、此方へ背を向けたまま受け止めた。目を逸らしたのに合わせ、
「…ッ、わァったよ。降参だ」
刀を下ろし、インベントリに収める。そして表示された魔法板には『勝者:ジン 時間/00:41.29』と残されていた。
決闘の終わり際、男性と少女が声を交わしていた。
そしてそれを陰から見る者もいた。
「私からは然程見えなかったが…雫時凛は、見えたかい?」
「は、はい…たっ…ただ、R灰さんについての動きは当人に聞いてもらえれば。私には、その辺りを見る事が出来ませんでしたから」
その言葉に男性が頷いたのを確認し、少女――雫時凛は説明する。
それに長い耳を傾けた。
「ま…先ずは初動ですが、ジンさんは逆手に持った刀で振り抜いてます。それをR灰さんは隠密を付与しながら回避、ジンさんの後ろを取ったと思われます」
言葉を切る。
「ですが、ジンさんはそれを
「ふむ」
「あ、R灰さんの反撃を順手の刀で上に弾き、防御。その後短い会話を挟んでR灰さんの振り下ろしをジンさんは逆手持ちの刀の切っ先を当てる事で完全に逸らしてます」
レベル差だけを考えれば初めの十数秒でR灰の圧勝で勝負がつく筈だった。初動さえなければR灰は強さを見る為に手加減をしていただろうが、その中身ゆえに
勝者の姿を見て、収めた刀が昔造られたものだと気付いた。
「そして踏み込んだ足に順手の刀を振りましたが、足を上げる事で金属靴に弾かれダメージを最小限に留めます」
「足を狙った目的は?」
「…、恐らくは機動力の減衰を狙ったものかと。その後順手の牙突でダメージを入れましたが――R灰さんはそれを見越しての獅子狩り*1で防御諸共突破しようとします。事実、ジンさんも回避を選択しましたので防御できない火力だったのかと」
「成程」
「その後に数合程やり取りをしていますが――い、
長い耳を傾ける程に彼は一度連れていくべきだと感じた。
「そして、両手剣の腹でR灰さんが背を向けて防御した時に跳んで振り向いた直後に着地。そして首に刀を置いて勝利…となります…はふぅ…」
一度、父上に相談しなければ。
「――二人とも、見事な戦いだった」
セカンディル支部店店長の拍手にR灰と共に振り返る。
「雫時凛から戦闘の概要を聞いていたが、改めてR灰の強さを――そしてジンの強さを見せてもらった。改めて聞くが、R灰は彼の強さを不足だと思うかい?」
「いンや、全く。
「…とのことだ。明日の11:40から20分程かけてサードレマへ向かう。11:40までに此処に居てほしい」
『シナリオ「輸送防衛-セカンディルサードレマ間-(11:40)」を開始しますか?』
「ああ。ひと時とは言え、宜しく頼む雇用主」
yesのボタンを押す。
「少し待ちたまえ…これが前金だ。これで準備などを進めてほしい。失敗した場合は、暫くの間店の丁稚奉公をしてもらうことになる。依頼から逃げた場合、賞金首として街の方に報告もする。確実にこの時間に来てほしい」
前金――25000マーニを受け取り、頷く。
「それでは、私は彼女に店を任せて眠るとしよう。雫時凛、頼むよ」
「は、はい…」
「それでは、良い夜を。御三方」
「おやすみ」「お、おやすみなさいッ」「良い夜を」
恰幅の良い体を揺らしながら店の中へと姿を消し、開拓者である我々だけが残される。
「そ、それじゃあ私は店に戻りますのでッ」
「ん、おゥ。俺はそのままあがっかね」
「お疲れ、御二方」
そのまま2人が姿を消し…
…何が目的だったのだろう、視線を向けていた誰かは。首を傾げながらも、明日に備えてファスティア商店でポーション*2を10、MPポーション*3を5、黒い封幕*4を3。開拓者の露店で毒蜥蜴の肝練り粉*5を2、白炎石粉*6を2購入後街の飲食店へと入り食事をする。フレンチトーストと、付け合わせのイチゴとホイップクリーム。ドリンクであるカフェラテの甘さに一息を吐き。
「くそッ、なんだよアイツ」
「無茶苦茶じゃねぇか、あんなんどう戦えってんだよ」
「むっちゃかっこよかったっす、このゲーム辞めます」
愚痴を吐きながら姿を消していく開拓者。…何れも図書館で見た中でもレベルの高い存在であり――ふと、キョージュから聞いた推測を思い出す。
「強者を重点的に襲っている…か」
…資料だけで分かる事も多くはない以上、いっそ戦いに行くのも手なのかもしれない。
「――もう、
――感傷が、混じってしまった。
街の出入り口へと向かい、暗い世界へと目を走らせる。そして――夜闇の奥から、悲鳴が聞こえ。その悲鳴へ向かって闇の中へと踏み出した。
『
「…」
夜が、襲い掛かった。