異世界でチート貰って魔王を倒した勇者の話 作:超高校級の切望
魔法。
自身の心象を現実に反映させる神の御業を真似る術。不遜故に、魔の法。しかしそれを司る神もいるのだから問題はないのだろう。
髪や目の色を変える魔法を使い金髪と灰色の目にするため魔導国バーナの書庫にて魔法書を読み漁る勇者。
一般閲覧粋だが所蔵された魔導書は数千はくだらない。効果被ってるのもあるが………。
『魔法はね、一番近いイメージにするなら絵よ。湖を描いてと言われて、湖の周りの木々や山を描く奴も居れば町を描く、湖だけを書くなんてのもザラでしょう?』
だから同じ魔法でも違いが出る。皮肉なことに、火を扱う殺し屋の一族は幼少期にその身を焼かれていたらしい。火の恐ろしさを知るからこそ強力な火の魔法が使えるのだ。
魔法適性とは言わば得意な絵で、適正体系とは自身にあった描き方。
「これじゃねえな」
くすんだ金髪を戻す勇者。髪がいたんだ。自分に合う体系ではなかったらしい。それでも発動できるのはそれなりの才能があるということなのだが。
「と、これ変身魔法じゃん…………」
系統的には近いが深さが違う。魔術文字の一文ごとの説明に別の魔導書を必要とする一冊に擬態した書庫。
肉体組成そのものを変える高度な魔法を記した書。変えるのは目と髪で十分なのに。
『この戦いが終わったら、魔導国に行ってみたら?』
「……………」
魔法使いの才能は、魔力量よりも魔術書を楽しめること。そして自分でも魔法を開発できたら、それはもうどんな魔法だろうと一人前だと彼女は言っていた。
「…………作るか、魔法」
「魔法を作って一人前?」
「私の持論だけどね」
魔法陣を空中に映し出し、書物に魔術言語を綴っていく魔法使い。
場所は魔界の村。森の奥にひっそりと存在した、魔界の領域に飲まれる際取り残された国の子孫達の集落。久々の人間らしい寝具に気が緩んだのか、魔法使いが人間界での話を切り出してきた。
「まあ魔界になんか来て、魔法の開発してる時間なんてなくなっちゃったけどね」
「僕は………僕達を何度も助けてくれた君はとっくに一人前だと思うけど」
「言ったでしょ? 持論よ、持論………散々魔法を開発され尽くした時代に生まれた魔法使いの、ささやかな意地……」
「一人前の魔法使い、ね………」
そういう意味では彼女は間違いなく一人前。いや、それ以上だろう。
魔法を新しく作るというのは、想像以上に難しい。
やはり既存の魔法で我慢するか? いや、どうせもう魔王を倒すために急ぐ必要もないのだ。
「気長に行こう。問題は寿命だけだ」
魔術文字。
魔法陣。
魔法の効果を決め性能を決め、実現するための技術。
魔法使いは何時かパーティメンバー全員に合わせた魔法を作ってあげる、なんて言っていたか。
変身魔法は大きく分けて二通り。
前述した肉体組成そのものを変えるか、自身の肉体を位相空間に送り
前者は体を作り変える、その過程こそが魔法なので見抜かれづらいが本人の知識以上の物質にはなれず、後者は対魔法に極端に弱いがイメージをそのまま反映できるという強みがある。
そういえば現在の魔導国営魔術学園の生徒会長は前者の変身魔法の使い手らしい。体の材質を変え形を変え、変幻自在に戦うのだとか。
「ま、俺は色を変えるだけで十分だけど」
「なら構造色なんてどうかな?」
独り言に返答が帰ってきた。本から顔をあげると小柄な女の子が座っていた。八重歯がアクセントの、可愛らしい少女だ。
「………魔術学園生徒会長?」
「あれ、解るの?」
「そんな高度な変身して、かつ若いともなればな……俺に『嘘の姿』は通じない」
「ああ、君………パルポネ様の加護を持ってるんだ。それも、一級かな? それともやっぱり勇者様?」
ケラケラ楽しそうに笑う少女は体の余すことなく『嘘』を纏っている。魔力感知ではなんの異常もないが、勇者に染み付いた神の力が彼女の姿を否定する。
「色を変えるだけなら光の反射をいじるだけでも十分だっての」
「でもそれだと魔法発動し続けてるよね?」
「………………」
魔法を常に発動している男など疑ってくださいと言ってるようなものだ。
「というか、栄誉ある生徒会長様がなんだって一般公開で頭悩ませてる男に話しかける」
「だってそれ書いたの、私だもん」
と、勇者が読んでいた本を指差す魔術学院生徒会長。確かに著者が彼女だ。学生でこれを?
「天才か」
「うん☆」
にぱ、と笑う魔術学院生徒会長。気の抜けた態度だが、実際これをかけるのだが本当に天才なのだ。
「まあどれだけ高度に
「へぇ………」
「協力してよお兄さん。それ理解できる人、あんまりいないの」
「理解できる少数にたのめ」
「これ理解できる人が私に協力してくれると思う?」
「しないのか?」
「あ〜………なるほど。魔法ってさ、複雑な奴を作れた奴が偉くなるんだよね」
とはいえ開発されればされるほど、思い付いた技術は既に出来ていた可能性がある。だから自分だけで新技術を独占しようとする。
「でもお兄さんはこの国の魔法使いじゃない。手を組むには最適な相手ってわけさ」
「目的は?」
「私生まれた時から肺の血管が細くて、騎士の一家だから運動できないと落ちこぼれ扱いされて火事に巻き込まれても逃げるのが遅れて全身大火傷。今形を整えている魔法を永続したいと思うのは、普通でしょ?」
「………………」
『嘘』はない。健康で傷のない体を取り戻したいのだろう。
「お兄さんは黒髪を変えたいんだよね? 勇者の末裔って色々面倒だもんね。戦いを強要されたり『勇者狩り』に狙われたり…」
まあ勇者そのものなのだが……。
勇者狩りは本当に面倒だ。人間の中に潜んだ敵など魔界の魔族よりも厄介だ。厄介なだけだが……。
「そうだな、面倒事に巻き込まれる前に髪や目の色を変えたいな」
「よろしくね。あ、そうだ……私の名前はね──」
この世界の形は決まっている。
魔法はその形を変える。だが修正力によって正されてしまう。
魔法で森を燃やしても、どれだけ燃え広がろうと唐突に鎮火する。
魔法で建てた砦も何時の間にか消えている。ただ破壊の跡が残るだけ。
「でも数百年は燃え続ける『不滅の炎』や未だ古代の魔王を閉じ込めている『永久氷棺』も存在している。もちろんこれだって何時かは消えるかもしれないけど、人の寿命以上に持つのは確かだ」
「ああそれな………何時か皆で見に行くって約束したな」
「皆って?」
「……………皆だ」
結局叶わなかったが………。
まあ魔界で燃える海や氷の浮遊大陸とか見れたけど。
「……私も見に行きたいな。そのためには時間に縛られない健康な体を手に入れてからだけど」
「………………」
「このままこの魔法が完成しなきゃ、明日にだって死んでもおかしくないけど」
「そうか…………この氷は、中の魔王の魔力を吸って発動している可能性がある。この部分の術式だ」
「うーん。生物に転用させる場合、どうだろう…………」
「野盗でも捕まえてきてやろうか?」
魔法や薬品を作るために犯罪者が利用されるのは、この世界ではありふれた日常だ。
「やだよバーカ。後で後ろ指さされるやつじゃん。私は死にたくないけど、同時に褒められたいのさ」
「そうか」
皆やっていてもよく思ってないものがいるのはたしかに事実。そもそもあとは長期効果を付与するだけの段階だ。
「まあそこが一番の難所だけどね」
「永続術式は完成した……後は、魔法を組み合わせるだけ………」
魔法使いの言葉に神官が目を見開く。魔法使いが作ろうとしている魔法は、それだけありえないものだったからだ。
世界の修正力に真っ向から喧嘩を売るような、本来絶対にありえない魔法の実現。それの永続化など………
「………ただ、これには」
「俺の力が居るんだろ?」
「ごめん……」
「いいさ。発動する瞬間だけなら、まだ寿命を減らすほど負荷にはならねえ」
「……………」
魔道車に轢かれそうな子を庇い、本来なら対処できたはずなのに変身魔法を切っていた瞬間だったため持病で動けなくなり轢かれた魔術学院生徒会長。
子供は泣くばかりで、車の運転手は逃げ、時期に人も集まるだろう。
「………ま、一人だけならなんとかなるか」
魔法使いが開発しようとしていた魔法。それは蘇生魔法。死者を蘇らせる禁忌の魔法。
修正力の前に一秒だって耐えられるはずのない魔法。
まあ神の恩恵を使い過去の戦士を呼び出す魔法はあるがあれは恩恵ありきかつただの記録だし。
「………あれ?」
「起きたか」
気がつけば図書館のソファで寝ていた。声のした方向を見ればグッタリと机に突っ伏す最近仲良くなった男性が。
肌は白く、魔力を感じ取れない。明らかに魔力欠乏症だ。
「傷は癒えたか?」
「傷………?」
世界の修正力に対して唯一抵抗を持つ魔法が存在する。治癒魔法だ。一説には神が修正しないよう世界を調整したかららしい。
ただし治癒関連の神の加護を持ってないと魔力をとても消費する。自分はそんなに酷い怪我をおったのだろうか?
「それと、これやる………」
「………これは?」
「俺の友達が作った生体干渉魔法の永続術式……そのまま使うのは無理でも、参考にはなるだろ」
渡された紙をまじまじと見つめる。
高度な技術を要求する術式であり、極めて膨大な知識がなければ理解も出来ない。
自分は天才だと思う。というか実際に天才だが、これは……これを作った魔法使いは、途轍もない才覚に加え尋常ではない執念でこれを完成させたに違いない。
「うん。なる………なるよ! これで、永続的な変身魔法を完成させて見せる」
駅馬車。
危険な街道から客を守るべく雇われた護衛達に囲まれた場所の中、勇者は世界地図を見る。
幾つかの印は皆で行こうと話し合っていた場所だ………。
「…………ここから近いのは………」
茶色い髪になった勇者は、指で地図をなぞりながら呟いた。
感想待ってます
勇者達の名前
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名前をつけなさい
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読書が頭で保管するからつけなくていいよ